デジタルデータをNFT化することで、オリジナル性を証明できる。
NFT化されたデジタルコンテンツを売買できるマーケットができた。
ビートルズのコレクションがNFT化され、オークションに出品された。
全然理解できないわけではないけれど、調べれば調べるほど疑問が膨らんでいくような感覚に陥ってしまう人も多いのではないでしょうか。
そこで今回も、デジタルリスクマネジメント事業に特化している株式会社エルテスの代表取締役、菅原貴弘さんにインタビュー。前回の「Web3.0」に続き、今回は「NFT」をテーマにお話を伺っていきます。
▼前回の記事はこちら
NFTの問題点は、価値がないこと?
まずは、基本からお伺いします。そもそもNFTとはなんでしょう?
インターネットで検索して解説記事を読んでも、ブロックチェーンとの違いからしてよくわからず混乱してしまいます。
NFT(Non Fungible Token)は日本語に訳すと「非代替性トークン」です。ブロックチェーン上にデジタルデータの所有証明書を記録することで唯一性を証明し、固有の価値を持たせたものです。
ブロックチェーン上で管理されることからビットコインなどの仮想通貨と混同されがちですが、仮想通貨は他の仮想通貨や現金等と交換できる(代替可能)なので、NFTではありません。ブロックチェーンはそれらの基盤となる技術ですね。
NFTはデジタルデータの唯一性を証明できるだけで、NFTであること自体に価値があるわけではありません。
ディズニーなどの有名ブランド作品やTwitter創業者の初ツイートのNFT化なら価値が出ることもありますが、一般人の所有物をNFT化しても当然意味はありません。NFTに手を出そうしている企業は多いですが、そこの見極めは重要ですね。
なるほど…。名のあるブランドのデジタルコンテンツのオリジナルを所有することの意味は、一応わかります。
しかし、「動画や音源はまったく同じものを量産できるのに、NFTであることに価値はあるの?」という気持ちもあります。
そこが絵画や書などのアナログ作品とは違うところですよね。
デジタルでは、完全に同じものをコピーできてしまう。だからNFTの価値については、「マシではあるが不完全なもの」だと思っています。
しかも今は、どんどんお札を刷るようにいろんなものがNFT化され、購入する側も「唯一性を証明できるなら将来価値が出るかも」くらいの感じで入手していますよね。
その結果、さらにNFTの価値が下がる、という状況ではあります。
●Twitter創業者の初ツイートのNFT化
唯一性を証明できるはずなのに…、NFTの最大のリスクは偽装
今、いろいろな企業がNFTに参入しようとしています。
NFTのマーケットも増えていますが、NFTはどんなリスクをはらんでいるのでしょうか?
NFTのいちばんのリスクは、偽装でしょうね。
NFTは非代替で唯一性を証明できるものなのに、偽装できるんですか?
NFT自体は偽装できませんが、デジタルコンテンツ自体はコピーしてまったく同じものが作れますよね。
真の作者でない人が、コピーされたコンテンツをNFT化して「オリジナルのNFT化です」と偽ることはできるのです。
でも、調べればそれが本物でないことは証明できますよね?
もちろんです。でも例えば、日本から遠く離れたアフリカの小さな国で、日本の人気アニメ作品のデジタルコピーをNFT化して売っていたとしても、誰も気づきませんよね。
だからNFTは、「マシではあるが不完全なもの」なんです。
一般社会では、NFTは証明書的な用途で根付いていく
不完全な部分はありながらも、名のあるブランドのNFTに価値はある。ここまではわかりました。
では、その他大勢の一般人にとってNFTはどんな形で根付いていくのでしょう?
ブランド的な意味のNFTは、おそらく一般人にはあまり関係ないままでしょう。あっても、「寄付をしたお礼状をNFTでもらう」といったくらいでしょうか。
不可逆でレアのものには、価値があります。とはいえ一般には、ゴルフ会員権の運用やチケットの転売防止といった、証明書的な扱いになっていくと思います。
そういう活用方法は、すとんと腑に落ちますね。
一般向けのデジタルリスク対策という意味では今後、会員権関連の対策が増えていくのではないかと思っています。
民間レベルでデジタルリスクを食い止め、自由なWebを守りたい
NFTが注目される中、御社への相談も増えていると思います。最近増えたな、という相談はありますか?
「DiscordでDAOを盛り上げたい」という問い合わせが多いですね。
DAOってだいたいDiscordを使うんですが、なかなか盛り上がらないんですよ。
●Discordとは
●DAO(Decentralized Autonomous Organization)とは
御社はデジタルリスクマネジメントの会社ですが、リスク対策ではなく「盛り上げたい」という相談も寄せられるんですか?
どういうふうに運営していくとアクティブユーザーが増えるのかとか、要はコミュニティ管理の相談ですね。
リスクマネジメントではありませんが、「当社に蓄積されたデータやシステムをどう活用するか」という基本は同じです。
今回お聞きしてきたWeb3.0やNFTに限らず、新しいデジタル技術や概念が登場すると、同時に新しいリスクも生まれます。
いちはやくリスクを察知するために、心がけていることはありますか?
金融庁の人にヒアリングするとか、そのあたりのアンテナは高くしていますね。
「今何が起きたら嫌ですか?」というような聞き方で、何を警戒しているのかをリサーチします。
エルテスは健全なデジタル社会を実現することを目指しており、その手段の一つがデジタルリスク対策です。
デジタルリスクの脅威が大きくなると、法規制が入って自由なWebではなくなってしまいます。どうにか民間レベルで食い止められるよう、これからもデジタルリスクに対峙していきます。
【取材後記】
デジタルデータはコピーできるのに、なぜNFTに価値があるのか?という疑問が、今回のインタビューでようやく氷解しました。
いずれNFTに触れることがあれば、その用途と価値を慎重に見極めていこうと思います!
【関連リンク】
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