
ゼロ円からはじめる異世界生活!?住人に聞く「VRChat」世界の歩き方
世界最大級のソーシャルVRプラットフォーム「VRChat」。
実は「VRChat」内部では、新しい形の経済圏も形成されているとか…!?

とはいえ、門外漢にはまだまだハードルが高く思えるのも事実。
今回アンドエンジニアでは、「VRChatのはじめかた」について、「VRChat」ユーザーであり、自身のショップ「奈良阪配本地」で3Dモデルや、アバターの開発ツールの開発・販売もしている奈良阪さんに、「VRChat」のバーチャル空間でインタビューを行いました!

「VRChat」は「VRゲーム」じゃなくて「VR SNS」!

このインタビューをするために、私も「VRChat」を始めてみました! でも、「VRChat」って目的とかやるべきことがさっぱり分かんないんですよね。 「VRChat」って一体どういう「VRゲーム」なんですか?

そもそもなんですけど、個人的には「VRChat」を「VRゲーム」ってカテゴライズすること自体、しっくりこないんですよね。 個人的には、「VRChat」は「VR SNS」のようなものだと思っています。


完全に「VRゲーム」だと思ってました。 「VR SNS」というと、FacebookとかTwitterのVR版みたいなイメージですか? (※ 編集注: Twitterは厳密にはSNSではなくMicro Blogに該当する)

そうですね。特にTwitterはイメージが近いと思っています。 個人的に言い得て妙だなと思ったのは、「VRChatは大学のサークルで意味もなくだべっている感じ」という表現ですかね。 「VRChat」というバーチャル空間で、モラトリアム時代のあの感じが続いているみたいな。

なんとなく分かるかもしれません。

よく分からないギミックを作ったり教え合ったり遊んだりして、それが終わったら深夜に寝るみたいな生活ですよね。 その繰り返しなんですけど、それが楽しいんですよ。

でもそういうことってZoomやTeams、Discordを使ったWebチャットでもできると思うんですけど、それらと比べてどうなんですか?

同じバーチャル空間にいるからだと思うんですけど、「VRChat」の方が、より「人に会ってる感」がありますね。

最初のアバター作りはアジャイルで小さく作る!

奈良阪さんは、どのくらいの間「VRChat」をやられているんです?

だいたい2年くらいですかね。 逆に、それまではVRの経験は無かったんですよ。 仕事はサーバーサイド寄りのエンジニアで、VRエンジニアというわけでもないですし…。

では、今使われている美少女アバターとかは、独学で作れるようになったんですか? 「Unity」(Unity Technologies社が開発したゲームエンジン)をゼロから独学で勉強するの、辛くなかったですか?


自分は、「VRChat」のアバター作成には「Blender」(オープンソースの3DCGソフト)と「Unity」を使っているんですよ。 「Blender」で3Dモデリングを行い、「Unity」で設定と「VRChat」へのアップロードを行う感じですね。


幸い、「Unity」と「C#(Unityで使用する)」は過去に経験があったので、そこに抵抗はなかったんですよね。 あと、イラストを書いていた経験も役に立ちました。

確かに、そういった経験はアドバンテージになりそうですね。 「Blender」についてはどうでしたか?

「Blender」は使ったことがありませんでした。 なので、最初のアバターは「かんたんBlender講座」というWebページを参照しながら作りましたね。


この「かんたんBlender講座」が非常に分かりやすく、且つ、その内容が、最初の目的としていた「ローポリ(ポリゴン数、頂点数が少ない3Dモデル)でデフォルメで小さくてかわいいアバター作り」にマッチしていたんです。 おかげで、余計なハマりや試行錯誤なく、だいたい1週間で完成させることができました。

凄いですね。 自分だったら1ヶ月はかかりそう。

いや、多分このくらいだったら、意外と作れると思いますよ。 最初に作ったアバターは、このアバターの原型になるんですけど、原型時点では、表情もなく、靴下とかメガネといった小物もつけていないシンプルなものでしたし。 初めからハイクオリティなものを作ろうとしないのがポイントだと思います。


最初の目的を高くして頑張りすぎちゃうと辛くなりそうですよね。

そうですね。 なので、こういった3Dモデルも、アジャイルでちょくちょく作っていくのが良いんじゃないでしょうか。

え?アジャイル開発ですか?

なんなら、Gitリポジトリにして管理するのもアリですね! Blenderのファイルはバイナリ化されちゃいますが、Unityプロジェクトは差分確認できますし。


アジャイル開発にGitを導入するとなると、本当にプロダクト開発みたいですね。 これを機に「VRChat」のアバター作りをこれからはじめる人に向けて、おすすめできる資料ってなにかあったりしませんか?

「ワニでもできる!モデリングforVRChat」は良い動画ではないでしょうか。 この動画を参考にして作っている人が結構いるようで、個人的には「VRChat」に適したノウハウが反映されているところが良いと思っています。
ゼロ円からはじめられる異世界生活

そもそもなんですけど、「VRChat」ってハードルってとても高くないですか? 環境構築の手間もなんですけど、はじめるまでの金銭的なハードルが高いイメージです。

そうですね。 「VRChat」が満足に動く程度のパソコンや、VRを楽しむ場合にはヘッドマウントディスプレイが必要になりますしね。 でも、持っているパソコンがWindowsであれば、ヘッドマウントディスプレイが無くても「Steam(有名なゲーミングプラットフォーム)」と「VRChat」をインストールするだけで、「VRChat」をすぐにでもゼロ円で楽しむこともできるんですよ! アバターも、「VRChat」内や「BOOTH」で、ゼロ円から配布されているものもありますし。


そう言われると、確かにそこまでハードルが高くない気がしてきました。 ちなみになんですけど、奈良阪さんはこれまでおいくらくらい「VRChat」に使っているのかお聞きしてもいいですか?

だいたい30万円くらいですかね。

めっちゃ高い!

ヘッドマウントディスプレイは、1つ5万円くらいのものをなんだかんだ買い換えたり買い足したりして 15万円くらい。 グラフィックボードも2回買い替えて、 6万円くらいしました。 あとはアバターですかね。 自作アバターはもちろんゼロ円なんですけど、「BOOTH」で売っているものを30体ほど購入して、だいたい10万円弱使っていました。 他には、Unity AssetStore(「Unity」で使用できるアセットを販売するストア)でも少々…。


まあ、のめり込むとそれくらいは出してもいいかなと思っちゃいますね。 ただ実際には、これから「VRChat」はじめようといちから新品を揃える人でも、15万円程度あれば問題なくVRを始められると思っています。 また、ヘッドマウントディスプレイはお手頃な値段でレンタルさせてくれるサービスもあるので、そういったサービスを使ってみて試してみるのも良いんじゃないでしょうか。 上を見れば「パソコン30万円、ヘッドマウントディスプレイ10万円、VR用全身スーツ10万円で、ハードだけで50万円!」みたいな人もいるのですが、それはもう青天井になるだけなので...。

確かに上を見たらキリがないですもんね。 それに、ゼロ円からでも十分楽しめるわけですし。

そのとおりです!
辛いところは「Unity」と「人間関係」のアップデート!?

逆に、「VRChatで辛かったこと」ってなにかありますか?

現在の「VRChat」って正式版ではなくて、アーリーアクセス版の位置づけなんですよ。 だからなのか、「Unity」のアップデートに対応しなきゃいけないっていう課題が降りかかってくるんですよね。 丹精込めて作って、これまでは問題なく動かせていたアバターやワールドが、アップデートのせいで壊れて動かなくなることがあるんですよ。


エンジニアをやってる以上、一度は聞いたことあるような話ですね。 確かにこれは辛そう…。

あとは、人間関係に起因した辛さもよく聞きます…。

あれ?現実世界の話ですか?

いや、「VRChat」の話ですよ。 「VRChat」にも人間がいて、そこに社会が形成されて、人間関係があって、また交友関係もあるわけです。


まあそうですよね。 そういった点は現実世界と大差ないのかもしれません。

その果てには、「VRChat」内で、恋人のような関係になる「パートナー」を作る人々がいるんですよね。 VRChat用語では、パートナーが出来たことを報告することを「お砂糖報告(砂糖=甘い関係から生まれたスラング)」と言ったり、一方で、仲違いして破局したことを「お塩報告」と言うのですが、そういった人間関係のアレコレが、いろいろと大変らしいですよ。 「お砂糖報告」なんかはTwitterで検索すると、たくさん出てくるかと。

うわ。いっぱい出てきた。 ツイート見るだけで口の中が甘い。


「VRChat」には酸いも甘いもあるんですね…。 それにしても、本当にいろいろな楽しみ方をしてる人がいますね。

そこがとても面白い世界だと思っています。 「VRChat」でいろいろな人が、さまざまなロールや楽しみ方を見つけて、バーチャル空間で生活しているのがいいなと。 自分は基本女声っぽいボイチェンしつつ一般人やってますけど、地声イケボで獣耳少女になって人を魅了していたり、サイボーグになって無言で佇む人もいます。 コミュニティ内でテーマを決めてお店を運営してる人たちもいますし、VRChat内外で商売している人もいますね。 楽しみ方も千差万別で、他愛のない会話を楽しんだり、美しい風景を楽しんだり、VRChat内に作られたゲームで遊んだり、自分でコンテンツを作ってみたり…。 話すときりがないですが本当に多様な楽しみ方があるんですよ。

「VRChat」は進化する!VR表現のプラットフォームとしての「VRChat」

事例の中で、VRChat内外で商売とおっしゃいましたが、商売ってどういう事例があるんですか?

例えば、「VRChat」のバーチャル空間上で、セラピーをやったりする人や、占いをしている人がいますね。 また、「BOOTH」ではアバターだけじゃなくて、装飾品やアイテムとかワールドを売っている人もいます。 自分もなんですけど、「Unity」で使うエディタツールを販売している人もいますね。

今後、このような「VRChat」の経済圏はどうなっていくと思いますか?

そうですね。 比較的近い将来の話だと、「VRChat」は「VRゲーム」のプラットフォームとしての性格も持つようになってくると考えています。


どういうことですか?

今年の4月2日(木)に、「VRChat」の「Unity」のバージョンが2017から2018へと更新され、あわせて機能が大幅にアップデートされました。 この更新により、ワールドのギミックを、C#に近い形で、任意に書けるようになったんです。 つまり、ゲームやその他複雑なシステムを「VRChat」上に実装しやすくなったわけですね。

逆に、これまではそういうことはできなかったんですか?

いえ、これまでもボードゲームやルールの簡単なスポーツみたいなゲームはできていたんですよ。 ただ、これまでのものは、機能制限があるなかで、用途外のコンポーネントまで引っ張り出して無理矢理組み合わせて実装していたんです。 だから、実装コストが高く、また壊れやすかったんですね。 今後は、それが普通にプログラムを書くことで実装できるようになるので、より複雑なものも簡単に安定して実装できるようになると期待しています。


「VRChat」には、これまでも、アバターやワールドといったVRで作成した表現を発表するプラットフォームとしての性格があったのですが、このアップデートで表現の幅が広がってきた感じです。

これは将来的な動きが楽しみですね。 奈良阪さんは、これからも「VRChat」を続けられるんですか?

今のところ、辞める予定はないですね。 もちろん、まだ「VRChat」はあくまでもアーリーアクセス版なので、「VRChat」の方が存続していればですが。
新型コロナ禍の影響もあり、じわじわとユーザが増えつつある「VRChat」。
まだやったことがないという方も、これを機に、日本向けチュートリアル用のワールド「[JP] Tutorial world」から、異世界生活を始めてみてはいかがでしょうか?

~編集追記~ 筆者が今回のインタビューでVRChatを始める際に試行錯誤した情報をまとめてみました。 Windows機がない…という方はぜひ参考にしてください。

ライター

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