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ゼロ円からはじめる異世界生活!?住人に聞く「VRChat」世界の歩き方
R.D.Sakamoto
2020.06.13
この記事でわかること
「VRChat」は、酸いも甘いもある、ゼロ円から楽しめる「VR SNS」
「VRChat」の最初のアバターは、Gitを使ったアジャイル開発で作ってみよう!
今年4月の大型アップデートで、「VRChat」で作れるものの幅が更に広がった

世界最大級のソーシャルVRプラットフォーム「VRChat」

実は「VRChat」内部では、新しい形の経済圏も形成されているとか…!?

バーチャル空間最大級のマーケットフェスティバル「バーチャルマーケット4」でも利用された「VRChat」 (引用: VRChat)

とはいえ、門外漢にはまだまだハードルが高く思えるのも事実。

今回アンドエンジニアでは、「VRChatのはじめかた」について、「VRChat」ユーザーであり、自身のショップ「奈良阪配本地」で3Dモデルや、アバターの開発ツールの開発・販売もしている奈良阪さんに、「VRChat」のバーチャル空間でインタビューを行いました!

奈良阪配本地 - BOOTH

「VRChat」は「VRゲーム」じゃなくて「VR SNS」!

R.D.Sakamoto(VRのすがた)
このインタビューをするために、私も「VRChat」を始めてみました!
でも、「VRChat」って目的とかやるべきことがさっぱり分かんないんですよね。
「VRChat」って一体どういう「VRゲーム」なんですか?
奈良阪さん
そもそもなんですけど、個人的には「VRChat」を「VRゲーム」ってカテゴライズすること自体、しっくりこないんですよね。
個人的には、「VRChat」は「VR SNS」のようなものだと思っています。
「VRChat」のバーチャル空間でインタビューに答える奈良阪さん。
R.D.Sakamoto(VRのすがた)
完全に「VRゲーム」だと思ってました。
「VR SNS」というと、FacebookとかTwitterのVR版みたいなイメージですか?
(※ 編集注: Twitterは厳密にはSNSではなくMicro Blogに該当する)
奈良阪さん
そうですね。特にTwitterはイメージが近いと思っています。
個人的に言い得て妙だなと思ったのは、「VRChatは大学のサークルで意味もなくだべっている感じ」という表現ですかね。
「VRChat」というバーチャル空間で、モラトリアム時代のあの感じが続いているみたいな。
R.D.Sakamoto(VRのすがた)
なんとなく分かるかもしれません。
奈良阪さん
よく分からないギミックを作ったり教え合ったり遊んだりして、それが終わったら深夜に寝るみたいな生活ですよね。
その繰り返しなんですけど、それが楽しいんですよ。
R.D.Sakamoto(VRのすがた)
でもそういうことってZoomやTeams、Discordを使ったWebチャットでもできると思うんですけど、それらと比べてどうなんですか?
奈良阪さん
同じバーチャル空間にいるからだと思うんですけど、「VRChat」の方が、より「人に会ってる感」がありますね。
豊かな表情とモーションで語る奈良阪さん。

最初のアバター作りはアジャイルで小さく作る!

R.D.Sakamoto(VRのすがた)
奈良阪さんは、どのくらいの間「VRChat」をやられているんです?
奈良阪さん
だいたい2年くらいですかね。
逆に、それまではVRの経験は無かったんですよ。
仕事はサーバーサイド寄りのエンジニアで、VRエンジニアというわけでもないですし…。
R.D.Sakamoto(VRのすがた)
では、今使われている美少女アバターとかは、独学で作れるようになったんですか?
「Unity」(Unity Technologies社が開発したゲームエンジン)をゼロから独学で勉強するの、辛くなかったですか?
「Unity」Unity Technologies社が開発したゲームエンジン (引用: Unity)
奈良阪さん
自分は、「VRChat」のアバター作成には「Blender」(オープンソースの3DCGソフト)と「Unity」を使っているんですよ。
「Blender」で3Dモデリングを行い、「Unity」で設定と「VRChat」へのアップロードを行う感じですね。
「Blender」オープンソースの3DCGソフト (引用: Blender)
奈良阪さん
幸い、「Unity」と「C#(Unityで使用する)」は過去に経験があったので、そこに抵抗はなかったんですよね。
あと、イラストを書いていた経験も役に立ちました。
R.D.Sakamoto(VRのすがた)
確かに、そういった経験はアドバンテージになりそうですね。
「Blender」についてはどうでしたか?
奈良阪さん
「Blender」は使ったことがありませんでした。
なので、最初のアバターは「かんたんBlender講座」というWebページを参照しながら作りましたね。
「かんたんBlender講座」高知工科大学で開講される「コンピュータグラフィックス」の演習課題向けに作られたWebページ (引用: かんたんBlender講座)
奈良阪さん
この「かんたんBlender講座」が非常に分かりやすく、且つ、その内容が、最初の目的としていた「ローポリ(ポリゴン数、頂点数が少ない3Dモデル)でデフォルメで小さくてかわいいアバター作り」にマッチしていたんです。
おかげで、余計なハマりや試行錯誤なく、だいたい1週間で完成させることができました。
R.D.Sakamoto(VRのすがた)
凄いですね。
自分だったら1ヶ月はかかりそう。
奈良阪さん
いや、多分このくらいだったら、意外と作れると思いますよ。
最初に作ったアバターは、このアバターの原型になるんですけど、原型時点では、表情もなく、靴下とかメガネといった小物もつけていないシンプルなものでしたし。
初めからハイクオリティなものを作ろうとしないのがポイントだと思います。
最初に作った原型をアップデートしていった現在のアバター。ローポリだが表情も小物も充実している。
R.D.Sakamoto(VRのすがた)
最初の目的を高くして頑張りすぎちゃうと辛くなりそうですよね。
奈良阪さん
そうですね。
なので、こういった3Dモデルも、アジャイルでちょくちょく作っていくのが良いんじゃないでしょうか。
R.D.Sakamoto(VRのすがた)
え?アジャイル開発ですか?
奈良阪さん
なんなら、Gitリポジトリにして管理するのもアリですね!
Blenderのファイルはバイナリ化されちゃいますが、Unityプロジェクトは差分確認できますし
アバターの開発手法について語る奈良阪さん。
R.D.Sakamoto(VRのすがた)
アジャイル開発にGitを導入するとなると、本当にプロダクト開発みたいですね。
これを機に「VRChat」のアバター作りをこれからはじめる人に向けて、おすすめできる資料ってなにかあったりしませんか?
奈良阪さん
「ワニでもできる!モデリングforVRChat」は良い動画ではないでしょうか。
この動画を参考にして作っている人が結構いるようで、個人的には「VRChat」に適したノウハウが反映されているところが良いと思っています。

ゼロ円からはじめられる異世界生活

R.D.Sakamoto(VRのすがた)
そもそもなんですけど、「VRChat」ってハードルってとても高くないですか?
環境構築の手間もなんですけど、はじめるまでの金銭的なハードルが高いイメージです。
奈良阪さん
そうですね。
「VRChat」が満足に動く程度のパソコンや、VRを楽しむ場合にはヘッドマウントディスプレイが必要になりますしね。
でも、持っているパソコンがWindowsであれば、ヘッドマウントディスプレイが無くても「Steam(有名なゲーミングプラットフォーム)」「VRChat」をインストールするだけで、「VRChat」をすぐにでもゼロ円で楽しむこともできるんですよ!
アバターも、「VRChat」内や「BOOTH」で、ゼロ円から配布されているものもありますし。
「Steam」Valve Corporation社が開発・運営するゲーミングプラットフォーム (引用: Steam)
R.D.Sakamoto(VRのすがた)
そう言われると、確かにそこまでハードルが高くない気がしてきました。
ちなみになんですけど、奈良阪さんはこれまでおいくらくらい「VRChat」に使っているのかお聞きしてもいいですか?
奈良阪さん
だいたい30万円くらいですかね。
R.D.Sakamoto(VRのすがた)
めっちゃ高い!
奈良阪さん

ヘッドマウントディスプレイは、1つ5万円くらいのものをなんだかんだ買い換えたり買い足したりして 15万円くらい。
グラフィックボードも2回買い替えて、 6万円くらいしました。
あとはアバターですかね。
自作アバターはもちろんゼロ円なんですけど、「BOOTH」で売っているものを30体ほど購入して、だいたい10万円弱使っていました。
他には、Unity AssetStore(「Unity」で使用できるアセットを販売するストア)でも少々…。

装い新たにインタビューに答える奈良阪さん。可愛く言っても30万円は安くないんだぞ。
奈良阪さん
まあ、のめり込むとそれくらいは出してもいいかなと思っちゃいますね。
ただ実際には、これから「VRChat」はじめようといちから新品を揃える人でも、15万円程度あれば問題なくVRを始められると思っています。 
また、ヘッドマウントディスプレイはお手頃な値段でレンタルさせてくれるサービスもあるので、そういったサービスを使ってみて試してみるのも良いんじゃないでしょうか。
上を見れば「パソコン30万円、ヘッドマウントディスプレイ10万円、VR用全身スーツ10万円で、ハードだけで50万円!」みたいな人もいるのですが、それはもう青天井になるだけなので...。
R.D.Sakamoto(VRのすがた)
確かに上を見たらキリがないですもんね。
それに、ゼロ円からでも十分楽しめるわけですし。
奈良阪さん
そのとおりです!

辛いところは「Unity」と「人間関係」のアップデート!?

R.D.Sakamoto(VRのすがた)
逆に、「VRChatで辛かったこと」ってなにかありますか?
奈良阪さん
現在の「VRChat」って正式版ではなくて、アーリーアクセス版の位置づけなんですよ。
だからなのか、「Unity」のアップデートに対応しなきゃいけないっていう課題が降りかかってくるんですよね。
丹精込めて作って、これまでは問題なく動かせていたアバターやワールドが、アップデートのせいで壊れて動かなくなることがあるんですよ。
表情から辛さを訴える奈良阪さん。
R.D.Sakamoto(VRのすがた)
エンジニアをやってる以上、一度は聞いたことあるような話ですね。
確かにこれは辛そう…。
奈良阪さん
あとは、人間関係に起因した辛さもよく聞きます…。
R.D.Sakamoto(VRのすがた)
あれ?現実世界の話ですか?
奈良阪さん
いや、「VRChat」の話ですよ。
「VRChat」にも人間がいて、そこに社会が形成されて、人間関係があって、また交友関係もあるわけです。
自然豊かなワールドでインタビューに答える奈良阪さん。
R.D.Sakamoto(VRのすがた)
まあそうですよね。
そういった点は現実世界と大差ないのかもしれません。
奈良阪さん
その果てには、「VRChat」内で、恋人のような関係になる「パートナー」を作る人々がいるんですよね。
VRChat用語では、パートナーが出来たことを報告することを「お砂糖報告(砂糖=甘い関係から生まれたスラング)」と言ったり、一方で、仲違いして破局したことを「お塩報告」と言うのですが、そういった人間関係のアレコレが、いろいろと大変らしいですよ。
「お砂糖報告」なんかはTwitterで検索すると、たくさん出てくるかと。
R.D.Sakamoto(VRのすがた)
うわ。いっぱい出てきた。
ツイート見るだけで口の中が甘い。
Twitterに広がる「お砂糖報告」の一例(※ 編集注: 個人情報保護のため、画像にマスキングをしています)
R.D.Sakamoto(VRのすがた)
「VRChat」には酸いも甘いもあるんですね…。
それにしても、本当にいろいろな楽しみ方をしてる人がいますね。
奈良阪さん
そこがとても面白い世界だと思っています。
「VRChat」でいろいろな人が、さまざまなロールや楽しみ方を見つけて、バーチャル空間で生活しているのがいいなと。
自分は基本女声っぽいボイチェンしつつ一般人やってますけど、地声イケボで獣耳少女になって人を魅了していたり、サイボーグになって無言で佇む人もいます。
コミュニティ内でテーマを決めてお店を運営してる人たちもいますし、VRChat内外で商売している人もいますね。
楽しみ方も千差万別で、他愛のない会話を楽しんだり、美しい風景を楽しんだり、VRChat内に作られたゲームで遊んだり、自分でコンテンツを作ってみたり…。
話すときりがないですが本当に多様な楽しみ方があるんですよ。
美少女をやめてサイボーグになってしまった奈良阪さん...。

「VRChat」は進化する!VR表現のプラットフォームとしての「VRChat」

R.D.Sakamoto(VRのすがた)
事例の中で、VRChat内外で商売とおっしゃいましたが、商売ってどういう事例があるんですか?
奈良阪さん
例えば、「VRChat」のバーチャル空間上で、セラピーをやったりする人や、占いをしている人がいますね。
また、「BOOTH」ではアバターだけじゃなくて、装飾品やアイテムとかワールドを売っている人もいます。
自分もなんですけど、「Unity」で使うエディタツールを販売している人もいますね。
R.D.Sakamoto(VRのすがた)
今後、このような「VRChat」の経済圏はどうなっていくと思いますか?
奈良阪さん
そうですね。
比較的近い将来の話だと、「VRChat」は「VRゲーム」のプラットフォームとしての性格も持つようになってくると考えています。
電車を運転できる自作のワールドでインタビューに答える奈良阪さん。
R.D.Sakamoto(VRのすがた)
どういうことですか?
奈良阪さん
今年の4月2日(木)に、「VRChat」の「Unity」のバージョンが2017から2018へと更新され、あわせて機能が大幅にアップデートされました。
この更新により、ワールドのギミックを、C#に近い形で、任意に書けるようになったんです。
つまり、ゲームやその他複雑なシステムを「VRChat」上に実装しやすくなったわけですね。
R.D.Sakamoto(VRのすがた)
逆に、これまではそういうことはできなかったんですか?
奈良阪さん
いえ、これまでもボードゲームやルールの簡単なスポーツみたいなゲームはできていたんですよ。
ただ、これまでのものは、機能制限があるなかで、用途外のコンポーネントまで引っ張り出して無理矢理組み合わせて実装していたんです。
だから、実装コストが高く、また壊れやすかったんですね。
今後は、それが普通にプログラムを書くことで実装できるようになるので、より複雑なものも簡単に安定して実装できるようになると期待しています。
自作ワールドを紹介する奈良阪さん。
奈良阪さん
「VRChat」には、これまでも、アバターやワールドといったVRで作成した表現を発表するプラットフォームとしての性格があったのですが、このアップデートで表現の幅が広がってきた感じです。
R.D.Sakamoto(VRのすがた)
これは将来的な動きが楽しみですね。
奈良阪さんは、これからも「VRChat」を続けられるんですか?
奈良阪さん
今のところ、辞める予定はないですね。
もちろん、まだ「VRChat」はあくまでもアーリーアクセス版なので、「VRChat」の方が存続していればですが。

新型コロナ禍の影響もあり、じわじわとユーザが増えつつある「VRChat」。

まだやったことがないという方も、これを機に、日本向けチュートリアル用のワールド「[JP] Tutorial world」から、異世界生活を始めてみてはいかがでしょうか?

「[JP] Tutorial world」奈良阪さんが「VRChat」初心者におすすめする「VRChat」のワールド (引用: VRChat)

~編集追記~
筆者が今回のインタビューでVRChatを始める際に試行錯誤した情報をまとめてみました。
Windows機がない…という方はぜひ参考にしてください。

Windows機じゃなくてもVRChatをはじめる方法、試行錯誤してまとめてみた|R.D.Sakamoto|note
R.D.Sakamoto
エストニアのソフトウェア開発法人OmusBridge OÜの代表取締役。日本ではフリーランスのパラレルワーカーとして、エンジニア・ICT講師・ライター業等に従事。SAP ERPコンサルタントのキャリアを経て、マネジメントやコーダーも担うWebフロントエンドエンジニアに転身した。よく使うフレームワークはVue系。NoCodeとA-Frameとp5.jsに興味有。馬肉の好きな部位はフタエゴ。
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