今の会社に長くいすぎ!? 世界の主要IT企業エンジニアの平均勤続年数は3年以下
エンジニアにとって勤続年数が長いことはいいことだろうか、悪いことだろうか。エンジニアにとってはあまりに長いのも考えものだ。なぜなら、エンジニアの成長は、ポジションが変わることによってもたらされるからだ。一生のうち、稼働時間はほぼ40年。3年ごとに成長しても13回しかステップアップするチャンスはないのだ。意外に人生は短い。
「平均勤続年数が長い企業はホワイト」と言えなくなっているのが現実
あなたは今の会社に入社して何年目だろうか。
よく平均勤続年数が長い企業はホワイト、短い企業はブラックと言われるが、今は一概にそうも言えなくなってきている。平均勤続年数が長い企業というのは、経営が安定をして、給与も年々上がっていく傾向にある。社員にとってはやめる理由が見当たらない、あるいはやめたくない企業だ。しかし、裏を返せば、社内の序列も安定していて、出世しづらい、責任ある仕事をなかなか任せてもらえない、個人としての成長はしづらいという欠点があるということにもなる。
一方、平均勤続年数が短い企業というのは、経営がいい意味でも悪い意味でも安定していないことも多い。業績が悪化する不安定さは困るが、急成長をしているため新人を大量雇用しているということかもしれない。そういう不安定さであれば、チャンスが豊富にあり、個人としての成長もしやすい。
特にIT企業のエンジニアは、入社時に契約した職能給ベースの給与のままで、自然に昇給していくことは少ない。給与をあげるには、社内で別の仕事を請け負うか、管理職になるか、事業を成功させてボーナスをもらうか、転職するかしかない。そのため、海外のITエンジニアの平均勤続年数は3年以下というのが一般的だ。
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平均勤続年数を読むときに、気をつけておかなければならないポイントが2つある。それは「平均勤続年数が3年」という場合、「入社した人が平均して3年で退社している」ということではないということだ。
平均勤続年数とは、現在勤務している社員の入社日から数えた勤続年数の平均なので、事業を大幅拡大して、大量雇用した直後は平均勤続年数はかなり短くなる。極端な話、創業2年のベンチャー企業であったら、平均勤続年数は当然2年以下になる。
また、ホールディングス制をとっている企業の場合も、平均勤続年数が短めになる可能性がある。なぜなら、グループ企業内で社員が移動するからだ。そのグループには勤続30年だとしても、現社では勤続年数3年などということがありえる。
テスラ、ウーバーなどの新しい企業の平均勤続年数は2年前後と極端に短い
では、そのようなことを踏まえて、各企業の平均勤続年数はどのくらいなのだろうか。ビジネスインサイダーがシリコンバレーのIT企業の平均勤続年数を報じている(https://www.businessinsider.com/average-employee-tenure-retention-at-top-tech-companies-2018-4)。これによると、シスコシステムズやオラクルのようなBtoB企業は勤続年数が長めだが、ユニコーン企業、ベンチャーなど新興のIT企業は短めになる。ほとんどが3年以下だ。特にテスラ、ウーバーなどの新しい企業は2年前後と極端に短い。
最近成長が著しい中国のIT企業は、平均勤続年数がより短い(https://www.jiemian.com/article/2128045.html)。中国電信など携帯電話キャリアでも4年から5年程度であり、日本でも高給を支給することで話題になった携帯電話メーカー、ファーウェイでも4年。中国IT企業の中で時価総額の大きい御三家「アリババ」「テンセント」「百度」は3年以下。さらに、ライドシェアの滴滴出行は1.4年、シェア自転車のofo、Mobikeに至っては1年以下と極端に短い。
日本のIT企業の平均勤続年数、極端に長い企業と米国や中国並みに短い企業に二極化
では、日本のIT企業はどうなのだろうか。平均勤続年数は、有価証券報告書に記載されているので、主だった企業のデータは、ウェブから簡単に閲覧することができる。
大学生のIT企業就職人気ランキングの上位にくる企業のうち、有価証券報告書をウェブで公開している企業の情報をまとめた。そのため、外資系子会社などは含まれていない。また、有価証券報告書は公開されているものの中から最新のものを参考にしたので、報告時期は2017年から2018年にかけて企業ごとにバラツキがある。
一見してわかるのは、日本のIT企業は平均勤続年数が極端に長い企業と、米国や中国のIT企業並みに短い企業に二極分化されていることだ。勤続年数が長いIT企業はBtoB系であり、短い企業はBtoC系であることもよくわかる。平均年齢もBtoB系は高く、BtoC系は低い傾向がある。
いずれにしても、日本のIT企業の平均勤続年数は長い。米国のBtoB企業であるシスコシステムズやオラクルが7年程度であるに対して、同じドメインのビジネスを展開する日本のIT企業は15年以上にもなる。
変化の激しいBtoC系のIT企業でもぐるなび、サイバーエージェントなど5年を超える企業があり、これも米国や中国と比べると倍ぐらいの感覚になる。
エンジニアにとっての勤続年数、あまりに長いのも考えもの!?
エンジニアにとって勤続年数が長いことはいいことだろうか、悪いことだろうか。エンジニアにとってはあまりに長いのも考えものだ。なぜなら、エンジニアの成長は、ポジションが変わることによってもたらされるからだ。例えば、あるシステムの開発に従事をして、そのシステム一筋何十年となったら、その人の成長には限界がある。一定期間そのシステム開発をおこなったら、次は別のシステム開発に関わることで、未知の知識に触れ、大きな成長が期待できる。その意味で、海外のITエンジニアたちが3年程度で転職を考え始めるというのは、自分を最も効率よく成長させるひとつのメソッドになっているかもしれない。
もちろん、転職といっても他社に移籍することだけが「転職」ではない。自社の中で別の部署に異動する、別のチームに異動する、チーム内で別のポジションに就くというのも「成長のための転職」のうちだ。
3年を1単位として、1年目は新しい知識を学び、スキルを身につける。2年目はアウトプットする。3年目は、アウトプットをしつつ次の「転職」を考える。もちろん、チーム内、社内、社外の「転職」選択肢を同じ平面上で選択をすればよく、結果的に社外には転職せず、同じ会社に何年も居続けることになるということでもかまわない。
3年でポジションを変えることを意識して仕事をする。それが最も効率よく自分を成長させることができるのではないだろうか。一生のうち、稼働時間はほぼ40年。3年ごとに成長しても13回しかステップアップするチャンスはないのだ。意外に人生は短い。
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