GTDとは何か?
皆さんはGTDという言葉を聞いたことがあるでしょうか?GTDは最近注目されているタスク管理手法のことです。GTDは「Getting Things Done」の略で、和訳すると「仕事を成し遂げる」という意味です。単に「成し遂げる」というよりは、「効果的に成し遂げる」というニュアンスです。
その「効果的に成し遂げる」ためには、頭の中にある、タスク(やらなければならない仕事など)を外に出し、整理することで、今「やるべきこと」に集中できるようにするという手法がGTDです。
例えば、今頭の中にある「やるべきこと」がスパゲッティのように絡み合い、何から手を付ければ良いのかと頭を悩ませている状態は誰にもあることですね。例えば、
・今日中に提出しなくてはならないレポートがある
・後で取り組もうと考えている仕事もある
・他の部署の担当者と調整が必要な案件もある
・時間があったら調べたいこともある
こんなタスクが頭の中でぐるぐる回っていると、気持ちばかりか焦ってしまい、ストレスの元になってしまいます。こうしたモヤモヤを解消し、今やるべきことを明らかにし、仕事の効率化の助けとなるのがGTDなのです。
GTDの成り立ち
GTDはアメリカでは既に主流のタスク管理手法となっていますが、この手法を編み出したのは、デビッド・アレンとしいう生産性向上を専門とするコンサルタントです。デビッド・アレンの著書「ストレスフリーの仕事術」(初版は2006年に発行)にはGTDについて書かれており、フォーチュン100の企業の内、既に40社でGTDが採用されているとのことです。
GTDの適用範囲
GTDを仕事術と考えると、興味が薄れるかもしれませんが、実はGTDは仕事だけにかかわらず、あらゆる場面で活用できます。今、抱えている仕事、仕事以外のタスク(やらなくてはならないこと)などを効率的に管理し、頭を悩ませているものを取り去り、今集中すべきことに専念できるようにしてくれるのがGTDだからです。
GTDは個人の抱えるタスクばかりか、プロジェクトの管理にも有効です。例えば、プロジェクトではいくつかの難題に直面した時に、どこから手を付ければよいのか分からなくなることがあります。こうした場合もGTDを用いることで、「今やるべきこと」が明らかになり、プロジェクトの進行が円滑になるのです。
このようにGTDはオフィシャルとプライベート、個人と集団を問わず応用範囲が非常に広いからこそ、多くの企業で採用されているのです。
GTDのメリット
GTDには多くのメリットがあります。まず最初にそのメリットを知り、GTDに対する理解を深めてください。
ストレスフリー
GTDが大きく注目されたのは、GTDが目の前に山積するタスクの山を崩し、整理することでストレスから解放される状態を作り出してくれるからです。単なる整理術ではなく、心理的なストレスフリー効果がGTDの大きな魅力なのです。
徹底的に頭の外に出せる
GTDでは最初に「収集」というプロセスで、頭の中にあるタスクを可視化させます。つまり、外に向けて投影するのです。この外部環境への投影によって、何をしなければならないのかが明らかになり、タスクの管理をスタートさせることができます。
収集と整理が別になる
人は多くのタスクを抱えて頭を悩ます状態に陥ると、とかく収集と整理を同時に行いがちです。これを同時に行うことで、さらに混乱が増し頭を抱えることになってしまいます。GTDではタスクの収集と整理のタイミングを完全に分けます。分けることで肩の荷が下り、楽な気持ちで前に進めるのです。
定期レビューがある
GTDではタスクをやりっ放しにはしません。一旦終了したタスクや、未完了のタスクを見直すためのレビューを必須にしています。タスクは終了したとしても、タスク要件が変更となって未完了のステータスになることもあれば、未完了タスクが中止となることもあります。常にタスクの状態を最新の状態に保つことがタスク管理の精度を上げることになるのです。
GTDのデメリット
メリットの多いGTDですが、タスク管理という面で見るとデメリットになりかねない要素もあります。
時間管理の概念がない
GTDに従ってそのまま実行した場合、それぞれのタスクのスケジュールが未定のままです。なぜならGTDの中ではタスク・スケジュールの観点が入っていないからです。スケジュール管理に関しては自ら行えば良いのですが、GTDをそのまま丸のみした場合に起きるデメリットとして記しておきます。
実行記録を付けるルールがない
タスクはいつ着手し、いつ完了したのかの記録を取ることが大切です。GTDではタスクの実行記録を取るということに触れられていません。タスクを実行したら、必ずそのスケジュールや要した時間を記録するようにしましょう。記録は次の計画に必ず活きてきます。
目標による管理に触れていない
GTDは目の前に混在しているタスクを実行に移すための手法としては有効ですが、長期的な目標による管理などについては触れられていません。タスクは目先の課題から長期課題まであります。目先のタスクにとらわれて、中長期の課題やタスクを疎かにしないよう留意する必要があります。
GTDの基本ステップ
GTDを実践するには5つのステップがあります。そのステップでは具体的な何を行うのか、それぞれのステップごとに見ていきましょう。
Collection – 収集
まず自分の頭の中にあるタスクを可視化します。タスクはやらなくてはならないと考えているもの・アイデア・ルーチン業務・保留中のものなど、プライベートなものも含めてすべて書き出します。ノート・手帳・パソコン・スマホなど何でも構いません。気になっていることすべて書き出すことが重要です。
Processing – 処理
書き出したタスクを処理(分類)していきます。
1.重要かつ緊急性の高いもの
2.重要ではあるが緊急性はないもの
3.重要ではないが緊急性はあるもの
4.重要でもなく、緊急性もないもの
この4つのカテゴリーに分けてみます。4番目のカテゴリーに入ったものはタスクから除外します。こうすることで、重要なタスクに神経を集中させることができます。
Organizing – 整理
こうしてカテゴライズしたタスクを整理します。タスクをビジネスとプライベートに分け、さらに優先度順に並べ、それぞれに期限を設けます。
Reviewing – レビュー
優先順位が付けられたタスクは状況の変化によって、優先度が変わったり、新たなタスクが追加されたり、刻々と変化します。この変化を見逃さないために、定期的にレビューを行い、タスクを最新の状態にします。
Doing – 実行
以上のプロセスを踏むことで、頭の中で整理がつかなかったタスクが抽出され、整理がされました。後は優先度の高いタスクから順に全力投球するだけです。悩みや雑念が取り払われ、ストレスフリーで、すっきりした頭で自分の力を発揮できます。
GTDを試してみよう
GTDを始めたいと思われた方はいらっしゃると思いますが、GTDは思い立ったら直ぐに始めることが可能です。準備すべきものは特にありません。とりあえず普段使っている手帳やメモ用紙があれば大丈夫です。もちろん、使い慣れたPCやスマホでも構いません。ご自身の頭の中にあるタスクを書き出すものがあれば、GTDを始められます。
ストレスフリーは本当?
多くの方は何らかの形で「TO DOリスト」を作成された経験があると思います。今でも続けている方もいらっしゃるでしょう。しかし多くの人が続かなかった理由は、頭の中にあるタスクをすべて書き出すという作業が、大変だと感じたからではないでしょうか。
それは、ただ頭の中にある「やらなくてはいけない、やりたい」と感じていることをそのまま「TO DOリスト」に書いたからです。頭の中でもやもやしたものを書き出すことで、多少は頭がクリアになったような気がしたかもしれませんが、それは頭の中のものを外にコピーしただけで終わっているのです。
GTDを「TO DOリストの作成」と同じだと感じた方は、GTDに疑問を持って当然です。
では、「TO DOリスト」を作成した方は「ストレスフリー」を感じられたでしょうか?感じた方は「TO DOリスト」を続けた方です。「TO DOリスト」を続けられなかった方は「ストレスフリー」を感じられなかったのでしょう。
さきほど述べましたが、GTDのメリットは「ストレスフリー」なのです。だからこそ、GTDにトライした方の多くがGTDを習慣化し、フォーチュン100社の40%がGTDを採用しているのはそのせいです。
GTDは単に手順に従って行うだけ
GTDは、ただ単に手順に沿って、タスクを可視化していくだけです。それだけで効率よくタスクをこなしていける仕事術です。
GTDは、個人的なタスクの管理だけではなく、会社や組織のプロジェクトなど、集団的なタスクの整理や管理にも効果的です。集団でタスクを抽出し、皆でそれを共有し、優先順位をつけ、分担を決め、実行し、定期的にレビューするだけです。これをご覧になっているITエンジニアの方のプロジェクトでも活用できます。
あなた自身も、プロジェクトもGTDの手法を上手に利用すれば、タスク管理に関わる多くの問題をクリアにし、タスクが効率よく進展するでしょう。
GTDの留意点
GTDは特に準備も要らず難しい講習や教育も不要で、また手順もシンプルです。簡単に導入できるタスク管理法です。しかし、それでもGTDにはいくつか留意点があります。
■ストレスフリー GTDはあくまでも「ストレスフリー」が命です。GTDは実際に効果を実感しながら、自発的に浸透させていけばよいのです。誰かが、どこかの組織がGTDを採用し、成果があったことを口コミでも構わないので、広めていけば良いのです。
GTDを半強制的に導入しようとする企業や組織もありますが、そうするとルールや縛りが設けられがちです。それが逆にストレスを招きます。押し付けない、ストレスフリーが大原則です。
■GTDは目的ではない GTDは、今やるべきタスクに集中し、タスクの効率を上げることが目的です。GTDをやることが目的ではありません。
人によって、チームによって、あるいは職種によって、やり方はまちまちで構いません。それぞれがベストと感じられるやり方で構わないのです。変化の激しいところでは、レビューは日々行ってもかまわないし、ルーチン業務中心なら、レビューは3日に1回でも構わないでしょう。
GTDはタスクを効率化するための手段です。あなたらしく、あなたのやり方で肩の力を抜いて行えばよいのです。気軽に是非トライしてみてください。
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