“飲めば飲むほど”社会が良くなる。「30万分の1」のコーヒーBOXがポストに届く『PostCoffee』の起業ストーリー【前編】
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“飲めば飲むほど”社会が良くなる。「30万分の1」のコーヒーBOXがポストに届く『PostCoffee』の起業ストーリー【前編】
キャリア・働き方
一番ヶ瀬 絵梨子
2022.01.21
この記事でわかること
コーヒーを淹れる時間が、缶コーヒー好きだった下村領さんの生活を劇的に変えた
PostCoffeeのコーヒー診断は、自分好みのコーヒーを探す旅である
クリエイティブを内製化できる力が、POST COFFEE 株式会社の大きな武器になっている
美味しいコーヒーを飲む→社会が良くなる、という消費者目線の好循環を生み出したい

缶コーヒー愛飲の自称コーヒー好きのWebエンジニアから、本当に美味しいコーヒーを普及させる道を突き進むコーヒー屋さんへ。

弟とともに『PostCoffee』を営む下村領さんの転身のストーリーは、「何があったの?」「大丈夫だったの?」と、興味と疑問が尽きません。

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POST COFFEE 株式会社CEOの下村領さん(左)。右は、弟でCCOの祐太朗さん

オリジナルのコーヒー診断の結果からセレクトされるコーヒーがポストに届くサブスクリプションサービス『PostCoffee』

おうち時間を楽しむコンテンツとしてコーヒーを選ぶ人が増えたという背景もあり、2020年2月の正式リリース以降、順調に利用者数を伸ばしています。

そして2021年7月には1.5億円の資金調達をし、耐熱ガラスメーカーのHARIOが新規株主に。

今回は、"コーヒー版ZOZOTOWN"を目指し、ECやサブスクに留まらないサービス展開を見据えるPostCoffeeに迫ります。

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コーヒー診断をもとにカスタマイズされるサブスク『PostCoffee』

一番ヶ瀬 絵梨子

サブスクとのことですが、PostCoffeeはどんなサービスでしょうか?

下村さん

PostCoffeeオリジナルのコーヒー診断をしていただき、その結果をもとにカスタマイズしたコーヒーを定期便でお届けするサービスです。 月1回9杯分(3種×3杯分)で気軽なコーヒージャーニーを楽しむコースが人気ですが、毎日飲みたい方には月2回30杯分(3種×5杯分×2回)のコースもあります。

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一番ヶ瀬 絵梨子

届くコーヒーは、コーヒー診断をもとに約30万通りの組み合わせからカスタマイズされるんですよね。 好みのコーヒーに出会ったら、「この豆をもっと欲しい!」「このコーヒーを毎日飲みたい!」という要望は自然と生まれてくると思うのですが、銘柄を指定して買うことはできないのでしょうか。

下村さん

好みの銘柄をリクエストできる機能は一応あります。 でも、世界には多種多様なコーヒーがあって、自分のコーヒーの好みをきちんとわかっている人はほとんどいないと考えています。 なので、いろいろなコーヒーを試し、その感想のフィードバックを繰り返す中で自分の好みを知っていただく、というのが、PostCoffeeのコンセプトではあります。

一番ヶ瀬 絵梨子

なるほど、もっともっと好きなコーヒーに出会える可能性を閉ざしてしまわないためのコーヒー診断であり、PostCoffee側でのカスタマイズなんですね。 定期便以外では、欲しい豆を買えるんですか?

下村さん

定期便会員の方は、弊社のパートナーである有名ロースターの豆を購入できます。非会員の方も、父の日や母の日、クリスマスなどのギフト商品はお買い求めいただけますよ。 2021年10月発売の10種詰め合わせ『PostCoffee ASSORTMENT BOX』やコーヒーバッグのボックスなどは、LINEギフト等のサイトでも取り扱いがあります。

一番ヶ瀬 絵梨子

最低契約期間がないとはいえ、いきなりのサブスク利用は迷うという人もいそうなので、会員になる前に試せるチャンスがあるのはいいですね。

コーヒーを淹れる時間が、Webエンジニアの人生を大きく変えた

一番ヶ瀬 絵梨子

ところで、Webエンジニアだった下村さんが、なぜコーヒー屋さんに?

下村さん

もともとは缶コーヒーばかり飲んでコーヒー好きを自称してたんですけど、当時のオフィスの近くに美味しいコーヒー屋さんができ始めたのがきっかけで、自分でも淹れるようになったんです。 そしたら、コーヒーによって自分の生活がアップデートされるのを実感したんですよ。

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下村さん

コーヒーを淹れる時間が毎日のルーティーンに加わったことで、心に余裕が生まれたり、趣味のキャンプの時間がさらに充実したり……と、QOLが上がったんです。 コーヒーが持つ力を実感して、KEES VAN DER WESTENという100万円以上するオランダの高級エスプレッソマシンを勢いで買っちゃいました

一番ヶ瀬 絵梨子

かなり大胆ですが、それは趣味のマシンとして?それとも、注文した時点でコーヒー屋を始めるつもりだったんですか?

下村さん

コーヒーのことは何も知らなかったですが、お店を始めるつもりはありました。 なんだかんだで届くまで1年くらいかかったので、その間はいろんなコーヒー屋をめぐって研究したり、お店の仕様を決めたり、内装を考えたり…と、コーヒー屋の開店準備に費やしていました。

一番ヶ瀬 絵梨子

マシンが届かないのにコーヒー屋への熱量がガンガン上がっていく感じがすごい……(笑) 社長がいきなり畑違いのコーヒー屋を始めようとしたら、社内は不穏になりませんか?

下村さん

当時は、わたしたち兄弟と社員2名、あとは必要に応じてフリーランスのクリエイターをアサインするようなスタイルの小さい会社でした。 柔軟かつ自由な空気だったので業種転換に障壁もなく、楽しくやってましたよ。 グラデーション的に、少しずつ事業転換していったというのもありますし。

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一番ヶ瀬 絵梨子

Web制作とコーヒー、まったく関係ない業種とはいえ、例えばこの写真。3種類のコーヒーがポストに届いて、自宅でコーヒータイムを楽しめる―― 1枚の写真だけで、サービス内容が伝わるようになっていますね。 わかりやすくスタイリッシュで、元Web制作会社の底力を感じます。

下村さん

はい、Web×コーヒー、このハイブリッドが弊社の強みです。 コーヒーを広めるためにデジタルでどういうことをやればいいかが、パッとイメージできますからね。 いずれは本当に美味しいコーヒーがWeb上で一堂に会するコーヒー版ZOZOTOWNみたいな場所を作りたいんです。

一番ヶ瀬 絵梨子

Web制作のスキルは、業種問わず無敵ですね。 内製できれば、クライアントとクリエイターの間の認識の齟齬もありませんし、かなりのアドバンテージだと思います。 以前のWeb制作会社のメンバーは、いまもいらっしゃいますか?

下村さん

当時のメンバーは、今はいないですね。 PostCoffeeの立ち上げメンバーは求人サイトでなんとか集めましたが、ユーザーが増えてメディアで取材されるようになってからは、応募してくれる人も増えてメンバーが増えて行った感じです。

失敗も糧。Webの爆発力で、本当に美味しいコーヒーを広めたい

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一番ヶ瀬 絵梨子

コーヒー屋さんとしてのスタートは2014年、富ヶ谷のオフィスをDIYで改装した実店舗の「MAKERS COFFEE」ですね。 さすがオシャレ!でも、今はECのPostCoffeeのみですよね。 飲食業は人気があっても厳しいという話をたまに聞きますが、実店舗で利益を出す難しさがあったのですか?

下村さん

いや、ビジネスとしては店舗だけでもやっていけたと思います。 例えば、スターバックスみたいなチェーンで展開していくとか。 でも、本当に美味しいコーヒーを知ってもらうには、実店舗では難しいと思ったんです。

一番ヶ瀬 絵梨子

でも、自信を持って美味しいコーヒーを出していらっしゃいましたよね? MAKERS COFFEEで毎日コーヒーを買って飲む、それは"本当に美味しいコーヒーのある生活"ではないのでしょうか。

下村さん

定期便の話の繰り返しになりますが、そもそもほとんどの人が自分のコーヒーの好みすら知らないと思っています。 そして、自分好みのコーヒーを見つけるには、ひとつの店のひとつのブランドだけでは限界がありますよね。

下村さん

カフェには商圏があってスケールしづらいという点もあり、スピーディーかつ爆発的に広めるためには、Webの力が必要だと判断しました。

一番ヶ瀬 絵梨子

そういう意味での"本当に美味しいコーヒーを知らない"ですね。 それなら、実店舗ではできないことがWebでできるとおっしゃる意味はよくわかります。

下村さん

Web制作の経験だけでなく、ここではCTOとしてスタートアップの立ち上げに関わった経験も生きました。 テクノロジーを使ってスタートアップをスケールさせるスピード感をわかっていたし、このビジネスをどうサスティナブルに展開していくかというイメージを、サクッと自分の頭の中で完結させられることも強みだと思っています。

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Webの活用やクリエイティビティを生かした展開に強い。画像はリアル脱出ゲームの「SCRAP」とのコラボ(終了済み)。
一番ヶ瀬 絵梨子

では、Webへの移行は比較的スムーズだったのでしょうか?

下村さん

いや、当時メンバーが3人しかいなかったこともあって、まずは配送とロジのオペレーション構築がとにかく大変でした。 それに、最初はAmazon Dashのようなサービスとして展開したのですが、それでは好みのコーヒーに出会っていただくのは難しいと感じ、コーヒー診断にピボット(方向転換)するという失敗もありました。

Amazon Dashとは

食品や洗剤など、特定の商品のロゴが描かれた、その商品専用の注文機器。ボタンを押すだけでAmazonに注文情報が送られて購入が確定し、自宅に届くというサービス。2019年8月31日にサービス終了。
一番ヶ瀬 絵梨子

方向転換を失敗と表現されましたが、それは試行錯誤ではなく"失敗"だったのですか?

下村さん

計画との売上ギャップ、開発費用などいろいろありますが、いちばん大きなダメージは時間のロスだったと思います。 ただ、この失敗があって、ユーザーの解像度が格段に高まったり、プロダクト機能の良し悪し、プライオリティ付けの確度が上がった、と考えています。

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サブスクに転換したPostCoffeeのユーザー数は、2年で25倍に成長した。

“美味しいコーヒーを選ぶ”という消費が、社会を良くしていく

一番ヶ瀬 絵梨子

PostCoffeeのサイトはスマートで高級感があり、スペシャルティコーヒーのお店らしい雰囲気があります。 でもその一方、生産者さんの情報やサスティナブル、フェアトレードといったキーワードが出てこないのが特徴的ですね。

下村さん

そういう訴求をするコーヒー屋さんはたしかに多いですよね。 でも、美味しいコーヒーに出会う入口として、そういう情報って楽しいのかな?というのが正直あって。まずはコーヒーを選び、味わうという楽しさを体験することが大事だと思うんです。

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ユーザーに送付されるコーヒーBOXには、冊子も同梱されている

スペシャルティコーヒーとは?

人による官能検査で80点以上の、専門店が扱うような非常に高品質なコーヒー。流通しているコーヒーのうち、わずか5~6%ほど。品質だけでなく、生産者から消費者に届くまでの履歴(トレーサビリティ)や地球環境や労働環境への配慮(サステナビリティ)の観念も重要視される。
下村さん

もちろん、社会貢献や生産者さんの話は大切で、ブログや毎月お送りする冊子でしっかり発信しています。 ただ、社会貢献のためにスペシャルティコーヒーを選ぶのではなく、消費者としてスペシャルティコーヒーを選べば、それが勝手に社会を良くすることに繋がっていく、という順番のほうが自然だし、マーケット的にも大きいのでそのほうが良いと思っています。

一番ヶ瀬 絵梨子

飲食店や飲料メーカー出身ではなく、コーヒー好きの一消費者からキャリアをスタートした下村さんらしい考え方ですね。 異色の経歴のコーヒー屋さんとして、コーヒー業界で挑戦したいことはありますか?

下村さん

新しい体験を作り出したいですね。 単にコーヒー屋をやるだけでは、新しいバリューは作れないし、業界としても面白くないと思うんです。 コーヒー業界全体のためになるような新しい価値の創造を、すごいスピードでやる、ということに挑戦したいです。

後編では、下村さんがいかにしてPostCoffeeを作り上げたのか、ご経歴や将来像を取り上げていきます。

'大量消費'から'選択の時代'へ。高校生フリーランスだった下村領が『コーヒーサブスク界の雄』を作り上げるまで【後編】

【関連リンク】

PostCoffee:https://postcoffee.co/

下村さんTwitter:https://twitter.com/cyberryo

ライター

一番ヶ瀬 絵梨子
心理学科卒業後、新卒未経験でSI企業に就職し、Java系のSEとして10年。 結婚出産を経て、2015年にトラベルライターに転身。 現在はMONOLISIX株式会社COOとしてweb編集やマーケティング業務にも携わっている。 新婚旅行では1年かけて世界50ヶ国を巡るほどの旅行好き。 日々の晩酌が何よりの楽しみ。
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