そもそもLuaとは
Luaは1993年にリオデジャネイロ・カトリカ大学のロベルト・イエルサリムスキーらによって開発されたプログラミング言語です。ゲーム業界を中心にLuaの人気は上昇し、2010年頃にはプログラミング言語における人気ランキングでも上位に位置していました。
現在ではピーク時と比較すると人気は減少しています。しかし、現在でもゲーム業界などでは多く利用されているプログラミング言語です。また、Luaはスクリプト言語の1つでもあります。
Luaが独特である点は、他のアプリケーションに組み込んで利用される場合が多い言語であることです。例えば、ゲームを開発する際に、高速な処理が必要な部分はC言語などで開発を行い、柔軟に差し替えたい部分やシナリオなどの記述する部分にはLuaを使用します。
他にも表計算などのアプリケーションの場合、基本機能はLuaではない他のプログラミング言語で開発を行い、アプリを拡張する際にマクロなプログラミング言語としてLuaを採用することもあります。
したがって、開発したアプリケーションに容易にスクリプト言語を組み込んで利用できるというのがLuaの良い点です。ここでは、スクリプト言語についてとLuaの特徴について詳しく紹介します。
スクリプト言語とは
Luaは元々C言語に組み込まれることを前提に開発された言語であり、スクリプト言語としては高速で、最速のスクリプト言語といわれています。そもそもスクリプト言語とはどういうものを指すのでしょうか。
スクリプト言語とは、アプリケーションソフトを開発するための簡易的なプログラミング言語を指します。たとえば、台本のように、容易に手直しや修正など行って実装できます。したがって、スクリプト言語は可読性が高く比較的簡単に書きやすい言語といえます。
スクリプト言語の特徴は、インタプリタ言語であることから、変数の型の定義が不要な場合が多いです。なお、インタプリタ言語とは、人間が記述したソースコードをコンピュータが実行するときに1行ずつコンピュータが読み取りやすいように機械語に翻訳を行いなががら、プログラムを実行する方式のプログラミング言語を指します。
したがって、Luaはインタプリタ言語でもあるため、C言語などのコンパイラ言語と比較すると、さまざまなプログラミング言語やアプリケーションにそのまま使用することができるため汎用性が高いといえます。なお、コンパイラ言語は機械語に翻訳する行為を実行ファイルを作成する際に行います。
Luaの4つの特徴
ここではLuaの特徴について4点紹介します。
1.組み込みしやすい Luaは他のプログラミング言語と組み合わせて使用する際に組み込みやすいことが特徴として挙げられます。これまでにも説明したように、元々C言語に組み込まれることを前提に開発された言語ではありますが、C言語以外のプログラミング言語と組み合わせても利用しやすいという特徴があります。
同様のスクリプト言語と比べてもシンプルな構造であることから、組み込みが行いやすいこともいえます。
2.拡張性が高い Luaのプログラムの構造はシンプルであるため、拡張性が高い点も特徴といえます。Luaはオブジェクト指向型のプログラミング言語ではありませんが、類似的に再現することも可能です。
なお、オブジェクト指向型言語とは、モノを組み立てるようにコーディングを行い、コンピュータに実行させる言語を指します。拡張性が高いことから、Luaはさまざまな場面でも活用できる汎用性の高い言語だといえます。また、Luaは単独で使用される場合よりも、他のプログラムの1部分として利用されることも少なくありません。
3.フリーソフト Luaはフリーソフトとして提供されています。そのため、商用で利用する場合であっても無料で使用できます。他のプログラミング言語では制約が多く、媒体的に利用することができない言語も多いなかで、Luaは制約が少なく使用しやすい言語です。
4.動作が早い Luaは動作が早いことが最大の特徴ともいえます。これまでにも説明したシンプルな構造であることが理由です。他のスクリプト言語の1つの指標としても利用される場合があるほど、Luaの動作は早いです。
一般的にスクリプト言語は、小規模開発に向いているといわれることが多いですが、Luaは動作の早さの観点から大規模開発でも使用される場合もあります。
Luaのメリット・デメリット
これまでに、Luaの詳細や特徴について解説しました。ここからは、Luaを利用するメリットとデメリットについて詳しく紹介します。
Luaのメリット
ここではLuaのメリットについて紹介します。LuaはWindowsやLinux、macOSのようにさまざまなOSで動作します。また、Luaはガベージコレクションも搭載しています。
なお、ガベージコレクションとは日本語だと「ゴミ集め」と訳され、コンピュータプログラムが動的に確保したメモリの領域のなかで、必要がなくなった領域を自動的に解放する機能を指します。
さらに、スクリプト言語のプログラミング言語のなかでも動作が最速であることも大きなメリットといえるでしょう。
Luaのデメリット
もちろんLuaはメリットだけではありません。ここではLuaのデメリットについて紹介します。まずLuaは、標準で使用できるライブラリが少ないのが特徴です。
そのため、他の言語のライブラリを用いる場合も多く、環境ごとに互換性が変わるので、依存性が高まることがデメリットとして挙げられます。Luaはスクリプト型のプログラミング言語でメリットもありますが、オブジェクト指向の実装を行う場合はユーザーに一任されているため、プログラムによって実装方法が異なる可能性があります。
また、Luaはメタテーブルを使用しなければならない場面が多いです。メタテーブルとはソースコーやメタデータとして機能するデータを保持するように指定されたデータベースを指します。
メタテーブルには、システムの情報とオブジェクト指向やリフレクションに必要な情報も管理しているため、アクセスの禁止を行うことができません。さらに、Luaは可読性の高いプログラミング言語ですが、リソースをローカルファイルで管理する場合が多いため、改ざんなどによるセキュリティへのリスクが高いというデメリットもあります。
Luaを利用してできること2選
これまでにLuaの詳細や特徴、メリット・デメリットについて解説しました。ここからは、Luaというプログラミング言語を利用してできることを2つ紹介します。
ゲーム開発
近年、ゲーム開発の場面でLuaが利用されることが増加しています。最近のゲームでは開発を行い発売すれば開発終了という形態ではなく、発売した後もよりよいゲームへとアップデートを重ねていくことが多いです。
そのため、Luaの特徴である組み込みがしやすいことや動作が早いことからゲーム開発において利用される機会が増加しています。
また、Luaは動作環境を選ばないスクリプト言語であるため、複数の媒体で動かすことが多い点もゲーム開発に向いているといえるでしょう。特にLuaが利用される場面が多いといわれるのは、データの更新が多いオンラインゲームです。例えば、RPG系のオンラインゲームが挙げられます。
プラグインの開発
プラグインの開発では、Luaの特徴である拡張性が高いことと組み込みがしやすいことから、Luaが利用される場面が多いです。最近は本来もっていない機能を追加するプラグイン機能を搭載したソフトウェアが増加しています。Luaはプラグイン開発のプログラムとして利用されている場合も少なくありません。
使用されている場面はさまざまですが、Luaのシンプルさや組み込みやすさから、多くのユーザーが互いのプラグインを公開して配布するような使われ方も行われています。
Luaを採用している製品
Luaは前述した通り、組み込みがしやすい点、データの更新がしやすいといった点から、さまざまなゲーム、アプリケーションで用いられています。ここでは実際にLuaを採用して開発されている製品を紹介します。
Luaが使用されているゲーム
・MMORPG:ドラゴンクエストX、FINAL FANTASY XIV、ラグナロクオンライン、 World of Warcraft、PHANTASY STAR ONLINE 2(PSO2)
・FPS:CRYSIS、FarCry、Half-Life 2(Gary’s MOD)
・アクション:ソニック・ザ・ヘッジホッグ、ソニック ワールドアドベンチャー、 GRAVITY DAZE
実際にLuaが使用されているゲームを見ると、国内外でも最大数のユーザー数を誇るMMORPGが名を連ねています。特にMMORPGでは、追加ストーリー・装備などの新要素を継続的にアップデートを重ねつつ運営しているので、組み込みやすさ・更新のしやすさから採用されている印象を受けます。
また、GRAVITY DAZE、ソニックシリーズなど高速展開かつ複雑な動きを要するゲームでも採用されており、スクリプト言語のプログラミング言語のなかでも動作が最速であるという点からアクションゲームでも有効です。
ゲーム以外のサービス・アプリケーション
・写真、映像、音楽:Adobe Photoshop Lightroom、Anime Studio、AviUtl、Renoise、VLC MediaPlayer
LuaはAdobe社のPhotoshop Lightroomでも採用されています。また、映像音声処理アプリケーションでも採用されており、拡張性の高さも伺えます。
Luaの需要と将来性
Luaは人気が最もあったころと比較すると、需要は減りつつあります。しかし今後はLuaの需要が増加する可能性があります。理由はIoT技術が急激に発展したことにより、C言語の需要が増加傾向にあるためです。
C言語の需要が増加したことによって、C言語の組み込みに最適であるLuaの需要も比例して増加すると予想できます。
また、ゲーム開発のエンジンであるUnityもLuaと相性が良いため、今後のゲーム開発でのLuaの需要も維持されるでしょう。したがって、Luaの需要がすぐになくなることはありません。
組み込みやすく拡張性の高いプログラミング言語Lua
これまでにLuaの詳細や特徴、メリット・デメリット、将来性、Luaを利用してできることについて詳しく解説しました。Luaとは元々C言語に組み込まれることを前提に開発されたプログラミング言語で、1993年に開発されました。
Luaはスクリプト言語としては動きが高速な言語です。Luaは「組み込みしやすい」「拡張性が高い」という特徴から、ゲーム開発やプラグイン開発によく利用される言語といえます。
C言語との相性が抜群であることや、インターネットやIoT技術の急激な発展の影響もありプログラムを発売した後にアップデートするような機会も増えていることから、Luaは今後も利用される機会の多い言語といえます。利用しやすい場面が多いプログラミング言語であるため、今後、新しいプログラミング言語の勉強をする方にLuaはおすすめです。
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