いま、メタバースは"カオス"状態 「凸版印刷のアバター技術でメタバースに秩序をもたらします!」
“前編”では、DXデザイン事業部 技術戦略センター 企画・開発本部 データ戦略企画室 「AVATECT(R)」戦略担当の藤﨑 千尋さんに、「MiraVers(R)」および「AVATECT(R)」という2つのサービスを軸とした凸版印刷ならではのメタバースへの取り組みをお聞きしました。
その中では、メタバースははじまったばかりのサービスであることから、ルールや法整備があやふやな、いわゆる“カオス”な状態であり、それに起因するアバターのなりすましや不正利用という課題が浮き彫りとなりました。
そうした課題に対し、凸版印刷では「AVATECT(R)」を用いた真正性の保証にもとづくセキュリティ対策で、誰もが安全・安心にメタバースを利用できる世界をつくろうとしています。
(生成したアバターに真正性確認要素を付与し、真正証明システムを構築)
今回は、DXデザイン事業部 技術戦略センター 企画・開発本部 データ戦略企画室 「AVATECT(R)」のエンジニア、齋藤 隆介さんのお話を主に、凸版印刷ならではのアバター技術についてさらに深掘りしてお聞きした内容をご紹介します。
凸版印刷ならではのフォトリアル技術でアバターの真正性を実現
どのような方法で技術やセキュリティに対するアプローチを行っているのですか?
私たちのチームでは、まだ顕在化していないメタバースに関する問題を洗いだし、課題として整理したうえで、それを解決する仕組みや方法を調査の上、実装可能なものなのか検証を繰り返し行っています。
(DXデザイン事業部 技術戦略センター 企画・開発本部 データ戦略企画室 「AVATECT(R)」開発エンジニア 齋藤 隆介さん)
例えば、「AVATECT(R)」のキーとなる技術の一つである「電子透かし」は、もともと当社にとってなじみのある、真正性を担保する技術なのですが、この技術をどう使えば効果的な機能を発揮するかについて、プロジェクトのメンバーと検討しながら仕組みを構築していく感じです。
(電子透かし付与イメージ)
もう一つのキー技術である「NFT」についてはいかがですか?
NFTはブロックチェーンを用いた技術なのですが、唯一性を示すことができる特徴を持っています。「AVATECT(R)」の中では、このNFTをアバターのファイルに付与して、そのアバターが唯一のアバターファイルであることを証明するために用いています。
それによって「電子透かし」だけでは担保できない部分を補い、セキュリティ性を高めている訳ですね。
そうですね。
(NFT付与イメージ)
もう一つ気になるのがアバターの品質です。凸版印刷のアバターは、現実の人物と見紛うほどのクオリティのものができると聞いたのですが、どうやってそれを実現しているのですか?
おっしゃる通り、私たちはアバターをフォトリアルに作ることにこだわっています。アバターから本人が想起できるレベルでそっくりなアバターがあれば、メタバース空間内でも現実世界のように個人を自然に識別できるようになりますから。
こういったフォトリアル技術に関しては、1枚の写真からリアルな3Dアバターを自動生成するサービス「MetaClone(R)Avetar(メタクローンアバター)」やさまざまな人体情報データ活用に関する研究/開発ををこなう「トッパンバーチャルヒューマンラボ」の取り組みがベースとなっています。
(フォトリアルアバターイメージ)
フォトリアルなアバターを生み出す技術の下地は整っていた訳ですね。
そうですね。これらの技術を用いてつくられたアバターは、個人が想起できるレベルに本人にそっくりなので、データの漏洩や不正利用に対するリスクは無視できないと考えました。
アバターが個人情報として取り扱われる未来を想定し、一番最初に「真正性の証明」の実現に取り組みました。それが安全・安心なメタバースにとても重要な機能になると感じたからです。
さまざまなアバターの不正利用シーンに対して対策法を考えていく
開発はどのようなかたちで進めているんですか?
まずはチームでメタバースを利用する上で想定される問題・課題を出し合い、それを課題として分類・整理してリスト化を行っています。重要度に応じた優先度をつけてテーマを決定しています。
さらにそのテーマにもとづき、解決方法を検討し「MVP」(Minimum Viable Product:最小限の機能のみを備えたプロダクト)という形で開発を行った上で実証実験に取り組んでいるところです。
なるほど、まずは必要最低限の機能を持ったモノを作り、それに対して評価・検証を重ねていくんですね。
その通りです。「AVATECT(R)」の場合で言えば、考えられるさまざまなアバターの不正利用シーンを洗い出し、それら一つひとつに対して「どうすれば防止できるか」「そのためにはどんな技術が必要か」といったことを考えながらMVPによる開発と実証実験を重ねています。
例えば、AIを用いたディープフェイク動画を使って、有名人になりすました不正行為がメタバースにおける問題となっていますが、そうした不正利用シーンを多面的に分析し、課題の掘り下げを行います。
明確化した課題の中から、不正利用を抑制する方法を検討して、システム図にし具体的に開発していく感じですね。こうした一連の作業は、他部署や協力会社さんとも連携しながら一緒に進めています。
「AVATECT(R)」の中枢機能である「真正性の証明」で難しい部分や課題となる部分はどんな点ですか?
それこそ“山積み”です(笑)。メタバース空間でアバターの真正性を証明したいシーンって本当にたくさんあるんですよ。
例えば、買い物など自分と相手とで金銭的なやり取りが必要なシーン、取引先との商談シーン、重要会議など限られたごく一部のアバターしか立ち入りを許されないシーン等があります。
さまざまな場面があり、それら一つひとつで真正性の確認のフローや証明に必要な情報が変わります。ユースケースとして切り出した事例をもとに、どのような仕組みにするかを模索しながら研究開発を進めている感じですね。
こうした模索の積み重ねが安全・安心にメタバースを利用できる環境の実現へつながっていくんですね。
そのための軸となる技術が「電子透かし」であり「NFT」という訳です。
世の中のさまざまな技術や方法論を組み合わせ、新たなしくみを生み出せる人材が理想
こうした凸版印刷ならではのメタバースへの取り組みをさらに拡大していくにあたり、どのような人材を欲していますか?
研究開発という仕事だけに、既存の技術や方法論を組み合わせて新たな仕組みを生み出していくようなことに魅力を感じてくださる方と一緒に仕事がしたいですね。
加えて新しい問題に対して広い視野で解決方法を模索していけるような方、デジタルの世界だけでなく幅広いジャンルに広くアンテナを張り、情報をキャッチできるような方も理想です。
「メタバース」という新しい世界に対する凸版印刷ならではの独自価値の創造に取り組んでいるので、新しい価値を生み出したい!というマインドを持って、トライアンドエラーができる方であれば、きっと大きなやりがいを感じられると思います。
(DXデザイン事業部 技術戦略センター 企画・開発本部 データ戦略企画室 「AVATECT(R)」戦略担当 藤﨑 千尋さん)
凸版印刷さんは、これからメタバースに関わりたい、という方にとっては、最高の場所といえそうですね。
本日はありがとうございました。
(編集後記)
凸版印刷さんがメタバース事業に参入、と知ったときは、どのような技術がメタバースにいかせるのだろう、と感じていましたが、取材をしていくにつれ、凸版印刷さんがお持ちの技術が、まさにメタバースを作る上で最適のものばかりと強く感じました。
特に、「現在のメタバース技術はいわばカオス状態で秩序が必要、そのために当社の技術が活きる」というお話には、リーディングカンパニーとしての自負と強い使命感を感じました。
これからどのように展開されていくのか、凸版印刷さんのメタバース、目が離せません。
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