受託開発はつらいって言われるけど本当?
SNSやネット掲示板で「受託開発つらい」というワードが見受けられます。他にも「やめとけ」「オワコン」「地獄」といった過激な反応もあります。
受託開発の仕事はクライアント次第では、相応のプレッシャーがある仕事であることは容易に想像がつきます。一方で、受託開発の仕事にやりがいを見出しているエンジニアもいるため、「受託開発の仕事はつらい」と一概には言えないでしょう。
この記事では、受託開発の仕事に携わり、仕事がつらいと感じているエンジニアの方に向け、受託開発が「つらい」と言われる理由、受託開発のメリット・デメリット、悩みの改善法などを探っていきます。ITベンダーへの転職を考えている方もぜひ参考にしてください。
受託開発とSESは違う
システム開発の受注形態としては、主に受託開発とSESがあります。所属する企業が同じで、同様のシステム開発案件でありながら、クライアントの要望によって契約形態が変わることがあります。それによってエンジニアの責任範囲が変わりますので、違いを理解しておく必要があります。
受託開発は「請負契約」が一般的であり、クライアントの委託を受けてシステムを開発します。この受託開発では「成果物を完成させる責任」が伴います。
一方、SESは「システムエンジニアリングサービス」(System Engineering Service)の略称で、エンジニアをクライアントに常駐させ、エンジニアの持つスキルやノウハウを提供する契約で、成果物完成責任はありません。
エンジニアの皆さんは同じように客先に派遣されても、受託開発では成果物納品責任があり、SESでは成果物納品責任がないという違いがあることを理解しておきましょう。
受託開発がつらいと言われる理由
受託開発の仕事をつらいと感じるのには、年収の低さなどの待遇面、下流工程のためしわ寄せを受けやすいことなど、さまざまな理由があります。主な理由を1つずつ確認してみましょう。
納期の制約が厳しい
受託開発はクライアントとの契約に基づいて行うため、契約で取り決めた納期厳守が求められます。仕様変更やバグなどによって納期がタイトになる場合でも、契約上、納期遅延は認められず、その結果としてエンジニアは残業や時には徹夜を余儀なくされることもあります。
クライアントの要求が厳しい場合がある
受託開発では、発注者側と受注者側の力関係によってはクライアント側の意向を尊重しなければならず、時にはクライアントの無理な要求を飲まざるを得ないケースがあります。
自由に開発できないケースが多い
受託開発では予算・納期・仕様面などの縛りが多くあるため、開発の自由度が低い傾向にあり、エンジニアのチャレンジ意欲が削がれることも少なくありません。自由に開発を行いたいエンジニアにとっては、このような縛りが仕事に対する不満の原因になることも考えられます。
下流工程の担当が多い傾向にある
下請け・孫請けでの受託となると、要件定義や設計などの上流工程の仕事は少なく、プログラミングやテストなどの下流工程のみの受注となるケースがあります。下流工程になればなるほど、業務内容の幅が狭くなる傾向にあるため、仕事にやりがいを見い出せなくなるエンジニアもいます。
客先常駐となりやすい
受託開発では、開発プロジェクトの期間中、開発エンジニアがクライアント企業に常駐するケースがあります。自社を離れ、慣れない環境でクライアントの従業員に気を使いながら開発業務に携わることに抵抗を感じるエンジニアもいます。しかし、さまざまな環境で仕事を行うことで培われるものも多くあります。
受託開発のメリット
つらいと言われる受託開発ですが、さまざまな経験を積めたり、スキルアップにつながったり、エンジニアにとっては多くのメリットがあります。中には受託開発はやりがいがある、楽しいといった人も見受けられます。ここでは、受託開発のメリットについて紹介します。
さまざまな経験を積める
受託開発ではさまざまな業種や企業から受注することがあります。客先常駐になるケースも多いため、さまざまな企業や人と接して人脈づくりができ、多くの経験を積めるのは受託開発ならではのメリットです。経験やスキルを積みたい方にはピッタリです。
開発の実績を積める
受託開発ではさまざまな案件や開発形態があり、小規模から大規模開発まで多くの経験を積むことができます。開発プロジェクトもさまざまで、大規模案件ではプログラマーとして働き、小規模案件ではシステムエンジニアとしての経験を積むこともあります。
開発手法も、ウォーターフォール型からアジャイル開発までさまざまな手法を経験できることが多く、開発の実績を積めるのは受託開発ならではのメリットです。
業務スキルが身に付く
受託開発では、対象業種や対象部門が都度変わる場合もあり、さまざまな業務スキルを身に着ける機会に恵まれます。金融・流通・製造などのさまざまな業界知識、人事・財務・営業などの部門知識も身に付き、業務スキルを高めることができます。
品質管理能力が身に付く
受託開発では高品質、高い性能要件を求められます。時間当たりの処理件数、レスポンスタイムなど数値で要件が示されることがあり、クライアントからの品質管理に対する高い要求に応えなくてはなりません。この経験を積むことで、ソフトウェアの高い品質管理能力が身に付きます。
人材育成に熱心
受託開発をメインにしている企業では、クライアントの期待に応えるため、人材育成に力を入れています。そのため資格制度や教育制度が整い、セミナー費用の会社負担、資格手当などの仕組みが整っている会社もあります。このような企業で働くことで、スキルアップが図りやすくなります。
受託開発のデメリット
次に受託開発のデメリットについて確認しておきましょう。以下のような受託開発のデメリットが仕事を「つらい」と感じてしまう原因であると考えられます。
納期の制約がある
クライアントとの契約には必ず納期が設けられます。中には納期遅延に対してペナルティを課すケースがあり、納期優先がエンジニアの大きなストレスの原因になることもあります。思わぬトラブルでスケジュールに遅れが生じると、そのリカバリーにエンジニアは大変な労力を強いられるからです。大変な側面もありますが、トラブル時のリカバリー力が身に付くので、今後に役立てることもできます。
多重下請けにより低報酬の可能性がある
IT業界では、建設業界でよく見られる「多重下請け構造」があります。クライアント企業から直接受注するのが元請け企業です。元請け企業から2次請け、3次請け企業に開発業務が委託されます。
それぞれがマージンを得るため、「多重下請け構造」では下に行くほど利益率が低下する傾向が強く、その分エンシニアの取り分(報酬)が減っていきます。
年収が低いと感じる場合は、思い切って転職も視野に入れてみてもいいかもしれません。
【参考】:マイナビIT エージェント
客先常駐がある
自社開発では自社向けの開発が主となり、クライアントが存在しないため社内での開発業務を行うのが一般的です。一方、受託開発では出向のような形で社外に派遣されることが少なくありません。そのため、慣れた自社内で仕事をしたい人にとっては客先常駐がストレスに感じることがあります。
受託開発がつらい状況を改善するには
エンジニアにとって受託開発にはメリット、デメリットがあります。ここでは受託開発がつらいと感じた際に、それを改善するための方策について解説していきます。
クライアントから信頼を得る
受託開発ではクライアント企業常駐案件があり、クライアントとの関係を強化できるチャンスがあります。クライアントから信頼されると、案件がある度に直接声が掛かるようになり、時にはSES契約で常駐を依頼されるケースもあります。
クライアントからの信頼を得ると、そのことで社内での評価も上がり、昇給や昇格の機会にも恵まれる可能性が高まります。
やりがいを得られるようスキルアップを図る
受託開発でつらいと感じるケースでは、仕事が予定通りはかどらないことも挙げられます。納期遅れ、バグの発生などによる叱責やプレッシャーがストレスとなることもあります。
これらを解決し、現状の「つらい」という状況を改善するためには、今よりもエンジニアとしてのスキルアップを図ることが有効です。積極的な自己啓発に努め、資格取得や言語スキルの向上などによって仕事の成果につながり、やりがいにも繋がっていきます。
キャリアパスを見直す
受託開発中心の環境では、つい日々の仕事に追われてしまい、当初描いていたキャリアパスを見失いがちになる人もいます。自分自身は何をしたいのか、将来どのような職種に就きたいのか、自身の適性や希望を再確認して、今1度キャリアパスを明確にしてみましょう。
明確なキャリアパスを持つことで将来目標が定まると、仕事に対する意識が前向きに変わり、やりがいを感じられるようになります。
元請け企業や自社開発企業に転職する
仕事がつらい原因として上司の言動や職場環境にある場合には、元請け企業、自社開発企業への転職が1つの解決策になります。
同一職場内でのキャリアチェンジが難しい場合にも転職は1つの解決策となります。自分に合う企業への転職によって、さまざまな悩みが解決し、いきいきと仕事ができるようになるケースも少なくありません。
受託開発から転職を目指すなら
ここまで、受託開発の仕事がつらいと言われる理由、受託開発のメリット・デメリット、つらいと感じた時の対処法などについて解説してきました。この記事は、受託開発の仕事がつらいと悩んでいる人、今後受託開発企業への転職を目指す人の参考になったのではないでしょうか。
これから受託開発エンジニアを目指したい方、会社や仕事の相性、将来目標などからキャリアチェンジを目指したい方の解決策に、転職活動があります。
しかし、転職活動では、自分の将来目標の確認、キャリアパスの設定、自らのスキルの棚卸、求人情報の入手、自分に合った会社選びなど、やるべき事が山のようにあります。現在の仕事を続けながら、1人で行う転職活動は大変な負担です。
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