スクラムマスターとは
スクラムマスターとは、アジャイル開発の代表的手法、スクラム開発手法の組織の一員です。スクラムマスターはプロジェクト活動が円滑に進み、プロジェクトメンバーが合意したプロセスを完遂できるように支援するファシリテーター(進行役)の役割を担います。
ファシリテーターとはわかりやすく言えば、会議などの司会・進行役のことで、スクラムマスターはプロジェクトの円滑な進行を支援します。
この記事では、未経験からスクラムマスターを目指す方に向けて、スクラムマスターの年収、仕事内容、なるためのステップ、必要なスキルなどについて解説をしていきます。
そもそもアジャイル開発とは
今では当たり前のように耳にする「アジャイル開発」ですが、その誕生は比較的新しく、2001年に登場しました。伝統的な「ウォータフォール開発」では開発工程として「要件定義→仕様策定→設計→開発→テスト」のプロセスがありますが、各プロセスでは厳密な文書化が求められます。
その結果、それぞれの開発プロセスの工数は膨らみ、仕様変更が発生すると大きな手戻りを生じるという問題を抱えていました。
そうした問題解決のために、より身軽な開発手法が必要だと考える人たちが中心となり、それぞれの主張や考えをぶつけ合った結果を、「アジャイルソフトウェア開発宣言」※という文書で宣言したのがアジャイル開発の始まりです。
アジャイル(Agile)は「素早い」を意味する英語です。アジャイル開発とは大まかな仕様が決まれば、「手直しを恐れずに、まずは作ってみよう」という考え方に則り、「可能な限り少ない工数」で、「短期間」でシステム開発を行う手法と理解をしておいてください。
【参考】:アジャイルソフトウェア開発宣言
スクラムとは
スクラムは1990年代に編み出されたアジャイル開発の手法の1つで、2010年に発行されたスクラムの公式ガイドにその手法やルールが書かれています。
アジャイル開発では厳密な計画を作成しないため、システム開発全体の方向性が定まっていない場合に、個々の機能はうまく実装されても一貫性に欠けるシステムになってしまうリスクがあります。
この事に気付いた頃には、かなりシステム開発が進んでしまっており、その修正に大きな負荷や工数が掛かるという問題があります。このような問題を解決するため、アジャイル開発で多く採用されるプロジェクト管理フレームワークが「スクラム」です。
スクラムはプロジェクト管理において「チームの統制」や「コミュニケーション」を重視し、アジャイル開発の最大の特徴である柔軟性、自由性を保ちながらチームの意識統一を高めてプロジェクトを円滑に遂行させるという特徴や利点があります。
【スクラム公式ガイド】:2020-Scrum-Guide-Japanese.pdf
スクラム開発の組織
スクラム開発では1つのチームは3人から多くても10人で編成します。また責任者に活動を任せるのではなく、チームメンバー1人1人が主体的に行動することが求められます。
1.プロダクトオーナー
プロダクトオーナーはチームの舵取り役であり、舵取りはしますがチームに対して口出しはしません。チームメンバーが最高のパフォーマンスを発揮できるようサポートを行います。プロダクトオーナーは開発の方向性を定め、またプロダクトの価値を最大化することに責任を負います。
プロダクトバックログを作成・管理するのもプロダクト・オーナーの役割です。
2.スクラムマスター
スクラムマスターはマネージャーやリーダーという立場よりはメンター、助言者という立場です。チームメンバーとは対等な関係で、上下関係はありません。困っているメンバーを支え、問題を解決するのがスクラムマスターの仕事です。スクラムマスターはチームのドクターのような存在とも言えます。
スクラムマスターはいらないと考える人も一部にいますが、進行役のいない会議はなかなか結論が出なかったり、会議が紛糾したり、或いは声の大きい人に流されてしまったりすることがあります。こうした事が起きないようにするのもスクラムマスターの役割です。
スクラムマスターとプロジェクトマネージャーを混同する方が少なくありませんが、注力する対象が根本的に異なります。プロジェクトマネージャーはプロジェクトに注力し、スクラムマスターはチームそのものに注力する点で大きく異なります。
3.チームメンバー
スクラム開発チームにはリーダーと呼ばれるメンバーはいません。いるのは舵取り役のプロダクト・オーナーや、ドクター的な存在のスクラム・マスターと主役となるチームメンバーだけです。
リーダー的な立ち位置にいるのはスクラム・マスターですが、スクラム・マスターの主な役目はメンバーの統率ではなくサポートです。スクラムチームの主役はあくまでもメンバー1人ひとりなのです。
スクラムマスターの主な仕事と役割
スクラムマスターはチームにスクラム手法を導入、定着、推進を行うことで、チームの成果を最大化させる役割を担います。そのためにも具体的には次のような仕事を行います。以下、スクラムマスターの仕事を挙げていきます。
【スクラム公式ガイド】:2020-Scrum-Guide-Japanese.pdf
スプリント計画ミーティング
アジャイル手法では、チームが次のスプリント(短く区切られた開発期間)のタスクと、その実現手段についてスプリント計画ミーティングで決定します。ミーティングはプロダクトマネージャーを含めて全員が参加し、プロダクトバックログの共有を行います。
スプリント計画ミーティングでスクラムマスターは進行役を務めます。
スタンドアップミーティング
スクラムチームで毎日開催されるミーティングのことです。スタンドアップミーティングでは前日のタスクの達成度合いを確認し、タスクの進捗状況を把握し、問題把握を行います。また当日のタスクについても確認をします。
問題解決
プロジェクトに遅れや問題があれば、その把握と原因究明を行い、問題解決を図るのがスクラムマスターの役割です。計画通りに進捗していない場合、スクラムマスターは自らその原因を突き止めなければなりません。
問題発生の原因には、スキルの問題、無理なスケジュール、メンバー間の対立など、さまざまな原因が考えられますが、その根本原因を把握し、効果的な解決策をメンバーの協力を得て見出すのがスクラムマスターの重要な役割です。
プロダクトバックログのサポート
プロダクトバックログはシステムや製品の機能を中心に作成され、プロダクトマネージャーがその管理を行いますが、そのサポートはプロジェクトの状況を把握しているスクラムマスターの役割です。
スプリントレビューミーティング
1つのスプリントが終了した後に行うレビューミーティングのことです。スプリントを振り返り、改善や修正すべき点を洗い出して、次のスプリントに反映するのがスプリントレビューミーティングの目的です。
こうして、失敗や反省を活かしながらスパイラルアップでスプリント活動の効果アップを図っていきます。
スクラムマスターの年収
スクラムマスターと似た職種のプロジェクトマネージャーを参考にすると、「マイナビエージェント職業別年収ランキング」での平均年収は670万円、経済産業省2017年発表「IT関連産業の給与等に関する実態調査結果」では平均年収891万円と分かりました。
国税庁2020年発表の民間給与実態統計調査における民間企業平均年収は433万円なので、スクラムマスターは一般平均年収よりも、やや高いことが分かります。
【参考】:プロジェクトマネージャー(オープン・WEB)|職種別平均年収ランキング【2020年版】│マイナビAGENT
※【平均年収 調査対象者】2019年12月~2020年5月末までの間にマイナビエージェントサービスにご登録頂いた方
【参考】:IT関連産業における給与水準の実態① ~ 職種別(P7)「プロジェクトマネージャ」
【参考】:民間給与実態統計調査-国税庁
未経験からスクラムマスターを目指すための方法
転職者採用では即戦力として期待した採用がメインとなるため、アジャイル開発やスクラムマスターの経験がない方には厳しいかもしれませんが、客観的なスキル証明を有していれば、スクラムマスターになれる可能性は高まります。
また、転職経験や業界知識がない方の転職活動はかなりハードルが高くなりますので、まずは関連資格の取得と転職エージェントの活用をおすすめします。
関連資格を取得する
スクラムマスターを目指す上で、スクラムマスターに関する資格を取得しておくと、スキル証明となり採用試験で有利になる可能性があります。ここでは初心者向けのスクラムマスター資格について紹介をしますのでぜひ参考にしてみてください。
■ 認定スクラムマスター(CSM®)
米国の非営利団体、Scrum Aliance主催のスクラムマスター資格で、日本では最も認知度が高い資格です。アジャイル開発について理解をしたい・スクラム スターの資格を取得したい初心者の方は、この資格を取得してから上位資格にステップアップをしていくと良いでしょう。
トレーニングに参加し、受講状況により適性が認められると、受験資格が与えられ、合格ラインに達すると認定スクラムマスター(Certified ScrumMaster:CSM )認定証が発行されます。認定後は12カ月以上の実務経験を積んでから上位資格(アドバンスド認定スクラムマスター)へのステップアップを目指せます。
【参考】:Scrum Alliance®認定 スクラムトレーニング|オッドイー
■ LSM(Licensed Scrum Master)
Scrum Inc.Japanが主催するスクラムマスターの認定資格です。Zoomを利用した2日間のセミナーに参加し、サイト上で認定試験を受けます。スクラムの経験の有無にかかわらず、誰でも受講と受験ができます。
試験に不合格でも約3千円で再受験ができるため、合格のハードルはさほど高くはありません。
*【参考】:Registered Scrum Master Training - Scrum Inc. Japan
転職エージェントを活用する
未経験者の転職では、不安が多く、思わぬ壁にぶつかることもあります。未経験で転職活動が初めてという方には自分の適性や希望を聞きながら、最適な案件や企業を紹介をしてくれる転職エージェントを利用することをおすすめします。
転職エージェントは転職の専門家が親身に相談に乗ってくれますので、不安も一気に解消するでしょう。また相性のよい、自分に適した企業を紹介してもらえる利点もあります。
【参考】:マイナビIT エージェント
スクラムマスターに必要なスキル
次に、スクラムマスターに必要なスキルについて解説をしていきます。アジャイル開発やスクラムの基本を理解しているのは当然ですが、それらをメンバーに理解させ、リードをしていく力も必要になります。
ここでは特に必要なスキルに絞って紹介しますので、自分のスキルと比べて弱いスキルがあれば、その強化を図るようにしましょう。
コミュニケーションスキル
スクラムマスターはプロダクトオーナーやメンバー、さらにはシステムと関わるオーナーやユーザー、クライアントとの信頼関係を築くことが求められますので、コミュニケーション能力が不可欠です。
スクラム以外の開発でもコミュニケーション能力は重要ですので、積極的にコミュニケーションスキルを高める努力が必要です。
スケジュールコントロールスキル
スクラムマスターはスクラム手法をチームに導入し、浸透させる責任があります。そのためにスクラムの全体スケジュール策定、具体策や実施計画の策定も必要です。また、スケジュール通りに活動が進まなければ、開発計画そのものに影響を及ぼします。
そのためスケジュール管理スキルは大変重要です。
サポートスキル
スクラムマスターはチームにスクラム手法を導入し、スクラムを定着させる責任がありますが、そのためにはチームメンバーに対する的確なサポートが求められます。メンバーに対する助言、コーチングやトレーニングなどを通じてチームをサポートしなければなりません。
また時にはメンバー以外に、プロダクトオーナーの役割であるプロダクトバックログ管理に対してもサポートが必要となることもありますので、あらゆる人に対して心を配り、必要なサポートを提供するスキルが求められます。
コーチングスキル
コーチングとは相手が自ら問題解決を行う上で何が必要かということを自ら悟らせることです。ティーチングでは教えるスキルが求められますが、コーチングでは相手の気付きを促し、成長につなげていくことが求められます。
そのためには、質問をして相手に考えさせ、求める答えに導くには、メンバーとより良い人間関係を築くことが必要です。
未経験からスクラムマスターを目指すなら
DX時代を迎え、ITエンジニアの不足が深刻化しており、より効率的な開発に対するニーズが高まっています。そうした状況からスクラムマスターへの転職を希望される方が増えていくのは当然のことでしょう。
しかし一方で、未経験からスクラムマスターを目指すためには、必要な資格やスキルを身に付け、さらに転職に関するノウハウを得ることが必要となります。さらには数ある求人の中から自分に適した案件や企業を探し出すのも容易なことではありません。
そこで利用を推奨するのがマイナビIT エージェントです。
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