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【疲れ目解消法】リモートワークを快適に!疲れ目の意外な原因とその対策とは?
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【疲れ目解消法】リモートワークを快適に!疲れ目の意外な原因とその対策とは?

牧野武文(まきの・たけふみ)
2020.12.14

疲れ目の正体は基本的には筋肉疲労

エンジニアに限らず、疲れ目に悩んでいる人は多い。理由は言うまでもなく、モニターを見る時間が長くなっていることだ。夕方になると、目がしょぼしょぼする。眠たいわけでもないのに、目の周りがぼうっとする感覚がある。さらにひどくなると、肩こりや頭痛といった症状まで現れる眼精疲労となる。

疲れ目に悩む人の多くが、モニターの明るさを落としたり、ダークモードにしたりということをしていると思う。おそらく「光の刺激が強すぎる」と考えているからではないかと思う。しかし、それだけでは疲れ目は解消しない。意外にないがしろにされているのが、部屋の照明だ。

疲れ目の正体は、瞬きの回数が減ることによるドライアイなどもあるが、基本的には筋肉疲労だ。眼球を動かす筋肉、水晶体を変形させてピントを合わせる筋肉、虹彩を調節して光量を変える筋肉などが使いすぎによって疲労をする。つまり、スポーツや長時間の立ち仕事をした時と同じ筋肉疲労なのだ。

例えば、大型モニターは目を酷使する。モニターの中央と端では距離が異なるので、微妙なピント調整を繰り返すことになる。大型モニターを使う人は、曲面モニターを使うか、あるいは2台のモニターを使い、等距離に配置するなどの工夫をすると疲れ目を軽減できる。

モニターの明るさと部屋の明るさに差がある状態が疲れ目を起こしやすい

また、モニターの輝度を落としたり、ダークモードを使ったりする場合は、部屋の照明との差をできるだけ小さくする工夫をする必要がある。モニターの明るさと部屋の明るさに差がある状態ーー極端なケースでは真っ暗な部屋でPCを使う状態ーーでは、視線が明るいところと暗いところを頻繁に行き来することになり、疲れ目を起こしやすい。

逆に部屋が明るく、モニターが暗い場合も同じだ。特にダークモードにしている場合は、一見目に入る刺激が小さくなって目に優しいように思えるが、周辺環境とモニターの明るさの差が大きく、目を酷使している状態になっていることに注意したい。部屋の照明による映り込みも起こることになり、目の焦点は、モニター上の表示と映り込みを行き来することになり、さらに目を酷使することになる。

また、部屋の照明を使わずに、デスクライトを使っている場合も注意が必要だ。デスクライトの本来の用途は、環境を明るくするためではなく、手元で紙書類に書き込みをしたり、細かい作業を行ったりするときに、照度をスポットで増すための副次的な照明だ。これを主照明として使ってしまうと、スポットライトがあたる部分とあたらない部分の明るさの差が生まれ、疲れ目の原因となる。

特にLEDデスクライトを使っている場合は、直進性が強く、明るいところと暗いところの差が生まれやすい。部屋が暗すぎて、照明を追加した場合は、できるだけ天井近くに設置をするか、無理な場合は壁側に向けて、光が広範囲に拡散するようにする工夫が必要になる。

オフィスの照明は明るすぎ、紙書類ベースの業務を想定

一般にオフィスの照明は明るすぎになっている。JISの推奨照度は750ルクスとなっていて、これはスーパーの店頭と同じ。この照度をそのまま現在でも使っているオフィスがかなりある。

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JISによるさまざまな場所の推奨照度。オフィスは750ルクスになっているが、紙書類を使うのが前提の照度。現在の働き方であれば、電子計算機室、会議室、書斎(VDT作業)と同じ500ルクスでじゅうぶんでないかと思われる。

この明るさになっているのは、紙書類ベースの業務を想定しているからだ。紙書類は反射光による表示方法なので、一定程度の照度を必要とする。しかし、現在の業務では紙書類はほとんど使わなくなり、PCの中だけで仕事が完結するようになっている。750ルクスなどという明るさは必要としていないのだ。

JISの推奨照度では、電子計算室、書斎におけるVDT作業の場合は500ルクスになっている。これはモニターを長時間使う作業を想定している。つまり、現在のオフィスは500ルクス程度でじゅうぶんであるし、むしろそちらの方が適切な明るさだと言える。これでもスーパーの店内と同じであり、かなり明るいことになる。

照度を測定するアプリを使って、モニター画面の照度と環境の照度を測定

モニターの輝度を下げたい、ダークモードを使いたいという人は、モニターの設定を変えるだけでなく、部屋の照明も調節する必要がある。

照度を測定するアプリを使って、モニター画面の照度と、その背後の環境の照度を測定し、なるべく同じ照度になるように部屋の照明を調整することをお勧めする。多くの場合で部屋の照明はもっと暗くていいことがわかるはずだ。

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岩崎電気が公開している照度測定アプリ「QUAPIX Lite」。スマートフォンのカメラを使って、さまざまな場所の照度を測定することができる。これを使って、モニター画面とその周辺の照度を測定し、できるだけ同じになるように照明を工夫する。

「部屋は明るくした方がいい」とは言い切れない

私たちには、「部屋は明るくした方がいい」という先入観がある。それは、明るい方が仕事が捗ると思い込んでいるからだ。これには面白い論文がネットで公開されている。大成建設技術センター報に掲載された「照明計画と知的生産性に関する研究」だ。

これは、照度と色温度の2つと、さまざまな知的生産活動の能率の関係を調べたものだ。詳細はお読みいただくとして、結論は3つにまとめられている。

(1)単純作業は光環境の影響を受けなかった。知識創造作業は明るい方が成果が出るものもあったが、作業内容によって成果

(2)明るい方が被験者の満足度は高かったが、普段明るい教室やオフィスに慣れていることが影響している可能性がある。

(3)暗い環境では、眠気やだるさは増すが、一方でリラックスできる環境であることが確認された。

つまり、「明るい方が能率があがる」とは言い切れないという結論だ。明るい環境で能率があがった知的創造活動とは、具体的にはパズルの数独を解くというもので、グループで連想する言葉を次々と書き出していくブレインライティング作業では高い色温度(寒色系照明)で能率が上がった。マインドマップを描く作業では明るさによる差異は見られなかった。

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大成建設技術センター報に掲載されている「照明計画と知的生産性に関する研究」。本文も公開されているので、興味のある方は一読していただきたい。

明るい方が能率が上がった知的創造活動というのはどちらかというと知的単純作業に近いもので、発想を広げていかなければならないような作業では明るさ以外の要因が関係しているようだ。

この明るさと知的生産活動の能率の関係は、まだまだ研究の余地が多くあるが、この論文を読む限り、グループで行う作業は明るく、色温度が高い(寒色系照明)方がよく、1人で深く思考する作業は暗く、色温度が低い(暖色系照明)方が適しているという傾向があるようだ。

PCでの作業の能率を上げるには!?

PCで行うのは、その多くが1人で深く思考する作業が中心になる。能率を上げるには、部屋を暗くし、暖色系の照明を使い色温度を下げ、それに合わせてモニターの輝度も落としたり、ダークモードを使ったりするというのが適しているようだ。

オフィスの照明は急には変えづらい。JISの「推奨照度750ルクス」というガイドラインが存在するからだ。また、賃貸オフィスである場合は、管理者と相談をしなければならないこともある。しかし、幸いなことに、今はテレワークが進んだ。自宅であれば照明を工夫することができるし、シェアオフィスなどでも照明を基準に適切なところを選ぶことができる。

カフェというのは、一般的にオフィスよりは照明が暗めに設定されている。エンジニアが以前からカフェに行って仕事をすることが多いのは、本能的に目が疲れない場所を選んでいるということもあるのかもしれない。また、先ほどの研究によれば集中して能率が上がることになる。カフェで仕事をするのは、単なる流行だけではなく、意味のあることなのだ。

ライター

牧野武文(まきの・たけふみ)
テクノロジーと生活の関係を考えるITジャーナリスト。著書に「Macの知恵の実」「ゼロからわかるインドの数学」「Googleの正体」「論語なう」「街角スローガンから見た中国人民の常識」「レトロハッカーズ」「横井軍平伝」など。
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