エンジニア必見! Docker Desktop有料化の影響と対策
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エンジニア必見! Docker Desktop有料化の影響と対策
アンドエンジニア編集部
2021.11.29
この記事でわかること
Docker Desktop有料化への対応は影響範囲を理解し、代替策を検討する必要がある。
Docker Desktop有料化にはデメリット以外に、プライベートレポジトリ無料利用などのメリットがある。
Docker Desktop有料化はオープンソースでは避けられない問題であり、日頃から意識をしておくこと。

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Docker Desktopの有料化とは

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コンテナ型仮想化ツールを提供するDocker社は、2021年8月31日にこれまで「無償提供をしてきたDocker Desktopの有料化」を発表しました。

直接的な影響はないとお考えのエンジニアの方が多いかと思いますが、実際のところはどうなのでしょうか?

このニュースを受け、既に「Docker Desktop」を商用利用、商用開発を行っている企業や職場では、有料化に向けた予算の確保、対応策の検討に入ったことでしょう。また読者の中には上司から、「Docker Desktop有料化の代替策を考えろ」と指示された方がいるかもしれません。

ここでは、「Docker Desktop有料化」について、その影響、デメリットとメリット、代替策などについて考察していきますので、エンジニアの皆さんはぜひ参考にしてみてください。

Docker Desktop有料化はいつから?

「Docker Desktop」の有料化は既に2021年8月31日より開始されていますが、有料化の対象企業の内、すでに「Docker Desktop」を利用中の企業は2022年1月31日までの猶予期間が設けられています。 それまでに有料で継続するのか、利用を停止するのかを決めなければなりません。

Docker Desktop有料化の背景

Docker社は2013年に「コンテナ型仮想化」を実現する「Docker」をリリースして一躍注目を集め、主にエンタープライズ向製品の提供によって成長してきました。 しかし、仮想化製品の雄であるVmware社との競争に打ち勝つまでは至らず、2019年11月に、これまで注力してきたエンタープライズ向け製品群をMirantis社に売却し、ディベロッパー向けツールの開発と販売に舵を切ったと発表しました。 同社の大きな収益源であったエンタープライズ製品を売却したことから、「Docker Desktop」の有料化に踏み切ったと目されています。

Docker Desktopとは

Dockerは、コンテナ型仮想化を実装するためのツールであり、Docker社によって開発され、公開されているオープンソースのソフトウェアです。 Dockerを利用すると1台のコンピュータ上に、それぞれが完全独立した複数の仮想実行環境を構築できます。それぞれの隔離された実行環境を「コンテナ」と称します

Dockerには主にクラウドで利用される「Docker Enterprise」という製品がありましたが、 売却され、現在は「Mirantis Container Cloud」や「Mirantis Kubernetes Engine」の名称でMirantis 社から販売されています。

一方「Docker Desktop」はWindowsやMacなどのデスクトップ製品として、主にシステム開発の現場で、特に「コンテナ」開発の分野で広く利用されており、Docker社の中核事業となっています

Docker Desktop有料化の影響

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システム開発で利用される「Docker Desktop」の有料化の内容、影響範囲などについて確認しておきましょう。

Docker Desktop有料化の範囲

これまで無料提供されていた「Docker Desktop」は、次の2つの条件のいずれかに該当する場合には有料となります。

▪従業員250人以上

▪年間売上高1,000万ドル(約11億円)以上

ただし、個人での利用、教育機関での利用、非商用オープンソースプロジェクトでの利用に限り、引き続き無料で提供されます。

Docker Desktopの新料金プラン

「Docker Desktop」は従来からビジネス利用に対しては一部有料プランが存在していましたが、新料金プランでは新たに「Pro」プランが追加され、中規模以上の企業でのビジネス利用に対する有料提供を明確にした形です。以下新プランの価格体系です。

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▪Docker Personal(旧Free):無料 (提供内容)プライベートリポジトリ1、DockerCLIを含むすべてのコンポーネント ▪Docker Pro(新設):5ドル (提供内容)プライベートリポジトリ無制限、Dockerイメージ取得5000回/日まで、並行ビルド5つまで ▪Docker Team: 7ドル (提供内容)最低5ユーザー以上利用、チーム数制限なし、並行ビルド15まで、ロールベースのアクセスコントロール、監査ログなど ▪Docker Business:21ドル(最小購入単位=50) (提供内容)Teamの機能に加えて集中管理機能、セキュア・ソフトウェア・サプライチェーン機能、※SAML SSOなどのエンタープライズ向け機能

【参照】:Docker公式サイト

※SAMLは「Security Assertion Markup Language」の略語で、SSO(Single Sign-On)実現のための仕組みです。

Docker Desktop有料化のデメリット

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Docker Desktopの有料化は、同製品を利用している大企業(従業員数250人以上、または年間売上高11億円以上)では直接影響を受けます。想定される影響やデメリットについて以下2つを挙げます。

ライセンス費用の支払いが新たに発生する

対象企業は一人当たり月額で5ドルから21ドルの費用が発生します。 たとえば、従業員数300人のソフトウェア開発企業の場合、月額5ドルのビジネスプランを選択すると、5ドル/月×12ヶ月×300人=18,000ドル/年(約200万円)のライセンス料が新たに発生します。 業績が芳しくない企業の場合、これは大きな負担増となります。また、こうした新たなコストを吸収するために、その企業の製品価格などに転嫁されることも想定されます。

代替策を講じても余分な手間や労力が掛かる

「Docker Desktop」以外の代替策は皆無ではありません。もちろん、「Docker Desktop」を含めてコンテナ仮想ツールを使わないという選択枝もありますが、これまで積み上げてきた「Docker Desktop」活用のノウハウを捨てるのは賢明な選択とは言えません。

他に代替策として「Podman」などのコンテナ型仮想化ツールを使うという方法もありますが、今まで活用してきた「Docker Desktop」を廃止し、新たなツールを導入するハードルは決して低くはありません。

新たな方式に切り替える際には、移行計画を策定し、テスト環境を構築してテストを繰り返し、利用マニュアルを作成し、従業員への教育を行うといった対応が必要となります。結局、これらに要する間接コストや労力を考えると、1人5ドル/月を支払ってでも、有料プランを申し込むのが正しい選択と言えます。

Docker Desktop有料化のメリット

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Docker Desktopの有料プランを選択する場合には、それに掛かる費用に関して上位者の決裁、承認が新たに必要となります。有料プランへの移行決裁を得るには、有料プランへの切り替えメリットを明示する必要があります。 ここではDocker Desktop有料プランへの移行メリットについて挙げてみましょう。

プライベートリポジトリを無料で利用できる

リポジトリとはソースコードを管理する単位のことです。リポジトリはソースコードの格納場所を意味し、一般に公開されるパブリックリポジトリと、関係者だけに公開が限定できるプライベートリポジトリがあります。 ソースコードを第3者に公開したくない場合には、プライベートリポジトリの選択が必要ですが、「Docker Desktop」有料プランではプライベートリポジトリを無制限に利用可能です。

クラウド系の開発では、有料のコンテナレポジトリサービスを利用するケースが想定されますが、例えばAWSのAmazon Elastic Container Registryを利用すると1GB/月額 0.10ドルの費用が発生します。

しかしDockerHubのプライベートレポジトリを利用すれば、その月額料金内で無制限に利用できるため、プライベートレポジトリに掛かる費用を実質ゼロにできます。

自動ビルドサービスが利用できる

自動ビルドとは、一般的にはユーザーが直接操作をしなくとも、自動的にサーバ上でコンパイルやテスト環境への登録を行ってくれる機能のことです。 「Docker Desktop」有料プランでは『DockerHub』にコンテナレポジトリサービスを移行すれば、※「Github」と連携する自動ビルドサービスを利用できます

この機能は、「Github」にアップロードされたDockerFileからDockerビルドを実行し、Dockerイメージを自動的にビルドする機能です。

※Githubは世界的なオープンソースソフトウェア開発のプラットフォームで、保存や公開を行っています。

Docker Desktop有料化の教訓を活かす

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今回起きた「Docker Desktop」有料化の問題は、オープンソース製品ではありがちな問題事例です。オープンソースを利用するのは大いに結構なことですが、オープンソース提供組織の運営が成り立たなくなった時に、有償提供が不可避となります。

こうした時の対策を日常から講じておくことが重要です。経験の浅いエンジニアの皆さんには少し難しい話になってしまったかもしれませんが、日頃から問題意識を持ち、自らの問題としてとらえる習慣を身に付けておきましょう。

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