【地方×エンジニア育成】名古屋発ゲーム会社『ワンダープラネット』はいかにして“業界未経験者”を育てるのか
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【地方×エンジニア育成】名古屋発ゲーム会社『ワンダープラネット』はいかにして“業界未経験者”を育てるのか
アンドエンジニア編集部
2021.12.22
この記事でわかること
名古屋にはゲーム会社が少なく、業界経験者を採用することは難しい
大切なのは、いかに業界未経験者が活躍できる環境をつくるか
ワンダープラネットには多様なキャリアの実現が可能な環境がある

コロナ禍により地方移住が注目を集める一方、大都市一極集中は依然歯止めがかからない状況が続いています。IT人材不足や人口減少が叫ばれる日本では、特に地方企業にとって「いかに優秀なエンジニアを確保していくのか」は重要な経営課題のひとつと言えるかもしれません。

IT分野は特に会社・人・情報などが、東京や大阪に集中する傾向にあります。国の統計「経済センサス」によれば、ゲームソフトウェア企業の約8割は首都圏や近畿を主戦場としています。そのようななかで、地方に拠点を置くIT企業は、どのようにして人材確保・育成の活路を見出していけばいいのでしょうか。

この記事ではそのヒントとなる「ワンダープラネット株式会社」の取り組みを紹介します。ワンダープラネットは名古屋に本社を置き、今年、東証マザーズに上場をしたスマートフォン向けゲームの企画・開発・運営を行う企業です。全世界で1300万ダウンロードされているパズルRPG 『クラッシュフィーバー』、週刊少年ジャンプの人気キャラクターたちが登場するパズルゲーム『ジャンプチ ヒーローズ』などのスマホゲームを手掛けています。

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全世界で1300万ダウンロードされているパズルRPG 『クラッシュフィーバー』

ゲーム開発経験者の採用難という課題を抱え、それを解決するために「業界未経験者の人が活躍できる環境づくり」に力を入れています。今回は、名古屋発のゲーム会社として注目を集めるワンダープラネット執行役員VPoE兼EDMO室長の開さん、名古屋スタジオ開発グループ長の桐島さんにいろいろなお話を伺いました。

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執行役員VPoE 兼 EDMO室長:開 哲一さん(左) / 名古屋スタジオ開発グループ長:桐島 昌吾さん(右)

これまでゲーム業界で働いてきた方はもちろん、「ゲーム開発に携わってみたかったけれど、別の業界で仕事をしている」「経験はないけれど、ゲームづくりに携わってみたい」、そんなエンジニア・プログラマーの方にもきっと参考になるはず。ぜひご一読ください!

ワンダープラネットは、社長の地元である名古屋で創業した

アンドエンジニア編集部

ゲーム会社って東京や大阪に集中していますよね。 そもそも、どうして名古屋に本社を置いているのでしょうか。

桐島 昌吾

当社の社長の常川が名古屋出身で、創業当時は名古屋にはゲーム会社やスタートアップ企業は多くなく、地元の優秀な人材が東京や大阪へ流れてしまう状況でした。 名古屋に数少ない業種で世界で活躍する会社を作ることができれば、雇用も含めて地元に貢献できると意義を感じて、名古屋で事業をはじめたのがルーツです。

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ワンダープラネット株式会社 名古屋本社
アンドエンジニア編集部

なるほど。本社は名古屋ですけれど、東京にも拠点がありますよね? 従業員の人数はどちらが多いのでしょうか?

桐島 昌吾

名古屋は131人、東京は73人で、名古屋のほうが多いです。 名古屋本社には名古屋スタジオ、東京オフィスには東京スタジオが置かれ、スタジオ制での開発体制をとっています。東京のスタジオは名古屋スタジオ同様、プロダクトの開発も行いますが、グローバル事業の拠点という位置づけもあります。

アンドエンジニア編集部

名古屋スタジオには東海圏出身のエンジニアの方も多いのでしょうか?

開 哲一

多いですね。名古屋スタジオに所属する社員の87%は、東海3県出身者ですね。 やっぱり地元で就職したいというニーズは一定数あります。

アンドエンジニア編集部

地元就職人気ってありますよね。新卒入社だと、情報・技術系の大学や専門学校を卒業されている方が多いのでしょうか。

開 哲一

そういう方が多いですね。 中途でいうとUターンで戻ってきたという人もいます。

アンドエンジニア編集部

IT系企業への就職・転職を考える時、まず頭に思い浮かぶのは東京、次に大阪ですよね。 名古屋に拠点を置くからこその、採用面での難しさはありますか?

桐島 昌吾

先ほどもちょっと触れたのですが、名古屋にはゲーム会社自体が多くなくて。だからゲーム業界経験者の絶対数が少ないんです。 この点は組織づくりにおいて、一番の難しさかもしれません。

ゲーム業界未経験者を採用し、育成していくサポート体制を構築

アンドエンジニア編集部

それは確かに悩ましい…それでも、会社を大きくしていくには人は不可欠です。 今名古屋には100人を超えるメンバーがいらっしゃるとのことでしたが、どのような工夫をして人を増やしていったのでしょうか。

桐島 昌吾

業界経験者が少ない、と言いましたが、だからこそいかに業界未経験の方が活躍できる環境をつくるかが大切だと思っています。 ゲーム業界にチャレンジしたかったけど、企業が多くなかったがために選択肢がなく別の仕事をしている方も多いと思うんですよ。

アンドエンジニア編集部

そういった方の受け皿になるということですね。 名古屋のIT企業はみなさん、同じような課題を抱えられているのでしょうか。

桐島 昌吾

業界未経験の方にいかに活躍してもらうか、という点は共通していると思います。

アンドエンジニア編集部

そうなんですね……ゲーム業界の中途採用って経験者ばかりなイメージでした。たとえばワンダープラネットさんにはどういったバックグラウンドを持った方が入社されているのでしょうか。

桐島 昌吾

製造業出身の方が多い傾向です。 たとえスマホゲームやソーシャルゲームの開発経験がなくても、エンジニアとしての基礎スキルをしっかりと身につけている方は早期に活躍しています。

桐島 昌吾

特に、サーバーエンジニアの方は、めちゃくちゃ成果を出しています。 この事実は多くの方に知ってもらいたいです!

アンドエンジニア編集部

業界未経験で成果を出せるというのは凄いですね!例えば、ゲーム業界未経験のサーバーエンジニアの方は、どのように活躍をされているのでしょうか? ゲーム業界ならではの技術が求められるシーンも多そうな印象です。

桐島 昌吾

確かに、ゲーム開発ならではの技術もあります。 でも、クライアントアプリからのリクエストを受け付けるサーバAPIの実装に関して言えば、他のWebシステムとの共通点が多いです。

桐島 昌吾

サーバー以外でも、ウェブベースのゲーム運用ツールをつくることも多いのですが、その場合も製造業でよく使われる管理画面のようなものなので仕事をする上で違和感が少ないと思いますね。

アンドエンジニア編集部

ゲームを運用するためのツールというのは、具体的にどのようなものでしょうか?

桐島 昌吾

カスタマーサポート用のツールであったり、バグや動作を確認するQAツールだったり。 そういったウェブツールは、製造業にも通ずるところがあると思います。

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上記のような管理ツールを活用してゲームを運用
アンドエンジニア編集部

「業界未経験の方が活躍できる環境をつくる」と仰っていましたが、業界未経験の社員に対する、教育環境はどうされていますか? 

桐島 昌吾

メンターとトレーナーがついて、業務面・キャリア面の双方からサポートできるような体制を構築しています。 

桐島 昌吾

オンボーディングの仕組みにも力を入れていて、業務だけでなく組織にもなじめるようなサポートを行っています。 入社後の短期的な育成ロードマップをつくり、短期間で成長機会をいかに創出するかを意識しています。 

アンドエンジニア編集部

オンボーディング……個人にあわせたサポートをする取り組みのことですね。 個人にあわせた働き方といえば、ここ1,2年でリモートワークがよく話題に挙がるようになりましたよね。2021年11月現在、ワンダープラネットさんの勤務形態は出社・リモートどのような比重になっているのでしょうか? 

桐島 昌吾

現状(※)は、週1日出社で残りの4日は任意リモートワークです。 ※2021年11月時点

アンドエンジニア編集部

週4リモートワーク!徐々にリモート日数を減らしていっている企業も少なくないイメージだったので、ちょっとビックリしました。リモートワークでコミュニケーション上の弊害はありませんか? 

桐島 昌吾

コロナ禍で初めて緊急事態宣言が出た直後に、強制的にリモートワークになった時はコミュニケーション面での課題がありましたね。 でも、今はセクションやスタジオを越えたコミュニケーションも多くなっていて、とてもうまくいっていると思います。

 

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オンラインで気軽にコミュニケーションがとれる空気感
開 哲一

おそらく、チャットやビデオ通話、バーチャルオフィスで会話することにみんなが慣れたんだと思います。 それまで東京と名古屋は心理的な距離がありましたが、「あれ、結構気軽にオンラインでも話しかけていいんだ」とみんなが気づいたイメージです。

アンドエンジニア編集部

それは素晴らしいですね。 オンラインだからこそコミュニケーションの深みが出たということですね。 

開 哲一

週1日の出社日はチームビルディングの活動に力を入れていて、例えばOKR(Objectives and Key Results:目標と主要な結果)のウィンセッションを行ったり、お互いの人となりや職種を知るような活動をやったりしています。 個々が業務に集中して働く時間と、チーム一体で関係づくりをする時間、それを意図的に分けていますね

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チームビルディングの様子

エンジニアにも「当事者として、プロダクトの成長にコミットできるか」が求められる

アンドエンジニア編集部

業界未経験者が多く活躍しているというお話がありました。 そのような方がゲーム開発に携わるうえで気を付けたほうがいい点は何かありますか。

桐島 昌吾

一番大切なのはエンジニアが、「当事者」として事業に関わるということです。 

アンドエンジニア編集部

それはどういうことでしょうか?

桐島 昌吾

クライアントからの受託案件の場合、技術的な正しさを重視する発想になりがちです。 でも、事業会社のエンジニアにおいては、エンジニア視点でプロダクトの最適解をどう見つけるかというのが重要なスキルになります。

アンドエンジニア編集部

おっしゃる通り、サービスのクオリティを上げていくほど、会社の業績に直接ヒットしますもんね。

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週刊少年ジャンプの人気キャラクターたちが登場するパズルゲーム『ジャンプチ ヒーローズ』
桐島 昌吾

「言われたものを作るマン」ではないということです。 短期目線と中長期目線を持って、エンジニアとしてベストな提案が出せる。 そんな動き方が求められるので、慣れていないとその点に関しては戸惑いがあるかもしれません。

桐島 昌吾

そしてもう1点は、エンジニアとプロダクトとの距離感です。 ワンダープラネットでは、この距離が異常に近い。

アンドエンジニア編集部

距離が異常に近い?それはどうしてでしょうか。

桐島 昌吾

プロダクトごとに体制は異なりますが、企画からリリースまでを完結できるチーム構成を基本方針にしているからです。 職種をまたいで、プランナー、デザイナー、クライアントエンジニア、サーバーエンジニアなどでひとつのチームを構成しています。

アンドエンジニア編集部

だからこそ、プロダクトの全体を俯瞰で見られる。 それゆえ目の前だけでなく、中長期的な視点も必要ということですね。

桐島 昌吾

自分たちがつくるものが、そのままプロダクトに直結します。 このような一貫性のあるゲームづくりの体制は、ワンダープラネットの特徴かもしれません。

桐島 昌吾

どんどん意思決定を進めていくような小さなチームは、プロダクトの成長にもつながりますし、メンバーの成長・育成という観点でも重要だと思っています。

会社としての中長期の成長を支えていく全社横断型組織「EDMO」

アンドエンジニア編集部

ワンダープラネット様は、2021年9月1日付で新しい組織体制へ移行されました。 そのなかで「EDMO(=Engineering and Design Management Office)」(呼称:エドモ)という組織を立ち上げられましたよね。 これにはどのような想いが込められているのでしょうか。

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特定のスタジオやプロダクトチームに所属をしない横断組織「EDMO」
開 哲一

中長期的な会社の成長のために、企業価値や働く人たちの市場価値をも高める技術育成を主導していくEDMOを立ち上げました

アンドエンジニア編集部

2021年6月のマザーズ上場が大きなきっかけとなったのでしょうか。

開 哲一

おっしゃる通りです。 それまではプロダクトの成長に軸足を置いていました。 エンジニアも含めて、「プロダクトを成功させるぞ」ということが最優先。

開 哲一

もちろんそれは変わりませんが、今後はもっと技術戦略に基づいた全社的な成長を考えていく必要があります。 そのために特定のスタジオやプロダクトに寄らず全社的かつ中長期的な視点でエンジニアリングやデザインを育てていくための組織がEDMOです。

アンドエンジニア編集部

EDMOは現在、どれくらいの人数で構成されているのでしょうか。

開 哲一

私が室長となり、メンバーは3名ほどです。 今後のビジョンを見据えて精力的に活動していますが、さらに活動の幅を広げていくためにEDMOのメンバーを積極的に増員したいと考えています。

アンドエンジニア編集部

各プロダクトチームに横串を通すのがEDMOということですね。 ただ、KPI管理や各部署とどこまで関係するのかという問題は、全社横断的な組織にありがちな課題だと思うのですが、そのあたり気を付けている点はありますか。

開 哲一

プロダクトチームとの距離感を大切にしています。 EDMOが「外の人たち」になりすぎてしまってもよくありません。 逆に開発チームと深く関わりすぎてもよくない。

アンドエンジニア編集部

「課題はEDMOに投げればいい」というような、便利屋になってはいけないということでしょうか。

開 哲一

そうです。 前提として、各課題はプロダクトチーム自身が解決することが大切です。 あくまでEDMOは、技術的な課題を解決するサポート役に徹します。

アンドエンジニア編集部

そのバランス感覚は難しいところではありますよね。

桐島 昌吾

プロダクトチームとしては、やはり事業にフルコミットしたい。 ただ、そのなかで高い難易度の技術的な課題もたくさん出てきます。

桐島 昌吾

そういう時はEDMOのサポートを受けることで、課題の解決につながる。 現状、プロダクトチームとEDMOはリスペクトし合える関係になっていると感じます。

アンドエンジニア編集部

お二人のやりとりを拝見していて、とても心理的安全性が高い会社だなと率直に感じました。

桐島 昌吾

心理的安全性を意図的に高めるための仕組み作りをしています。 コミュニケーションの質と速度を向上させることが狙いです。

桐島 昌吾

一人ひとりが気軽に率直に話し合える関係があれば、おのずと意思決定のスピードは上がっていきます。 さきほどの週1のチームビルディングの取り組みも、これにつながる話ですね。

2020年4月からフルオンライン選考を導入。未経験者でもたくさんの人が活躍している

アンドエンジニア編集部

コロナ禍で採用フローが各社大きく変わってきているかと思うのですが、ワンダープラネット様の場合はいかがでしょうか。

開 哲一

2020年4月からは説明会から内定出しまでをフルオンラインで行っています。 なので、内定通知まで一度も対面しないという方もいらっしゃいます。

アンドエンジニア編集部

そういった面では、間口が広がり優秀な人材を獲得できるチャンスは増えたということですね。

桐島 昌吾

フルオンライン選考で入社した方が組織になじみ成果を出すまでのスピードも早く、手応えを感じています。

開 哲一

名古屋でのエンジニア採用も進んでいるので、東京一極集中という状況に今後変化が見られるかもしれません。

ワンダープラネットには多様なキャリアの実現が可能な環境が揃っている

アンドエンジニア編集部

最後に、ゲーム業界で働きたいと考えている読者の方にメッセージをいただけますでしょうか。

桐島 昌吾

ワンダープラネットには長期運営タイトル、開発タイトルなどがあり、いろいろなフェーズの仕事に携わることができます。 プロダクトチームに加えて、EDMOという組織もあります。 多様なキャリアパスがあるのは、弊社の魅力のひとつです。

桐島 昌吾

地方で働くこと、ゲーム業界未経験ということに、不安や心配を抱く方は多いと思います。 だからこそ未経験でも成果を上げている社員などの情報発信を積極的に行っていきたいです。 弊社が、ゲーム業界に興味を持っている方のチャレンジの場となればいいなと思います。

アンドエンジニア編集部

ありがとうございます。 開さんはいかがでしょうか。

開 哲一

一人ひとり、自分なりのキャリアビジョンを持っていると思います。 ワンダープラネットにはそれが実現できる、広い受け皿があります。

開 哲一

技術育成や市場価値の向上など、技術戦略に基づいて業界の中でも技術に突出した部分を一緒につくっていくメンバーに一人でも多く出会えればと思っています。

開 哲一

名古屋にはゲーム会社が少ないといわれますが、人が集まってくればそれも変わると思います。 名古屋に魅力を感じて「働きたい」と言ってくれる人に対して、望むキャリアが実現できる環境を提供していきたいです。

アンドエンジニア編集部

新たなプロダクトのリリースも控えているので、今後の動向にも注目していきます。 お二方とも貴重なお話、ありがとうございました!

ワンダープラネット株式会社(WonderPlanet Inc.)

ライター

アンドエンジニア編集部
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