RPAとは
RPAとはRobotic Process Automation(ロボットによる業務プロセスの自動化)の略です。産業用ロボットが人間の手足の動きを再現してブルーカラー業務(工場作業)を代行するのに対して、RPAはパソコンのキーボード入力などのホワイトカラー業務(事務作業)を人間の代わりに行います。
RPAは「仮想知的労働者」「デジタルレイバー」「デジタルワークフォース」などと呼ばれることもあります。
RPAが注目され、導入企業が増えている背景
IT技術が急速に発展する中、中小企業を含めたあらゆる企業がDX(デジタルトランスフォーメーション)の実現を図っています。2025年までにDXを達成しない企業は競争力を失って失墜するとする[2025の崖]が目前に目前に迫っているからです。
すでに現実のものとなっている「人手不足」は、少子高齢化による労働人口の減少で今後ますます厳しくなることが予想されます。
このような状況下で、製造業における工場内作業のロボット化が目覚ましく進んだ反面、いわゆるホワイトカラー業務の事務作業のロボット化は、手つかずのままでした。業務の電子化は進んでも、キーボードを打つのは相変わらず人力に頼っていたのです。
そこで注目されたのが、ホワイトカラー業務を人間に代わって行うRPAです。従来も人事部やコールセンターの業務を他社にアウトソーシングするなどの動きはありましたが、個人情報や企業秘密の漏えいリスクなど、難しい問題もありました。RPAは、いわばコンピュータへの事務作業のアウトソーシングなので、そのような問題も生じません。
RPAが行えるホワイトカラー業務のレベル
一口にホワイトカラー業務といっても、数字の入力などの単純作業から、契約書の作成や重要な経営判断まで、さまざまなレベルがあります。
現在のところRPAは入力作業などの比較的単純な業務をカバーするレベルですが、近い将来にはAIやビッグデータを活用して、「予測・分析・評価・判断」など、人間ならベテランの社員が行っていた業務をある程度コンピュータが代行することが可能になると考えられています。そのようなRPAの未来形が、EPAやCAです。
EPAとは、Enhanced Process Automation(強化されたプロセス自動化)の略で、RPAよりもレベルの高い業務を処理できるシステムのことです。ビッグデータから顧客の傾向を分析するなど、AIや機械学習を使ってある程度イレギュラーな状況にも対応可能です。
CAとは、Cognitive Automation(認知の自動)の略で、EPAよりもさらにレベルの高い業務を行います。自然言語学習・ビッグデータ分析個別最適処理などの高度なデータ処理によって可能になるシステムです。EPAやCAも大企業では一部実用化されていますが、中堅企業などがパッケージ化されたシステムを導入できるような段階にはいたっていません。
企業がRPAを導入する5つのメリット
企業はRPAを導入することで下記のようなメリットがあり、それによって企業の業績を向上させることが期待できます。
1.単純作業が減りコア業務に注力できる
金融機関はもとより、あらゆる企業の経理部門、総務部門、営業部門は、パソコンに向かっての膨大な「書類記入業務」を抱えています。この入力業務、転記業務をRPAに任せることで、ビジネスにおける「単純作業」が大幅に減少します。
RPAを導入することで、これまで単純作業に割いていた時間を、営業推進や顧客対応などのコア業務に回すことが可能です。新規事業の企画や業務改善、新人教育の充実など、創造的で前向きな仕事に取り組む余裕も生まれます。
2.人件費を削減できる
これまで人間が行っていた作業をRPAに代行させることで、人件費を削減することができます。社員全員にPCが行き渡るようになった現在でも、PCに向かってしている作業は「Aの書類からBの書類への売上げデータの転記」ということも少なくないでしょう。
すでに電子化されているデータを人力で再入力するなどのムダをなくしてくれるのがRPAです。
3.業務がスピードアップする
人間がしていたことをコンピュータにさせることによってもっとも大きく変わるのは、それに要する時間です。どんなスピードパンチャーでも数時間はかかる仕事を、コンピュータなら瞬時に片づけてしまいます。
これまで銀行の融資審査といえば、結果が出るまでに少なくとも数日はかかるのが相場でしたが、実はかかった時間の大半は、決算情報などの審査フォーマットへの入力だった、というようなケースも少なくありません。このような無駄な時間をなくし業務をスピードアップするのがRPAのメリットです。
4.ヒューマンエラーがなくなる
「検算」という言葉があるように、人間による計算や入力には常にミスが生じる可能性があります。些細な入力ミスがビジネスに大きなダメージを与えることは珍しくなく、人手に頼る限りそのリスクを排除できません。
その点、RPAならシステムが正常に作動している限り、ミスが発生することはなくビジネスの「安全保障」にもなります。
5.繁忙期に深夜に稼働させても労働問題が生じない
業務には繁忙期と閑散期の波があり、決算前や株主総会前などは、経理や総務のスタッフは徹夜が続くことも珍しくありません。
しかし、昨今は残業時間に対する規制が厳しく、時間外労働の上限が明確に定められています。かといって企業は繁忙期用の人員を常に確保しておくことはできません。その点、RPAなら24時間稼働させることができ、深夜に使用したからといって労働組合にクレームをつけられることはなく、割増賃金が生じるわけでもありません。
RPA導入のデメリット
上記のようにRPAには数々のメリットがありますが、その反面で下記のようなデメリットも抱えています。
必ずしもコスト削減につながらない
RPAの導入には、そのシステムを開発するベンダー企業への支払いなどで多額の費用がかかります。システム運用のための社員教育も必要です。
これらのコストを考えると、RPAによって削減できる業務がそれほど多くない企業では、導入してもトータルでコスト削減できるとは限りません。
誤作業を延々と続けてしまう可能性がある
RPAはミスをしないと述べましたが、設定に間違いがあると、人間ならするはずのないミス、あるいは途中で気がくようなミスを延々と続けてしまう可能性があります。
業務手順が変更になったときの対応がめんどう
業務内容や手順に変更が生じたとき、人間なら簡単な説明で対応が可能な場合も、RPAはシステムに手を加える必要があり、内部スタッフだけでは対応できません。
突然システムダウンする可能性がある
RPAは人間のように疲労することがなく24時間働ける半面、システム障害やバグによって突然停止してしまう可能性があります。
RPAの市場規模と今後
RPAの市場規模は、2017年の178億円が、2018年は318億、2019年は529億と、倍々ゲームに近い勢いで伸びています。今後は、多くの企業がDX達成を急いでいることから、これまで以上の伸び率で推移することは間違いありません。
また、RPAシステムのパッケージ化、低価格化も進みつつあり、独自のシステム開発が困難な中小企業でも導入が進むと考えられます。
RPA導入におけるエンジニアの業務と必要なスキル
企業がRPAを導入する際に、エンジニアは要件定義、設計、開発、保守・運用など、さまざまなフェーズで関与します。RPAのエンジニアリングには、プログラミングのスキルの他に、オフィス業務のデジタル化ツールであるMicrosoft AccessやExcel VBAのスキルが役立ちます。
Microsoft Accessはデータベース管理ソフトで、顧客管理、販売管理、在庫管理の自動化などに用いられます。Excel VBAは、Excelの入力処理を自動化するシステムで、従来毎月末に行っていた大量の売上データの入力などを瞬時に行うことができます。
RPAよりハイレベルなEPAやCAの開発に携わるには、今後、AI、機械学習、ビッグデータのスキルが求められます。プログラミング言語としては、Java、Python、C++、R言語などが用いられるため、必要に応じて更にスキルを磨く必要があるでしょう。
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