これからは、Web3.0(ウェブスリー)。
特定のプラットフォームに依存しない分散型のインターネットになる。
そんな説明に頷きながらも、内心よくわからないと感じている人は多いでしょう。
初心者向けの教本が内容の不正確さを指摘されて炎上するような現状では、「Web3.0とは何なのか?誰を信じればいいのか?」と戸惑うのも当然です。
今回は、デジタルリスクマネジメント事業に特化している株式会社エルテスの代表取締役、菅原貴弘さんにインタビュー。「Web3.0の今」についての素朴な疑問をぶつけてきました。
菅原さん曰く、「Web3.0のあいまいさは、世の中の真理」⁉
いったいどういうことなのか?じっくり考えながら読んでみてください。
デジタルリスクマネジメントに特化した企業、エルテス
まずは基本的なことからお伺いしますが、エルテスはどんな事業を展開されている会社ですか?
創業当初は広くITサービスを手がけていましたが、2007年からはデジタルリスクマネジメントに特化しました。ソーシャルリスク(SNSの炎上防止)対策、情報漏洩などの内部脅威対策、リアル社会の安全対策などの警備DX、決算書ではわからないデジタル信用調査、情報銀行や電子政府の構築支援などのサービスを提供しています。
仕組みで予防できる炎上は50%。炎上が止まらない理由とは?
まずはWebの世界の現状について聞かせてください。
「Web3.0」がトレンドワードですが、Web1.0とWeb2.0もあるんですよね?
簡単に言うと、Web1.0は一方的な発信メイン。Windows95が発売された1995年から2005年ごろまでですね。
その後、双方向でのやりとりになったのがWeb2.0です。
2005年以前もブログのコメントや掲示板など双方向のやり取りはありましたが、SNSが普及し始めてからがWeb2.0なんですね(注:Facebookとmixiの誕生は2004年)。
そしてWeb2.0が終わって、Web3.0へ?
Web1.0もWeb2.0も終わりません。Web3.0になっても、それらは続いていきます。
"炎上"という言葉が定着し始めたのも、2005年ごろからですね。
炎上についてはSNSの普及や承認欲求の肥大化が原因と分析されたりしますが、なぜ起きてしまうのでしょう?
全世界に発信していることをわかってない人が多いんですよ。鍵アカだからバレないとか。
リテラシーの欠如が要因なんですね。でも飲食店バイトの動画炎上なんかは、「いくらなんでも、なぜ懲りないのか」と感じてしまいます。
大きな炎上を目の当たりにすればみんな気を引き締めますが、学生アルバイトは数年で全員いなくなりますよね。
そしたら、また誰かがやるんです。だから終わらないんです。
最近の小中学校では、子どもにインターネットやSNSのリスクを教育していますよね。そういう啓蒙活動には、意味がありますか?
もちろん意味はあります。
でも残念ながら教える先生自身がわかってないこともあるので、すべての子どもにきちんと教えられるとは限らないですね。
たしかに…。御社はデジタルリスクマネジメントを主軸事業の一つとされている会社ですが、専門業者への依頼で炎上は予防できるのでしょうか?
教育や啓発などで知ったり、炎上を体験したり間近で見聞きして懲りたりすることで25%減、セキュリティ関連サービス等の導入で25%減。合わせて50%くらいは予防できると思います。
説明しても聞いてない人もいるし、突拍子もないことをする人の行動は防ぎようがないので、ゼロにするのはさすがに難しいです。
ゼロにできないのは残念ですが、リスクを半減できるだけでも企業にとっては大きな意義がありますよね。
セキュリティ関連サービスの導入とのことですが、例えばどんなサービスがありますか?
炎上対策では、SNSをはじめネット上のリスク投稿を24時間365日モニタリングする『Webリスクモニタリング』があります。
ただ、デジタルリスクって実は内側のほうが脅威なんです。なので、ログデータからヒトの行動を解析してリスクを検知する『Internal Risk Intelligence(内部脅威検知)』もクライアント様にはご評価いただいています。
ヒトの行動から、とは⁉
退職の近い社員がいつになく社内情報を大量にコピーしていたら、「顧客リストを持ち出すのではないか」リモートワークの社員が勤怠システムで退勤後にPCが動いていれば、「サービス残業しているのではないか」。そんな疑いが生じますよね。
出退勤の時間やメール、複合機の使用状況だけでも、わかることは多いんです。
人間の行動は予測できないように思えますが、データを蓄積すればシステムで検知できるんですね!
Web3.0では、GAFAの一極集中から分散へ。一般人には影響なし⁉
では、いよいよWeb3.0の話をお伺いしていきます。
そもそも、Web3.0とはなんでしょう?分散型インターネット、非中央集権型インターネットとも言われますよね。
Web3.0は、ブロックチェーン技術を活用したインターネットサービスのことです。個人がデータを所有できるようになり、権利の帰属も個人になる。
例えば、SNSにアップした写真や文章を別のサービス(プラットフォーム)に持って行ったり、バックアップを取ったりするのが簡単になります。
でも、今でもスマホやパソコンにデータを保存できますし、Facebookの投稿をダウンロードしてTwitterに上げることもできます。
すでにコンテンツは個人のものだと感じますが、それとどう違うのでしょう?
たしかに、Web3.0の特徴と言われていることは、おっしゃるような手順で実現できます。でも実際には、ものすごく手間だったり、データ量やセキュリティの問題等で現実的でなかったりするんです。
でもブロックチェーン技術の活用で唯一性の証明と所有履歴の管理ができるようになると、それらが簡単になるということです。
●ブロックチェーンとは
わかりやすいのは、エストニアの電子政府でしょうか。
エストニアは、国民の98%が電子IDカードを持っており、行政手続きの99%がオンラインで完結する国です。病院を転院する際の電子カルテの共有ひとつとっても、非常にスムーズです。
所有履歴だけを例えるなら、プロサッカーの仕組み。
プロサッカーでは、選手が移籍するとその選手を育成した組織にもお金が入るシステムがあります。育て損になりません。
所有履歴の説明があると、コンテンツの権利が個人に帰属するという感覚を理解しやすくなりますね。
では、Web3.0になって何が変わるのでしょう?
GAFAに集中している情報が、個人や別のプラットフォームへ分散していくようになります。必然的にGAFAの広告収入は減るでしょう。
また、いろんなプラットフォームを選びやすくなればBAN(規約違反等によるアカウント停止)を恐れず発信できるようにもなりますし、広告収入のためにYouTubeで発信という選択をする人も減るかもしれません。
表現の自由という意味ではメリットですが、いわゆる「炎上系」のような人たちがもっと好き勝手するかもしれないということですね…。
●GAFA(ガーファ)とは
ところでWeb3.0は、一般人にはどれくらい影響がありますか?
一般人というのは、「仕事でメールを使い、友達とLINEで会話し、気になることをインターネット検索し、SNSは趣味程度」という大多数の人のことですが。
一般の人の実感としては、Web3.0になってもほとんど変わらないんじゃないですかね。
「なんとなく発信したコンテンツに思いがけない価値がついてラッキー!」ということはあるかもしれません。
Web3.0を支持しているのは、正反対のコミュニティ。活躍するのはどんな人?
Web3.0は今のところ一般人がWebの変化を実感するほどではなさそうですが、トレンドワードとしてかなりピックアップされていますよね。
Web3.0を盛り上げたいと考えているのは、どんな人たちですか?
「キャピタルゲインで儲けたい人」と「何事も分散させたほうがいいと考える人」、正反対の両者がWeb3.0を支持していますね。
●キャピタルゲインとは
それぞれ、どんな目的が?
前者の目的はもちろん、稼ぐこと。キャピタルゲインの市場は参加者が増えないと稼げないので、当然盛り上げたいですよね。
後者は、GAFAなど特定の巨大プラットフォームに依存せず、あらゆる人が自由に発信できる世界を作ることです。
そんな正反対の両者が拓いていくWeb3.0の世界で、どんな人が台頭してくるのでしょう?
ゼロイチでアクションを起こせる人ですね。他力本願では何も起こらないのがWeb3.0です。
自らDAOを作り、動かしていける人が活躍するでしょうね。
●DAO(Decentralized Autonomous Organization)とは
その世界では、どんなデジタルリスクが生まれますか?
コミュニティはある程度成長すると、勝手に動き出します。すると、そのコミュニティを荒らして目立とうとしたり、稼ごうとしたりする人が出てきます。
DAOの荒らしは、Web3.0のデジタルリスクのひとつになると思います。
お話を伺ってきて、Web3.0ついてかなり理解できた気がします。でも正直、すっきりクリアにわかったとも言えません。
少し前に、Web3.0の解説が不正確だとTwitterで炎上していましたね。専門家として一定の認知がある人でも間違うのに、一般人に理解できるのでしょうか…?
Web3.0やブロックチェーン技術については、まだ価値が確立していないものを通貨や資産と呼ぶなど、ブレている部分がありますよね。だから、正しくあろうとしても間違ってしまうリスクがあります。
そもそも、どんなことも「AS FAR AS I KNOW」、つまり「わたしの知る限りこれが正しい」としか言えません。
今までの知識は、権威のある組織が「これが正しい」と宣言するような形で周知されていましたが、それでも「何百年も源頼朝だと信じられていた肖像画が別人だった!」なんてことがあるとわかってきました。
でも、Web3.0は、「書くほうも学ぶほうもAS FAR AS I KNOW」というスタンス。世の中の真理に近づいてきたと言えるんじゃないですかね。
【取材後記】
「どんなに調べてもちゃんと理解できない」と思っていたWeb3.0。菅原さんのお話を伺い、そのあいまいさも含めてようやく納得できました。
第二部では、もう一歩踏み込み、NFTについても質問責めにしていきますのでご期待ください!
▼第二部はこちら
【関連リンク】
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