"大量消費"から"選択の時代"へ。高校生フリーランスだった下村領が『コーヒーサブスク界の雄』を作り上げるまで【後編】
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"大量消費"から"選択の時代"へ。高校生フリーランスだった下村領が『コーヒーサブスク界の雄』を作り上げるまで【後編】
一番ヶ瀬 絵梨子
2022.01.24
この記事でわかること
ネットバブルの時代、POST COFFEE 株式会社CEOの下村領さんは高校生でフリーランスになった
Web制作会社を興して大学中退。今は兄弟でPostCoffeeの事業に専念している
PostCoffeeは、大量消費からの脱却を求める時代の流れにマッチして成長した
PostCoffeeの目標は、「美味しいコーヒーと、消費者を、最短距離で繋ぐ」ことである

缶コーヒー愛飲の自称コーヒー好きのWebエンジニアから、本当に美味しいコーヒーを普及させる道を突き進むコーヒー屋さんへ。

弟とともに『PostCoffee』を営む下村領さんの転身のストーリーは、「何があったの?」「大丈夫だったの?」と、興味と疑問が尽きません。

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POST COFFEE 株式会社CEOの下村領さん(左)。右は、弟でCCOの祐太朗さん

オリジナルのコーヒー診断の結果からセレクトされるコーヒーがポストに届くサブスクリプションサービス『PostCoffee』

おうち時間を楽しむコンテンツとしてコーヒーを選ぶ人が増えたという背景もあり、2020年2月の正式リリース以降、順調に利用者数を伸ばしています。

そして2021年7月には1.5億円の資金調達をし、耐熱ガラスメーカーのHARIOが新規株主に。

今回は、"コーヒー版ZOZOTOWN"を目指し、ECやサブスクに留まらないサービス展開を見据えるPostCoffeeに迫ります。

“飲めば飲むほど”社会が良くなる。「30万分の1」のコーヒーBOXがポストに届く『PostCoffee』の起業ストーリー【前編】
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『PostCoffee』CEOは、元Webエンジニア&デザイナー

一番ヶ瀬 絵梨子

下村さんは、今はPostCoffeeの事業に専念されているそうですが、もとはWeb制作会社をされていましたよね。そもそも、どんな経緯でWeb制作の道へ進まれたんですか?

下村さん

高校時代からフリーランスでWeb制作の仕事をしていたんです。 ちょうどネットバブルの時代で、堀江 貴文さんとかネットベンチャーの起業家界隈が盛り上がっている時代だったんですよ。

下村さん

そういうのをインターネットで見て、自分も起業してみたいなと思うようになって。 普通のサラリーマンだった親も、「サラリーマンは面白くないよ」って言ってましたしね。

一番ヶ瀬 絵梨子

親御さんも(笑)。でも、フリーランスでWeb制作なんて、普通の高校生はなかなか思いつかないですよ。 どうやって仕事を見つけて、どうやって起業したんですか?

下村さん

仕事請けたいですっていろんなところにメールしてたら、少しずつ仕事がもらえるようになっていった感じですね。 鹿児島出身ですが、東京に行きたい気持ちが大きかったので大学を口実に上京して、法人化して大学は辞めてしまった、という流れです。

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少数精鋭のクリエイティブ集団だった株式会社ヘレティックの富ヶ谷オフィス。この場所が、後に「MAKERS COFFEE」となる。
一番ヶ瀬 絵梨子

お若いころから、やりたいことが明確だったんですね。今は弟さんと一緒に事業をされていますが、弟さんも昔からWeb制作や起業に興味があったタイプだったんでしょうか。

下村さん

弟は、高校時代はそれほどパソコンに興味がないような感じでしたね。 東京の大学に進学して、卒業するころに僕も仕事が忙しくなってきたので、一緒にやらないかという感じで。

一番ヶ瀬 絵梨子

それも珍しいですよね。 私にも妹弟がいますが、一緒に仕事をしようと思ったことはないです。なんだかそのまんまな言い方になっちゃいますけど、ご兄弟仲良しなんですね。

下村さん

まあ、仲は悪くないと思いますよ。 子どものときから一緒に遊んでいた延長みたいな感覚もあるのかもしれないですね。弟はCCO(Chief Creative Officer)の立場で、なんでもできるんですが、主にデザインまわりを手掛けています。

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下村領さんの弟である祐太朗さんとのお写真

『PostCoffee』が目指すのは、コーヒー界のZOZOTOWN

一番ヶ瀬 絵梨子

コーヒーの事業は、実店舗のカフェ「MAKERS COFFEE」からのスタートでしたよね。Webの世界から一転、どうでしたか?

下村さん

コーヒー屋さん同士の横のつながり、コミュニティって、とても強いんです。 自分たちのように突然コーヒー屋を始めても、いろいろ聞きまくって、関係性を作ってどうにかやってこれたくらいに。

下村さん

でも、いろんなお店のコーヒーを手軽に買えるWebのプラットフォームはないんですよ。 美味しいサードウェーブコーヒーのお店はたくさんあるのに、美味しいコーヒーと消費者にまだまだ距離があるんです。

一番ヶ瀬 絵梨子

あ、言われてみれば……。 通販をやっているコーヒー店はたくさんあるし、Amazonや楽天市場でも買えるので気づかなかったですが、コーヒー専門モールみたいなのはないですね。

下村さん

だから、PostCoffeeのアカウントひとつあれば、世界中の美味しいコーヒーを買えるようにしたいと思っています。 「コーヒー版ZOZOTOWNを作りたい」と言ったのは、そういう意味で。

下村さん

日本はコーヒー消費量世界3位なのに、スペシャルティコーヒーを知っている人は7~10%。 コーヒー好きの日本で、美味しいコーヒーをもっと広めたいんです。

一番ヶ瀬 絵梨子

PostCoffeeで「ROASTER PARTNER」の取り組みを始められたのは、その第一歩なんですね。

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ROASTER PARTNERとは

自社焙煎の豆のみを取り扱っていたPostCoffeeは、2021年1月26日より、他の有名ロースターのコーヒーの取り扱いも開始。日本全国・世界各国の美味しいコーヒーを楽しめるサービスへとアップデートした。定期便でも提供されるほか、会員はロースターパートナーの豆を指名買いで購入できる。
下村さん

でもWebだけでなく、身近な小売店でいろんなお店の美味しいコーヒーを買えるようにしたいですし、リアルのコーヒーフェスもじゃんじゃんやりたいと思っています。リアルのプラットフォームも作っていきたいですね。

一番ヶ瀬 絵梨子

たしかに、いろんなお店のコーヒーが並んでいるような小売店はないですね。 そして、コーヒーフェス、楽しそう! そういう場で飲むと一期一会な感じがするし、普段は通販でしか買えないと思うと送料が浮くという計算も働いて買いたくなっちゃいます。

下村さん

送料も、リアルでの購入動機のひとつですよね。 コーヒーのリアルな体験ってすごく強くてエンゲージメントも高いですし、オフラインでしかリーチできない層は確実にいるので、リアルチャネルも非常に重要だと考えています。

『PostCoffee』の成長は、大量消費からの脱却を求める社会の流れ

一番ヶ瀬 絵梨子

そういえば、さきほどコーヒー屋さんへの転身のきっかけとして語られた「コーヒーによってQOLが上がった」という言葉がとても印象的でした。

下村さん

コーヒーを淹れる時間って、余白の時間というか、禅にも通じるような時間ですよね。 1日のうちのごく短い時間ですけど、毎日のことなので積み重ねると大きな幸せになります。

下村さん

1日の1/3は寝ているんだからベッドは大事といった話もありますけど、そういう感じで、毎日のコーヒーの時間の積み重ねを大事にしていただきたいんです。

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一番ヶ瀬 絵梨子

ああ、なるほど。そう説明されると、時代にマッチしているなと感じますね。 美味しいコーヒーが届くPostCoffeeが支持されて伸びていることが、腑に落ちます。

下村さん

大量消費ではなく、じっくり選んでいいものを買いたい人が増えている時代ですからね。 おうち時間が重視されるコロナ禍で加速した部分はあるし、ご時世に合わせて広告費を増やすといった販促もしましたが、そもそもPostCoffeeの価値観が時代に合っていたんだと思います。

一番ヶ瀬 絵梨子

じっくりといいものに出会ってもらうために、サービス展開の面で意識していることはありますか?

下村さん

とにかく、ユーザーの解像度を上げること。 ユーザーの声をきちんと聴き、Web上にもできるだけ載せるようにしています。

下村さん

また、今回(2021年12月1日)アップデートしたコーヒー診断も、焙煎士と一緒にかなり複雑なロジックで考え、高精度でパーソナライズできるようになりました

一番ヶ瀬 絵梨子

食後スイーツやチョコレートの好みなど、コーヒーに詳しくなくても直感的に答えられる楽しい質問で始まるのがいいですよね。 でも、「スペシャルティコーヒーを知っている」と答えると、好みの産地まで細かく聞いてくれるし、どれくらい冒険したいかという質問もあるし。 どんなコーヒーが届くか、期待が高まる診断でした!

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『PostCoffee』の目標は、美味しいコーヒーと消費者を最短距離で繋ぐこと

一番ヶ瀬 絵梨子

POST COFFEE 株式会社は“ZOZOTOWN化”、プラットフォーム化に向けて、さらにスケールしていく段階だと思いますが、いま、どんな体制ですか?

下村さん

フルタイムの社員が8名(2021年12月時点)と、配送のためのアルバイトさんが20名。 社員のうち焙煎士が3名で、その他5名は横断的にいろいろやってる状態です。 エンジニア、デザイナー、マーケター、バックオフィス……、幅広い業種の人材を募集中ですよ。

一番ヶ瀬 絵梨子

勢いありますね。2021年7月には1.5億円の資金調達と、新規株主に耐熱ガラスメーカーのHARIOを迎えたという発表もありました。 まだまだ事業拡大していきそうですが、今のPostCoffeeは、下村さんのやりたいことの何%くらいですか?

下村さん

まだ15%くらいです。 これからは、Webの強化に、コーヒーフェスや小売店販売、コーヒースタンドのチェーン展開などのリアルチャネル充実……。

下村さん

HARIOと組めたことで機器の提供もできるようになりますし、全自動コーヒーメーカーも作ってみたい、といったロードマップを描いています。 とにかく目標は、美味しいコーヒーと消費者を最短距離で繋ぐことです。

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一番ヶ瀬 絵梨子

残り85%、実現したらわたしたちのコーヒーライフが大きく変わりそうですね。 全自動コーヒーメーカーもかなり気になるのですが、いま公表できることってありますか?

下村さん

詳細はあまり出せませんが、IoT家電のようにインターネットへ繋がったコーヒーマシンにする予定です。 でも、全自動とはいえコーヒーを淹れる楽しみを残したマシンにしたいですね。

一番ヶ瀬 絵梨子

コーヒーを淹れる楽しみがある全自動マシン! 下村さんのお話を伺っていると、ありそうでなかったライフスタイルのアイデアがどんどん登場するのでワクワクしますね。

優しい語り口で繰り出される、下村さんのコーヒーへの愛。しかし想いだけではなく、とてもロジカルに未来を見据えているところが、PostCoffeeの質の高さに直結しているように感じました。

Webだけでなく、オフラインへの広がりも見せる今後のPostCoffeeに注目です!

【関連リンク】

PostCoffee:https://postcoffee.co/

下村さんTwitter:https://twitter.com/cyberryo

ライター

一番ヶ瀬 絵梨子
心理学科卒業後、新卒未経験でSI企業に就職し、Java系のSEとして10年。 結婚出産を経て、2015年にトラベルライターに転身。 現在はMONOLISIX株式会社に所属しweb編集やマーケティング業務にも携わっている。 新婚旅行では1年かけて世界50ヶ国を巡るほどの旅行好き。 日々の晩酌が何よりの楽しみ。
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