「働かないリーダーが会社を変える」ミドル世代のエンジニアに求められるマネジメントの極意
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「働かないリーダーが会社を変える」ミドル世代のエンジニアに求められるマネジメントの極意
インタビュー・取材
金子 茉由
2022.10.13
この記事でわかること
求められる、リーダーの心がまえ・役割とは
リーダーとして、メンバーの不調のサインを見逃さないために大事なこと
リーダー自身がチームのビジョンや行動指針を明確にすることも大切

前回記事にて、エンジニアとして心身の健康を保ちながら働くための「セルフケア」の実践法についてご紹介しました。今回はその後編として、少し目線を上げたマネジメントの視点から、エンジニアチームで効果的なリーダーシップを発揮する方法や、チームの生産性を高めるためのポイントについてお伝えします。

お話を伺ったのは、前回に引き続きITコンサルタント 兼 人材育成コンサルタントのEITM 佐用 雅央 氏。ご自身のプロジェクトマネジメント経験も振り返りながら解説いただきました。

佐用 雅央氏プロフィール

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EITM ITコンサルタント 兼 人材育成コンサルタント。 大手メーカー系SEを7年、大手IT系コンサルティングファーム2社でITコンサルトの経験を2年ずつ経験し、2021年に独立。社会人4~5年目の頃、仕事を部下に任せることの重要性に気づけず、過労で倒れる。その後、医者から「いつ心臓が止まってもおかしくない」といった死の宣告を受ける。それがきっかけで、適切なマネジメント・リーダーシップの大切さに気づき、今では「プレイヤーから卒業するスキル」を武器に、中小企業向けのサポートも事業として展開している。

「働かないリーダー」に求められること

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金子 茉由

前回インタビュー時、会社員時代にお医者さんから過労死を宣告されるほど、働きすぎていたという話を伺いました。そうした経験を踏まえてでしょうか、今は「働かないリーダーの養成」をテーマにコンサルティングをされているそうですが、そもそもリーダーにはどのような心がまえが求められるのでしょうか。

佐用さん

メンバーに仕事を任せたら何かしらの問題が発生することを想定したうえで、「その問題と向き合うこと」がリーダーの仕事だと思うんです。 自分の意図や目的に沿った仕事を100%遂行してくれる人はほぼいません。その前提をまずは心得ておくことですね。そのうえで、ティーチングやコーチングなどのスキルを使いながらメンバーをうまくマネジメントしていくことが、リーダーに期待される役割だと考えます。

金子 茉由

佐用さんのご経験上、プレイングマネジャーから脱するために意識されていたことはありますか。

佐用さん

まずは仲間を信じることですね。そして、自分の弱さを認めること。自分一人ではできないことがたくさんあるという事実を知っておくことが大切ですね。

金子 茉由

「信じる」というのは一つのキーワードですね。ちなみに部下やメンバーを「信頼する」「信用する」というプロセスは、簡単なようで実は難しいもののように感じるのですが、その点はいかがですか。

佐用さん

「自分は自分、部下は部下」と切り分けて考えることが必要だと思うんです。「部下が自分のことを信用していないように見えるから、自分も部下を信用しない」というのはリーダーとしてNGです。 相手がどうであろうと、まずは自分がやるべきことをやらなければ組織は変わらないですね。たしかに一朝一夕にできることではないですが、リーダーに求められるのはあきらめずにやりつづけること。それが上に立つ者の責任でもあると感じています。

金子 茉由

なるほど。そのうえで、周りを巻き込んでいく力などもリーダーには必要なのではないかと思いますが、そうした力はどうすれば鍛えられるのでしょうか。

佐用さん

リーダー自身が“あるべき姿勢”を見せることです。たとえば、メンバーに「自分で考える習慣を付けてほしい」「ビジョンを持ってほしい」などと願うのであれば、自分がまずそうした行動を取る必要があるのではないでしょうか。

金子 茉由

エンジニアチームならではのマネジメントの難しさや課題については、どのように考えられますか。

佐用さん

エンジニアの方はロジカルな方が多いので、コミュニケーションがライトになりがち。成果や方法、仕組みなどの数字で表されるもので仕事を進めるケースが目立ちます。もちろんそれらも大事なのですが、なかには人間的な関わりやプロセスでの評価を求めている人もいるわけですよね。

金子 茉由

そうした点を解消していくために、リーダーとしてはどのような取り組みが必要なのでしょうか。

佐用さん

まずは「相手の価値観を許容する」ことですね。自分と相手は完全に理解し合えない存在であることを認識すること。言葉にすると当たり前のように感じられるのですが、その認識の深度を深めることが大切です。それができると、“相手のせいにする”というプロセスが生まれず、丁寧なコミュニケーションを取ろうというふうに意識が変わります。

佐用さん

そして「許容する」ことに加え、「実行する」力も必要ですよね。お互いに理解し合えない存在だという状況のなかでも、一歩踏み出して実行していく力。さらに実行していく過程で生じる問題に対し、「あきらめずに解決していく」姿勢なども“働かないリーダー”に求められる部分だと思います。

どういう言葉をかけるかよりも、どういう姿勢で接するか

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金子 茉由

ところで、佐用さんのご経験のなかでお手本となるリーダーの方はいらっしゃいましたか?

佐用さん

いましたね。私が所属していた1社目の会社の上司が、まさに理想的な上司でした。当時の課長は常に、「君がそれでいいと思うなら、まずやってみたらいいよ」と言ってくれました。また、「上司の考えが正解とは限らないのだから、自分の考え方を尊重してお客さんと接してほしい。ただ何かあったときに私が責任を取るよ」という後押しをしてくれたのです。その姿勢がとてもかっこいいなと思いましたし、私を信じて任せてくれているのだと感じ、より責任感をもって仕事に取り組まなければと鼓舞された記憶があります。

佐用さん

また部長は社内でもかなり立場が上の方だったのですが、2~3年目の私が作った資料に対し、依頼をせずとも3時間くらいかけてレビューをしてくれたんですね。「自分のために時間を使ってくれた」ことにとても感謝の気持ちが湧きましたし、その期待に応えたいという思いに駆られるようになりました。

金子 茉由

まさに上司の方が自分を信じてくれているという気持ちが伝わったわけですね。どういう言葉をかけるかも大切ですが、どういう姿勢で接するかがポイントなのかもしれないですね。

佐用さん

そうですね。「言葉」はある意味、あとから付いてくるものだと思います。メンバーに対してどのような言葉をかけようかと悩む前に、まずはどういう姿勢で接するべきかと考えることが大事なのではないでしょうか。

メンバーの不調のサインを見逃さないために

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金子 茉由

前回のインタビューでは自身の不調に気づく方法や、セルフケアのポイントについて伺いました。逆にリーダー側の視点で、メンバーの不調に気づくために、普段からメンバーのどのような点を観察したり、配慮したりすべきだと思いますか?

佐用さん

気を配るというよりも、やはりコミュニケーションを取ることが大事なのではないかと思います。メンバーの小さな変化に気づくためには、お互いが本音で話せる関係になっていることが大事ですよね。先ほどもお話ししたように、自分自身がメンバーに対してオープンになることで、相手も自分に対して心を開きやすくなるはずです。

金子 茉由

ちなみにメンバーの不調を見抜くためのサインはなにかありますか?

佐用さん

些細なことかもしれないですが、たとえばこちらの依頼に対して「わかりました」と返答する際にいつもよりも間があったり、いつも前向きに取り組んでいる仕事が急に楽しくなさそうになったり、またいつもよりも発言の量が減ったり発言内容が変わったりということがあれば、一つのサインになるかと思います。“いつもと違う”点に気づくことですね。

金子 茉由

「部下が急に会社に来なくなってしまった」といった話を聞くこともありますが、そういう状態になってしまうとある意味もう遅いわけですね。その前段階で気づかなければならない、と。

佐用さん

そうですね。私の経験上でも普段からきちんとコミュニケーションが図れているメンバーが、想定していなかったような行動を取るということはなかったですね。場合によっては他のメンバーの協力も得ながら、一人ひとりと向き合い、コミュニケーションを取っていくことが求められるかと思います。

リーダーとしてのビジョンを示すことが第一歩

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金子 茉由

ところで、労働時間の削減や生産性の向上など、業務面でのマネジメントにおいても佐用さんは多くの成果を挙げられたと伺いました。そうした改善行動につながるアプローチを行うために、工夫されたことはどんなことですか?

佐用さん

たとえば自分がたくさん仕事を抱えていてメンバーに任せなければならない状況のときに、いきなり任せるのではなく、「相手の許可を得る」ということを実践していました。具体的には、「自分は今こういう状況だから、一回全部任せていい?何か問題があったときには私が助けるから、協力してもらえるかな?」といったコミュニケーションを行っていました。

佐用さん

あとはリーダー自身がチームのビジョンや行動指針を明確にすることも大切だと思います。私があるプロジェクトのリーダーを務めていた際、一貫して「この仕事はお客さんの不安解消につながるのか?」という軸で仕事を進めることをメンバーと共有していました。たとえばどうしても予定外の業務が発生してしまう場合にも、「お客さんの不安を解消するための仕事なのか」という目的と照らし合わせることで、メンバーの意識や取り組み方が変わってきます。リーダーとしてどういう思いで仕事をしているのかということを、言動と行動で示しつづけることが必要だと考えています。

金子 茉由

ちなみにそうしたチームの行動指針は、佐用さんがお一人で決められるのか、それともメンバーとも話し合ったうえで決めるのか、どちらだったのでしょうか。

佐用さん

ケースバイケースですね。最初から明確に決める場合もあれば、プロジェクトを進めていくなかで決まっていくものもあります。たとえばそのプロジェクトが長期間の仕事であれば品質重視の方向で動きますし、AIやVRなど世の中のトレンドになるようなものを扱う場合は品質よりもスピード感やスケジュールを優先します。プロジェクトの内容や顧客の方針によっても優先度が変わってきますので、お客さんも含めて関わるメンバーみなが納得する方針を決めて動いていくことが重要かと思います。

金子 茉由

たしかにそうですね。特に日本人の仕事の進め方や性質・志向を踏まえると、“ビジョン型リーダー”を育てることが難しいといわれていますが、「ビジョンを発信することが大切だ」という意識をもつことは誰にでもできますよね。

佐用さん

そうですね。まさに意識しているか否かということが、チームビルディングにも大きな差を生み出すと思います。リーダー自身のなかで正解を持っておくことが前提ではありますが、最初から「これはできない、無理だ」といった思考に陥ってしまうのは望ましくないですね。私自身も、できるかできないかという考えは一旦置いておいて、メンバーと一緒に「あるべき姿はなんだろう」「あるべき姿を踏まえてどこができないのかを考えてみよう」というミーティングを行うことが多かったです。

金子 茉由

最後に、これからリーダーを目指していくエンジニアの方にメッセージをいただけますか。

佐用さん

特にエンジニアリング業務においては、一人で成し遂げられる仕事はほとんどありません。ぜひリーダーとして、チームで成果を出すことの楽しさを味わってほしいですね。その楽しさの先には、リーダーにしか得られない達成感がありますし、“感謝すること”の本質的な意味を実感することができるはずです。最初から「できない、無理だ」と決めつけてしまうのではなく、前向きにチャレンジをしてみてもらいたいですね。

<取材後記>

メンバーとリーダー、それぞれの視点での体験談が大変参考になりました。今回はマネジメントという軸でお話を伺いましたが、あらゆる人間関係の構築において活かせるヒントをたくさんいただきました。私自身もまずは互いの価値観を知り許容すること、そのうえでコミュニケーションの量と質を高められるよう努めることを意識しながら取り組んでいきたいと思います!

ライター

金子 茉由
12年勤務した大手人材会社を退職後、フリーランスライターに転身。会社員時代からIT業界のクライアントとの相性がよく、さまざまなIT系企業の採用活動支援や、エンジニアのスキル開発・育成支援業務に携わってきた。いまの一番の関心ごとは、子ども向けプログラミング教育の未来について。
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