本記事では、AIによるスライド資料作成サービス『イルシル』の使用感についてご紹介しました。
今回は、イルシルを開発する株式会社ルビスの代表取締役 宮﨑 有貴氏にインタビューを実施。開発に込めた想いや今後の展望についてお話を伺いました。
株式会社ルビス
「すべての場所に光を届ける」というビジョンのもとに、多くの社会問題を解決できる企業を目指す。具体的には、SaaS事業、教育事業、エンタメ事業の三軸を展開し、それぞれの事業を相互作用させていくことを考えている。2021年3月創業。
宮﨑 有貴氏プロフィール
株式会社ルビス CEO。 早稲田大学 商学部在学中に広告ベンチャーで1年半の長期インターン。入社7ヶ月で経営幹部に昇格し、新規事業や採用などを担当。その後フリーランスで活動し、月予算5000万円ほどの広告運用を行う。2021年3月にルビスを創業。
多くのビジネスパーソンは資料作成に苦戦している
私もイルシルを使用して資料作成を行ってみましたが、とても便利なサービスですね。
ありがとうございます。当社は立ち上げてまだ2年も経っていない会社なのですが、イルシルが多くのビジネスパーソンに使っていただけるサービスに成長し、嬉しく思っています。
宮﨑さんは早稲田大学在学中に起業をされたと伺いました。
はい。学生の頃から広告代理店でフリーランスとして仕事をしたり、知人が会社を立ち上げる際に手伝ったりしてきました。大学を卒業したのが昨年3月なのですが、最終年は何よりも単位を取るのに必死でした(笑)
学生とアントレプレナーの二足のわらじで活動していたのですね。その後、ご自身でルビスという会社を立ち上げられたとのことですが、どのような想いで起業をしたのですか?
「“わかりやすく相手に伝える”ことを実現できるサービスを、自分の手で創りたい」と思ったことがきっかけでした。 昨今はさまざまなメディアが乱立し、情報が溢れていますよね。そのせいで人間の集中力が下がり、より一層「わかりやすさ」が求められる時代になったと思ったんです。
なるほど。そこからどのような経緯でイルシルのアイデアにたどり着いたのでしょうか?
当初は誰でも簡単にアニメーション動画を作れるサービスの開発を検討し、いろいろな方に感触をヒアリングしていました。しかし調査の結果、特にビジネスパーソンの方々はアニメーション動画を作成する機会は少ないことがわかりました。むしろ、「仕事で資料作成に時間がかかりすぎていて悩んでいる」という声をたくさん耳にしたのです。
具体的には「スライドの効果的なデザイン」や「相手に理解しやすい見せ方」を知りたいといった課題感が多く、その解消に向けたサービスとしてイルシルを立ち上げるに至りました。
なるほど、多くのビジネスパーソンの課題感を踏まえて生み出されたサービスなのですね。イルシルの立ち上げにあたり、ベンチマークした類似サービスなどはありますか?
実は、意外と「スライド資料作成の効率化」に特化したサービスが少ないんです。海外製のものはいくつかありますが、日本ではテンプレートのダウンロードがメジャーな手段で、イルシルのようにAIによる自動作成の機能を備えたプロダクトはほぼないと考えています。
通常のPower Pointにもデザインのサジェスチョン機能がありますが、そうした機能との違いは?
一番の違いは用途別にデザインを呼び出せるという点です。イルシルでは完全にビジネスに特化し、「営業資料」「サービス紹介資料」「採用資料」など、細かい使用用途ごとにカテゴリーに分けをしていて、それぞれ複数のテンプレートを用意しています。
Power Pointの機能ですと、入力した内容をシンプルにデザイン化することはできますが、たとえばユーザーが「価格」を表示したいと考えたときに、「価格表」の必要性を判断したり、そのデザインを提案してくれたりといった利便性はありません。
GTP-3の活用でAIの精度がさらに向上
イルシルでは、どのようなユーザーをターゲットに想定していますか?
現状はフリーランスの方や中小企業の経営者など、ご自身でスライドを作る機会が多い方を想定しています。 ただ、今後はさらにチーム全体で導入してもらうことにフォーカスしたいので、社内の資料作成をイルシル上で完結できるサービスを目指しています。
契約プランについても、現在提供しているプランをさらに強化し、チーム単位での契約数を増やしていきたいですね。
開発の体制は?
現在は8名のチームで開発に携わっており、自社内のエンジニアやデザイナーとともに内製をしている状況です。ラッキーなことに、知り合いの紹介でたまたまAI分野に明るいエンジニアにジョインしてもらえたので、スピード感を持って開発を進められていますね。
開発を進めるにあたり、どのような難しさがありましたか?
ユーザー自身が持つスライドの仕上がりイメージに近いテンプレートを、いかに作成するかが難しかったです。最良な形のテンプレートを作成するために、ネット上で膨大な数のスライドデータを収集し、徹底的に分析を行いましたね。
また「パーツ機能」も充実させることで、ある程度ユーザーに自由度を提供し、意図に沿わないデザインをすぐに自分で変更できるような機能を備えました。
イルシルは2023年1月末に大規模なアップデートを行ったそうですが、具体的にどのような改善をされたのですか?
今回のアップデートではGTP-3を活用することで、構造化されていない状態の文章からもAIが自動的に要点を読み取り、構成を組み立てる機能を実装しました。
そもそもスライド作成が得意でない方は、内容をどう整理すればよいかわからないといった悩みを抱えているケースも多いんです。そうした方にも使いやすいサービスを目指し、今後もさらにAIの精度を高める工夫をしていく予定です。
今後さらにバージョンアップを検討している機能はありますか?
ユーザーが入力した情報からより細部の提案まで行える機能や、キーワードからスライド資料を生成する機能をさらに強化していきたいですね。テンプレートについても、企画資料やセミナー資料など、幅広い用途に対応していく予定です。 あとはイルシルの「簡単に、大量に資料を作成できる」強みを活かし、ホワイトペーパーの作成にも対応できたらと思っています。
またマーケティングの側面でいうと、今春から夏にかけて再び大々的な機能改善を行います。そちらを踏まえて、ユーザー数の拡大に向けたプロモーション活動を強化していくつもりです。
あらゆる人たちに均質のサービスを届けたい
実際にサービスを活用しているユーザーからはどのような声が届いていますか?
やはり資料作成の効率化につながったというご意見をいただくことが多いですね。具体的には「資料作成にかかる時間が3分の1程度になった」「テンプレートを活用して、イメージしている資料が楽に作れるようになった」「資料の見栄えが良くデザイン性が高いため、顧客先に提出する資料としても活用できる」などです。 どこを触ればいいのか直感的に理解してもらえるよう、なるべくシンプルなUIになるよう意識したことがよかったのかもしれません。
たしかに私も実際に使用してみて、シンプルなインターフェースに驚きました。それでいてわかりやすい資料を作るのに充分な機能が備わっていて、資料作成が苦手な方や不慣れな方にも使いやすいサービスだと思いましたね。
まさに私たちも、資料作成があまり得意でない方々に、使いやすく利用価値の高いツールだなと感じていただけるサービスを目指しているんです。他にも、たとえばスライドデザインやテンプレートの検索のしやすさにもこだわっています。
ルビスさんとして、今後どのような世界観を目指していますか?
スライド資料以外にも、Webサイトやインスタグラムの画像など、デザインの自動生成ができるプロダクトを幅広く展開していきたいです。さらに、作成したデザインの効果測定を行うサービスも付帯させたい。 これまで当社が蓄積してきたAI技術を活用すれば、A/Bテストも容易に行えると思いますし、本当に相手に伝わりやすいデザインなのかという客観的な判断ができるツールを提供できると考えています。
あと、昔からの夢で、“教育”に携わる仕事がしたいと思っているんです。当社の「わかりやすく簡単に伝える」技術を用いて、家庭環境や学習環境を問わず、あらゆる子どもたちに有益な情報を届けるきっかけを作れたら嬉しいです。
当社が手がけるすべての事業を通じて「情報リテラシーの差による機会の損失をなくしたい」、そんな想いで取り組んでいきたいですね。
<取材後記>
実際にイルシルを使用してみて感じた“誰にでも使いやすいサービスだな”という印象と、宮﨑さんが目指す世界観とが見事に一致していて、ますますイルシルというプロダクトに魅力を感じました。スライド資料作成を効率化したいとお考えのみなさんは、ぜひイルシルを試してみてください!
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