「Project Neo」は「OutSystems」の進化系の開発コード名
OutSystems社が2021年11月17日に、同社のローコード開発プラットフォーム「OutSystems」の次世代版「Project Neo」を発表しました。このProject Neoは、コンテナやクラウドを活用し、マイクロサービス化をして展開を図る予定です。
このProject Neoが私たちエンジニアの仕事にどう影響してくるのかを知るために、この記事では、ローコード開発とは何か、OutSystemsは何者なのかなど、皆さん方の素朴な疑問に答えていきます。
「Project Neo」の概要
「Project Neo」は、ローコード開発プラットフォームで世界最大のOutSysyems社の製品である「OutSystems」の進化版です。既存のOutSystemsはWindows Server仮想マシン上で動きますが、Project NeoはLinuxコンテナ・Kubernetesを利用し、Amazon EKS上で動作します。
また、開発プラットフォームはマイクロサービス化され、プラットフォームはサービスごとに分割されます。現行製品のOutSystemsは今後も併売されるため、結果としてAWSクラウド利用はProject Neo、オンプレミス利用はOutSystemsといった選択になっていくでしょう。
「Project Neo」の特徴
現行のOutSystemsとProject Neoの違いをまとめると、以下の通りです。
サービス名 「OutSystems」 「Project Neo」 データベース : Oracle DB・SQL Server Amazon Aurora PostgreSQL データ格納先 : あらゆるRDB Amazon S3、Amazon DocumentDB セキュリティ : 非統一 コンテナスキャニング、AWS WAF リージョン : 限定 AWSのグローバルなルーティング利用で広範囲 Webコンテンツ : ユーザー任せ CDN活用により世界規模に対応 遠隔監視 : - Open Telemetry標準準拠の監視機能
以上のように、Project NeoはベースをOutSystemsとしながらも、AWSとの連携によって、可用性・スケーラビリティ・セキュリティ・運用性などで進化をしています。
【参考】:コード名Project Neo
そもそもOutSystemsとは
ここまで、Project Neoについてご紹介してきましたが、Project NeoのベースとなっているOutSystemsと、その開発元であるOutSystems社の概要について見ておきましょう。
OutSystems社とは
OutSystems社は2001年にポルトガルで設立されたソフトウェア企業で、現在は米国マサチューセット州のボストンに本社を構えています。世界11カ国にオフィスを構え、日本ではOutSystemsジャパンが設立されています。OutSystems社はCISQ(ITソフトウェア品質コンソーシアム)のメンバー企業でもあり、ITソフトウェア業界では発言力を有しています。
OutSystemsとは
冒頭でも紹介した通り、OutSystemはローコード開発プラットフォームで、高速開発を実現してくれます。一言で言えば、OutSystemはシステムの設計からデプロイ、運用までが1つになったサービスです。OutSystemsはコードを書く必要はほとんど無く、モデル(GUIで作成する設計書)を作成するだけで自動的にコード(C#)が生成されます。
個人でも試せますので、興味のある方は無料トライアルにエントリーしてみると良いでしょう。 【参考】:OutSystems無償トライアル
OutSystemsの導入事例
OutSystemsは大手企業を中心に数多くの導入事例があり、同社のサイトで公開しています。海外では大手保険会社の「AXA」や世界最大の人材サービス会社「randstad」など名だたる企業が導入をしています。国内でもすでに400社を超える企業が採用しているなど、注目度が高まっています。
OutSystemsの強み
ローコード開発のツールはいくつかありますが、ここではOutSystemsが特に優れた面(強み)について見ていきましょう。
管理機能の充実
OutSystemsは管理機能を重視しており、Active DirectoryやLDAP、さらにはAzureADなどと連携し、アプリケーションの構成管理、権限管理などを行えます。
外部連携に強い
OutSystemsはユーザーの既存システムとの連携に加え、追加設定を必要とせずに400以上のシステムと連携が可能です。この連携でも、基本的にコーディングは必要ありません。
修正・変更が容易
OutSystemsはAIツールを搭載し、反復タスクを除去してくれます。また変更管理やレビュープロセスを自動化してくれるため、変更作業が簡単かつ迅速に行えます。
複雑なコーディングが不要
OutSystemsではこれまでのようなハンドコーディングが不要となり、プロセス設計・インターフェース設計・ロジック設計・データ設計の4つのレイヤーの設計を行うだけでソフトウェアが自動生成されます。
ローコード開発とは?
OutSystemsがローコード開発のプラットフォームであることは説明しましたが、ではローコード開発とは何なのでしょうか?ローコード開発にはどんなメリットやデメリットがあるのかについても見ていきましょう。
最小限のコーディングによるソフトウェアの開発
ローコード開発とは、その名の通り最小限のコーディングだけでソフトウェアの開発が行える手法や支援ツールを指します。アプリケーション開発では、設計以外に大きな工数を取られるのがプログラムのコーディングですが、ローコード開発では圧倒的に少ないコードでアプリケーション開発ができます。
では、これらのメリット・デメリットを具体的に見ていきましょう。
ローコード開発のメリット
ローコード開発の目的は、ソフトウェア開発の工数削減とハードルを下げることにあり、ローコスト開発のメリットは以下の通りです。
1.システム開発工数の削減、納期短縮 2.システム開発に関わるコストの削減 3.エンドユーザーによるシステム化の支援
特に3.は大きな意味があると考えられます。エンジニア不足が叫ばれる中、ローコード開発を採用すれば、ある程度ITリテラシーのあるユーザーであれば内製化が可能な点です。
ローコード開発のデメリット
ローコード開発は予め機能が決められています。ツールとして用意されているテンプレートやパーツはそれら機能と紐づいているため、テンプレート利用だけでは設計が難しい場合には、別途設計やプログラミングを行う必要があります。あるいは、自動生成されたソースを解析し、直接修正するケースも想定されます。
この自由度の低さは、ローコード開発の最大のデメリットです。
ローコード開発で必要となるスキル
ローコード開発によって、プログラミングのコーディング自体は大幅に減りますが、逆に上流工程であるシステム設計の精度が問われます。ローコード開発によって必要となるスキルは以下の通りです。
▪業務分析スキル ローコード開発では、コーディング以外にシステム設計フェイズも一部自動化、合理化がされますが、経営分析・業務分析・ユーザーニーズ分析は省略できません。この要件分析を疎かにすると、自動生成されるソフトウェアの出来栄えにも悪影響があります。
▪業務中心のデータ思考能力 有効なアウトプットを得るには、必要なインプット・有用なインプットの設計が前提です。この有効なアウトプットを決める上では、システム側の視点ではなくユーザー視点が欠かせません。業務中心のデータ思考能力が今まで以上に求められます。
「Project Neo」の課題
Project NeoはOutSystemsの進化系であり、Project Neoのリリースも2022年が予定されているため、まだその詳しい仕様を知ることはできませんが、OutSystemsの現状から浮かび上がる課題は以下の通りと考えられます。ただし、以下の課題は普及度合いや時間の経過によって解消していく可能性が高いため、参考程度に理解しておいてください。
日本語対応が不十分
OutSystemsは日本語対応が十分とは言えませんので、1度に詳細を把握することは難しいでしょう。ブラウザの自動翻訳機能を使えば、英文マニュアルでもある程度は使えますが、専門用語の誤訳や、的外れの可能性があるため、英語に強いエンジニアを確保した方が近道です。
日本国内にコミュニティが少ない
OutSystemsは急速に日本国内にも導入が進み始めていますが、OutSystemsに関する日本語のコミュニティが少なく、サポートを得るには「OutSystems」のパートナー企業やディーラーの有償の導入支援が必要です。中小企業ではこれが導入のハードルとなりかねません。
「Project Neo」の可能性とエンジニアとしての関わり方
日本は「2025年の崖」問題を抱えたままです。新型感染症が懸念される中でDX推進プロジェクトの開始を止めた企業もあり、時間的な余裕は無くなりつつあります。このため、問題解決に「Project Neo」が採用される可能性はさらに高まっています。
エンジニアの皆さんもOutSystemsやProject Neoを採用した開発プロジェクトに関わる機会があるかもしれません。ローコード開発というと、うさん臭く感じたり、エンジニアの敵だと考えたりする人もいるかもしれませんが、逆にローコード開発を使いこなせるエンジニアが重宝される時代がやってくる可能性もあります。
これを機会に、ローコード開発に関する理解を深めてみてはいかがでしょうか。
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