RPAとは
最近RPAとAIという言葉をよく耳にし、両者を混同している人もいますが、両者は明らかに異なるものです。ここでは、RPAとAIの特徴や違い、メリットやデメリットを考察しながら、RPAとAIについて掘り下げます。
RPAとは業務自動化ツールのこと
RPAはRobotic Process Automationの略語で、一言で表すと「人の代わりに仕事をしてくれる自動化ツールのこと」です。RPAは'デジタルレイバー'(Digital Labor)や'仮想知的労働者'と表現されるケースもあります。
RPAが得意とするのは、
・手順が決まっている定型業務
・反復して行うルーティンワーク
などで、主にはPC上で行う事務作業分野での利用が進んでいます。
RPAを機械のロボットをイメージしてしまいがちですが、RPAは広義の意味でのロボットです。
また、RPAはよくExcelマクロと対比されがちですが、マクロはExcel上で動作し、Excelの制約を受けるため、どうしても処理できる量には制限があります。一方、RPAはPCやサーバー上で動作するため、マシンスペックによっては高速で大量の処理を行うことが可能です。
RPAのメリット
RPAは2020年の総務省調査:AI・RPAの利用推進についてによると、地方自治体の68%が導入済であり、RPAは導入しやすく、効果を得やすいツールだということが分かります。以下、そのRPAのメリットを列挙してみましょう。
1.業務の費用を削減できる
RPAはツールの利用が一般的ですが、単純作業や反復作業をRPAツールに覚え込ませると、人の処理速度の10倍以上のスピードで業務を処理します。しかも、年中無休、休むことも退職することもないため、業務に掛かるコストを大きく削減できます。
2.判断ミスや誤入力を防げる
RPAは決められたことを決められた通り行うため、判断ミスや誤入力を防げます。また、長時間の作業も可能であり、さらに結果の検証まで自動で行うことが可能ですので、仕事の精度が上がります。
3.仕事の質を上げられる
単純作業をRPAに置き換えることで、人はより高度な判断業務、営業活動などに時間を割くことができます。結果、仕事の質が上がり、全体の生産性を高めることが可能です。
RPAのデメリット
RPAにはデメリットと言えるほどのものはありませんが、強いてあげるならば、以下の2つがあります。
1.属人化してしまうと失敗する
RPAに仕事を教え込むのは人間です。その人が退職した場合、何か問題が起きた時に対処するのに時間が掛かります。RPAを利用する場合は、そうした事態を想定して、業務マニュアルの作成や引継ぎをきちんと行っておかなければなりません。
2.業務の変更に柔軟に対応できない
業務の自動化は大変便利で、メリットも多いのですが、一方で業務がブラックボックス化するリスクがあります。運用変更の際に、業務が見えないために、RPAが記録した業務の変更に手間取ります。RPAを導入する場合は、今の仕事のやり方がベストなのかどうか、今後変更する可能性がないのかについてよく確認しておく必要があります。
AIとは
RPAについての理解は整理できたでしょうか?続いてAIについて見ていきましょう。ここでは、AIの概念について再認識をしてください。
AIとは人工知能のこと
AIは日々進化しており、その定義はまだ定まっていませんが、大まかな定義としては、AIは人工知能のことです。AIはコンピューターですが、単なるコンピューターとAIの違いは、「学習・推論・判断」といった機能が備わっているか否かの違いです。
AIはコンピューターにはできない学習・推論・判断を行えるため、人の作業や思考を肩代わりすることが可能です。またAIには感情がありませんが、24時間365日不眠不休で働ける点は人には真似ができないことです。
AIのメリット
AIのメリットを以下に挙げます。RPAのメリットと対比させながら読み進めてください。
1.肩代わりできる人の仕事の範囲が広い
AIはRPAと同様に、単純作業・反復作業を行うのは得意ですが、自分で学習してスキルを高めること、推論すること、そして判断が行えるため、かなりの人の仕事を肩代わりすることが可能になります。
2.データの分析と予測
AIは膨大な量のデータを収集して分析したり予測したりすることに長けています。ビッグデータ解析と呼ばれるものは、まさにこれです。この分析や予測の能力は人を上回っており、経営やマーケティングなどで大いに役立っています。コロナ禍での人出の解析などもAIが行っています。
3.人の生活を便利にする
iPhoneのSiriなどはまさにAIです。Siriは人の言葉を理解して必要な情報を集めてくれますが、このような形でAIはすでに私たちの生活に入り込み、私たちの生活とAIは切っても切れない関係になっているのです。
AIのデメリット
以上のように大変便利なAIですが、AIにも解決すべき問題、すなわちデメリットがあります。
1.責任の所在が不明確
研究開発中の自動運転技術にAIが搭載されていますが、車の自動運転で事故が生じた場合に、その責任の所在が不明確です。AIと人の責任の分界点を明確にしていく必要があります。
2.AIの思考プロセスがブラックボックス化する
AIは自己学習しながら思考の精度を上げていくため、思考のプロセスは学習とともにブラックスボックス化していきます。AIの思考をモニタリングしたり、解析できるような仕組みを併せて用意しておく必要があります。
RPAとAIの違い
以上、RPAとAIの特徴やメリット、デメリットを述べてきました。その違いは理解されたと思いますが、両者の違いについて改めて整理しておきましょう。
RPAとAIの違いは手足と頭脳の違い
RPAは人が定めた業務のルールを教え込むと、教えられた通りに動きます。1度設定したタスクは何度も繰り返して実行でき、迅速にルーティンワークを正確にこなすことができます。RPAとは、人が行っていた手作業を代替するツールと言っても良いでしょう。
人体の部分で言えば、脳からの指令に従って動く手や足と同じです。
一方のAIは、人に代わってRPAなどのツールに指示をすることができます。さらに、AIは学習や判断ができるため、業務フローの見直し・改善を提案することもできます。
以上の通り、RPAは人の作業を行う手足であるのに対し、AIは人で言えば「頭脳」に当たるといえます。
では、AI搭載のOCRはRPAでしょうか?OCRそのものが自動的に書類を読み取ってデータに変換するのであれば、AI-OCRはRPAと言えます。
RPAとAIを組み合わせる
人の手足に相当するRPAと脳に当たるAIを組合わせることで、かなり人間に近い動きをさせることが可能となります。
現在、多くの企業で事務作業を中心に導入されているRPAは「クラス1」とも呼ばれる簡易的なものです。
クラス2(別名EPA:Enhanced Process Automation)になると、AIの機能を取り入れ、非定型作業の自動化・言語解析・画像解析・音声解析・マシーンラーニング技術などに機能がアップします。iPhoneのSiriなどは、クラス2のRPAと言えるでしょう。
さらに、クラス3(別名CA:Cognitive Automation)になると、高度のAIとRPAが融合し、ブロセス分析・改善・意思決定までを自ら行えるようになります。
RPAとAIの組み合わせの事例
クレジットカードの新規申し込みで、免許証写真とスマホの入力情報を対話型のAIで収集し、そのデータを自動審査(信用情報と自動突合)に廻して、自動的にクレジットカードを発行するといったRPAが実用化しています。このような、ほぼ無人でクレジットカード発行を行っている事例があります。金融業界では、急速にAIとRPAを連携させて自動化が広がっています。
最終的な承認行為は人が行いますが、それ以外はほぼ自動化され、人的業務の大幅な改善とスピードアップを実現しています。経理業務・コールセンター業務・コンシェルジュ業務も大半はAIとRPAで対応できるようになってきており、今後急速にRPAに業務が移行していくことでしょう。
AI時代を迎えて、エンジニアとしてさらなる活躍を目指そう
最後に、RPAエンジニアの仕事とAIエンジニアの仕事の内容について紹介します。
RPAエンジニアの仕事
1. RPAコンサルティング
RPAは、定例業務を代替するロボットソフトです。企業がRPAを導入する上で、何を・どの範囲で自動化するのか・RPAが行った作業の結果を誰が確認し、承認するのかといったワークフローや役割分担などを新たに決める必要があります。また、RPAに任せられる仕事か否かについても判断が必要です。
RPAコンサルティングは、RPA導入希望の企業に対して、ヒアリング・提案・見積もりなどを行う仕事です。
2.RPAの構築・保守・運用
RPAツールやRPAアプリケーションの設計・開発・保守・運用を行うのが、RPAエンジニアの仕事です。
RPAの構築においては、よく知られたWinActorなどのRPAツールを利用したシナリオ設計、製造に加えて、RPAの主要開発言語であるVB.NETやVBScriptなどを用いたRPAの機能拡張を行います。
AIエンジニアの仕事
1.機械学習エンジニア
機械学習エンジニアは、主にプログラミングを担当するAIエンジニアで、プロジェクトに応じて機械学習システムの開発や、プログラムの実装を担当します。プログラミング言語としては、汎用的プログラム言語のPython(パイソン)の知識や経験が求められます。
2.データサイエンティスト
データサイエンティストは、AIエンジニアの中でもアナリティクス分野を担当するエンジニアです。
ビッグデータの解析・分析・得られた結果からビジネス改善の提案や、施策立案を行います。AIに関する知見に加え、データ分析のプログラミング能力・統計学・問題解決を図れるコンサルティング能力なども求められます。
機械学習エンジニアの役割に加えて、次のデータアナリストとしての役割を持ち合わせていることが求められます。
3.データアナリスト
データアナリストも、データサイエンティストと同じくアナリティクス分野を担当するAIエンジニアです。
データサイエンティストと重なる部分もありますが、よりデータ分析に特化したエンジニアです。
ユーザー動向や将来に想定されるユーザーニーズなどを分析し、仮説の検証を行いながら、問題解決やサービスの改善の提案を行うのが主な仕事です。
RPAとAIに強いエンジニアを目指そう
RPAとAIについて解説してきましたが、興味は湧いたでしょうか?RPAエンジニアもAIエンジニアも、どちらもこれから非常に有望な職種です。それぞれの仕事の内容を理解し、自身の適性や興味を勘案し、ぜひあなたのキャリアパスに含めてみてください。
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