JavaScriptとJavaの違いを聞かれたら、どう答えるか?
「JavaScript」と「Java」は、名前が似ていても「全く違うプログラミング言語」だということはエンジニアにとっては常識です。
しかし「JavaはJavaScriptの略称だ」などと誤解している専門外の人に、分かりやすく説明するのは結構厄介です。それは、例えば大阪弁と名古屋弁がどう違うのかを説明するよりも、英語と日本語がどう違うのかを説明する方が難しいことに似ています。違いがありすぎて、何から説明して良いか迷うからです。
もしも専門外の人に「JavaScriptとJavaはどう違うの?」と聞かれたときは、以下のように分かりやすく説明しましょう。
違うものなのに、なぜ名前が似ているのか
JavaScriptとJavaは、名前は似ているけど全く別ジャンルのプログラミング言語です。「なぜ似た名前なのか?」と思いますよね。それには、次のようないきさつがあります。
Javaは、1991年にS社が開発したプログラミング言語です。JavaScriptはその4年後にN社が開発したプログラミング言語で、当初はLiveScript(ライブスクリプト)という名前でした。しかし、N社がS社と業務提携したのを機にLiveScriptを「JavaScript」と改名したのです。N社としては、S社と親戚関係になったのだからと、人気のあるJavaにあやかったのでしょうが、それが紛らわしさの原因となりました。
もし業務提携していなかったら、北海道の銘菓「白い恋人」が吉本興業の「面白い恋人」を訴えたような騒ぎになっていたのかも知れません。
JavaScriptとJavaはどこが違うか
コンピュータ上で作動するシステムやサービスを作る言語がプログラミング言語ですが、この言語にはおよそ200種類もあり、コンピュータの種類や作るシステムによって用いる言語が違います。
JavaScriptとJavaは、どちらも人気のあるメジャーなプログラミング言語だという共通点を除けば、仕事の種類は全く異なっています。例えるなら、同じ建設業者でも測量技師と外装業者ほど、お互いにかけ離れた存在です。
JavaScriptが使われる分野
JavaScriptは、Webサイトの画面で文字や画像にさまざまな動きを与えるプログラミング言語です。
Webサイトを見ているときに突然現れる「ポップアップ広告」や、画像がクルクルと入れ替わる「カルーセル広告」などの動きを表現するのがJavaScriptの得意技です。
「HTMLで文章を書き、CSSでレイアウトする」がWebサイトを作るときの基本中の基本ですが、CSSで文字に色をつけるだけでは面白くない、ユーザーに煩わしがられる広告を楽しいものにしたいなどの理由で重宝されているのがJavaScriptで、ほとんどのWebサイトで使われています。
Javaが使われる分野
もう一方のJavaは、ユーザーが目にする表舞台で活躍するのではなく、システムの土台を作る裏方を担当します。例えば銀行や証券会社など、コンピュータなしでは機能しない会社の業務システムを構築するのに用いられています。ECサイトや旅行やグルメの予約サイトもJavaです。
また、Androidのアプリ開発やTwitterなどのSNSもJavaを使って作られています。
「フロントサイドとサーバーサイド」という言葉を聞いたことがあると思いますが、JavaScriptはユーザーの目に触れるフロントサイドで、Javaは一般の人の目に触れないサーバーサイドで活躍する言語です。
JavaScriptとJavaがどちらも人気者な理由
中身をよく知らない人がJavaScriptとJavaを混同することがあるのは、どちらも専門外の人でも耳にする機会が多い人気のプログラミング言語だからです。その人気の理由とは何かを見てみましょう。
Javaが人気者なのは、働く環境を選ばないから
プログラミング言語の多くは、Windowsでは使えるがMacやLinuxでは使えないなど、働く場所が限られています。しかし、Javaで作ったプログラムなら環境を選ばない汎用性・融通性があります。
Javaにこのような融通性があるのは、JVL(JAVA仮想マシーン)と呼ばれる翻譯機能が備わっているからです。いわばマルチリンガルの通訳と一緒に仕事ができるのが、Javaです。「Write once, run anywhere(一度書いたら、どこででも作動する)」は、Javaの特徴を一言で表している言葉です。
また、この汎用性・融通性はエンジニアとって「Javaが使えれば作れるシステムの種類、参加できるプロジェクトの数が多い」というメリットになります。
JavaScriptが人気なのは、魅力的なパフォーマンスを表現できるから
Webサイトを作るエンジニアやデザイナーは、多くの競合サイトから自社サイトを際立たせることを常に考えています。ややもすると、迷惑者扱いにされる広告を楽しいものにするのも重要なテーマです。そんなエンジニアに重宝されているのが、サイトに魅力的な動きを与えるJavaScriptです。
さらに、Google Mapは逐一更新しなくても、フォーカスしている位置をずらすだけで新しい情報が浮かび上がってきます。ユーザーのマウス操作や文字入力を感知して、リアルタイムで内部処理を行なうことができます。例えばGoogle Mapは、逐一サイトを更新しなくてもマウスでフォーカスポイントをずらすだけで、瞬時に情報が更新されます。つまり、ユーザーにストレスを与えずに楽しさを提供できるのが、JavaScriptの人気の理由です。
JavaScriptとJavaのどちらを学ぶべきか?
JavaScriptとJavaのどちらを学ぶべきかは、その言語を使って何を作りたいのか(どんな仕事をしたいのか)によります。あるいは、どちらが就職や転職に有利なのか、学習の難易度はどうなのか、という判断基準もあるでしょう。
その言語で何を作りたいのか、どんな仕事がしたいのかで選ぶ
業務システムの構築やアプリ開発をしたいならJava、オシャレなWebサイトを作りたいならJavaScriptを学ぶのが良いでしょう。Javaは裏方でシステムを支える論理を構成する言語で、JavaScriptは表舞台(ユーザーサイド)でサイトの見栄えや使い勝手を担当します。
分かりやすく言うと上記のようになりますが、JavaScripでもスマホアプリ開発ができるようになるなど、サーバーサイドの開発にも関係するようになりました。エンジニアの半数以上がJavaScripを学習していると言われています。
どちらが就職や転職に有利かで選ぶ
2021年5月現在の、dodaやIndeedなどのエンジニア求人案件を見ると、Javaの求人数はJavaScripの2.5~3倍あります。しかし、2019年には5倍ほどの差があったので、JavaScriptの需要が次第に高まってきたことが分かります。
どちらも人気の言語で、例えばdodaではJavaは4,500件前後、JavaScriptは1,500件前後がサイトに掲載されています。しっかり学んで使えるようになれば「覚えたけれど就職先がない」という心配はありません。
学習の難易度で選ぶ
初心者にとってどちらが学ぶのが難しいかといえば、Javaです。マスターすれば「何でも作れる」代わりに、覚悟を決めて勉強に取りかからないと挫折する可能性が高いと言えるでしょう。
JavaScriptは、フロントサイドで動く言語なのでWebブラウザで動作確認できる点、学習しやすさがあります。基礎的なことを学んでしまえば、プログラミンを省力化できる便利な「ライブラリー」が多種揃っているというメリットもあります。
ここまで、プログラミングの初心者に「JavaScriptとJavaの違いは?」と聞かれたときに、どう答えたら分かりやすいのかという一例を当記事でご紹介しました。プログラミングに興味を持つ人の数はどんどん増えているので、何か聞かれたときはその道のプロとして丁寧に教えてあげたいものですね。
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