大手企業に勤めるAIエンジニアであり、YouTubeで40万人以上、TikTokで50万人以上のフォロワーを持つインフルエンサーであり、ヒューマンビートボックスでライブに出演するパフォーマーでもあるTOMOKIN(@TOMOKIN_Voice)さん。
本業の仕事で充分なやりがいと報酬があった上で、本格的に趣味にも打ち込み、知名度と副収入を得る。
誰もが憧れるようなキャリア形成ですが、いったいどんな子どもで、どんな選択を積み重ねて来られたのでしょうか?
前編では、TOMOKINさんのキャリアに焦点を当ててお話を伺っていきます。
TOMOKIN/友金良太
1988年生まれ。関西学院大学法学部卒業後、大手SIerにSEとして就職。AI研修のためアメリカに渡ったことをきっかけに、AIエンジニアに。大学時代に始めたビートボックス、2014年頃から始めたYouTuber活動も継続しており、パラレルキャリアを築いている。SNSのフォロワーは合計90万人を超え、メディア出演も多数。
偶然をプラスに変えた、持ち前の積極性と強心臓
念願の表舞台は、大学生になってから
まずは子ども時代からお伺いしたいのですが、現在はSNSでの発信やヒューマンビートボックス(以下「ビートボックス」)など、人前に出るご活躍が多いですよね。
昔から目立つのがお好きだったんですか?
目立ちたい気持ちは強くて、学級委員なんかにはよく立候補していました。でも、全然当選しなくて、毎回落ち込んで。実際に人前に立つようになったのは、大学で音楽サークルに入ってからです。
落ち込んでもまた立候補するとは、打たれ強いお子さんだったんですね。音楽は、カラオケがお好きだったとか、中学・高校で音楽系の部活をやっていたとか......?
いえ、全然。カラオケは苦手なほうでしたし、部活もやってなかったです。でも、新人歓迎会が楽しかったのでそのままサークルに入ってたんです。
大学は、関西学院大学ですよね。関西では華やかな校風で知られていますね。人前に立つようになったのは、校風の影響もあるんでしょうか?
いえ、周りが華やかなので、引け目を感じてしまっている側でした。でもサークルはすごく楽しかったし、音楽にハマりました。仲間とバンドを組んだり、ハモネプに出場したりしました。
ハモネプ、今も人気ですが、アカペラブームだった頃ですね。ただ卒業後は、音楽ではなく大手のSIerに就職されたんですよね。
有名になりたい気持ちは持っていましたし、ビートボックスは大好きでしたが、これだけで食べていくのは難しいと判断して就職活動することにしたんです。でも今も、パフォーマーとしての活動は続けていますよ。先日の10月の三連休にも、大阪のイベントに出演しました。
炎上を逆手に取って、YouTuber活動開始
本格的にYouTubeを始められたのは、会社員になってからなんですよね。
チャンネル自体は大学生のときに開設していたんですが、学園祭でのライブ動画を仲間内で共有するためでした。
では当時は、URLを知っている人だけの限定公開で?
詳しくないので、誰でも見れる公開設定にしていたんです。それを就職後も放置していたら、当時ビートボックス動画で大人気だったHIKAKINさんのパクリだと急に炎上してしまったんです。
HIKAKINとTOMOKIN。誤認させるほど似ているわけでもないのにそんなことになるんですね。そもそも、パクリではないですよね?
本名が「友金(ともがね)」なので、子どものころからトモキンと呼ばれていました。注目度が高まってるうちにYouTubeを本格的に始めたらチャンスがあるのではと思い、ビートボックス講座の動画を投稿してみたんです。結果順調に伸びて、1〜2年でチャンネル登録者数が3万人になりました。
何も悪くないとは言え、焦りや面倒くささでチャンネルを閉鎖してしまいそうなものですけど、強心臓ですね。落選してもめげずに立候補していたお子さんの頃の話と、繋がっている気がします。
批判的なコメントも、あまり気にしないタイプです。たしかに性格は、YouTuber向きかもしれませんね。
でも、会社は大丈夫だったんですか?大企業であれば特に、社員が顔出しをして社外で活動することにいい顔をしなかったり、副業に厳しかったりしそうですが。
会社は、仕事の機密情報を話さない限りは自由というスタンスです。それにYouTubeは、副業という位置付けでもない感じでしたね。
資産運用の副収入が禁止されないイメージでしょうか。でも、TOMOKINさんほどのフォロワーがいれば収入は会社員の給与との二本柱になるほどなのでは?
いまはエンジニアの仕事が忙しくて、YouTubeショートの動画くらいしか上げられていません。だから収入としては全然ですよ。ショート動画は特に収益性が低いこともあって、会社員の収入が完全にメインです。
40万人以上登録者がいてもそれくらいなんですね。YouTubeで稼ぐのは、だいぶ厳しくなってきているんでしょうか?
ジャンル問わず、YouTubeで稼ぐこと自体が厳しくなっていると感じます。あえて今から挑戦するなら、複数のスキルを身につけて、掛け算で勝負するほうがいいと思います。
アメリカでのAI研修が、エンジニアとして大きな転換期になった
続いて、大手SIerに就職されてからのエンジニアとしてのキャリアをお伺いしていきます。
エンジニアは人手不足。未経験者を育てていく傾向は今もある
TOMOKINさんは法学部出身なのでいわゆる文系SEですよね。独学でプログラミングを学ばれていたとか、エンジニア職に興味があったから未経験者の採用がある新卒枠を狙ったとか、そういう志望動機はあったんですか?
普通に就職活動して入社して、配属されたのがエンジニア部門だったんです。別の職種になる可能性もありましたし、特にエンジニアになりたいと思っていたわけではありませんでした。
大手は新人研修があるとはいえ、かなり大変だったのでは?
何もわからないので大変は大変でしたが、会社の新人研修がしっかりしていたので何とかキャリアを積んでいくことができました。
未経験で採用してくれて手厚く育ててもらえるのは、大手の強みですよね。現在も、新卒未経験でのエンジニア採用はありますか?
エンジニアは人手不足なので、今でも文系含め未経験の学生を採用して育てていこうという傾向はあると思いますよ。ベンチャーの規模だとわかりませんが、大手だけでなく、中小規模の会社の採用もあると思います。
TOMOKINさんは今実際にエンジニアとして活躍していらっしゃいますが、客観的にもおすすめできる道だと言えますか?
興味を持って勉強していくんだという姿勢があることが大前提ですが、なんとかなる道だと思います。
エンジニアとして確信が持てたのは、入社6年以上経ってからだった
たまたま配属されるという形でエンジニアになったTOMOKINさんが、「どうやら自分はエンジニアとしてやっていけそうだ」という確信を持てたのは、いつごろですか?
エンジニアとしてやっていけると思ったのは、アメリカに行ってAIに興味を持ってからのことです。アメリカに行ったのは入社6年目の2017年なんですが、それまではYouTube専業になるべきかどうかを悩んでいましたね。
でも、大手企業でアメリカ赴任できるのはかなり優秀でないと難しいことですよね。ご本人として確信は持てないまでも、評価されていらしたのだと思います。
AI研修の社内公募があったんです。たまたま前年くらいから英語を学んでいたタイミングだったこともあって立候補したら、採用されて。
エンジニアとして働きながらYouTube動画を作って、さらに英語も!英語を始めたのに理由はあったんですか?
YouTubeがネタ切れ気味になって、伸び悩みだした時期だったんです。それで、外国人の視聴者を増やしていくのも効果的かと考えて、それで英語を。
それが、アメリカ行きにつながったんですね。予想していた方向ではなかったかもしれませんが、やはり備えておくとチャンスを掴めるんですね。TEDに登壇されている動画がYouTubeチャンネルにありますが、それもお仕事で?
あれはアメリカ滞在中に、個人として応募したものです。1回の応募ですぐ出れるものではなかったですが、担当者のFacebookにDMしたりしてアピールしたりして。英語でのプレゼンは、すごくいい経験になりました。
節目ごとに開けていく運。時代に合わせたチャレンジが成功の秘訣
エンジニア、インフルエンサー、パフォーマー。今後の方向性はどう考えていらっしゃいますか?
引き続き、どれにも等しく力を入れていくつもりです。
エンジニアとしても、AIだけでなくAWSの資格も取っていらっしゃいますよね。
仕事でメインで使っているわけではないですが、AWSはデジタル庁も推進しているし、エンジニアとして知っていなければ乗り遅れると思って学んでいます。
さきほどの英語もですが、さりげなく確実に備えていく姿勢がTOMOKINさんらしいですね。
パラレルキャリアならではの、相乗効果はありますか?
YouTubeやTikTokでの発信で身に着くプレゼン力(説明力)や、パフォーマーとしての生の舞台の経験は、仕事でも確実に役立ちますね。逆にエンジニアやパフォーマーとしてのスキルは、YouTubeやTikTokのネタになります。
YouTubeは現状、収入としては柱ではないとのことでしたが、今後の展望はどんなものですか?
具体的には未定ですが、登録者数の多いインフルエンサーという立場を活かして新しい挑戦をしてみたいと思っています。
お話を聞いていますと、大学入学、音楽サークル、就職、YouTube、英語、アメリカ行きと、TOMOKINさんは、節目節目の選択が良い方向に働いていますよね。
「これが好きだ!自分はこの道を極めるんだ!」という強い意志で成功される例は比較的よく目にするのですが、TOMOKINさんはチャンスの点と点がどんどん繋がっていくようなイメージに見えます。運を切り開く秘訣は何だとお考えでしょうか?
時代が変われば、トレンドだけでなく、物事への取り組み方も変わってきます。節目節目でのチャレンジが成功の秘訣だと考えています。
【取材後記】
偶然入った大学で、偶然入ったサークルで、偶然入った会社で、偶然バズった動画で......。「チャンスの神様には前髪しかない」という有名な格言がありますが、それは真実だなとTOMOKINさんのお話を聞いて実感しました。ただチャレンジするだけでなく、時代に合わせているという部分も、肝に銘じておきたいです。
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