「ビジネス戦闘力を高めるプログラミング」をコンセプトに掲げ、ビジネスパーソン向けのプログラミング講座を展開している「いまにゅ」さんこと今西 航平さん。
自身が運営するYouTubeチャンネル、「いまにゅのプログラミング塾」は登録者数約13万名。オンライン動画学習プラットフォームUdemyの受講生は延べ5.0万名以上という超人気講師のいまにゅさんですが、実はもともとはエンジニアを目指していたのだそう。
そんないまにゅさんがプログラミングを「教える人」になるまでの経緯や、いまにゅさんが提唱する「ビジネス戦闘力」の意味、プログラミングがビジネスに出会った時の強みなどを語っていただきました。
■今西 航平(いまにゅ)プロフィール

社員2名から25名に…業務の効率化にプログラミングを活用
エンジニア就職を蹴ってプログラミング講師に

いまにゅさんはビジネスパーソン向けのプログラミング講座をYouTubeやオンライン動画学習プラットフォームで展開されていますが、ご自身がプログラミングを始めたきっかけはなんだったのでしょうか?

そもそもの出発点は、大学1年生の時のプログラミングの授業ですね。情報・数学分野を専攻していたこともあり、そこからプログラミングの世界にのめりこんで、独学でも勉強を始めました。

では、そのままエンジニアとして就職されたんですか?

実は僕、エンジニアとしての職歴はほぼないんです。

どういうことでしょう?


大学4年が始まる前にエンジニア職の内定が決まっていて、その会社で内定者インターンとして数ヶ月間、開発業務に携わったことがありました。この期間はエンジニアとして働いていたんですけど、結局、残り1年の学生生活をどう過ごすか考えていた時に、私の前職場である株式会社キカガクの社長と出会い、インターンとしてジョインしたのち、そのまま入社してしまったんです。なので、内定者インターン期間が私の正式なエンジニア経験歴ということになります。

キカガクという会社は、AIや機械学習などの最新最先端テクノロジーを教える社会人向けの講座などを事業としていました。社長がエンジニアだったので、色々な技術を教えてもらっていたものの、メインの仕事は「講師業」だったんです。キカガクでもちょっとした開発業務を行ったことはありますが、いわゆる「エンジニア職」として働いた経験は、後にも先にも内定辞退してしまった会社でのインターン経験のみになります。
挫折させない授業の秘訣は「厳密性よりもわかりやすさ」

キカガクでの講師経験が、現在のいまにゅさんの「プログラミングを教える人」という土台を作ったのですね。

学生のころに塾講師のバイトをしていたこともあり、自分は「人に何かを教える」ということが好きだし、向いているということに気づいていました。キカガクで「教育」×「テクノロジー」という新しい世界に出会ったことで、「教える」という好きなことと、「プログラミング」という自分が習得していきたいスキルがマッチしたんですよね。

いまにゅさんのYouTubeは、知識ゼロの素人から見てもわかりやすいと感じます。

僕自身も経験があるのですが、プログラミングって学びたい人が増えている一方で挫折する人も多いんです。せっかくなにかを教えるのであれば、より習得が難しく、挫折する人が多い領域に注いだ方が自分の価値を発揮できると思っています。

いまにゅさんの中で、初心者にプログラミングを教えるコツみたいなものってありますか?

これは、僕のYouTubeのコメント欄にときどきアンチがつく理由でもあるんですけれども(笑)「厳密性よりもわかりやすさを重視している」、というところがまず前提にありますね。


でもプログラミングって、本質から理解しなくてはいけないというイメージがありませんか?

100%理解しようとすると、最初からハードルが上がってしまい挫折しやすいんです。だから僕は最初から100%理解してもらおうと思うのではなく、まずは、30%程度を目指して、イメージが頭に浮かぶかどうかを大切にしています。

だから一歩ずつ一歩ずつ理解が深まっていくのですね!
会社の規模拡大と業務効率化

いまにゅさんのYouTubeや講座は、エンジニアを目指す人ではなくビジネスパーソン向けのプログラミング講座を展開されていますが、どんな理由があるのでしょうか?

僕自身が、エンジニアとしてではなく、営業や業務効率化などのビジネス的な側面でプログラミングを活用してきたことが大きいですね。

ビジネスシーンにプログラミングが役立つということには、いつ気がついたのですか?

キカガク時代です。入社当時のキカガクは僕が社員第1号で、社長と2人だけの会社だったんですよ。ところが僕が退社するまでの約3年半の間に社員は約25名にまで増えて、事業の規模も変化しました。会社が成長していくにつれて、事務的な作業はもちろん、営業やマーケティングまで、雑多な業務が膨大に発生していくんです。

そこでプログラミングを活用して業務効率化を図ったのですね。具体的にはどんなシーンで活用されてきたのでしょう。

たとえば、営業の席で技術的な話をする際、プログラミングの知識があれば、エンジニアを連れて行かなくても自分一人で完結できます。業務効率化というところで言えば、マーケティング活動やバックオフィス的な作業まで、プログラミングを知っていることで楽になることはたくさんありましたね。
ビジネス戦闘力を引き上げれば、頭ひとつ抜きん出る
差別化の近道は「各スキル」×「技術力」

いまにゅさんは、ご自身がプロデュースするプログラミングスクールやSNSなどでの発信で、プログラミングが「ビジネス戦闘力」を底上げすることを提唱されています。ビジネス戦闘力とは、具体的にどんなスキルなのでしょうか?

僕の言うビジネス戦闘力は、なにか特定のスキルではなく「総合力」なんです。

詳しく教えてください。

アクションゲームに出てくる、スキルゲージをイメージしてもらえるとわかりやすいかもしれません。「攻撃力」「守備力」「魔法」など、ゲージに並んでいるキャラクターのスキルを、「営業力」「マーケティング力」「情報収集スキル」といったビジネスに必要なスキルに置き換えたとします。

これらスキルゲージの総合力を『ビジネス戦闘力』と呼んでいます。そして、それぞれのスキルを総合的に押し上げるのが技術力だと考えています。


すごくわかりやすいです!なにかひとつのスキルではなく、総合的にというのがポイントですね。

そうです。あくまでもイメージですが、一般的なビジネスパーソンはすべてのスキルが平均的な数値の「3」だとして、営業のスペシャリストは営業スキルとコミュニケーションスキルが「5」まで伸びています。

スペシャリストを目指すには、時間と経験が必要ですよね。でも、自分の持っている能力に技術を掛け算できれば、技術がわかり技術が使えるビジネスパーソン、または非エンジニアとして市場価値の高い人材になれるんです。
個人が業務にイノベーションを起こせる

「営業の神」を目指すのは難しいけれど、「営業もできるし、営業スキルに技術が掛け算される」というアプローチもあるということですね。

そうですね。「~が掛け算される」の「〜」の部分にプログラミングというスキルが入ると、結構レバレッジが効くと僕は思っています。


いまにゅさんが運営するスクールの受講生の方の中で、プログラミングを学んだことで仕事の評価に変化があったという方は多いですか?

直接的な評価というよりも、プログラミングを学んでいることで業務を効率化・自動化できるので、社内やチーム内で頼られるようになったいう声はよく聞きます。小さな会社だと、いまだに手動でエクセルに勤怠管理を打ち込んでいるところも多いので、プログラミングを知っている社員がいればそのインパクトは大きいですよね。

たしかに、会社の成り立ちが長ければ長いほど、当たり前のようにやってしまっている作業的な業務ってどこにでもありそうです。もし社内にプログラミングを知っている人がいなければ、永遠にこの作業を続けることになるんですよね。

プログラミングを知っている人材がいるだけで、どんどん業務改善のアイデアが生まれて個人レベルで業務にイノベーションを起こせるんです。リソース面でもコスト面でも会社に貢献できる人材になれるからこそ、プログラミングを習得していることのアドバンテージはとてつもなく大きいんですよ。

学校では教えてくれないプログラミングの上達法
プログラミングは、教科書的勉強よりもスポーツに近い

とはいえ、プログラミングに触れたことがない人が1から学ぶのはやはりハードルが高く感じてしまうんですが、勉強のコツはあるのでしょうか?

一番重要なのは、プログラミングに対する考え方をインストールすることだと思っています。

プログラミングに対する考え方というと?

プログラミングって学校の勉強と全然違うものだと思った方がいいんですよ。学校で学ぶ教科学習って、単語だったり公式を覚えることが前提になっていますよね。

わかります。

プログラミングはそもそも「覚える勉強」ではなくて、手を動かしてトライアンドエラーを繰り返すことで身につくものなんです。


教科書を読んでも正解がわからないんですね。

そういう意味では、勉強よりもスポーツに近いですね。サッカーにたとえれば、「この距離からゴールを決めるにはこの力加減で蹴ってみる」「ちょっと届かないからもう少し力を加えてみる」というふうに軌道修正していくじゃないですか。

まさにトライアンドエラーです。

プログラミングもそう。コードを書くというインプットに対して何かしらのアウトプットが出てきて、その結果を見て調整していくことで、理想の形に近づいていく。これをしないで教科書をひたすら読んでも、何をどうすればいいのかわからないんです。

頭の中で考えていてもサッカーはうまくならないということですね。
課金でハードルを上げず、面白いかどうかを“味見”する

もうひとつ、ハードルを上げすぎない、ということも重要ですね。

ハードルですか?

少し前まではプログラミングを学べるものって、エンジニアを目指す高額なスクールとか、難しい書籍ばかりだったと思うんですよ。

たしかに、そんなイメージはありますね。

でも今って、スキルのひとつとしてプログラミングを身に付けたい方が気軽に学べる、無料で上質な教材がたくさん出回っているんです。だからいきなり高額のスクールに行ったりするのはやめた方がいいかなと僕は思っているんですよ。


なるほど。たしかに社会人の方がプロ向けのスクールを契約するのはコスト面でもリソース面でも覚悟と計画が必要ですよね。

だから、まずは無料の教材で“味見”をして、自分にとってプログラミングが楽しいと思えるものかどうかを判断してみる。楽しいと思えればどんどんトライして行けばいいし、レベルに応じて有料の教材を契約してみればいいと思います。

「楽しくなければつづかない」は学びの基本ですね!

僕が「ビジネス戦闘力」の話をすると、「これからの社会で必要なスキルだから」という理由でプログラミングを始めようとする方がいますが、”自分が楽しいと思えない勉強”は絶対に挫折します。

うわー、身に覚えがありすぎます。

無駄に時間とお金を費やさずにまずは無料の教材で。というのが僕の考えですね。
〈取材後記〉
プログラミングを教えているのに、「最初から課金しないで!」なんて良心的すぎる気もしますが、いまにゅさんご自身のご経験があるからこその説得力を感じました。
後編では、いまにゅさんが実際に活用している、ビジネスで使えるプログラミング術を伺います!
↓後編はこちら

【関連リンク】
code4biz:https://code4biz.jp/
いまにゅのプログラミング塾:https://youtube.com/@imanyu_programming
いまにゅさんTwitter:https://twitter.com/03Imanyu
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