2023年「AWS Ambassadors」、「Japan AWS Jr. Champions」に選出された4名にお話を伺うため、日立製作所にお邪魔した編集部。
前編では、「AWS Ambassadors」と「Japan AWS Jr. Champions」に選出された感想や、優れたAWSエンジニアになるための秘訣についてお話を伺いました。
後編では、AWSが気になっているけれど詳しくは知らない、IT業界のビジネスーパーソンに向けて、4名それぞれの視点からAWSの基礎知識や魅力について語っていただきました。
AWSをビジネスに活かせるシーンや、今注目しているAWSのサービス初心者におすすめのイベントまで、エンジニアでなくても役に立つお話が盛りだくさんです!
▼前編はこちら
これだけは知りたい!AWSの基礎知識
今更ですが、そもそもAWSはこれまでのクラウドサービスと何が違うのでしょうか?
それを語るにはまず、前提を整理しましょう。クラウドサービスとは、インターネット上のプラットフォームでデータベースやストレージ、アプリケーション、人工知能などの多様なITサービスをインターネット越しに利用できるものですね。
はい、代表的なクラウドサービスには、他にもMicrosoft AzureやGoogle Cloudなどがあります。
そうです。クラウドサービスをレゴブロックのように組合せて様々なサービスを作る事ができますが、AWSはこのレゴブロックが使いやすいんです。クラウドサービスを使わないシステム構築、この対極にあるのがオンプレミスです。
非エンジニアの読者のために解説していただけますか?
オンプレミスとは、ソフトウエアやハードウエアなど、システムを運用するために必要なインフラを企業が物理的に用意し、運用する形態を意味します。
クラウドサービスを利用すれば、大掛かりな設備を持たなくても、大規模なシステムを運用できるということですね。
240以上から選べる豊富なサービスが魅力
AWSはご存じの通り、Amazonによって提供されています。Amazonはこれまで、通販サービスとして膨大なデータを処理するため、巨大なサーバーを運用してきました。その運用技術を応用したのがAWSです。
2006年に米国でサービス提供を開始して、2011年に日本に進出、2019年には中東、バーレーンにデータセンターができるなど、粛々と世界進出を進めていますね。
クラウドサービスは他にも存在しますが、AWSはなぜ人気なのでしょうか?
AWSの一番の強みは何と言っても、240種類以上もの豊富なサービスが常にアップデートされていることです。単純にITリソースを貸し出すだけではなく、例えばデータベースサービスの中にはインフラの構築やメンテナンスを意識しなくて良いようなサービスもあります。ユーザーにとっては、使用するサービスの選択の幅が広がるという嬉しさがあるんです。
日立製作所では、AWSと他のクラウドをどのように使い分けていらっしゃいますか。
こちらの判断で使い分けるというよりは、お客様の好みで選ぶことの方が多いですね。AWSに限らず、Microsoft Azureだったり、Google Cloudだったり、お客様ごとに、慣れ親しんだクラウドベンダーがいますから、われわれは常に選択肢を持っておくことを意識しています。
もちろん、お客様のやりたいことに対して、「AWSのこのサービスが使えます」と提案することもあります。そういう意味では、サービスが豊富なAWSを使えるということ自体が選択肢を広げますよね。
ビジネスパーソンは、AWSから何を学べる?
日本企業がAWSに学ぶべきサービス開発のメソッド
AWSはなぜ、これほどの数のサービスを展開し、常に進化させ続けることができるのでしょうか?
もちろん技術力もありますが、一番大きいのは、企業文化ではないでしょうか。Amazonは、昔ながらの日本企業とは真逆の方法でサービスを作っているんです。
面白そうですね。詳しく教えていただけますか?
この業界では通常、新サービスをリリースしようとなったときに、まずは市場調査を行い、上に通すための企画書を作ります。さらに、現在の技術でそれが可能かどうかということを検証してから、スケジュールや予算を計算して、上層部のOKが出たら実際に開発を始めるんです。
イメージできます。
ところが、AWSの場合は真逆です。プレスリリースの形式で、社内に「こんなものを作ります」ということを宣言してから開発を始めるんですよ。
なるほど。小売業からITに参入してきたAmazonだからこそ、業界の常識を超えたサービスの構築が可能なんですね。
IT業界が他業種から学べるものを大切に
私たちのように長い間IT業界にいる人間は、この業界に参入してくる企業をビジネス視点で観察することで、常に新しい発想のヒントを得るんです。
技術以外の情報収集も大切なんですね。
実は、弊社でも2010年から、国産クラウドサービスを開始しています。Amazonをクラウドベンダーの「ライバル」と見るか、他業界のノウハウをITで活かして業界に風穴を開ける「先生」として見るか。この違いが、自社の成長を分けるんじゃないかなと思います。
三木さんご自身は、他業界からIT業界に進出してきた企業から学びを得る際、どこに着目するのでしょうか?
その企業の創業者やCEOの考え方やビジョンを見ていることが多いですね。Amazonの場合は、創業者で元CEOのジェフ・ベゾスがクラウドサービスの成功を経て、次に何に投資するのか、どんな技術に力を入れるのかというところに着目しています。
AmazonのCEOを退任した後は、宇宙ベンチャー「ブルーオリジン」を立ち上げて注目を集めましたね。
「ブルーオリジン」では人工衛星やロケットの開発に取り組んでいますよね。今後は、こうした技術とクラウドやITがどのように結び付けられていくのかという部分が見どころじゃないかなと思います。
日立製作所のエンジニアが注目する、AWSの最旬サービス
やっぱり気になる!トレンドの生成AIモデル
業界の最前線で活躍するエンジニアとして、皆さんがいま一番気になっているAWSのサービスを教えていただけますか?
やっぱり…今話題のAI系サービスですね。2023年4月にリリースされたばかりの、「Amazon CodeWhisperer」(アマゾン コードウィスパラー)や「Amazon Bedrock」(アマゾン ベッドロック)は、業界関係者に限らず、注目している方も多いのではないでしょうか。
みなさん頷いていらっしゃいますね。サービスの内容を教えていただけますか?
CodeWhispererは、AIがコメントからコードを提案してくれる、いわゆる生成系AIです。Bedrockは、生成系アプリケーションの構築・拡張を支援するものですね。
AI系はトレンドとして注目度が高いですね。逆に、ご自身の趣味で追いかけているサービスなどがあれば、ぜひ聞いてみたいです。
僕の場合、個別サービスではないのですが、AWSが自社のデータセンター内の機能を高めるために独自に開発した「Scalable Reliable Datagram (SRD) プロトコル」には「ニヤッ」としてしまいます。また、Amazon EC2の基盤技術とも言える「AWS Nitro System」(ナイトロシステム)にはグッときますね。
マニアック!インフラエンジニア出身の富田さんならではですね。
AWS初心者におすすめのイベントは?
みなさんは、AWSの有識者としてもAWSを学ぶ立場としても、さまざまなイベントに参加されていると思います。今後、AWSを学んでみたいと考えているエンジニアや非エンジニアの方が、AWSへの理解を深めるためにおすすめしたいイベントがあれば教えていただけますか?
初心者向けという意味では、AWSが公式で開催しているウェビナーがおすすめです。中でも、ハンズオン(体験学習)で学べるものは、実際に手を動かして学べるので基礎を身につけるのに向いていると思います。※常時開催されているものではありません。
AWS初心者でも楽しめるというところでは「AWS GameDay」はいかがでしょうか?チームで参加し、障害時のトラブルシュートをミッション形式でクリアしていくもので、本番環境で実践的に学べるんです。エンジニアとしての知識は多少必要ですが、AWSの知識量に関係なく楽しめるという点でおすすめだと思います。
楽しそうですね!
チーム戦でポイントを得て、ポイント数が高い方から順位がつくので、自然と熱が入りますね(笑)僕が参加した時は41チーム中5位でした。
自分のレベルにあった学習方法という意味では、「スキルビルダー」がいいかもしれませんね。
どういったものですか?
簡単に言ってしまうと、eラーニングのコンテンツ集です。無料で使える教材の種類も豊富ですし、「もう少しレベルを上げたい」という時は、個人でサブスクリプション契約すれば有料の教材も使えます。
読者の方が自分のスキルや環境にあった教材を選べそうですね!みなさん、本日はありがとうございました!
<編集後記>
今回の取材で印象深かったのは、「他業種からIT業界に参入してきた企業から新しい発想を学ぶ」、という三木さんの言葉。業界の最前線を走り続ける日立製作所のエンジニアらしい視野の持ち方を学べました。
次々と新しい技術やサービスを取り入れるAWSの動きにも、改めて注目してみたいと思います!
ライター
編集部オススメコンテンツ
アンドエンジニアへの取材依頼、情報提供などはこちらから