RPAとは
RPAについてはよく知られるようになっていますが、RPAは「Robotic Process Automation」の略語で、人の作業を代わりに行ってくれるロボットなどの総称です。AIとよく似た概念として理解している人もいますが、両者は全く別ものです。
RPAに適した業務
RPAが得意としている分野は、「手順が決まっている定型業務」と「反復して行うルーティンワーク」です。この両方の条件を満たす業務であれば、RPAを導入することで、業務の効率化・業務のスピードアップ・業務コストの低減などの効果を得られる可能性が高いのです。
つまり、RPAはルール化しやすい業務、ルールが定まっている業務は得意ですが、逆に非定型業務、一時的に発生するような業務は苦手です。RPAで効果をあげられる業務の例としては、会員データの入力、問合せメールに対する定型文での返送など、機械的に処理できるものが中心になります。
また、RPAは大量高速処理が得意です。1人の担当者で1ヶ月を要するような単純作業であれば、早ければ1日で終わらせることができます。
RPA導入に必要な役割
RPAの導入が決まったとしても、コピー機やパソコンの導入とは訳が違います。RPAを導入するためにはRPAをよく知った人材が必要です。では、RPAを導入する際に、どのような役割があり、どのような人材が必要になるのでしょうか?
ここでは、RPA人材が担う役割について確認していきましょう。
RPA推進体制の整備
一般的に社内にシステムを導入する際は、その推進体制が必要です。まずは、RPA導入に対する理解の促進を行い、当該部門の責任者や部員の協力を得る必要があります。RPAの導入に難色を示す古参の社員もいるでしょう。こうした方々の協力を得ずして、強権的にRPAを導入すると、期待したほどの成果を得られないことが往々にしてあります。この推進体制の整備にあたっては、社内にリーダーシップを発揮できて、RPAに理解がある人材が必要ですが、そうした人材がいない場合には、外部コンサルタントを当てるケースもあります。
RPA対象業務の選定
RPAを導入する「業務の選定」が必要です。RPAが適した業務を見出すために、業務フロー・業務手順書の確認・対象業務の担当者のヒアリングを行います。また、RPA導入によって得られる時間削減・コスト削減の可能性・難易度判定などを行い、最も効果の得られそうな業務を複数選定し、その業務要件について定義を行います。
効果予測とその検証
RPAの導入対象業務を選定したら、実際にどの程度の効果が得られるのかについて「予測と検証」を行います。現在、社員2人で月間100時間を要している業務を完全にRPAに置き換えたい場合、その時間がどの程度削減できるのかを目的に対して、成果をどの程度出せるのかをはっきりさせるのです。そこで得られた結果が、RPA導入後の目標値となります。目標値と実績との差異検証を行うことで、何が良かったのか、何が問題だったのかを効果測定することが可能です。
RPAツールの実装
次に、RPAツールを実装します。基本的にはRPAツールはプログラミングは不要で、ロボット(アプリ)に作業手順を教え込むことになります。先ずは全面導入ではなく、部分導入を行い、そこで発生した問題点を解決して評価を行います。この部分導入で得られた効果・確認できた問題点・注意点などを踏まえながら、本格導入に向けて横展開していきます。
RPAの保守と運用
RPAツールの実装でプロジェクトは終わりではありません。導入したRPAが正しく運用され、定着し、当初計画した効果が得られるまでプロジェクトは続きます。プロジェクトでは、本格稼働後に発生した問題の吸い上げ・解決・問合せ対応・不具合対応なども行わなくてはなりません。また、RPAによって業務がブラックスボックス化し、何か業務の変更が発生した際に、誰も対応できないという事態は避けなければなりません。RPAツールは一旦導入したら終わりではなく、評価と改善を繰り返してスパイラルアップを図っていくものだと認識しておきましょう。
RPAエンジニアの仕事
RPAエンジニアの仕事の内容は、その工程によって異なります。同じRPAに関わる業務でも、導入フェーズから開発フェーズ、保守のフェーズとあり、それぞれ内容に大きな差異があるため、導入・開発・保守フェーズについてそれぞれ紹介していきます。
RPAの導入に関わる仕事
RPAの導入段階においては、システム開発の要件定義フェーズと同様にユーザー業務の洗い出しを行います。RPAは定型業務を自動化しますが、その定型業務を単純にRPAに置き換えられるのか、業務フローの見直しの必要性がないかどうかを確認する必要があります。続いて、RPAの適用範囲・移行内容を検討し、ユーザーとのコンセンサスを得て決定します。このような仕事が、導入におけるエンジニアの仕事です。
RPAの開発に関わる仕事
導入検討のフェーズで、RPAの適用業務やシステム化の範囲、内容などが確定したら、RPAツールを利用して業務の自動化を進めます。RPAツールの利用では、画面キャプチャの取得やシナリオの作成などによって基本的な動作を定義し、データベースや他のプログラムなどとの連携機能を加えて、業務の自動化を行います。また、ツールだけでは対応できない場合にはプログラム追加も行います。
RPAの保守に関わる仕事
RPAは導入して稼働すれば終わりではありません。実際にRPAによる運用が始まった後には、保守が欠かせません。単純なエラーに対する対応もありますが、想定外のエラー、運用変更によるエラーなど、さまざまなエラーが起きる可能性があります。RPAエンジニアは、そうしたエラーへの対応を行うと共に、ユーザーから挙がるさまざまな修正依頼や改善要望に応える必要があります。またユーザーに対しても、RPAの正しい使い方、イレギュラーへの処置方法などを覚えてもらえるよう、ユーザー教育まで担当することもあります。
RPAエンジニアに必要な経験やスキル
RPAエンジニアに必要な知識やスキルはまだ確立されたものはあまりありませんが、RPAに関連する経験やスキルがあると活躍の場は広がります。ここでは、RPAエンジニアを目指す皆さんにとって役立つスキルや経験について解説します。
プログラミングのスキルや経験
Microsoft AccessやExcel VBAの経験があると役に立つでしょう。RPAは定常業務を自動化するツールです。その自動化にはデータベースの集計、分析作業の定型化が含まれます。Accessはデータベース操作のメジャーなツールであり、Accessを利用した業務や開発に関わった経験があると、RPAツールに馴染みやすく、RPAエンジニアへの近道となるでしょう。
他、Excel VBAのスキルも役に立ちます。RPAはマクロとよく対比されますが、Excel VBAはExcel上で動くマクロであり、RPAはPCやサーバー上で動くマクロと考えると、両者はよく似ています。Excel上でマクロを組んだ経験、VBAの知識などがあると、RPAにはすぐに慣れるでしょう。
システム開発の経験
RPAエンジニアを目指す上で、システム開発の経験は大きなアドバンテージとなります。システム開発では、ユーザー(顧客)との方向性の確認・ヒアリング・要件定義などでシステム化の方針を確定します。続いて、設計フェーズ・開発フェーズ・導入後の保守や運用までが範囲です。RPAは主にRPAツールを用いるため、プログラミングは行わないケースもありますが、業務分析・要件定義・設計は欠かせません。RPAの導入は、基本的にはシステム開発と同様の流れになります。全体の流れがシステム開発と被るため、システム開発経験者はRPAの導入でその知見やスキルを存分に活かせるでしょう。
RPAツールの経験
RPAツールの導入経験者は、即戦力として期待されます。RPAなツールとしては、WinActor・UiPath・Blue Prismなどがよく知られています。RPAのベンダー側として導入に関わっていなくとも、ユーザー側での利用経験がある人も、意志さえあればRPAエンジニアを目指せます。ユーザー側の立場で得た活用ノウハウは、必ずエンジニアとして活きます。また、その導入経験はコンサルティング分野で活かせるでしょう。クライアントとのコミュニケーションも円滑に行え、要件定義フェイズでは大いに力を発揮できるかもしれません。
RPA技術者検定
RPAに関する資格としては、RPA技術者検定があります。RPA技術者検定は 、RPAツールWinActorに関する民間の検定です。この資格取得により、WinActorをベースにRPAツールに関する勉強ができます。WinActorはRPAでは最もメジャーのツールであり、RPA技術者検定の資格取得で、仕事の機会が広がり、活躍の場を得られるでしょう。RPA技術者検定には3段階のレベルがあり、【入門】→【アソシエイト】→【エキスパート】とあります。受験料は入門は無料、アソシエイトは7,150円、エキスパートは21,780円です。
派遣社員にもRPAスキルが求められる
RPAは急速に企業に導入されています。この結果、事務職の派遣社員に対するスキルニーズが徐々に変わりつつあるのです。これまでは定常業務に派遣社員を利用する企業が圧倒的多数でしたが、RPAの導入を進める企業では、RPAのオペレーターを求める傾向が高まってきました。派遣社員にも、RPAツールの利用経験者としてRPAオペレーター・シナリオ作成者・RPA利用業務のコーディネイターなどのスキルが求めらる時代となりました。
RPAエンジニアのキャリアパス
RPAエンジニアのキャリアパスとしては、企画・提案コンサルティングや要件定義などの上流工程を担当するキャリアと、開発工程を担当するキャリアの2パターンに分かれます。
上流工程をメインに担当するケースでは、実際の開発や保守を担当することは少なく、クライアントニーズによる引き合い・導入・方向性についての顧客との調整などがメインの仕事になります。これらはRPAコンサルタントの仕事の領域です。
これに対してRPAエンジニアには、技術面を中心とした開発技術者です。RPAエンジニアには、言語能力、シナリオ構築の力が必要です。RPAの実務経験を積むとフリーランスとしても独立することが可能です。
もう1つは、RPAの保守・運用に特化したエンジニアです。RPAは導入後も、障害対応・バージョンアップ・業務の変更による修正対応などがあります。RPAは導入して終わりではなく、業務に合わせて更新が必要です。RPAの保守エンジニアはクライアントの窓口になって、こうした対応にあたります。
RPAエンジニアの将来性
日本の人口は減少に転じており、少子高齢化はますます顕著になってきています。生産年齢人口(労働人口)は減少の一途を辿り、2040年には2017年時点と比べて20%減少するという予測があります。人手不足はますます大きな問題となっていくでしょう。そのため、オフィス作業の効率化はどの業態、どの企業でも喫緊の課題になっているのです。こうした中、RPAに対する需要はさらに伸びていくでしょう。RPAエンジニアは、将来にわたっても必要な人材であり続けると予想されます。
さらに、RPAはAIとの連携がさらに進み、形を変えながら進化していくはずです。RPAとAIを繋ぐエンジニアに対するニーズがますます高まっていくでしょう。
このようにRPAエンジニアの将来性は明るく、将来性が期待できる職種といえます。
編集部オススメコンテンツ
アンドエンジニアへの取材依頼、情報提供などはこちらから