Webの歴史から紐解く、Web3.0によって変わるネットのコミュニケーションと炎上
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Webの歴史から紐解く、Web3.0によって変わるネットのコミュニケーションと炎上
一番ヶ瀬 絵梨子
2022.11.07
この記事でわかること
炎上が注目されがちなデジタルリスクだが、実は内部脅威も大きなリスクである
炎上リスクは、知識・経験とシステム導入で50%は削減できる
今Web3.0に注目しているのは、キャピタルゲインで儲けたい人と分散志向の人である
Web3.0を正確に理解するのは難しく、どんなに正しくあろうとしても間違うことがある

これからは、Web3.0(ウェブスリー)。

特定のプラットフォームに依存しない分散型のインターネットになる。

そんな説明に頷きながらも、内心よくわからないと感じている人は多いでしょう。

初心者向けの教本が内容の不正確さを指摘されて炎上するような現状では、「Web3.0とは何なのか?誰を信じればいいのか?」と戸惑うのも当然です。

今回は、デジタルリスクマネジメント事業に特化している株式会社エルテスの代表取締役、菅原貴弘さんにインタビュー。「Web3.0の今」についての素朴な疑問をぶつけてきました。

菅原さん曰く、「Web3.0のあいまいさは、世の中の真理」⁉

いったいどういうことなのか?じっくり考えながら読んでみてください。

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2004年、東京大学経済学部在学中にエルテスを創業。“逆張り”の発想を大切にするベンチャー精神が持ち味。

デジタルリスクマネジメントに特化した企業、エルテス

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一番ヶ瀬 絵梨子

まずは基本的なことからお伺いしますが、エルテスはどんな事業を展開されている会社ですか?

菅原さん

創業当初は広くITサービスを手がけていましたが、2007年からはデジタルリスクマネジメントに特化しました。ソーシャルリスク(SNSの炎上防止)対策、情報漏洩などの内部脅威対策、リアル社会の安全対策などの警備DX、決算書ではわからないデジタル信用調査、情報銀行や電子政府の構築支援などのサービスを提供しています。

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「デジタルリスクと戦い続ける」をテーマに、3つの事業セグメントに分けてサービスを展開。ビッグデータを解析した独自のソリューションを365日24時間体制で提供している。

仕組みで予防できる炎上は50%。炎上が止まらない理由とは?

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Webの世界で炎上が止まらない理由について語る菅原さん
一番ヶ瀬 絵梨子

まずはWebの世界の現状について聞かせてください。

「Web3.0」がトレンドワードですが、Web1.0とWeb2.0もあるんですよね?

菅原さん

簡単に言うと、Web1.0は一方的な発信メイン。Windows95が発売された1995年から2005年ごろまでですね。

その後、双方向でのやりとりになったのがWeb2.0です。

一番ヶ瀬 絵梨子

2005年以前もブログのコメントや掲示板など双方向のやり取りはありましたが、SNSが普及し始めてからがWeb2.0なんですね(注:Facebookとmixiの誕生は2004年)。

そしてWeb2.0が終わって、Web3.0へ?

菅原さん

Web1.0もWeb2.0も終わりません。Web3.0になっても、それらは続いていきます。

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ホームページの閲覧がメインのWeb1.0、SNSが発達したWeb2.0、そしてブロックチェーンが活用されるWeb3.0へ。Web1.0やWeb2.0が終わるのではなく、新しい時代が追加されていくイメージ。
一番ヶ瀬 絵梨子

"炎上"という言葉が定着し始めたのも、2005年ごろからですね。

炎上についてはSNSの普及や承認欲求の肥大化が原因と分析されたりしますが、なぜ起きてしまうのでしょう?

菅原さん

全世界に発信していることをわかってない人が多いんですよ。鍵アカだからバレないとか。

一番ヶ瀬 絵梨子

リテラシーの欠如が要因なんですね。でも飲食店バイトの動画炎上なんかは、「いくらなんでも、なぜ懲りないのか」と感じてしまいます。

菅原さん

大きな炎上を目の当たりにすればみんな気を引き締めますが、学生アルバイトは数年で全員いなくなりますよね。

そしたら、また誰かがやるんです。だから終わらないんです。

一番ヶ瀬 絵梨子

最近の小中学校では、子どもにインターネットやSNSのリスクを教育していますよね。そういう啓蒙活動には、意味がありますか?

菅原さん

もちろん意味はあります。

でも残念ながら教える先生自身がわかってないこともあるので、すべての子どもにきちんと教えられるとは限らないですね。

一番ヶ瀬 絵梨子

たしかに…。御社はデジタルリスクマネジメントを主軸事業の一つとされている会社ですが、専門業者への依頼で炎上は予防できるのでしょうか?

菅原さん

教育や啓発などで知ったり、炎上を体験したり間近で見聞きして懲りたりすることで25%減、セキュリティ関連サービス等の導入で25%減。合わせて50%くらいは予防できると思います

説明しても聞いてない人もいるし、突拍子もないことをする人の行動は防ぎようがないので、ゼロにするのはさすがに難しいです。

一番ヶ瀬 絵梨子

ゼロにできないのは残念ですが、リスクを半減できるだけでも企業にとっては大きな意義がありますよね。

セキュリティ関連サービスの導入とのことですが、例えばどんなサービスがありますか?

菅原さん

炎上対策では、SNSをはじめネット上のリスク投稿を24時間365日モニタリングする『Webリスクモニタリング』があります。

ただ、デジタルリスクって実は内側のほうが脅威なんです。なので、ログデータからヒトの行動を解析してリスクを検知する『Internal Risk Intelligence(内部脅威検知)』もクライアント様にはご評価いただいています。

一番ヶ瀬 絵梨子

ヒトの行動から、とは⁉

菅原さん

退職の近い社員がいつになく社内情報を大量にコピーしていたら、「顧客リストを持ち出すのではないか」リモートワークの社員が勤怠システムで退勤後にPCが動いていれば、「サービス残業しているのではないか」。そんな疑いが生じますよね。

出退勤の時間やメール、複合機の使用状況だけでも、わかることは多いんです。

一番ヶ瀬 絵梨子

人間の行動は予測できないように思えますが、データを蓄積すればシステムで検知できるんですね!

Web3.0では、GAFAの一極集中から分散へ。一般人には影響なし⁉

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Web3.0について語る菅原さん
一番ヶ瀬 絵梨子

では、いよいよWeb3.0の話をお伺いしていきます。

そもそも、Web3.0とはなんでしょう?分散型インターネット、非中央集権型インターネットとも言われますよね。

菅原さん

Web3.0は、ブロックチェーン技術を活用したインターネットサービスのことです。個人がデータを所有できるようになり、権利の帰属も個人になる。

例えば、SNSにアップした写真や文章を別のサービス(プラットフォーム)に持って行ったり、バックアップを取ったりするのが簡単になります。

一番ヶ瀬 絵梨子

でも、今でもスマホやパソコンにデータを保存できますし、Facebookの投稿をダウンロードしてTwitterに上げることもできます。

すでにコンテンツは個人のものだと感じますが、それとどう違うのでしょう?

菅原さん

たしかに、Web3.0の特徴と言われていることは、おっしゃるような手順で実現できます。でも実際には、ものすごく手間だったり、データ量やセキュリティの問題等で現実的でなかったりするんです。

でもブロックチェーン技術の活用で唯一性の証明と所有履歴の管理ができるようになると、それらが簡単になるということです。

●ブロックチェーンとは

日本語に訳すと「分散型台帳技術」。中央集権ではなく、分散型のコンピュータネットワークに、情報を記録する仕組みで、改ざんが非常に困難・システムダウンが起きない・取引の記録を消せないという特徴がある。ビットコインを実現するために生まれた技術。
菅原さん

わかりやすいのは、エストニアの電子政府でしょうか。

エストニアは、国民の98%が電子IDカードを持っており、行政手続きの99%がオンラインで完結する国です。病院を転院する際の電子カルテの共有ひとつとっても、非常にスムーズです。

菅原さん

所有履歴だけを例えるなら、プロサッカーの仕組み。

プロサッカーでは、選手が移籍するとその選手を育成した組織にもお金が入るシステムがあります。育て損になりません。

一番ヶ瀬 絵梨子

所有履歴の説明があると、コンテンツの権利が個人に帰属するという感覚を理解しやすくなりますね。

では、Web3.0になって何が変わるのでしょう?

菅原さん

GAFAに集中している情報が、個人や別のプラットフォームへ分散していくようになります。必然的にGAFAの広告収入は減るでしょう。

また、いろんなプラットフォームを選びやすくなればBAN(規約違反等によるアカウント停止)を恐れず発信できるようにもなりますし、広告収入のためにYouTubeで発信という選択をする人も減るかもしれません。

一番ヶ瀬 絵梨子

表現の自由という意味ではメリットですが、いわゆる「炎上系」のような人たちがもっと好き勝手するかもしれないということですね…。

●GAFA(ガーファ)とは

アメリカのIT関連企業大手、Google、Apple、Facebook、Amazonの頭文字をとって名付けられた造語。Microsoftを加えて、GAFAMとすることもある。
一番ヶ瀬 絵梨子

ところでWeb3.0は、一般人にはどれくらい影響がありますか?

一般人というのは、「仕事でメールを使い、友達とLINEで会話し、気になることをインターネット検索し、SNSは趣味程度」という大多数の人のことですが。

菅原さん

一般の人の実感としては、Web3.0になってもほとんど変わらないんじゃないですかね。

「なんとなく発信したコンテンツに思いがけない価値がついてラッキー!」ということはあるかもしれません。

Web3.0を支持しているのは、正反対のコミュニティ。活躍するのはどんな人?

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Web3.0で活躍する人物像を考察する菅原さん
一番ヶ瀬 絵梨子

Web3.0は今のところ一般人がWebの変化を実感するほどではなさそうですが、トレンドワードとしてかなりピックアップされていますよね。

Web3.0を盛り上げたいと考えているのは、どんな人たちですか?

菅原さん

「キャピタルゲインで儲けたい人」と「何事も分散させたほうがいいと考える人」、正反対の両者がWeb3.0を支持していますね。

●キャピタルゲインとは

株式や債券、不動産、金などの資産を売却することによって得られる利益のこと。損失が出た場合は、キャピタルロス。また、利息や配当など、資産を保有していることによって得られる利益はインカムゲイン。
一番ヶ瀬 絵梨子

それぞれ、どんな目的が?

菅原さん

前者の目的はもちろん、稼ぐこと。キャピタルゲインの市場は参加者が増えないと稼げないので、当然盛り上げたいですよね。

後者は、GAFAなど特定の巨大プラットフォームに依存せず、あらゆる人が自由に発信できる世界を作ることです。

一番ヶ瀬 絵梨子

そんな正反対の両者が拓いていくWeb3.0の世界で、どんな人が台頭してくるのでしょう?

菅原さん

ゼロイチでアクションを起こせる人ですね。他力本願では何も起こらないのがWeb3.0です。

自らDAOを作り、動かしていける人が活躍する
でしょうね。

●DAO(Decentralized Autonomous Organization)とは

日本語に訳すと、分散型自立組織。中央管理者がおらず、ブロックチェーン上で世界中の人々が協力して管理・運営される。法的な枠組みが整備されていないという問題点がある一方、オープンソースで透明性が高い。仮想通貨のビットコインは、世界で初めて完全な形で分散しながら運営されてることに成功したDAOだと言われている。
一番ヶ瀬 絵梨子

その世界では、どんなデジタルリスクが生まれますか?

菅原さん

コミュニティはある程度成長すると、勝手に動き出します。すると、そのコミュニティを荒らして目立とうとしたり、稼ごうとしたりする人が出てきます。

DAOの荒らしは、Web3.0のデジタルリスクのひとつになると思います。

一番ヶ瀬 絵梨子

お話を伺ってきて、Web3.0ついてかなり理解できた気がします。でも正直、すっきりクリアにわかったとも言えません。

少し前に、Web3.0の解説が不正確だとTwitterで炎上していましたね。専門家として一定の認知がある人でも間違うのに、一般人に理解できるのでしょうか…?

菅原さん

Web3.0やブロックチェーン技術については、まだ価値が確立していないものを通貨や資産と呼ぶなど、ブレている部分がありますよね。だから、正しくあろうとしても間違ってしまうリスクがあります。

そもそも、どんなことも「AS FAR AS I KNOW」、つまり「わたしの知る限りこれが正しい」としか言えません。

菅原さん

今までの知識は、権威のある組織が「これが正しい」と宣言するような形で周知されていましたが、それでも「何百年も源頼朝だと信じられていた肖像画が別人だった!」なんてことがあるとわかってきました。

でも、Web3.0は、「書くほうも学ぶほうもAS FAR AS I KNOW」というスタンス。世の中の真理に近づいてきたと言えるんじゃないですかね。

【取材後記】

「どんなに調べてもちゃんと理解できない」と思っていたWeb3.0。菅原さんのお話を伺い、そのあいまいさも含めてようやく納得できました。

第二部では、もう一歩踏み込み、NFTについても質問責めにしていきますのでご期待ください!

▼第二部はこちら

法に技術が負ける?”NFTのデジタルリスク“対策についてデジタルリスクのプロに聞いてみた

【関連リンク】

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ライター

一番ヶ瀬 絵梨子
心理学科卒業後、新卒未経験でSI企業に就職し、Java系のSEとして10年。 結婚出産を経て、2015年にトラベルライターに転身。 現在はMONOLISIX株式会社に所属しweb編集やマーケティング業務にも携わっている。 新婚旅行では1年かけて世界50ヶ国を巡るほどの旅行好き。 日々の晩酌が何よりの楽しみ。
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