Adobe Fireflyの多言語対応版発表
Adobe社は2023年7月12日、「Adobe Firefly」の対応言語を拡張して、日本語でのプロンプト入力を可能にしたと発表しました。Adobe FireflyはAdobe社が提供している画像生成AIサービスです。Adobe Fireflyは、2023年3月からベータ版の提供が始まりました。
同サービスはAdobe社が独自に開発したAIモデルを採用しており、モデルの学習では同社のAdobe Stockを利用しているため、生成AIでは起こりがちな著作権、肖像権等の問題がクリアされている点が特徴です。
それは生成物には加工履歴を保証するAdobe社独自の「コンテンツクレデンシャルタグ」が自動的に付与されるため、作成された画像の全てに透明性が担保されるからです。この記事では、Adobe Fireflyの概要、基本的な使い方、メリットや気を付けることなどについて解説をします。
【参考】:Adobe、Adobe Fireflyのプロンプト入力を日本語を含む100以上の言語に展開 【参考】:Adobeについて 【参考】:Adobe、「Adobe Firefly エンタープライズ版」を発表
Adobe Fireflyとは
Adobe Fireflyは、Adobe社が開発した生成AI製品で、今後はACC(Adobe Creative Cloud)などのAdobeクラウドサービスに組み込まれる計画です。2023年3月に発表されましたが、現時点ではベータ版での提供となっています。
Adobe Fireflyは個人向けとして登場しましたが、2023年6月9日に企業向けの「Adobe Fireflyエンタープライズ版」が発表され、2023年下半期の提供開始が予定されています。ここでは、Adobe Fireflyで何ができるのか、基本的な使い方を紹介していきます。
【参考】:生成塗りつぶしで創造力をさらに広げよう 【参考】:Fireflyエンタープライズ版 - アドビ
Adobe Fireflyの特徴
Fireflyは100以上の言語に対応したテキスト入力によって、AIイラストなどの画像作成、テキストの変形、色合いの変更などができる画像生成AIです。最大の特徴は、著作権の問題を気にせず安心して使えることと、Adobe CCとの連携に優れている点です。
画像生成AIの著作権問題をクリア
「Firefly」の画像生成では、ストックフォトとして最大手の「Adobe Stock」上で使用許諾した画像、オープンライセンス作品、著作権期限切れコンテンツのみを使用するため、著作権トラブルの問題をクリアしています。
さらに、コンテンツ履歴の保持機能を持つCAI(Content Authenticity Initiative)などの仕組みを活用し、著作権を気にせず商用利用が行えます。
【参考】:コンテンツ信頼性イニシアチブ
ACCとの連携が行える
ACCとはAdobe Creative Cloudを指します。ACCは、Adobeが開発するグラフィックデザイン、動画編集やウェブデザインなどのソフトウェアをサブスクリプション方式で利用ができるサービスと、それらを提供するクラウドサービスの総称です。
FireflyはPhotoshopやIllustratorなどとシームレスに連携し、例えばPhotoshop内で画像の選択範囲にテキストから生成した画像を合成するといったことが可能になります。
【参考】:AI画像生成・生成塗りつぶし - Adobe Photoshop
Adobe Fireflyに関するFAQ
ここでは、Adobe Fireflyに関する素朴な疑問をまとめてみました。
Q1.正式版はいつから提供されますか? Adobe Fireflyエンタープライズ版は2023年下期から提供開始と公表していますが、個人向けのリリース時期は未公表です。
Q2.Adobe Fireflyの料金は決まっていますか? 個人向けFireflyの単体利用は無料ですが、PhotoshopなどのAdobe製品と連携させて利用する場合は、各ツール(ソフト)の利用料金が掛かります。エンタープライズ版の料金は未定です。
【参考】:Adobe Creative Cloudの詳細と製品情報 | アドビ公式
Q3.Adobe Fireflyで生成した画像の商用利用はOK? 正式版がリリースされれば生成画像の商用利用はできますが、ベータ版ではできません。ベータ版で作成した画像には「商用目的ではない」ことを示す透かしが入ります。
Adobe Fireflyを試す方法
Adobe Fireflyは実際に試すことで、その素晴らしさを実感できるでしょう。 Adobe Fireflyを試す方法としては、公式ページ上で行う方法と、 Photoshop 2023のベータ版をダウンロードして使う方法の2種類があります。 Photoshopに慣れている方は、後者の方法をおすすめします。
Firefly公式ページで試す
Adobe Fireflyのベータ版は、以下の「Firefly公式ページ」にアクセスし「ログイン」することで試用ができます。既に日本語対応されていますので、日本語を選択します。
このサイトでは、「テキストから画像生成」、「ジェネレーティブフィルで画像生成」、「テキスト効果で画像生成」などの機能を試すことができます。
【参考】:Adobe Firefly (ベータ版)
Adobe Photoshop 2023のベータ版で試す
Adobe Fireflyの機能は、Adobe Photoshop 2023に搭載される予定です。その結果、文言で指示するだけで画像に新たなコンテンツを追加したり、既存の画像を修正や削除したりすることができるようになります。
例えば、画像に映っている人物の横に別の人物を追加したり、景色を夏から冬に変更したりといったことが言葉で指示するだけで簡単に行えるのです。このような「ジェネレーティブ塗りつぶし」機能はAdobe Photoshop 2023のベータ版で無料で試すことができます。
以下の参考リンクにアクセス、最上段の[無料で始める]ボタンをクリックし、記事内の案内に従ってPhotoshop(Beta版)をインストールしてみましょう。
【参考】:AI画像生成・生成塗りつぶし - Adobe Photoshop
Adobe Fireflyのメリットと注意点
Adobe Fireflyの概要や試す方法については理解できたと思います。実際に試した方は、生成AIの威力を実感されたことでしょう。ここでは、Adobe Fireflyの特徴についておさらいをする意味で、メリットと利用に当たって気を付けることを確認してみましょう。
Adobe Fireflyのメリット
まず初めに Adobe Fireflyの主なメリットについて、3つ紹介します。
■ 著作権侵害の心配が要らない Adobe Fireflyは、ストックフォトとして知られた「Adobe Stock」から使用許諾された画像、オープン ライセンスの作品、著作権期限が切れたコンテンツを利用する仕組みのため、基本的に著作権を侵害する心配がありません。そのため企業やクリエイターは安心して商用利用ができます。
■ Adobe製品と連携できる Adobe FireflyはPhotoshopやIllustratorなどのAdobe製ソフトと連携できますので、Adobeユーザは違和感なく直ぐに利用できます。また今後、サードパーティ製のソフトにも Fireflyが追加されていくことが想定され、実質的にFireflyが画像生成AIの標準となる可能性もあります。
■ 生成画像が高品質でカスタマイズもしやすい Adobe Fireflyはまだ完成版はリリースされていませんが、ベータ版を試しただけでも品質の高さが実感できます。
例えば、「背景の季節を冬にして」といったテキストによる指示で、AIは意図を理解して指示通りの画像を生成してくれます。これまでこうした操作にはある程度の技術が必要でしたが、Adobe Fireflyを使えば素人でもプロ並みのコンテンツを作成できるようになります。
Adobe Fireflyの利用で気を付けること
次にAdobe Fireflyの利用において、気を付けることを確認しておきましょう。
■ 学習データは限られている 著作権の問題が最大の理由ですが、 Adobe FireflyのAIが学習しているデータはAdobe Stockデータやオープンライセンスの画像などに限られ、自分の持っている画像などでトレーニングができません。ただし、Adobeでは今後対応策を検討していくとしています。
■ 言語能力が求められる 生成AIでは、AIに対していかに的確な指示を与えられるかがアウトプットの成否に大きく影響します。利用に当たっては、プロンプトエンジニアに要求されるような会話スキルや自然言語スキルを磨いておく必要があります。
Adobe Fireflyを実際に利用してみよう
ここまでAdobeの画像生成AI、Fireflyの特徴や機能、試し方、メリットとデメリット、FAQについて紹介してきました。これまで画像処理は専門的なスキルが求められましたが、画像生成AIのFireflyでは複雑な画像処理をテキストで指示するだけで、簡単にやってくれます。
しかも、商用利用では著作権という問題がつきまとい、頭を悩ませるケースが少なくありませんでしたが、Adobe Fireflyは著作権や倫理面の問題も解決しています。この素晴らしいサービスをぜひ1度試してみることをおすすめします。
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