「サウナは、脳のガベージコレクション」。エンジニア兼サウナ経営者が、サウナの魅力を徹底解説!
IT企業が多く集まる五反田・大崎でエンジニアを癒やし続ける銭湯が「金春湯」だ。
なんと、オーナーの角屋(かどや)文隆さんは、エンジニアから銭湯経営者になったという異色の経歴を歩んでいる。
単なるブームで終わりそうにない「銭湯・サウナとエンジニア」文化の盛り上がりの秘密がわかってきた。
銭湯でLT会!?サウナでオライリー!?エンジニアが銭湯に集まるワケ
銭湯好きのエンジニアが金春湯でLT会(ライトニングトーク会。5分程度の短い発表会)をしたという記事を読んで驚きました。
やりましたね(笑)
たしかに金春湯さんはFree Wi-fi飛んでるからできそうですけど…なぜ銭湯でLT会を?
エンジニアの人たちに銭湯に来てもらおうと思って。簡単に言えば、宣伝ですね(笑) 自分がこの銭湯を継ぎ始めたときは、近隣の銭湯よりもお客さんが少なめで…。
角屋さんはもともとエンジニアをされていて、家業を継ぐ形で金春湯の経営者になったんですよね。
そうです。元々はメーカーに務めてて、Webエンジニアをしていました。が、2年くらい前に母親が怪我をして、家族経営なんで人手も足りなくなった。それで家業の銭湯の経営を手伝うことになって。
手伝い始めた時はほんと近隣の銭湯よりもお客さんが少なめで…。なんとかしないと、と思ったけど広告の知識があるわけでもないし。 そこで自分がエンジニアなので、エンジニアから攻めてみたというのが大きいです。
金春湯周辺の大崎や品川って、有名なIT企業が多いのでエンジニアは集客しやすそうですね。ここは大崎駅から歩いてちょっとだったんでびっくりしました。
いま、このへんは五反田バレーって言ってエンジニアが集まってきてるんです。
このあたりのエンジニアの人は羨ましいな〜!オフィスの近くにサウナ付きの銭湯があるって最高じゃないですか?
実はアンドエンジニアのライターは全員エンジニアなんですけど、ライター陣でみんなでサウナに行くくらいみんなサウナ好きで。 数年前から、エンジニアにサウナブーム来てますよね。
ブームは実感しますね。金春湯は地域のお客さん以外に、周辺のIT企業に務めてるエンジニアのお客さんも多いです。サウナの中でオライリー(エンジニア御用達の技術書出版社)の本を読んでる人を何度か見たことがあります(笑)。
すごい!湿気で本がダメにならないのかな…
本の接着剤とかも剥がれちゃいますよね。サウナって100度近いんで。
ときどき「サウナの中で思いついたアイディアをすぐメモできたらな〜」とかは思うんですけど、サウナで読書はすごいな…。効率を求めるエンジニアらしいというか。 基本的に銭湯やサウナってスマホもPCも持ち込めないし、コード書けないじゃないですか。効率を求めがちなエンジニアに、どうして何もデバイスを持たず入る銭湯やサウナがウケてるのかなって思います。
銭湯やサウナは「脳のガベージコレクション」とか「脳のデフラグ」だって考えるとわかりやすいと思います(※ガベージコレクション→不要になったメモリ領域を自動的に解放する機能のこと)。
サウナは脳のガベージコレクション…。なるほど。
結構有名なカンファレンスにも出るようなエンジニアのお客さんが、「強制的にインプットを止める時間が必要だ」って言っていて。いきなり仕事を始める前にやることを整理する時間を持つといいって言うじゃないですか。
そういう時間が大事だってわかってるけど、ついプッシュ通知とかSlack見ちゃいますよね。
銭湯やサウナは強制的にデバイスを手放すから、邪魔されないんですよね。
全裸だから本当にやることないですよね。時計見るか思考に集中するか。
デジタルデトックスになるし、静かな環境なので集中して頭の中を整理する時間になる。汗もかいてすっきりしますしね。エンジニア的には銭湯やサウナはそういう考える時間を持つためのリズムを作ってくれる場所っていう人もいますね。
なるほど。ただコードをたくさん書けばいいわけじゃなくて、日常の中に銭湯を取り入れると、手を止めて考える時間を作るきっかけになるんですね。
あと、「サウナは無言のコミュニケーション」みたいなことを言う人もいますね。しゃべるわけじゃないんだけど、同じことが好きな人同士が一緒にいるっていう感じもエンジニアと相性がいい気がするんですよね。
誰も喋らないけど一つの場を共有して集中している感じとか、エンジニアの文脈でいうとサウナは「もくもく会」(複数人で集まり、黙々と喋らず勉強や仕事をする会のこと)に近いのかもしれませんね。
その空気感はかなり近いですね。サウナはもくもく会って、しっくりきます。そういう面もあってエンジニアと銭湯は親和性が高いのかもしれません。
銭湯は日常の中で一番非日常。単なるブームを超えて愛される銭湯
奥さんと時々話すんですけど、銭湯って「日常の中で一番非日常寄り」だと思うんです。簡単に言うと、「今日はラーメンのトッピング全増しにしてみよう」みたいな。そういうのを目指したいなって。フレンチとかを目指すのではなく。
ラーメン全増しっていう説明はめちゃくちゃわかりやすいですね。
高いお金を払って得られる癒やしもいいんですが、銭湯は一番日常に寄ってる非日常なサービスで、それが通いやすさに繋がってるのかなと。
さきほど、銭湯やサウナは思考を整理する時間を作れるって話がありましたが、そういう思考のリズムを作るには月に1回じゃちょっと少ない。週に1,2回通える銭湯の気軽さが脳のリファクタには丁度いいのかもしれませんね。
銭湯って基本500円以下で入れて、お金を使うとしても牛乳とかビールを買ったりとかで、使っても1000円くらいで収まるんですよ。
金春湯さんはよく見るとけっこうクラフトビール置いてますね。
個人的に好きっていうのもあってクラフトビールを仕入れて置いているんですが、それも日常の中での非日常感のひとつかなって。全部日本のメーカーなんですよ。
確かに、クラフトビールって簡単には手に入らないしちょっと特別感がありますね。銭湯上がりの飲み物って、何飲もうか考えるのも楽しいですよね。たまにポカリスエットとオロナミンC混ぜて飲んでる人いません?
いますいます。だからうちはコップを提供してるんです。ポカリスエットとオロナミンC混ぜて飲めるように。味は殆どマッチですけどね。ちなみにマッチも置いてます。
ギーク的というか、そういうちょっとした飲み物のハックや遊びもエンジニア的に楽しいのかもしれませんね。
銭湯の数がどんどん減っているというのはよく聞く話ですが、今の銭湯ブームがもっと盛り上がって、身近に銭湯が増えるたらいいのになって思います。
確かに銭湯は減ってるんですけど、都内にマクドナルドが350店舗くらいある一方、銭湯っていくつあると思います?
100店舗くらい…?
銭湯って実は都内に500以上あるんですよ。
え!!
知らないですよね。上野の燕湯とか、鶯谷の萩の湯とかは有名ですけど、知ってるのってわずかじゃないですか。 メディアに取り上げられる銭湯は結構固定されていますしね。各銭湯からの情報発信が課題かもしれません。ただ、最近はかなり改善されてきています。
銭湯のSNSアカウントって見たことないですね。それこそネット記事とか人づてに良い銭湯とかサウナを教えてもらうというか。
一方で金春湯さんはTwitterやInstagramも頻繁に更新してるし、かなりきれいなホームページも運営されてますよね。
そうなんです。他の銭湯にも発信してほしくて、金春湯では銭湯向けにホームページ制作の受注もしてます。ホームページ作りたい銭湯さん、絶賛募集中です笑
最近だとサウナイキタイのようなレビューサイトも出てきて、近所の銭湯やサウナを見つけやすくなってきているんでしょうか。サウナイキタイには金春湯さんのレビューページもありますね。
東京だと銭湯の組合がアプリを作ってて、銭湯の検索とか、スタンプラリーができたりします。ほとんどの銭湯は宣伝が不足してるんですが、頑張って探せばちゃんと皆さんの家の近くにも銭湯はあるはずですよ。
新型コロナウイルス感染拡大の影響で、毎日リモートワークで家にこもりっぱなしというエンジニアも増えてきたので、近所の銭湯を見つけて通う習慣ができると、思考の整理のいいリズムができそうですね。
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