不調のサインを見逃さないために。医者から過労死を宣告されたエンジニアに聞く、セルフケアの実践方法とは?
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不調のサインを見逃さないために。医者から過労死を宣告されたエンジニアに聞く、セルフケアの実践方法とは?
インタビュー・取材
金子 茉由
2022.10.12
この記事でわかること
心身の不調の原因とは?よく現場からあがる2つの問題点
心身の不調を未然に防ぐために、気を付けるべきこととは?
日ごろから心身の健康を保つために行う、セルフケアについて

仕事のストレスで心身の不調が生じた際、みなさんはどのような方法で乗り越えていらっしゃるでしょうか。今回は現役のITコンサルタントで、かつ人材育成コンサルタントとして多くの企業の人材育成・人材教育に携わるEITM 佐用 雅央 氏にインタビュー。心身の不調をきたす前に私たちが取り組むべきことについて、ご自身の経験を交えながら解説いただきました。

佐用 雅央氏プロフィール

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EITM ITコンサルタント 兼 人材育成コンサルタント。 大手メーカー系SEを7年、大手IT系コンサルティングファーム2社でITコンサルトの経験を2年ずつ経験し、2021年に独立。社会人4~5年目の頃、仕事を部下に任せることの重要性に気づけず、過労で倒れる。その後、医者から「いつ心臓が止まってもおかしくない」といった死の宣告を受ける。それがきっかけで、適切なマネジメント・リーダーシップの大切さに気づき、今では「プレイヤーから卒業するスキル」を武器に、中小企業向けのサポートも事業として展開している。

なぜ大手コンサルティングファームを辞め、独立という道を選択したのか

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金子 茉由

佐用さんはSE、ITコンサルタントとして計3社で活躍されてきたとのことですが、いずれも業界大手の誰もが知る企業ですよね。着実にキャリアを積み重ねるなかで独立するというのは大きな決断だったかと思いますが、なぜ独立することに決めたのですか?

佐用さん

そもそも社会人になりたてのときから、「いつかは起業したい」と考えていました。 特にこれまでの3社で経験したプロジェクトのなかでも「人材育成」に関する業務に面白さを感じていて、エンジニア業務よりも人材育成業務に注力したいと考えたときに、独立が最良の選択だと思ったんです。

金子 茉由

独立してからはどうですか。企業で働いているときとは違う苦労もあるかと思うのですが。

佐用さん

もちろん大変なことばかりですよ。でも、独立したことに対していっさい後悔はなく、毎日が楽しいですね。やることなすことすべてが自分のためですので、モチベーションがまったく違います。

金子 茉由

ちなみに同じIT業界でも、やはり会社によって仕事の進め方や働き方は異なるものですか?

佐用さん

はい、全然違いますね。ただ転職して思ったのは、会社ごとに“色”があるということ。仕事をしているうちに、自ずとその色に染まっていくんですよね。 でも染まることは決して悪いことではなく、転職すると逆にその染まった色の部分が重宝されたりするんです。

佐用さん

たとえば私が1社目に勤めた会社では、会社として「誠実さ」を非常に重視する傾向があったのですが、その考え方を2社目、3社目で体現した際に、周りの人たちからとても驚かれたのを覚えています。

金子 茉由

特にまっさらな状態で臨む新卒1社目の会社の理念や方針は、その後の社会人人生にも大きな影響を与えますよね。ところで、佐用さんは会社員時代にエンジニア業務以外にも採用や育成など人事系の仕事にも携わっていらっしゃったとのことですが、それはご自身の意志だったのですか?

佐用さん

はい。自分自身のポジションやキャリアにつながることは率先して行っていました。

佐用さん

特に1社目の会社は人材育成にかなり力を入れていたため、若いうちからプロジェクトマネジメントやチームマネジメントの経験をさせてもらえたことが大きかったですね。 その経験が2社目、3社目、さらには現在につながり、人材育成という軸で成果を出すことの意義を見出すようになれたのだと思います。

過労死の宣告を経て、気づいたこと

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金子 茉由

佐用さんのご経歴を拝見したときに印象的だったのが、お医者さんから過労死を宣告されたことがあるという点でした。このときはどのような状況だったのですか?

佐用さん

社会人になって4~5年目のある日、客先に行く途中で突然倒れてしまったんですね。そこで普段お世話になっている主治医に診てもらったところ、「このままではいつ心臓が止まってもおかしくない」と。今は改善されているかと思いますが、私が働いていたころ、遅くまで働くこともざらにありました。

金子 茉由

ご自身のなかで、なにかサインのようなものはあったのですか?

佐用さん

いえ、なかったんです。お医者さんに言われてはじめて気づいたという状況でした。

金子 茉由

それはショッキングな出来事でしたね。実際にエンジニアの業界で、仕事が原因で心身のバランスを崩してしまう方は多いのでしょうか。

佐用さん

多いと思いますね。その原因としてよく現場からあがる問題が二つあるのですが、一つ目が「労働時間の長さ」です。 やはり他の業界と比較して残業時間が多いため、長時間労働により心身の不調をきたしてしまう方がいらっしゃいます。

佐用さん

そしてもう一つが「相談できる環境の少なさ」です。 これは帰属意識の低さやコミュニケーションの希薄さに起因するものです。特に出向のSEだったりする場合、なかなか相談できる人がいないといった話を聞きますね。

金子 茉由

同じような働き方をしていても、不調を抱える人とそうでない人がいると思うのですが、どのような部分に違いがあると思われますか?

佐用さん

その仕事を楽しんでいるかどうかが、大きなポイントですね。あとは相談できる、信頼できる仲間がいるかということでしょうか。

佐用さん

“やりたくない仕事でストレスを溜めつづける”というのが、不調の原因になるのではないかと考えます。気持ちの部分、つまりどういう思いで仕事に向かうのかという部分が、不調が表れるか否かの違いになると思います。

金子 茉由

もし不調が表れてしまったら、そのときが転職なども含めて自分自身の働き方を見直すタイミングなのかもしれないですね。

佐用さん

そうですね。いろいろな方法がありますが、自分がよくない状況にあるということを、ダメだと思わないことが大切だと思います。まずは抱え込まないでほしいですね。

心身の不調に陥る前に、取り組んでほしいこと

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金子 茉由

心身の不調を未然に防ぐためには、どのようなことに気をつけるべきでしょうか。

佐用さん

仕事に対して少しでも「楽しくないな」とか「つまらないな」と思っているのであれば、「自分は大丈夫だ」と強がらないことでしょうか。 その気持ちは無視せずに、家族や友人など、身のまわりの人に話したほうが良いですね。ため込んだり抱え込んだりしてしまうのが一番望ましくないと思います。

金子 茉由

昨今、新人や若手社員のフォローのために「メンター制度(※)」などを取り入れる企業も一般的になりつつありますが、IT業界でもその動きはありますか?

※メンター制度:「メンター」と呼ばれる先輩社員が、若手社員や新入社員、中途社員など業務経験の浅い社員のサポートを行うこと
佐用さん

増えていますね。実際にメンター制度設計の相談をいただくこともあります。なかには私のようなIT業界に詳しい外部の人間に、“企業のお医者さん”のような形で相談役として入ってほしいという依頼を受けることもあります。

金子 茉由

仮に会社のシステムやマネジメントの状況が変わらなかった場合、自分自身で自分を守るためにどのようなことができるのでしょうか?

佐用さん

根本的なとらえ方として、「事実」の部分と「価値観」の部分を分けて考えることが大切だと思います。

佐用さん

たとえば会社に勤めている方の場合、“8時間かけてできる仕事はこれくらい”というキャパシティ=「事実」の部分があって、まずはその「事実」を自分自身で認識する必要があります。そして次のステップとして、自分自身のキャパシティを上司や周りの人に伝え、すり合わせを行うことが大事です。

佐用さん

そのうえで、“残業をあまりしたくない”というのもその人の「価値観」ですし、“残業してでも働きたい”というのも一つの「価値観」ですよね。会社では、残業代も含めて労働時間に応じた金銭的対価が支払われるしくみになっています。その対価を得るのも得ないのも個人の「価値観」。つまり、自分として何を重視するかということを選べるシステムになっているんですよね。

佐用さん

「8時間でどれだけ成果が出せるか」という自分自身のキャパシティがきちんと理解できていれば、そのキャパシティを超えた分を労働時間として使うのか、あるいは趣味や家族などプライベートの時間として使うのかといった判断がしやすくなるはずです。それがわからないとひたすら仕事を受けつづけてしまい、自分自身が苦しくなってしまうという悪循環に陥ります。

金子 茉由

確かに「事実」と「価値観」を分けて考えるのは大切ですね。「価値観」が異なるために、部下は“なぜ残業をしなければいけないんだろう”、上司は“なんで残業をしないのか”といったギャップが生まれる原因にもなっているわけですよね。

佐用さん

そうですね。私はそもそも残業がある前提で仕事をするのがおかしい思っています。残業を受ける段階で、「なぜこの残業が発生したのか」という点をきちんと見るべきですね。私自身も上司に対して、もちろん成果を出すことを前提に、残業の目的を確認するよう努めていました。

金子 茉由

なるほど、ただ言われたからやるということではなく、仕事の目的を明確にしてから進めるということですね。

佐用さん

なかなか難しいかもしれないですが、どこかの世代が一歩踏み出さないと変わらないと思うんです。辛いかもしれないですが、今の若手世代の方々がこれからの時代を作っていくという気持で、勇気をもって上の人たちとも付き合っていってほしい。力に屈しないでほしい、というのが私の願望ですね。

佐用さん

ただ、残業も“するな”とはまったく思っていません。大事なのは、「どこからがプラスアルファなのか」という線引きをみなで共有することだと思います。何となくダラダラ仕事をしつづけるというのが一番よくないですね。

日ごろから取り組めるセルフケアの実践方法

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金子 茉由

特に若手エンジニアの方々が、日ごろから心身の健康を保つために、セルフケアでできる方法はなにかありますか?

佐用さん

自分自身が「気持よいな」と思うことを行ってほしいと思います。 付き合いで行うレジャーや飲み会などではなく、本当に好きなことやストレス解消になることがご自身のなかにあるはずなので、まずは思いきり自分の好きな事柄に没頭してみてください。また、休むことも同じくらい大切です。「休むことは正義だ!」と思いながら休んでほしいと思います。

金子 茉由

休む=悪いことをしている、申し訳ないといった気持で過ごしてしまうと、休んでも休んだ気がしないですよね。

佐用さん

そのとおりです。“怠けるのはダメだ”“サボるのはよくない”と思ってしまうと、休むこと自体がストレスになってしまうんですよね。私自身も「今日は仕事をしない!」と決めて、ひたすら好きなアニメを見つづけている日もありますよ、1日に30話くらい(笑)

佐用さん

日々一生懸命やっていれば、1日くらい怠けた日があってもよいと思いますし、そういう気持ちで休むことが大切ですよね。

<取材後記>

セルフケアという難しいテーマの話題ではありましたが、いくつもの試練を乗り越えてこられたからこその佐用さんの言葉には、どれも重みがありました。次回は「働かないリーダーが会社を変える」という視点から、ミドル世代のエンジニアに求められるマネジメントの極意について、佐用さんにお話を伺います。お楽しみに!

ライター

金子 茉由
12年勤務した大手人材会社を退職後、フリーランスライターに転身。会社員時代からIT業界のクライアントとの相性がよく、さまざまなIT系企業の採用活動支援や、エンジニアのスキル開発・育成支援業務に携わってきた。いまの一番の関心ごとは、子ども向けプログラミング教育の未来について。
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