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「cluster」は砂漠のラスベガス!?バーチャルSNSとしての「cluster」が作るVRの未来
R.D.Sakamoto
2020.09.29
この記事でわかること
クラスター株式会社のメンバーは、週1回、本社に出張する。
「cluster」は3Dクリエイターを支えるバーチャルSNSとして進化。グローバル展開も目指す!
!今後のVR市場での成長の鍵は、インターネットに乗せる体験にある。

前回の記事では、バーチャルイベントのプラットフォームとしての「cluster」の表も裏も語ってくれた、クラスター株式会社代表取締役の加藤さん。

アイドルや声優と触れあっても大丈夫!?バーチャルイベントプラットフォームとしての「cluster」の舞台裏

今回は、クラスター株式会社の働き方や、今後の「cluster」の進化、そしてVR市場のこれからについて、加藤さんに語り尽くしていただきました。

本社に出張?全体会議に「cluster」?クラスター株式会社の働き方

R.D.Sakamoto
「cluster」活用の事例として、株式会社ZOZOテクノロジーズやGMOペパボ株式会社はバーチャルオフィスを、ヤフー株式会社はコラボレーションスペース「LODGE」を、「cluster」で公開したことが話題になりましたね。
その運営元であるクラスター株式会社の働き方って、実際のところ、どうなんですか?
クラスター 加藤さん
勤務体系としては、現在、週4日間はリモートで働いて、1日だけ品川区にあるオフィスに出社しています。
気持ち的には、出社と言うよりむしろ、出張ですね。
バーチャル上に本社があって、品川区のオフィスは支社だと思っているので。
「クラスター株式会社の品川区のオフィス」スタジオが併設されているリアルオフィス。2019年に移転した。 (引用:クラスター株式会社採用情報ページ)
R.D.Sakamoto
なんで週1日はわざわざリアルのオフィスに出張しているんですか?
クラスター 加藤さん
やっぱり、まだインターネットに乗っかっていない体験があるからです。
例えば、リアルで会って相手をつぶさに観察することでなにかに気づいたり、それとない雑談のなかで、たまたま何かを発見したり、といった体験です。
クラスター 加藤さん
こういった一見無駄で偶発的な体験は、まだインターネットに乗せるのが難しくて。
そういった体験の契機は週1か隔週くらいは欲しいよね、ということで、現在はみんな週1で出張するようになっています。
R.D.Sakamoto
ミーティングなどの業務の中では、「cluster」を使ったりしないんですか?
御社のCFOの岩崎さんのnoteを拝読したのですが、過去にはバーチャル会議システムも開発されていたらしいじゃないですか。
「岩崎さんのnote」これまでのクラスター株式会社の軌跡についてのnote。これまでの軌跡をインタビューする必要がなくなった...。(引用:note)
クラスター 加藤さん
弊社では、主に、大人数でのミーティングで活用していますよ。
みんながアバターを表示できるし、発言に対してコメントしたりエモーションを出したり、サイリウムを振ることもできるんですよ。
R.D.Sakamoto
めっちゃ楽しそう!ビデオ通話とはまた違うミーティングの形ですね。
クラスター 加藤さん
そうかもしれませんね。
あと、ビデオ通話のミーティングと異なる点としては、誰かが発表した後には拍手が自然と沸き起こるんです。
ビデオ通話のミーティングで拍手することって、あまりなくないですか?
「拍手のエモーション」チュートリアルワールドで撮影。初心者はまずここに来て操作を学ぼう!(アンドエンジニア編集部が「cluster」で撮影)
R.D.Sakamoto
確かに。発言者側はすごく発言しやすそう。
でも、それならいっそのこと全部のミーティングで「cluster」を使えばいいんじゃないですか!?
なんなら、このインタビューも「cluster」でやれば良かったですかね?
クラスター 加藤さん

いや、それがそうとも言えないんですよ。
4人くらいまでの会議であれば、 ビデオ通話のミーティングが良いと思っています。

R.D.Sakamoto
え?そうなんですか?
クラスター 加藤さん
そのぐらいの人数までなら、相手の目線だとか表情からも情報を得ていると思うんです。
そういうところは、まだバーチャルでは伝えきれていないですからね。
逆に、大人数で集まっているときの熱狂感とかはバーチャルでも生み出せていると思うので、全体会議みたいな場では、「cluster」を活用できるかなと思っています。

「cluster」は砂漠のラスベガス?3Dクリエイターが稼げるバーチャルSNSへ

R.D.Sakamoto
「cluster」は、バーチャルイベントのプラットフォームとしてであったり、バーチャルオフィスや、バーチャル会議システムとしても使われているようですが、バーチャルSNSとして使われているかと問われると、正直、首を傾げてしまうんですよね。
クラスター 加藤さん
そう思われる気持ちも分かります。
というのも、「cluster」がバーチャルSNSになってきたのはここ最近のことなんです。
「まずは、バーチャルイベントのプラットフォームとして発展させていこう」というのが、「cluster」のもともとの考えなんですよ。
「『cluster』のイベント一覧」日夜、さまざまなイベントが開催されている。(引用:cluster|イベント一覧)
R.D.Sakamoto
ほうほう。なんで、バーチャルイベントからなんですか?
クラスター 加藤さん
そうですね。この話、弊社の社員には、時折アナロジーで話すんですよ。
「我々は、砂漠の上にラスベガスを創っている」って。
R.D.Sakamoto
面白そう。是非に詳しく。
クラスター 加藤さん
何もないところに、街とかモノを作っていくサンドボックスゲームってあるじゃないですか。
バーチャルの領域って、まだ砂しかないサンドボックス、砂場と言うより、もはや砂漠なんですよ。
クラスター 加藤さん
砂しかない砂漠で遊び続けられるのって、それこそ砂漠の民みたいな人しかいなくって、一般人にはハードルが高すぎるんです。
バーチャルで言うなら、それこそVRChatで遊べるような人は、砂漠で遊び続けられる砂漠の民だと思っています。
R.D.Sakamoto
そうかもしれませんね。
以前VRChatについての記事は書かせていただきましたが、パソコンが不得手な人が遊ぶには、些か難しいと思います。
ゼロ円からはじめる異世界生活!?住人に聞く「VRChat」世界の歩き方
クラスター 加藤さん
砂しかない砂漠には、当然インフラも何もないので、人が永住するのはしんどいんですよね。
でも、サーカスのようなイベントを興して、一時的にでも一般人を呼び込んで、お金を落としてもらうことはできるんです。
だからバーチャルでも、砂漠でサーカスをやるように、イベントを開くために必要な機能を揃えて、イベントを興して、経済圏を創ることからやっていこうと。
R.D.Sakamoto
なるほど。そうすると、砂漠の例えでいうところの、サーカスの興行は、ぼちぼち成果が出ているというのが、これまでの「cluster」ということでしょうか。
クラスター 加藤さん
だいぶその通りですね。なので、その上で、次は、サーカス小屋の周りでモノを売買できるようにして、ちょっとずつ生活圏が築けるようになったらいいなと思っています。
ラスベガスも、砂漠の中にゼロから街ができて、一大商業都市が出来上がっていったので、不可能ではないはずなんです。
クラスター 加藤さん
そのために、「cluster」で、バーチャルなモノやアイテムを、安心・安全に売買できるような仕組を作っているところなんです。
3Dのコンテンツを創るクリエイターの皆様が、コンテンツを作ってお金を稼いで、どんどん活躍できる場所を作っています。
こういう場所を創ることで、3Dという技術が日常に溢れる時代が来るのが、加速されると思うんです。
R.D.Sakamoto
確か、御社のミッションは「人類の創造力を加速する」でしたね。
「クラスター株式会社のPHILOSOPHY」VISION・MISSION・CORE VALUEが掲載されている。求職者は要チェックだ!(引用:採用情報|クラスター株式会社)
クラスター 加藤さん
そうです。ちなみに、スローガンは「引きこもりを加速する」です。
この加速するってことは結構重要で、正直、我々が頑張らなくとも、いずれバーチャルの時代っていうのはいずれ来ると思うんですよね。
R.D.Sakamoto
確かに。
クラスター 加藤さん
でも、我々が頑張ることによって、それが1日でも早く来たら嬉しいよねと。
なんで1日でも早く来たら嬉しいかといえば、それは、私がオタクだからで、漫画は1日でも早く読みたいし、アニメも1日でも早く見たいんです。
だから、3Dコンテンツが溢れ、オタクも、オタクじゃない人たちも楽しめる世界についても、1日でも早く来てほしいと思うんです。
クラスター 加藤さん
それを実現するためには、やっぱり3Dコンテンツのクリエイターの皆様による総力戦だと。
だから、「cluster」は、そういったクリエイターの皆様が稼げる場所と仕組みを作っていかなければならないと考えています。

バーチャルのビジネス領域は、グローバル展開しやすい領域

R.D.Sakamoto
「cluster」の今後の話、もっと深堀りしたいんですけど、言える範囲で教えてもらっていいですか?例えば、グローバル展開についてとか。
クラスター 加藤さん
そうですね。グローバル展開については明確に考えていて、社内でも言っているんです。
グローバル展開は、しないと面白くないって。
それに、バーチャルの領域は、日本発でも、グローバル展開を目指しやすい領域だとも思っています。
R.D.Sakamoto
おお!目指しやすいってどういうことですか?
クラスター 加藤さん
グローバル展開って一言に言いますが、ビジネスの領域の時点で、ゼロからまた頑張らないといけない領域だったり、地域のというか、スケールのメリットが働きにくい領域もあるんですよ。
日本でデカいマーケットや資産を持っていても、ただ単に翻訳しただけでは、グローバルに横展開するのが難しいビジネス領域ですね。
クラスター 加藤さん
対して、「cluster」とかのコンテンツをメインにする領域は、YouTubeなんかが形が近いと思うんですけど、これはグローバルに展開しやすいんです。
だって、例えばYouTubeで、サンフランシスコに在住している方の動画って、普通に日本人も見るじゃないですか。
クラスター 加藤さん
逆もまた然りです。
これはゲームも同様で、「cluster」に投稿されたゲームワールドって、ヨーロッパ在住の人でも遊ぶはずなんですよ。
「cluster公式チャンネル」公式動画やゆるくら会、VRライブ直前生放送などのコンテンツが揃う。YouTubeの紹介は流石に不要ですよね?(引用:cluster公式チャンネル)
R.D.Sakamoto
バーチャル領域のビジネスは、グローバル展開も狙えると...。
クラスター 加藤さん
まあ、あとは単純に、私がどんどんでかくなっていくインフレゲー、シムシティとかFactorioが大好きで、どこまでもでかくしていきたいからっていうのもあるんですけどね。
とにかく、グローバル展開については、やりたいなと思っています。
「SimCity™シリーズ」都市建設ゲームの代名詞ともいえるビッグタイトル。無限にやり込める。(引用:Electronic Arts Inc.)
「Factorio」こっちは工場を作るゲーム。MODを使ったりカスタムスクリプトを書くこともできるやり込みゲー。(引用:Steam|Factrio)

グローバル展開の課題は、カルチャーの衝突

R.D.Sakamoto
一方で、グローバル展開において、課題に感じることって何かありますか?
例えば、VRChatやNeosVRなんかと競合しそうだとか、あるいはSECOND LIFEの二の轍を踏むことになるだとか。
「SECOND LIFE」メタバース系のゲーム、あるいはバーチャルSNSの先駆け。時代がSECOND LIFEに追いついていなかった...。(引用:Steam|Factrio)
クラスター 加藤さん
まずですね、いただいた内容については、競合することも、二の轍を踏むこともしないと思います。
そもそもの思想が違うんですよ。
R.D.Sakamoto
し、思想..!?
クラスター 加藤さん
そうです。バーチャルの領域のサービスを作るとなると、やっぱり、あると思うんですよね。
メタバースに至る病っていうものが。
(※ 編集注: メタバース = インターネット上の仮想的な三次元世界のこと。)
「SNOW CRASH」米国のNeal Stephenson氏によって書かれたSF小説。メタバースという造語はこの小説が発祥とされる。本稿の読者の皆様には、是非読んでいただきたい! (引用:The personal website of authorNeal Stephenson)
R.D.Sakamoto
や、病...!?
クラスター 加藤さん
至る病です。メタバースを作りたくなってしまう引力。
R.D.Sakamoto
い、引力...!?
クラスター 加藤さん
言ってしまえば、大多数の人にとって、メタバースは要らないんですよ。
もちろん、一部の人が求めていることは否定しませんが。
クラスター 加藤さん
要は、「cluster」はコンテンツを提供して、日々の生活を拡張するというイメージのサービスであり、そこでユーザーが生活するというメタバースのサービスとは、思想が根本的に違うんです。
だから、機能的に重複する部分はあるかもしれませんが、サービスとして競合することは無いと思っています。
クラスター 加藤さん
また、「cluster」は日々の生活の拡張だから、プラットフォームもVRデバイスだけじゃなくて、全デバイスでやるべきだと思っています。
スマートフォンやWebはもちろん、プレステもSwitchも対応していきたいですね。
日常生活にデジタルな表現やコンテンツが溢れるって、そういうことだと思うんです。
Cluster GAMEWORLD CENTER」ユーザが投稿したゲームワールドのハブとなる公式ワールド。遊びきれない数のゲームを、マルチプラットフォームでできたなら、それは楽しいはず(アンドエンジニア編集部が「cluster」で撮影)
R.D.Sakamoto
これはありがたい!
クラスター 加藤さん
一方で、グローバル展開の課題として考えているのは、カルチャーの衝突です。
R.D.Sakamoto
バーチャル空間でくらい、どうにかならないですかね?
ほら、国境も無いじゃないですか、バーチャルだと。
クラスター 加藤さん
それ、若干ダウトだと思うんですよ。
例えばですけど、全世界のゲーム人口って今30億人以上いるらしいんですよ。
ただ、ワンタイトルのユーザー数っていうのは多くてもだいたい1億人くらいなんだそうなんです。
これが仮に10億人とかになってくるとですね、異教徒同士を、同じ空間に滞在させなきゃいけなくなるんです。
R.D.Sakamoto
そこは、なんとか共存共栄していただくわけにはいかないんですかね?
クラスター 加藤さん

過激な表現ではありますけども、 同じ空間に入ってもらった瞬間に大喧嘩ですよ!?無理です!もう無理なんです!同じ空間にいるのが!
もちろん、単純な言語の壁もあるんですけど、こうした宗教観とか、正悪とか、好き嫌いとかのカルチャーの衝突は、10億人とかの規模まで見据えると、色々なところで起きるはずなんです。

R.D.Sakamoto
確かに、Twitter見てると、同じ日本人同士ですら日々衝突していますしね...。
クラスター 加藤さん
だからこそ、ゾーニングが大事だと思っているんです。
多様なカルチャーをひとつの空間にぶちこんでいくとなった時に、反りが合わないカルチャーの人とは、会わなくてもいいようにする。
興味のないコンテンツは見えないようにする。
クラスター 加藤さん
その一方で、カルチャー間の交流を求める人々の間では、交流がとれるようにするんです。
設計としても、システムとしても、これはできるはずなので。

VR市場の鍵は、バーチャル空間での体験

R.D.Sakamoto
御社はグローバル展開も志していくとのことですが、そんな御社も含めたVR市場、これからどうなっていくと思いますか?
クラスター 加藤さん
はい。まず、もうVRだから、VRデバイスだから何っていう話ではなくなってきているというのが現状だと思います。
そこは本質じゃなくて、あくまでも手段でしか無いということに、みんなが気づいているはずです。
VR市場というのが、狭義のVRデバイスの市場を指すのであれば、そこは主ではないということですね。
R.D.Sakamoto
じゃあ、逆に何が主になるとお考えですか?
クラスター 加藤さん
それこそ、インターネットに乗っかっていない体験だと思います。
VRChatもそうですし、「cluster」もそうだと思うんですけど、その空間にいる感覚をインターネットに乗せることができていると思います。
クラスター 加藤さん
そういった体験をインターネットに乗せられて、オンデマンドに配信できるという部分に比重をおいて発展していくサービスというのが、これから伸びてきて、逆にそうじゃない、例えばヘッドマウントディスプレイかぶって「すごい」と思わせるだけのサービスは、淘汰されていくのが必然ではないかと。
クラスター 加藤さん
この流れのなかでハードウェアの観点でVRに物を申すなら、まだまだ重たいし、売れていない。
これがスマホレベルになるまでには、あと何回かブレークスルーが必要だと思います。
純粋に重いですし。重い。要するに重い。
「Oculus Quest2」FACEBOOKによる最新HMD。これは圧倒的に「買い」だと筆者は思っています。なお、ここでの「重い」はHMD全般に対する一般論となります。(引用:Oculus Quest2|Factrio)
R.D.Sakamoto
確かにどちゃくそ重いのは否定できません。
クラスター 加藤さん
この流れの中で、「cluster」は、クリエイターの皆様が3Dコンテンツを作って稼ぐことができる環境を作って、そのコンテンツの体験をインターネットに乗せていく。
で、この時に重要なのが、その体験がリアルタイムに同期されて、体験するみんなが、みんなと一緒に共感だったりライブ感を得ることができるようにすることだと思っています。
クラスター 加藤さん
そして、そのために必要となるインフラ部分の技術とかライブ通信とか、必要になる機能を「cluster」はどんどん整備していきたいなって思っています。
「加藤さん(アイテム)との記念撮影」チュートリアルワールドでは、加藤さん(アイテム)を持って遊ぶこともできるぞ!(アンドエンジニア編集部が「cluster」で撮影)

クラスター株式会社を立ち上げて、最初にメンバーを集める時に、加藤さんは「ソードアート・オンラインみたいな世界を作るぞ」と言って、メンバーを集めたそうです。

「cluster」が作るバーチャル世界を心待ちにしつつも、読者の皆様も、エンジニアとして、3Dという技術が日常に溢れる時代が来るのを、共に加速させるのは、いかがでしょうか?

R.D.Sakamoto
エストニアのソフトウェア開発法人OmusBridge OÜの代表取締役。日本ではフリーランスのパラレルワーカーとして、エンジニア・ICT講師・ライター業等に従事。SAP ERPコンサルタントのキャリアを経て、マネジメントやコーダーも担うWebフロントエンドエンジニアに転身した。よく使うフレームワークはVue系。NoCodeとA-Frameとp5.jsに興味有。馬肉の好きな部位はフタエゴ。
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