PyTorchとは
PyTorchとは、Python用の深層学習用のフレームワークソフトウェアです。Numpyに近い操作性とシンプルな構文、そして機械学習に不可欠なGPUサポートを備えており、各種クラウドサービスにも対応しているなど高い利便性を備えています。
TensorFlowとの違い
Pythonによる機械学習では、TensorFlowも人気の高いフレームワークです。TensorFlowとPyTorchではどのような点が違うのでしょうか。
TensorFlowは機械学習モデルの可視化に優れている他、対応する言語が幅広く、他の言語での読み込みを可能にするシリアル化に対応しています。また、歴史が長いフレームワークであるためコミュニティが充実しており、情報を探しやすいのもメリットです。
PyTorchはPythonのネイティブサポートがあるため、Pythonエンジニアにとっては学習コストがTensorFlowと比べて低くなります。また、動的なグラフ作成、スムーズで手間のかからないデバッグ機能などが備わっています。
機械学習におけるGPUの役割
GPUはGraphics Processing Unitの略称で、主にコンピューターグラフィックスの演算に使われる画像処理装置ですが、画像処理を行うはずのGPUがなぜ機械学習で活用されるのか、疑問に思う方も多いのではないでしょうか。
通常、グラフィック以外の計算はCPUが処理しています。CPUは1つのタスクを1つずつ順番に処理するため、複雑な計算を高速かつ直列的に処理することを得意としています。これに対して、GPUは並列処理の能力に長けていて、単純な計算を並列して複数処理することができます。機械学習では、単純な行列計算を並列的に処理する必要があるため、GPUの並列処理能力が重要な役割を担っているのです。
そのため、機械学習を行う場合はGPU性能の高いPCを選択しましょう。AWSやAzureなどのクラウドプラットフォームを利用して、GPUに特化した仮想マシンを調達するのも1つの方法です。
PyTorchのインストール方法
この記事では、例としてWindows11にインストールする方法について解説します。LinuxやMacなど、他のOSにインストールする場合は適宜読み替えて実施してください。
Pythonのインストール
Windows11でPyTorchを使用するには、前提としてPython3がインストールされている必要があります。インストールされていない場合は、まずPython3をインストールしましょう。なお、Python2はサポートされていません。
Visual Studioのインストール
Windows11でPyTorchを使用するには、CUDAやWindows MLの導入が必要ですが、これらの導入には前提としてVisual Studioをインストールする必要があります。
Visual Studioは、Windowsだけでなく様々なプラットフォームのアプリケーションを開発することのできる統合開発環境です。Visual Studioをインストールするには、まず公式ページにアクセスします。
【参考】Microsoft 公式-Windows 開発用のダウンロードとツール
Visual Studioには、無償版と有償版がありますが、今回は無償版の「Community」の「無料ダウンロード」リンクをクリックします(①)。Visual Studio Communityのページに遷移するので、セットアップファイルを任意の場所にダウンロードして、(②)ダウンロードしたセットアップファイルを実行すると、インストールが自動的に実行されます(③、④)。
【図】Visual Studio のダウンロード
【図】Visual Studio のインストール
CUDAのインストール
GPUを有効活用するためには、GPU環境で動作する開発環境が必要です。GPUメーカーであるNVIDIA社が提供しているCUDAは、GPUの演算能力を画像処理以外の用途で利用するGPGPUと呼ばれる汎用化GPUを利用した統合開発環境を提供しています。
PyTorchもCUDAに対応しているのでインストールしましょう。まずは、インストールするPyTorchのバージョンを確認し、対応するCUDAのバージョンを確認します。指定されているバージョン以外をインストールすると、動作不良を起こす場合がありますので必ず確認しましょう。
続いて、NVIDIA公式ページからインストーラーをダウンロードします。OS・ビルド・バージョン・インストーラータイプを選択したら、画面下部の「Download」ボタンをクリックするとダウンロードが開始されます(①)。
【参考】NVIDIA公式-CUDA Toolkit ダウンロード
ダウンロードしたインストーラーを起動し、展開先ディレクトリを指定して「OK」をクリックするとファイルが展開され、インストールウィザードが開始されます(②③)。ライセンス条項に同意し、インストールオプションで「高速」を選択肢して「次へ」を押すとインストールが開始されます(④⑤⑥)。
【図】CUDAのダウンロード
【図】CUDAのインストール
Windows MLの有効化
Windows MLはWindows Machine Leaningの略称で、Windows上で機械学習を行うためのAPIを提供するプラットフォームです。
Windows MLを利用するには、Windows SDKが必要です。Windows SDKは下記のページにアクセスして「インストーラーをダウンロードする」をクリックし、ダウンロードされたexeファイルを実行します(①)。
【参考】Windows SDK
【図】Windows SDKのダウンロード
ダウンロードしたインストーラーを起動すると、インストールウィザードが開始されます。特別な要件がなければデフォルト設定でインストールします(③〜⑨)。
【図】Windows SDKのインストール-1
【図】Windows SDKのインストール-2
Anacondaのインストール
PyTorchをインストールするためのパッケージマネージャーとして、Anacondaを利用します。Anacondaは、Pythonによる開発を行うための統合開発環境です。Anacondaをダウンロード、インストールするには以下のURLにアクセスします。
【参考】Anaconda公式
トップページから「Download」ボタンをクリックし、ダウンロードされたファイルを実行すると、インストールウィザードが起動します(①)。特別な要件がなければデフォルトの設定でインストールします(②~⑧)。
【図】Anacondaのダウンロード
【図】Anacondaのインストール-1
【図】Anacondaのインストール-2
PyTorchのインストール
最後に、PyTorchをインストールします。
【参考】Microsoft公式-コンピューターに PyTorch をインストールして構成する
まず、PyTorchの公式サイトにアクセスします。
【参考】PyTorch公式
トップページで「INSTALL PYTORCH」までスクロールします(①)。「PyTorch Build」では、インストールするバージョンを指定します。特にこだわりがなければ安定版である「Stable」を選択しましょう(②)。「Your OS」では、インストールする端末のOSを選択しますが、今回はWindowsを選択します(③)。
「Package」では、PyTorchのインストールに利用するパッケージマネージャーを選択します。Windowsであれば「Conda」が推奨されていますので、今回は「Conda」を選択しています(④)。「Language」では、PyTorchで使用するプログラミング言語を選択します。今回は、Pythonを選択します(⑤)。「CUDA」では、CUDAのバージョンを指定します。インストールしたCUDAのバージョンを選択しましょう(⑥)。
【図】PyTorchのインストール
項目をすべて選択したら、「Run This Command」に適切なインストールコマンドが表示されます(⑦)。
このコマンドを開発環境で実行すれば、インストールが開始されます。
PyTorchのチュートリアルで学習の第一歩を踏み出しましょう
PyTorchはインストールだけでも複数のソフトウェアや機能の利用が前提となっており、複雑です。今回はインストールにのみ絞って解説しましたが、PyTorchでは、公式で充実したチュートリアルが用意されています。
【参考】PyTorch公式-WELCOME TO PYTORCH TUTORIALS
まずはチュートリアルの中から興味を持った項目を試してみましょう。
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