最新の統合開発環境「JetBrains Fleet」が発表されました
JetBrains社は公式サイトにて、最新の統合開発環境「Fleet」を開発中であることを発表しました。本記事では公式情報に基づき、Fleetが持っている機能と料金形態について分かりやすく解説していきます。
【参考】:JetBrains Fleet
統合開発環境とは
統合開発環境(以下、IDE)とは、ソースコードを書くエディタ機能・コンパイラ機能・デバッグ機能などを使用できるソフトウェア開発者向けのツールの総称です。主なIDE製品として「Eclipse」「Visual Studio」「XCode」などがあります。
JetBrains社とは
JetBrains社は、チェコに本社を置くソフトウェア開発会社です。我々ソフトウェア開発者に役立つツールを数多く開発しています。既にリリースされている製品として、IDE製品「IntelliJ IDEA」「PyCharm」やプログラミング言語「Kotlin」などがあります。
自分で記述したコードのビルドやデバッグにIDEを用いている方は多いですが、どうせなら使いやすいIDEを使って、効率よく開発に取り組みたいですよね。
JetBrains Fleetの機能
IDEは我々ソフトウェア開発者にとって使いやすく、所属しているプロジェクトでの開発に沿うものでなければ意味がありません。多機能すぎても使い辛ければ無意味です。
最新のIDEであるFleetは、どのような機能を持ち、システム開発をどれほど効率化してくれるのでしょうか。以下で詳しく解説します。
軽快なエディタモード/多機能なスマートモードの切り替えができる
JetBrains社がこれまで提供してきたIDE「IntelliJ IDEA」は、とても高機能なIDEです。それゆえ、起動に時間がかかるという問題点がありました。ちょっとしたメモを残したい時などにわざわざIntelliJ IDEAを開く方は少なく、代わりに専用のテキストエディタを使用していた方が多いのではないでしょうか。
一方で、最新のFleetは1つのIDEであるにも関わらず、軽量なテキストエディタモードと高機能なスマートモードを切り替えて使用することができるようになりました。
テキストエディタモードからスマートモードに切り替えた場合、Fleetはバックエンドで動いているコードエンジン「Language Server」と接続されます。この状態だと「ソースコードの補完」「メソッド定義への移動」「コードの品質チェック」等が使用でき、開発作業がよりスムーズになります。
軽いメモをしたくなった時にも、アプリ開発をしたい時にも、Fleetだけあれば事足りる未来がいつか来るかもしれません。
スペックが低い端末でも高速で開発できる
これまでは、スペックが低いローカル端末で高機能なIDEを使おうとすると、ビルドに時間がかかってしまい開発効率が落ちることが度々ありました。会社に端末のスペックアップを交渉しても取りあってもらえず、泣く泣く長いビルド時間を待ちながら開発した経験があるという方も少なくありません。
どんな端末からも効率良く開発を進められるように、Fleetでは分散アーキテクチャを採用しています。具体的には、JetBrains製のリモート開発環境「Space」と接続し、リモート開発環境上でビルドやデバッグを実施することができます。
【参考】: JetBrains IDE 向けの Space クラウド開発環境
Spaceは、リモートでの開発効率化のため開発された複製可能な開発環境です。内部ではDockerコンテナが作動しています。
対応言語が豊富である
Fleetは数多くのプログラミング言語に対応しています。
現在対応している言語は「Java」「Kotlin」「Python」「Go」「JavaScript」「Rust」「TypeScript」「JSON」です。また、今後対応が予定されている言語は「PHP」「C++」「C#」「HTML」です。
Fleetがクラウド開発環境「Space」を用いるメリット
上記でも述べたように、Fleetはクラウド開発環境であるSpaceと接続し、どのような端末からでも効率の良い開発を実現します。
以下に、Spaceを用いた開発のメリットを挙げます。
環境構築工数を削減できる
開発環境がDockerコンテナで提供されていない場合、チームへの参画者は自分の端末で直接開発環境を整えなければいけません。そのプロジェクトで用いられているプログラミング言語やデータベースクライアント等、複数のミドルウェアのインストールが必要です。
Spaceでは、Dockerで環境が提供されていることにより、Dockerfileを書き換えるだけですぐに開発環境が整います。これにより、環境構築工数の削減が期待できます。システムが長く使われ、使用言語のバージョンアップが必要になった際も、既存の環境を捨てて新しい環境をすぐ再構築できます。
また、MacやWindowsといった開発端末間の差異を気にせず、メンバー間で統一された環境を使って開発に取り組めるのも、大きなメリットです。
開発環境をメンバーと共有できる
Spaceでは、現在開発中の機能の開発環境リンクを取得し、チームメンバーに共有することができます。コードを書いたら、開発チームはそのコードの品質を担保しなければいけません。この機能はそういった場面で効果を発揮します。
開発環境リンクを受け取ったメンバーは、手動による動作確認を実施し、テスト結果を開発者にフィードバックすることができます。これにより、バグの早期発見および品質向上が期待できます。コードレビューや単体テストではバグを検知しきれないような細かい修正に対して、メンバー間でのダブルチェックを手軽に行えるようになりました。
Gitベースのリポジトリ機能が使える
Spaceでは、さながらGitHubやAzure DevOpsのように、チームでの効率的な開発に必要となる機能を提供しています。具体的には、下記のようなことが実現できます。
ソースコードのバージョン管理
コードレビュー
継続的インテグレーション/継続的デリバリー機能
パッケージ管理
【参考】: ソフトウェア開発 - 機能 | Space
JetBrains Fleetの料金形態
統合開発環境としてのFleetを利用するための料金体系については、公式な発表はまだありません。IntelliJ IDEAには無料版の「Community」と有償版の「Ultimate」が提供されていたことから、Fleetにも無料/有償版の区別がある可能性があります。
一方で、クラウド開発環境Spaceおよび、開発環境の利用料金については、以下のように料金体系が公開されています。
JetBrains Spaceの料金形態
Spaceの料金形態はサブスクリプション型で、4種類あります。以下に、有効な1ユーザあたりの料金を示します。
Freeプラン...無料
Teamプラン...930円/1か月
Organizationプラン...2,300円/1か月
Enterpriseプラン...11,400円/1か月
Free・Teamプランは、料金負担が少ない代わりに1ユーザが使用できる開発環境数に制限があります。一方、Organizationプラン以上では1ユーザが無制限に開発環境を構築・複製することができます。ある程度大人数のチーム開発でSpace開発環境を有効活用するためには、Organizationプラン以上でSpaceを購入する必要がありそうです。
Spaceの料金形態および提供される機能に関して、詳細は以下をご確認ください。
【参考】: Space Cloudの価格
Spaceで用いる開発環境の利用料金
Spaceを利用する際、サブスクリプション料金とは別に、利用する開発環境とストレージにも料金がかかります。
以下は各環境を1時間利用した時にかかる料金です。
Regularタイプ(4 CPU コア、8 GB RAM、40 GB ディスクドライブ)...0.4ドル
Largeタイプ(8 CPU コア、16 GB RAM、40 GB ディスクドライブ)...0.8ドル
Extra Largeタイプ(16 CPU コア、32 GB RAM、40 GB ディスクドライブ)...1.6ドル
ストレージ(1GB)...0.008ドル
ストレージ以外の開発環境は30分以上利用されていない場合自動で停止し、課金は停止されます。
ストレージには常に料金がかかります。
開発環境およびストレージにかかる料金に関して、詳細は以下をご確認ください。
【参考】: JetBrains IDEを含むリモート開発用 Space コーディングワークスペース
JetBrains Fleetの最新情報に今後も注目しましょう
本記事では、JetBrains社が発表したFleetの最新情報を、機能と料金形態の観点からまとめました。
なお、Fleetの試用版ユーザ募集が行われていましたが、現在は終了しています。
Fleetは2021年11月末に発表されたばかりの最新プロダクトです。正式リリースもされていません。従来のIntelliJ IDEAに対して、更なるチーム開発の効率化を目的とした機能が多く追加されています。
Fleetがリリースされた暁には、GitHubなどの外部ツールに頼ることなく、チームでの開発作業の全てをFleetで行う未来が来るかもしれません。JetBrains社の今後の発表に注目していきましょう。
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