Ubuntu Proが個人利用に拡大
Canonical社は2022年10月5日、パブリックベータ版として提供している「Ubuntu Pro」を個人および小規模な商用利用向けの無料利用者向けに提供することを発表しました。同日より、個人向け無償サブスクリプションの提供が開始されています。現時点では、パブリックベータ版となります。
個人向けでは、最大で5台までのマシンに対してUbuntu Proのサブスクリプションが無料で提供されます。結果として、ほぼすべてのユーザが10年間のセキュリティアップデートの提供を受けることになります。
【参考】:Canonical launches free personal Ubuntu Pro subscriptions for up to five machines
Ubuntu Proの関連リリース情報
現在、データセンターおよびデスクトップワークステーション向けに「Ubuntu Pro」がパブリックベータ版として提供されており、今回の発表で個人向けもカバーされます。
セキュリティアップデートの対象となるパッケージには、Ansible・Apache Tomcat・Apache Zookeeper・Docker・Drupal・Nagios・Node.js・phpMyAdmin・Puppet・PowerDNS・Python 2・Redis・Rust・WordPressなど、数千のアプリケーションが含まれます。
【参考】:Canonical launches free personal Ubuntu Pro subscriptions for up to five machines
Ubuntu Proとは
Ubuntu Proとは、提供元であるCanonicalが発表した新サービスを表します。Ubuntu Proは、Ubuntuに対して10年間のセキュリティメンテナンスの提供を約束するもので、セキュリティとコンプライアンスが強化されます。
今回の発表で、サーバとデスクトップ向けを含むすべてのUbuntuのディストリビューションに対応し、16.04 LTS以降のすべてのUbuntu LTSに対して使用することができます。これにより、長期サポート(LTS)の5年から10年へと、メンテナンス期間が飛躍的に延長されます。
【参考】:Ubuntu Pro
Ubuntu Proのメリット
Ubuntu Proでは、10年間のセキュリティメンテナンスが提供されることで以下のメリットを受けることができます。
【参考】:Canonical launches free personal Ubuntu Pro subscriptions for up to five machines
・企業向けレベルのセキュリティ対応 これまで、提供元のCanonicalはUbuntuのセキュリティアップデートでおよそ18年の実績を持ちます。セキュリティ更新はタイムリーに実施されるため、脆弱性のレベルに応じた対応が企業向けにマッチしており、個人向けでもその恩恵が受けられます。
・運用の安定性向上 Ubuntu Proでは、Kernel Livepatchが提供されており、脆弱性に対応したモジュールをシステム再起動せずにカーネルに適応することができます。ここで提供されるモジュールは、Canonicalで検証したものですべてが再起動不要というわけではありませんが、個人用途から基幹業務まで運用安定性を高めることが可能です。
・長期利用が可能 10年間のセキュリティメンテナンスが行われるため、アプリケーションの長期利用が可能です。新しいアプリケーションのセキュリティ修正もバックポートされ、利用アプリケーションのセキュリティ修正に用いられます。強制的なバージョンアップから解放され、システムの安定性向上と長期利用の利便性向上が可能です。
・コンプライアンスへの対応 企業向けシステム管理で重要な、コンプライアンスへの対応もしっかりと行われます。セキュリティ面やサポート要件に従い、FedRAMPやHIPAA・PCI-DSSなどの下の運用体制でも規制に対応した運用が可能です。
Ubuntu Proのサブスクリプションの種類
Ubuntu Proでは、以下の2種類のサブスクリプションが設定されています。
【参考】:Canonical launches free personal Ubuntu Pro subscriptions for up to five machines
・Ubuntu Pro Ubuntuの全パッケージのセキュリティアップデートのフルセットをカバーする、スタンダード版です。
・Ubuntu Pro(インフラオンリー) Ubuntu Advantage for Infrastructureから名称変更されています。ベアメタル向けデプロイメントに必要な、基本OSとプライベートクラウドコンポーネントがカバーされます。アプリケーションについては対象外です。
上記のプランに加えて、問い合わせサポートやサポートエンジニアの支援など、オプションサポートも選択することもできます。
Ubuntu Proの料金プラン
Ubuntu Proでは30日間無料トライアルが提供されており、法人顧客も契約前に先行評価を行うことができます。ワークステーション・PCが年間25USドル、サーバが年間500USドルです。個人用サブスクリプションは、5台まで無料です。
【参考】:Ubuntu Pro: security, compliance, and support
Ubuntu Proの利用方法
ここでは、今回追加された個人用サブスクリプションの登録方法を中心に解説していきます。まず最初に個人用サブスクリプションを取得するまでの流れを説明し、利用方法についても解説します。
機材の準備
Ubuntsu Proの動作条件として、16.04 LTSや18.04 LTS・20.04 LTS・22.04 LTSが稼働するUbuntuを用意します。必要に応じてUbuntuをダウンロードし、インストールしておきましょう。
続いて動作環境を、sudoで最新状態にしておきます。
$ sudo apt update && sudo apt upgrade
クライアントソフトウェアのバージョンアップ
Ubuntu Pro clientのバージョンは27.11.2以降が必要ですので、”pro --version”でバージョンを確認します。古いバージョンの場合は、段階的リリースが順次行われておりアップデートを待つか、以下のコマンドで手動インストールを行います。
$ sudo apt install ubuntu-advantage-tools=27.11.2~$(lsb_release -rs).1
proのインストールが完了したら、”pro security-status”でインストールパッケージのソースリポジトリを確認します。ここで、ソースリポジトリの情報に加えて以下の文面が表示されますので、次のマシン登録ステップに進みます。
This machine is not attached to an Ubuntu Pro subscription.
実行結果の最終行には、5台までUbuntu Proのサブスクリプションが無料であることが表示されます。
Ubuntu Proのサブスクリプション取得
無料サブスクリプションを取得するには、Ubuntu Oneのアカウントが必要です。アカウント作成には、メールアドレスを登録し認証リンクから手続きを行います。その後、Ubuntu Proのダッシュボードに表示される「Free Personal Token」を用います。
【参考】:Ubuntu Oneアカウント作成
Ubuntu Proのサブスクリプション登録
続いて、マシンにサブスクリプションのTokenを登録します。具体的には、Ubuntu Proダッシュボード上の「Free Personal Token」「Token」の「To attach a machine:」右側にある [YOUR_TOKEN]を用います。ここでの[YOUR_TOKEN]は、英数字から成る文字列です。
$ sudo pro attach [YOUR_TOKEN]
Ubuntu Proの関連サービスの有効化
Tokenが登録出来たら、esm-appsサービスのベータ版を有効化します。
$ sudo pro enable esm-apps --beta
その後、追加可能なセキュリティパッチを確認します。
$ apt list --upgradable | grep apps-security
これらのセキュリティパッチをインストールする際には、1度esm-appsを ”sudo pro disable esm-apps” のように無効化し、インストール後に再度 ”sudo pro enable esm-apps --beta” コマンドで有効化します。
長期セキュリティアップデートの仕組み
Ubuntu Proの場合、長期サポート(LTS)期間のモジュールはMainやRestrictedリポジトリからアップデートを受け取り、それ以降はUniverseとMultiverseリポジトリから受け取ります。esm-appsが有効の場合は、この仕組みを用いてセキュリティアップデートを長期間受け取り続けることができます。
Ubuntu Proの製品体系
Ubuntu Proは、これまでクラウド事業者向けの提供サービスと、汎用のサーバ環境ならびにデスクトップ環境を用いた企業向けサービスが提供されています。今回発表されたUbuntu Proは、さらに個人向けに対象を拡大しています。具体的には、以下のようなサービスがあります。
物理サーバー
スタンダードプランとインフラオンリープランそれぞれに、サブスクリプションプランがパブリックベータ版として提供されています。スタンダードプランは年間500USドル、インフラオンリープランは年間225USドルで提供されます。
【参考】:Ubuntu Pro: security, compliance, and support
デスクトップ
Ubuntu Proのデスクトップ向けサービスモデルです。Ubuntu LTSリリースの10年間のセキュリティパッチと、Ubuntu Universeリポジトリにある23,000以上のパッケージが対象です。インフラオンリーは提供されず、Ubuntu Proのみで1台当たり年額25USドルです。
【参考】:Ubuntu Pro Desktop
クラウドイメージ
Ubuntu Advantageのサポートバンドルモデルとして、2019年にAWS版のAMI、2020年にAzure版、2021年にGoogle Cloud版が登場しました。Ubuntu Proは、これらのクラウドイメージのみならず、汎用サーバやデスクトップ・ワークステーション向けに再編成したものです。
【参考】:Ubuntu Pro for AWS 【参考】:Ubuntu Pro for Azure 【参考】:Ubuntu Pro for Google Cloud
【参考】:aws marketplace: Ubuntu Pro 22.04 LTS 【参考】:Azure Marketplace: Ubuntu Pro 22.04 LTS 【参考】:Google Cloud: Ubuntu Pro 22.04 LTS (Jammy)
Ubuntu Proによる10年間のメンテナンス保証でアップデート作業から開放されます
オープンソースの場合、バージョンアップの頻度が高くアップデート作業に謀殺されることがよくあります。Ubuntu Proでは10年間のセキュリティメンテナンスが可能ですので、ソフトウェアのバージョンアップを気にせずに運用を継続することができます。個人用途に拡大されたUbuntu Proは、検討の価値が高いでしょう。
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