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アイドルや声優と触れあっても大丈夫!?バーチャルイベントプラットフォームとしての「cluster」の舞台裏
R.D.Sakamoto
2020.09.10
この記事でわかること
「cluster」は、バーチャルSNSであり、バーチャルイベントのプラットフォームでもある
バーチャルイベントには、リアルイベントにはできない体験や機能がある
「cluster」は、リアルイベントの熱狂感を、バーチャルイベントにも乗せていく

clusterをご存知でしょうか?

「cluster」は、VRの多種多様なワールドを楽しんだり、イベントに参加することができるバーチャルSNSです。

「cluster」クラスター株式会社が運営するバーチャルSNS。さまざまなイベントが日々公開されている。 (引用: バーチャルSNS cluster

もちろん、参加するだけではなく、自作のアバターやワールドをアップロードしたり、イベントを主催することもできます。

最近では、「バーチャル渋谷」「バーチャルハマスタ」「ポケモンバーチャルフェスト」が話題になりました。

アンドエンジニアが今回取材したのは、そんな「cluster」を運営しているクラスター株式会社の代表取締役の加藤さん

バーチャルイベントの一大プラットフォームとしての「cluster」の表舞台と舞台裏を、加藤さんに直撃しました。

クラスター 加藤直人 : クラスター株式会社の代表取締役。京都大学理学部で、宇宙論と量子コンピュータを研究。同大学院を中退後、約3年間のひきこもり生活を過ごす。2015年にVR技術を駆使したスタートアップ「クラスター」を起業。2017年、大規模バーチャルイベントを開催することのできるVRプラットフォーム「cluster」を公開。現在では、イベントだけでなくオンラインゲームを投稿して遊ぶこともできるバーチャルSNSへと進化している。経済誌『ForbesJAPAN』の「世界を変える30歳未満30人の日本人」に選出。

バーチャルイベントはリアルイベントよりも距離が近い!?

R.D.Sakamoto
冒頭から不躾な質問で恐縮なんですけど、こんなご時世でありながら、「cluster」、ぶっちゃけ大盛況ですよね?
クラスター 加藤さん

ですね。 本当にありがたい限りです。
「cluster」の登録者数もかなり増えました。

R.D.Sakamoto

やっぱりそうなんですね!
私自身、「cluster」で8月10日から複数日開催された「ソードアート・オンライン アリシゼーション WoU - Virtual Meeting」に、参加してみたんですよ。
演者さんが客席側に紛れ込んでいたり、ワールドが作中の舞台まんまだったりと、内容ももちろんなんですけど、このイベントの体験そのものがとても楽しかったです!

「SAO アリシゼーション WoU - Virtual Meeting -」人気シリーズのファンミーティングがclusterで開催された。楽しいイベントでした!またやってほしい! (引用: clusterイベントページ)
クラスター 加藤さん
ありがとうございます。
イベントを開催する側からすると、1000人の方に参加いただくだけでも大変なんですけど、このイベントには、数万人の方に、1か所に集まって、参加いただけたんですよ。
R.D.Sakamoto
バーチャルイベントなのにすごい!
ここまでいくと、もはやリアルイベントでは?
クラスター 加藤さん
いや。それは違いますね。
R.D.Sakamoto
(違った...。)
クラスター 加藤さん
バーチャルイベントなので、リアルイベントでできることをそのままやっても絶対面白くないんですよ。
だからこそ、バーチャルイベントじゃないとできないことをやっているんです。
色々あるんですけど、その最たる例として、先に紹介いただいたイベントでも、警備員、いなくなかったですか?

「SAO アリシゼーション WoU - Virtual Meeting - ラース・コンソール」先の「SAO アリシゼーション WoU - Virtual Meeting -」の会場にもなったワールド。画像の子は警備員じゃなくて、筆者の会社のバーチャル従業員ゴリ沼りうさん。 (アンドエンジニア編集部が「cluster」で撮影)

R.D.Sakamoto
確かに!特にライブとかのリアルイベントだと、演者さんの安全のために絶対いるはずなのに!
おかげで、バーチャルなのにめっちゃ距離が近かったです!
クラスター 加藤さん
そうですそうです。リアルだとどうしても難しいけど、バーチャルが故に、距離が近いという体験ができるんです。
もみくちゃになっても、手が触れる位置にいても、なんなら身体が重なる位置にいても大丈夫なんですよ!
「cluster」の運営をやって気づいたんですが、これは、本当にバーチャルイベントの大きなメリットだなと思います。

ボトルネックは膨大な数のアバターの描画。

R.D.Sakamoto

そういえば、先の「SAO アリシゼーション WoU - Virtual Meeting」に、私は手持ちのiPhoneXRから参加させていただいたんです。
スマートフォンからアクセスするVRコンテンツであるうえに、同時アクセス数も多いから、ラグが起きたり、途中で落ちたりするのかなと思っていたんですが、それが全然ない。
これってどうやって捌いているんですか?

クラスター 加藤さん
まず、リアルタイム通信については、弊社がオリジナルで作っているんですよ。
そのうえで、処理における一番最初のボトルネックとなるアバターの描画については、数十とか数百人で表示は切って、残りは他のユーザーからは身体が見えなくなる、ゴーストという形式にしています。
R.D.Sakamoto
確かに、10000人が参加するイベントで10000アバター表示されたら、スマートフォンなんて描画に耐えられなさそうですよね。
クラスター 加藤さん
そうなんですよ。プリミティブな四角形、サイコロみたいなオブジェクトを10000個描画するだけでも結構えげつないので。
R.D.Sakamoto
あれ?見えなくなるだけってことは、つまり、別のインスタンス立てて、同じイベントの違う部屋にアクセスさせているというわけではないんですか?
クラスター 加藤さん
いえ。裏でサーバーは分けているんですが、基本的には1か所に集まっていただいているんですよ。
だから、ユーザーにとっては、同じ空間にいるようには感じていただけると思います。
「バーチャル渋谷」渋谷区公認の第2の渋谷!渋谷のハロウィーンがここで開かれたら楽しそう!なんと周辺住人に迷惑もかからない! (アンドエンジニア編集部が「cluster」で撮影)
クラスター 加藤さん
ただ、この仕様は苦肉の策ではあるんですけどね...。
R.D.Sakamoto
え?同じ空間にいれるの、めちゃくちゃすごいと思ったのに...。
これが苦肉の策ってどういうことですか?
クラスター 加藤さん
今は、早く入室したらちゃんと身体が表示されて、遅く入室したら身体が表示されなくなる仕様なんですよ。
だから、「ゴースト状態になって身体が見えない。演者さんから認識してもらえないのは寂しい」という意見をいただくことが多くてですね。
R.D.Sakamoto
あぁ、なるほど。それは分かる気がします。
クラスター 加藤さん
理想は、全アバターを表示できることなんです。
難しくはあるんですけど、技術が発展していけばそのうちできるようにはなると思うので、チャレンジしたいと思っています。
R.D.Sakamoto
そうなったら、熱量が凄まじくなりそう!
一方で、いち参加者としては、他人のアバターが10000人分も描画されたら、邪魔だと思ってしまいそう。
クラスター 加藤さん
そういう観点もあるので、難しいところではありますよね。

バーチャルイベントの、舞台裏としての「cluster」。

R.D.Sakamoto
もっとエンジニアっぽい記事にしたいので、他にも、技術や機能の話、ありませんか?
クラスター 加藤さん
そうですね。文字通りの舞台の話になるんですけど、そもそも、バーチャルイベントを運営するためのシステムって、実は、世の中にあまり存在してないなと思っていてですね。
R.D.Sakamoto
でも、「FORTNITE」のなかではライブが行われたり、バーチャルイベントとは少し違う文脈かもしれませんが、「アイドルマスター ミリオンライブ! シアターデイズ」や「アイドルマスター シャイニーカラーズ」ではゲーム内で映像配信のイベントをやっていますよ。
「アイドルマスター ミリオンライブ! シアターデイズ」通称「ミリシタ」。アプリ内で出演声優による配信を観ることができるリズムゲーム。リズムゲーム? (引用: 公式サイト)
「アイドルマスターシャイニーカラーズ」通称「シャニマス」。ゲーミングプラットフォーム「enza」から、ゲームのプレイも配信の視聴もできるアイドル育成ゲーム。楽しい! (引用: 公式サイト)
R.D.Sakamoto
あとは、「VRChat」や「NeosVR」なんかでも、時折バーチャルイベントが開催されていますよね。
「Neos VR」VR空間内でアバターメイクしたり、プログラムを書くこともできるバーチャルSNS。VRChatとはまた違う楽しみがある世界。 (引用: 公式サイト)
クラスター 加藤さん
そうですよね。もちろん、こうした事例があることは承知しています。
ただ、イベント参加者が見えている以上に、イベント運営に求められる機能って、実は色々あるんですよ。
R.D.Sakamoto
ほうほう。例えばどんな機能がありますか?
クラスター 加藤さん
例えばですけど、こんな感じのプロカメラマンモードっていうのがあります。
これは、映画館のパブリックビューイングでも使えるようなプロっぽいカメラワークを、コントローラーを使って、リアルタイムに実現できるんです。
結果として、FPSが得意な社員がカメラマンを担当したりします。
「『cluster』のプロカメラマンモード」す、すごくぬるぬる動かせてる。詳細はリンク参照。 (引用: clusterヘルプセンター)
R.D.Sakamoto
めちゃくちゃかっこいい!
しかも、プロのカメラマンにわざわざお願いする必要もないんですね。
クラスター 加藤さん
そうなんです。それに、リアルイベントだと、カメラって数百万円とか数千万円かかったりするんですけど、それが980円の市販のコントローラーでも大丈夫なんです。
R.D.Sakamoto
銀行員が泣いて喜ぶレベルのコストカットだ!
クラスター 加藤さん
あとは、演出やサウンドをウェブの画面から操作できたり、イベント用にエモーションを追加したりもできますね。
逆に、アバターやエモーションを制限したり、参加者が舞台には上がれないように制限することもできます。
あとは、JASRACとNexToneとの包括契約を行っているので、音楽の権利については、利用者側での個別の契約や利用料の支払いが不要なんですよ。
R.D.Sakamoto
痒いところまで手が届きすぎてる...。
クラスター 加藤さん
こういうところは、イベントの運営者の方に、喜んでいただけていると思います。
なので、先程仰っていただいた通り、他のゲームなどのプラットフォームでも、もちろんバーチャルイベントを開催することはできるんですよ。
ただ、0から運営していくのは相当な手間と時間とコストがかかるんです。
だからこそ、「cluster」ではそういうところが吸収できるので、そこがひとつの強みだと思っています。

「cluster」はインターネットに熱狂感を乗せる

R.D.Sakamoto
突然ですけど、私、プロ野球では横浜DeNAベイスターズなんですよ。
だからですね、コロナウイルス禍でなかなか外出が億劫になってしまう今、「バーチャルハマスタ」のイベントには本当に感謝しているんです。
「【バーチャルハマスタ】横浜DeNAベイスターズ vs 阪神タイガース」野球観戦の新たな体験を提供したイベント!毎試合やってほしいぞ!\横浜優勝!/ (引用: clusterイベントページ)
クラスター 加藤さん
ありがとうございます!
でも正直、動作環境にもよるかと思いますが、テレビ中継を見てるほうが、きれいに動画みれるじゃんって思いませんでした?
R.D.Sakamoto
ソ、ソンナコトナイヨー...。
それに、なんか「動画で見ればいい」というのは、少し違うのかなって。
クラスター 加藤さん

そうなんですよ!スポーツ観戦や音楽ライブのイベントで、わざわざ現地に行くのは、ただの情報としてイベントを観るためじゃなくて、 そのイベントを体験して、熱狂感を感じるためだと思うんですよね。
だからこそ、ああいう形で、「バーチャルハマスタ」をやらせていただきました。

R.D.Sakamoto
確かに思い当たりますね。体験として、とても楽しかったです!
クラスター 加藤さん
私が結構思っていることとして、今までのインターネットって本当にITだったと思うんですよ。
文字通りのインフォメーション・テクノロジーで、事象を情報として伝達するために、デジタル化、すなわち、抽象化が必要な技術だったんです。
SNSでのコミュニケーションなんかは、その最たる例じゃないでしょうか。
高偏差値の会話、完全に理解した (アンドエンジニア編集部作成)
R.D.Sakamoto
(会話の偏差値がめちゃくちゃあがってる...。)
クラスター 加藤さん
その抽象化のなかで、無駄な部分として削ぎ落とされる情報のひとつが、熱狂感なんですよね。
だからこそ、「cluster」では、これまで削ぎ落とされてきた無駄な部分を、インターネットに乗せることにトライしています。
R.D.Sakamoto
なるほど。そういえば、「cluster」にはサイリウムを振れる機能もありましたね。
オタクとして、この機能が大好きなんですけど、今思うと、この機能も熱狂感とかライブ感を生み出してくれるなと。

「『SAO アリシゼーション WoU - Virtual Meeting - 展示ワールド』でサイリウムを振る」サイリウムを振って応援すると楽しい!負けないでキリトくん!!! (引用: ワールドのページ)

クラスター 加藤さん
ありがとうございます。
リアルな音楽イベントでもサイリウムは欠かせないので、やっぱり、サイリウムは絶対欲しいという思いがあって、実装に至りましたね。
R.D.Sakamoto
そうだったんですね。
そもそも、こうした熱狂感についての気づきを得るに至った、何かきっかけみたいなものってあるんでしょうか?
クラスター 加藤さん
そうですね。今でこそ、コロナウイルス禍で多くの人が引きこもって、人に会えない辛さとか、イベントのありがたみみたいなものが、見えるようになってきたと思うんですよ。
でも、私はそれとは別に引きこもっていた時期があって、その時期にこういう集まってる感じとか熱量とか熱狂感みたいなものって、インターネットには乗っかっていないんだなって気づきました。
クラスター 加藤さん
こうした、「まだインターネットに乗っていない体験をインターネットに載っけよう」というのは、「cluster」の基本思想なんです。
この体験というのが、先にもお話した、人と人とが集まっている感じとかなんですよね。
だから、「cluster」は「※cluster」っていう名前なんです

※ cluster … 「集まる」や「集団」を意味する英単語

R.D.Sakamoto
おお。すごく合点がいきました!
今はまだバーチャルイベント参加者でしかないですが、いずれは熱狂感を生み出す側にもまわってみたくなりました。
その際には、何卒よろしくお願いします!
「『cluster』新キービジュアル」オフィシャルアバターが追加され、世界観が鮮やかに描かれている。詳細はリンクを参照。 (引用: clusterのnone)
R.D.Sakamoto
エストニアのソフトウェア開発法人OmusBridge OÜの代表取締役。日本ではフリーランスのパラレルワーカーとして、エンジニア・ICT講師・ライター業等に従事。SAP ERPコンサルタントのキャリアを経て、マネジメントやコーダーも担うWebフロントエンドエンジニアに転身した。よく使うフレームワークはVue系。NoCodeとA-Frameとp5.jsに興味有。馬肉の好きな部位はフタエゴ。
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