テレワークでの「働きすぎ」を防ぐ5つのポイント【在宅勤務の処方箋】
新型コロナウイルスの感染拡大をきっかに、テレワーク(リモートワーク)の拡大が求められ、日本人の働き方が以前とは全く異なったものになろうとしている。
テレワークの問題点として、管理職が部下の働きぶりを管理できず、「サボる」社員が増えるという懸念が挙げられる事が多いが、そこは真面目な日本人。実は、テレワークをすると「働きすぎ」になるという調査結果があり、実際にそうした傾向が見られる。
今回は、なぜテレワークで「働きすぎ」になってしまうのか、「働きすぎ」を防ぐにはどうすればいいかについて述べていきたい。
テレワークを以前から進めている企業では、「従業員の働きすぎ」が課題
新型コロナウイルスの感染拡大の影響で、半ば強制的にテレワークを強いられている方が増えている。多くの人から聞こえる声が「自宅では効率が悪くて仕事にならないのではないか」という不安だ。
しかし、実際にやってみれば、問題はまったく逆であることがわかる。テレワークを以前から進めている企業では、「従業員の働きすぎ」を課題として感じている。
平成31年3月に公表された「多様な働き方に関する実態調査(テレワーク)」(東京都産業労働局)によると、在宅テレワーク経験者が感じているメリットは、「通勤時間、移動時間の削減」「育児との両立」「業務への集中力の向上」などが上位にくる。一方でデメリットは、「勤務時間とそれ以外の時間の管理」「社内のコミュニケーションに支障がある」「長時間労働になりやすい」が上位にくる。
テレワークを実施している人事管理系の方に話を聞くと、「長時間労働になりがちで、従業員の健康が心配になる」という人が多い。そのため、在宅勤務をする時は社内システムにログインすることを義務付け、ログイン時間で労働時間を計測し、管理職が労働時間についても管理指導をすることが一般的になりつつある。
つまり、未経験者にとっては、在宅勤務は「遊んでしまうのではないか、サボってしまうのではないか」と思いがちだが、実際にやってみると、むしろ「働きすぎ」が課題になってしまうのだ。
働きすぎの要因は、無駄なコミュニケーションがなくなることや労働時間に対する意識のギャップ
働きすぎになってしまう最大の要因は、無駄なコミュニケーションがなくなることだ。社内では「ちょっといいですか?」と声をかけられ、簡単な打ち合わせをすることがよくある。これを無駄なコミュニケーションと決めつけるのは間違いだが、作業が中断されることは間違いない。在宅では、この中断がないため、作業に集中ができる。集中できるので仕事をたくさんしてしまうということになる。
もうひとつは、意識内の労働時間と実際の労働時間にギャップがあることだ。多くの人が片道1時間ほどの通勤時間を費やして会社に移動をしている。この時間も意識の中では労働時間と感じてしまう。勤務時間が8時間であっても、意識の中では通勤時間を含めた10時間労働に感じている。通勤時間が不要な在宅勤務では8時間働けばじゅうぶんなはずだが、意識の中では10時間働かないと、働いた気にならない。
また、現在では多くの企業が「8時間会社にいること」を評価の基準にするのではなく、「成果による評価制度」を導入している。8時間で終わる仕事の評価を高めるには、内容の質を高める方法と労力をかけて評価を高める2つの方法がある。内容の質を高めることは簡単ではないが、時間をかけて内容を充実させることはさほど難しくない。そこで、高い評価を得ようとして、従来よりも時間をかけがちになってしまう。
特に契約社員のように、短期契約で働いている場合などは、契約を更新してもらおうと、上司の目が届きづらくなると、長時間労働に陥りがちになる傾向があるという話もよく聞く。
在宅テレワークで働きすぎにならないための5つのポイント
在宅テレワークで働きすぎにならないためには、いくつかポイントがある。
ポイント(1)その日にやる業務をリスト化しておく
仕事を始める前に、まず、その日にやる仕事のリストを作っておく。ToDoリストのような細かいものではなく、「3/23展示会資料作成」「製品Aの営業資料作成」などの大まかなものでかまわない。そして、仕事を終える時には進捗度を点数などで書き込む。きちんとした書類にしなくても、スマートフォンのメモなどで作る程度でかまわない。
重要なのは、このリストを上司やチームと共有をすることだ。これにより、周囲が「働きすぎ」「さぼりすぎ」を把握できるようになり、共有することで、きちんと業務に向き合う意識が生まれる。
ポイント(2)休憩は自分のタイミングでとる
1時間働いたら10分休憩などのような時計に則った休憩の取り方ではなく、仕事のキリがついたところで休憩する、電話などで集中が中断させられた後に休憩するなど、自分のタイミングで休憩を取る。この休憩をする時は、ソファに寝そべる、ゲームをするなどではなく、コーヒーを入れる、洗い物を片付けるなど、単純で短時間で済む家事をするのがお勧めだ。
休憩だからと、体を本格的に休めてしまうと、仕事モードに戻るのに大きなエネルギーが必要になり、かえって精神的に疲労してしまう。この点、家事は頭をリフレッシュすることができ、同時に家もきれいになって一挙両得だ。
ポイント(3)仕事禁止ゾーンを設定する
理想的なのは、書斎やデスクがあり、仕事は必ずそこでやるようにすること。家族にも、仕事ゾーンにいるときは仕事中なのでできるだけじゃまをしないというルールを設定しておく。子どもと話をする時も、自分から仕事ゾーンの外に出て、それから話しかけるようにする。
しかし、住宅の事情や家族構成などによっては、仕事ゾーンを設定することが難しい場合もある。その場合は、逆に「仕事禁止ゾーン」を設定しておく。多くの住居では、テレビを見るソファとキッチンあたりになる。そこでは、携帯電話で仕事の電話をかけることもしないようにし、休憩をする時は禁止ゾーンに移動をする。家の中で、仕事をする場所としない場所を作り、行動を分けることで、だらだらと長時間働く状態を避けられるようになる。
ポイント(4)1日1回、スーパーかコンビニに買い物にいく
在宅勤務だからといって、1日家で仕事をしてどこにも外出しないというのは、体の健康にも問題を生じるし、精神的な健康も損なうことになる。本来は、散歩にも出かければいいのだが、仕事が詰まってくるとどうしてもサボりがちになる。
そこで、スーパーかコンビニに買い物にいく用事をあえて作る。例えば、冷蔵庫を見たら牛乳が切れそうで、トイレを見たらトイレットペーパーが切れそうだとしたら、スーパーでその日は牛乳だけ買い、トイレットペーパーは翌日に回す。あえて、1日1回買い物の用事を作るのだ。急げば15分、ゆっくりでも30分で済む用事なので、いくら仕事が詰まっていても、時間が作れないということはない。
1日1回、外出をすることで、体と精神の健康は保たれる。
ポイント(5)働いた時間を可視化する
在宅勤務になっても、職場と同じ始業時間から就業時間まできっちり働こうとする人が多い。しかし、それでは在宅勤務のメリットが活かせない。在宅勤務は、家事や子育て、介護といった私的な事情と業務を両立させるための仕組み。あるいは、効率的に働き、創造的な仕事にかける時間を抽出するための仕組みだ。
それでも、会社時間で仕事をしてしまうのは、勤務時間と休憩時間を自己管理する負担を重荷に考えてしまうからだ。
ここは「あえて管理をしない」という逆転の発想をしてみる。と言っても、本当に自己管理をしないわけではない。スマートフォンのアプリには、時間を測定し、集計してくれるものがたくさんある。このようなロギングアプリを使って、仕事をした時間と時刻を可視化することをしてみる。細かいログをとるようなアプリだと、かえって面倒になるので、仕事を始める時、休憩するときにそれぞれボタンをタップし、帯グラフで表示してくれるようなシンプルなものがいい。
この可視化したグラフを見返せば、それぞれに考えるところが必ず出てくる。夜遅くなりすぎなので、朝早く起きて仕事をしようとか、午前と午後の間にむしろ3時間ぐらい休憩と昼寝を入れた方が調子がいいとか、自分にあった働き方が見えてくるはずだ。
在宅での働き方も長期戦でじっくりと取り組むべき
新入社員の頃を思い出してほしい。会社時間というリズムで働くことに、すぐに慣れる人は少なく、多くの人が1年や2年という長い時間をかけて、体を慣らしていったはずだ。その間には、朝寝坊をして遅刻しそうになったり、寝不足や二日酔いのひどい状態で出勤したりしたこともあったはずだ。
在宅勤務のリズムを作るのも同じように1週間や2週間でできるはずはない。在宅での働き方も長期戦でじっくりと取り組むべきことなのだ。
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