大学卒業後、就職内定を辞退して個人でメディア運営。
月に何百万も稼ぐアフィリエイターとして成功したものの、モチベーションがガクンと低下し、未経験からプログラミングを学んでエンジニアへ転身。正社員もフリーランスも経験した後、現在はニート⁉
今回インタビューするのは、そんな派手めの転身を繰り返すShinさんです。
しかしご本人曰く、早めに決断して環境を変えるのは正しいリスクヘッジの手段とのこと。そしてそれは、アフィリエイターを続けられなかった経験から得た知見だそうです。
経験の浅い駆け出しエンジニアがキャリアアップを目指すコツから、Shinさんがこれから進もうとしている道の話まで、じっくり伺いました。
高収入でもアフィリエイターは続かず。自分でモノ作りをしたくてエンジニアに転身。
まずは、エンジニアになるまでのShinさんの経歴を教えてください。
最初にプログラミングに触れたのは、大学の授業です。情報系ではないのでJavaで簡単なアプリを作るくらいでしたが、プログラミングの授業は多めでしたね。
就職活動をして、BtoBのベンチャー企業にエンジニアとして内定したんですが、それは考えた末に辞退しました。
せっかく決まっていたのに、なぜでしょう?
周りに合わせて、就職か進学かの二択から選んだだけだったので、全然未来にワクワクしなかったんです。
アルバイト経験を通して自分は組織で働くのにあまり向いていないとも感じていたので、自分で事業をしたいなという気持ちが強くなったんですよね。
それで、メディア運営(アフィリエイトサイト運営)を始めたんですね?
いえ、最初はエントリーシートの添削サービスを始めたんです。
でも、添削に時間がかかるうえに全然稼げないし大して本気で就活をしてこなかったのに他人のES添削を商売でやるなんて....という気持ちがあり、断念しました。メディア運営はそのあとです。
メディア運営を始めたのは、大学在学中ですか?
そうです。ただ、時間的に大学卒業までに軌道に乗せるのは難しかったので、いったん大学院に進学して休学という選択をしました。
石橋を叩いて渡る性格なので、大学院に進学することで新卒カードをキープしておきたかったんですよね。
かなり慎重派ですね。でも、メディア運営が成功して退学したんですね。
1日16時間くらい記事を書き続けるようなストイックな生活を1年ほど続けて、毎月100万円を超える収入を得られるようになりました。
大学院はほとんど通わずじまいです。でも2年半ほど過ぎたころから、モチベーションが維持できなくなったんです……。
モチベーションが維持できなくなったきっかけはあったんですか?
必死でがんばって稼ぐ必要がなくなったとか、興味のないジャンルの記事を書くのに飽きたとか、競合が強くなってきたとか、いろいろあります。
でもそうですね、“健康アプデ”をきっかけに、Googleに依存するSEOで戦うことに悲観的な気持ちになってしまったのも大きかったかなと思います。僕自身が、あれで打撃を受けたわけではないんですけど。
また当時メディア運営していて、何のビジョンもなかったですし好きでもないジャンルの記事を書いていたのでモチベーションが空っぽになりました。
☆健康アプデ(健康アップデート)とは
そのあたりから、エンジニアへの興味が出てきたんでしょうか?
エンジニアというよりは、プログラミングへの興味ですね。
ちょうど『質問箱』を作ったせせりさんが話題になっていたころで、自分の手でモノを作り出せるってすごい!って思ったんですよ。
☆質問箱とは
メディア運営でもサイトを触りますよね?そこでプログラミングスキルが付いたりしてたんですか?
ネットで調べてPHPをちょっと触ったり、プラグインを入れるくらい。思い切った拡張はしないし、スキルという意味では全然ですね。
では、大学の授業以来の勉強だったんですね。独学ですか?
当時はUdemy(オンライン学習プラットフォーム)の教材もあまりなかったし、まずはProgate(オンラインプログラミング学習サービス)で勉強を始めました。
でも、Progateだと「AしたらBになるよ」っていう断片的な知識はわかるけど、全体像が見えにくい。それで、10万円くらいの短期で学べるスクールに入りました。
スクールは良かったですか?
スクールではプログラミングだけではなくサービスのリリースまで体系的に学べたのがよかったですね。メディア収入もあったので、楽しく通ってました。
プロを目指す人のためのRuby入門[改訂2版] 言語仕様からテスト駆動開発・デバッグ技法まで
この時点では、エンジニアになりたくて…という感じではなさそうですね。
自分でアプリを開発してみたかっただけですね。
でも、メディア運営のモチベーション低下もあって「このままエンジニアになってもいいかも」とだんだん思い始めて、転職を目指すコースに変更したんです。最初は、転職コースがあるなんて知りもしない状態だったのに。
転職コースを終えて、すんなり就職できたんですか?
スクールを終了したあと、20社ほど応募して3社内定をいただき、正社員のエンジニアとして就職しました。
ここで、ついにエンジニアに!大学時代にプログラミングの素養があったことや、東京理科大学卒業という学歴は、採用に影響しましたか?
理系の大学で、かつ情報系に近い学部だったので、評価される上で多少プラスになったかなとは思います。
ですが、採用となると、受け答えや経歴、転職理由など全部込みでの評価になるので、学歴や学部時代のプログラミング経験はあくまでも「評価の一部」だと認識しています。
正社員からフリーランス、そしてまた正社員へ。転職を繰り返して得た気づき。
Shinさんのお話を伺っているとごく自然な流れでエンジニアになったように感じますが、未経験での就職ですよね。
東京理科大学を卒業して3~4年なら、第二新卒枠で大手SIerも狙えたのではないですか?
もともと、全然大手志向ではないんです。
なぜなら大手だとどうしてもジェネラリストのような業務が多く、スキルがつきにくいイメージがありました。もちろん今でいうメルカリなどのメガベンチャーであれば話は別ですけれども。
大学のときも、みんなが大手を受けるなかでベンチャーを受けてましたし。マネジメントではなくプログラミングをしたかったし、いろんな案件を経験したかったので、SESに入りました。
☆SIerとSES
「転職こそリスクヘッジ」生産性の悪い環境は早めに変えるべき
ではまずは、就職してからの経歴についてお伺いします。
自分がやりたいことをしっかり見据えて会社を選択されたようですが、希望通りの仕事には就けましたか?
いやそれが…、あまり開発に携われる案件じゃなかったんです。
エンジニアは自分しかいないし、常駐先の人に指示されてWordPress更新するとか、そんな仕事でした。
それはかなり思惑と違いますね。今の自分ならこうしてた、という反省ポイントはありますか?
入ったSESの規模が大きすぎたなと思っています。200~300人のエンジニアを抱えるような会社だと、さすがに個人の希望なんて聞けません。
少数精鋭ベンチャー企業だったら、入りたい案件についての希望が通りやすかったかもしれません。結局半年で辞めて、副業で仕事を受けていた会社に業務委託のフリーランスとして入りました。
石橋を叩いて渡る慎重派なわりに、転職の決断は早いですね。
「転職こそリスクヘッジ」です。
生産性の低い環境に身を置き続けるほうがリスクだと思っているので、リスクヘッジしたいなら転職するほうがいいと思うし、慎重派と転職は僕にとって矛盾はしませんね。
なるほど、たしかに。フリーランスとしては何年ほど?
1年ほどです。HTMLやCSSなどを触る機会が多くて、フロントには強くなりました。でも、やっていたことはWeb開発というよりもWeb制作だったんですよね。
事前に開発の案件の方が多いと聞いていましたが、実際は逆で、入ってからWeb制作が多いことに気付きました。
またしても「思ってたのと違う」展開が…。Web開発とWeb制作は違うものですか?
HTMLやCSSを触ってサイトを作るだけならWeb制作ですよね。
データベースを介して動的な動きまで作れるとWeb開発だと思います。
未経験から就職を目指していると、その違いはわかりづらそうですね。
独学で勉強して就職して、エンジニアとして経験を積んだと思っていたけど…という展開、ありそうです。それからは?
ECパッケージの拡張やエンタメ系のEC開発をしている受託開発の会社に正社員として1年半ほどいました。ここではちゃんとコードを書く仕事ができましたよ。
そもそも開発ができなかったSES、開発というよりもWeb制作だった業務委託、やりたいことができた受託開発。
Shinさんのエンジニア歴は、未経験からエンジニアを目指す人や転職を考えている駆け出しエンジニアの人にとても参考になりそうです。
でも、先日退職しました。
どんどん展開していきますよね。なぜ退職を?
僕はもともと、自分でアプリを作りたくてプログラミングを始めたんですよ。
まずはちゃんとコードが書ける環境を求めてきたけど、今はスキルアップを目指して単価をあげるよりも何かビジョンを持って興味が強いジャンルのプロダクトを成長させたい、もしくは自ら作りたいという気持ちがあって退職しました。
自分の手でモノを作りたいからプログラミング、というのが最初でしたもんね。初心に立ち返ったわけですね。
相変わらず決断が早い!Twitterでは今はニートだと書かれていますけど、不安はないですか?
いざとなったらエンジニアとして高時給で働けると思うと、不安はないですね。
エンジニアのスキルは、セーフティーネットにもなっています。
駆け出しエンジニアがキャリアアップするコツは、真正面から戦わず、人と違う道を探すこと。
未経験からスクールに通って正社員、という道をたどってこられたわけですが、スクールに通うのはおすすめですか?
教材が揃っているのはスクールのいいところですよね。学習の導入部分としては特に有効だと思います。
ただ、今はUdemyの教材も充実していますし、通わなくても学べるとは思います。
スクールで学んだと話すと、面接官の印象がよくないケースもあると聞きますが、実際はどうなんでしょう?
そのような印象を持つ面接官もいると思います。
「お金払ったらプログラミングを学べると思ってる受け身なタイプだろう」という先入観もあるんでしょう。
どんなことでも、独学よりも習いにいくほうが効率がいいし、お金がある人は習えばいいと思うのですが、そういう問題でもないんでしょうか?
スクールで出された課題をそのままポートフォリオとして出す人も多くて、面接官によっては「またこれか」「スクール出身は言われたことをやっているだけの人が多いな」という印象を持たれるんですよ。
スクール出身者は、スクールの課題をアレンジしたり、自分で作った成果物を見せるほうがいいでしょうね。
スクールで学ぶのは悪いことじゃないけど、スクール出身者は受け身と思われがちなので積極的な姿勢をアピールすることが大事ということですね。
受ける会社の選び方はどうでしょう?
例えば最初は渋谷のような立地の良いキラキラしたベンチャー企業より八王子などの立地が良くない会社や、RubyじゃなくてレガシーなCakePHPなどを扱っている会社を選ぶ。
そこで経験を積んで地盤を固めてから、次のキャリアとして人気のところにステップアップするのがいいと思います。
理由としては、人気のエリアやモダンな技術(Go、React.js、Rubyなど)は競争率が高いので、未経験では厳しいということが挙げられます。
競争率の高い会社に入るには、技術はもちろんですけど、実務経験や社会経験も重要ですもんね。
真正面から勝負しない道もありですね。
そうですね。
未経験者は転職市場では実務経験者との間に超えられない壁があるので、人と違うことをしたほうがいいと思います。
SNSは情報収集に有効。わざわざ“駆け出しエンジニア”を名乗る必要はない。
そういえば、SNSはどうですか?
Shinさんはサロン運営などしていないのにTwitterのフォロワーが7000人以上もいますよね。戦略的に使っているんでしょうか?
情報収集する手段としては有効だと思いますが、エンジニアとして生きていくためにはSNSが必要かというと全然そんなことないですよ。
苦手な人が無理して発信する必要はないと思います。
フォロワーを抱えてしまうと、身バレもしやすいし、気を遣うことも多いんじゃないですか?
とはいえTwitterには「#駆け出しエンジニアと繋がりたい」というタグもあり、情報発信や交流をしている人も多いですよね。
ただ、もともとポジティブな意味合いの自称だったはずが、最近はやや印象の悪い言葉になりつつあります。風向きが変わってきた理由を、どうお考えでしょうか?
最近は、本当に駆け出したばかりのエンジニアではなく、すでにエンジニアとして働いている人がこのタグを乱用しているのを度々見かけるんですよね…。
その方々は、どうして駆け出しエンジニアと繋がりたいんですか?
自分のビジネスのためだと思います。
彼らは「エンジニアになり、そのノウハウを発信して自分のビジネスをする人たち」なんですよ。
駆け出しでないにもかかわらず、このタグを露骨に乱用する人に対しては、正直、ネガティブイメージを持っています。
個人的には、わざわざ自分を駆け出しだと名乗らなくてもいいと思っています。
謙虚な印象はありますが、エンジニアとして働いているなら「現役エンジニア」と名乗ればいいんじゃないでしょうか。
Shinさんのプロフィール文は、シンプルに「エンジニア」ですね。
それにしても、あれだけフォロワーを抱えてしまうと、身バレもしやすいし、気を遣うことも多いんじゃないですか?
文章を書いたり発信したりは好きなので使っていますが、積極的に身バレをしたいほうではないですね。
炎上をきっかけに過去の発言が掘り起こされるようなのも多いので、不用意なことを言わないようにしています。
でも、Twitterは趣味に近い位置付けで使っているものなので、気を付けているのはそれくらいですよ。
正社員とフリーランス、両方経験してわかったこと。雇用形態は幸せとは関係ない。
Shinさんは、正社員もフリーランスも経験していらっしゃいますよね。
どちらも経験してみて、いかがですか?
会社によりますけど、2社目のときは、スキルアップの実感もあったし、残業もほとんどなく、フルリモートという理想的な環境でした。安定した定収入もありましたしね。
定収入は、心理的な安心感が大きいですよね。
ノマドワーカーや自由な副業をするにはフリーランス、というイメージがありますが、正社員で副業している人も多いし、今は正社員でフルリモートしている人も多いので、理想的なスタイルで働ける会社に所属するのもいいと思うんです。
フリーランスはどうですか?
経験が浅いうちに無理してフリーランスになる必要はないと思います。
当たり前ですが、企業はフリーランスを成長させるためにコストはかけません。
だからスキルが低いうちにフリーになっても単価は安いし、スキルアップにつながる仕事を与えてもらえる可能性は低いんです。
フリーランスエンジニアと言えば響きはいいけど、実際にはタスクをこなすアルバイトのような感じになってしまうということですね。
Web制作なら最初からフリーランスもありですが、エンジニアとして開発に携わるなら最初は正社員のほうがいいと思いますね。
もちろん、スキルが伴ってくるとフリーランスは選択肢が広がりますよ。
不況時に切られやすいのはフリーランスの宿命ですが、不況時は優秀なフリーランスを正社員雇用するチャンスだと考える企業は必ずありますから。
お話を聞いていると、Shinさんは自分がやりたいことや自分が伸ばしたいスキルを伸ばすことにはストイックですが、どんな雇用形態かにはあまりこだわりがないように見えますね。
僕は人生の幸福を最大化させることが大事だと考えているんですが、実力・環境・運・錯覚資産がその要素だと思っています。
だからどこに身を置くかは重視しますが、雇用形態は関係ないと感じていますね。
働くモチベーションは、自分の成長と社会貢献。お金だけでは、仕事は続かない。
幸福の構成要素のお話が出ましたが、そこにお金は入っていませんでしたね。
メディア運営で月に何百万も稼いでいたとのことですが、収入は幸せにつながりませんか?
実際に稼いでみてわかったんですが、人間、お金を稼ぐという理由のためだけに働き続けるのは難しいと思うんですよ。
お金はもちろん重要ですが、収入が一定額(年収400万円)を超えると自分の成長や社会に役立つ、あるいは興味関心が強い仕事でないと続けられなくなるんです。
高収入だからエンジニアになろう、という動機ではなかなか続かないということですね。
金銭面的な理由でエンジニアをやっている人も多いし否定はしませんが、なかなか続かないと思います。だからエンジニアを目指す前に、本当に自分がエンジニアに向いているかきちんと自己分析したほうがいいです。
「好き」と「憧れ」は違います。いざエンジニアをやってみて案外向いてなかったという人はかなり多いと思います。
Shinさんはいったんエンジニアを辞めてしまわれたわけですが、次は考えていますか?
いま健康にすごく興味があるんですよ。
健康診断で糖尿病家系だと診断されたことで、自分の健康について深く考えるようになりました。いまは健康オタク状態ですね。
次の選択肢として、ヘルステックの会社に関心があるんですが、これも自己分析したことが関心を持ったきっかけになっています。
それは、エンジニアとして?
メディア運営で経験したマーケティングの適性も、エンジニアとしての適性もどちらもあるので、どちらでもいいなと思ってます。個人でメディアを立ち上げてもいいです、エンジニアとしてアサインしてもいいと思ってますしね。
世の中にどんな価値を還元していくかが大事で、発信方法やプログラミングはあくまでも手段だと思っています。
(取材後記)
メディア運営、プログラミング、健康。
Shinさんは、“自分がいま何に興味があるか”に対して、とにかく誠実。そして、「変わらないことのほうがリスク」という言葉も印象的でした。
Shinさんにはたどり着きたい幸せの境地のようなものがあり、そこに向けてストイックに邁進されているんだろうな、と感じました。
健康の分野でどんな結果を残されるのか、楽しみにしています。
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