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”NEJIKO” ”ハゲップル”を支える「エンジニア×美容師・ヘアメイク」のしょうたなさんが、二刀流を勧める理由
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”NEJIKO” ”ハゲップル”を支える「エンジニア×美容師・ヘアメイク」のしょうたなさんが、二刀流を勧める理由

金子 茉由
2022.12.07
この記事でわかること
しょうたなさんが、"二刀流"となった理由とは?
"二刀流"で活動する、2つのメリット
しょうたなさんが考える、“二刀流”に向いているエンジニアとは

「髪型は着せ替えできる」をコンセプトに、美容師がカットしたウィッグのオンライン販売サービスを展開する株式会社NEJIKO。高校時代に脱毛症を発症したことをきっかけに、ファッションアイテムとしてのウィッグの必要性を痛感した「ハゲカノさん」が立ち上げたブランドです。

ECサイトを拝見すると、従来の常識を覆すような、ナチュラルでファッション性の高いウィッグがずらり。しかもそのカットやコーディネートを担当するCTO兼CCOの田中 翔さん(通称:しょうたなさん)は、なんと現役のフロントエンドエンジニアだそう。エンジニア×美容師×ヘアメイクというマルチな分野で活躍する田中さんに、エンジニアとして二刀流の働き方にチャレンジする意義をお聞きしました。

田中 翔氏 プロフィール

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美容専門学校を卒業後、都内美容室に勤務。美容師業務の傍ら、メディア系サービスを立ち上げ50万PV / 日 を達成。その後、ロンドン、パリに移りヘアメイクとしてシャネル、フェンディーなどのバックステージで活躍。東京やパリでヘアスタイリストおよびエンジニアとして活動しながら、現在は株式会社NEJIKOに共同創業者として参画。

株式会社NEJIKO

代表取締役を務めるハゲカノさんが「髪型は着せ替えられる」をコンセプトに“誰でも簡単にファッショナブルに楽しめるウィッグを作りたい”という想いのもと、2021年10月に設立。ご自身が学生時代に原因不明の脱毛症を発症し、10年間さまざまウィッグを使用した経験から、ユーザーフレンドリーな人工毛ウィッグの開発を行う。2022年9月より、オンラインでのウィッグ販売開始。ハゲカノさんは、パートナーのハゲカレさんと一緒に「ハゲップル」としてSNSやライブ配信で自身の体験に基づくコンテンツを発信。SNSの総フォロワー数は約80万人を誇る(2022年11月現在)。

「待ち」から「攻め」に転じるために、ITスキルを習得

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金子 茉由

NEJIKOさんは設立から約1年と創業間もない会社ですが、田中さんはもともと創業者のハゲカノさんとお知り合いだったのでしょうか?

田中さん

いえ、ハゲカノさんとは、知り合いのエンジェル投資家の方を通じて出会いました。ちょうどNEJIKOがウィッグの開発に乗り出すタイミングで、美容師やヘアメイク、ECサイトを開発できる人を探していたそうで、すべてを担える私に声をかけてくれたんです。

金子 茉由

そうなんですね!たしかに美容師×ヘアメイク×エンジニアという組み合わせで仕事をされている方は少なそうに感じます。声をかけてもらったとき、田中さんとしてはどのように感じましたか?

田中さん

嬉しかったですよ。ただ、当時はロンドンでエンジニア兼ヘアメイクをしていて、その活動も継続したかったので、「まずは期間限定のアドバイザーでよければ」という条件で引き受けました。

金子 茉由

最初はフルコミットする予定ではなかったのですね。

田中さん

はい。ただ、ハゲップルのお2人とビジョンを共有し、事業を進めていくなかで、3つの職種のスキルをフルで発揮できる仕事はこれから先ないのではないかということに気づいたんです。

田中さん

同時に、自分の働き方(二刀流)を広めることで美容業界を変えるチャンスなのではないかという期待が高まり、NEJIKOに全面的にコミットすることを決めました。現在は撮影、ウィッグのカットクオリティマネジメント、ECサイトの構築まですべて担当しています。

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NEJIKO創業者のハゲカノ氏と、パートナーのハゲカレ氏。2人で「ハゲップル」として活動中。
金子 茉由

ちなみに現在、エンジニアと美容師・ヘアメイクの業務比率はどれくらいですか?

田中さん

エンジニア7、ヘアメイク2、美容師1といった感じでしょうか。美容師は本当に必要な場面でない限り、最近は仕事を受けていません。エンジニア業務に関しては、現在大手企業などでも複数のプロジェクトを任せていただいたりしています。

金子 茉由

美容とITはかけ離れた領域に思えますが、田中さんがマルチなスキルを身につけたきっかけは?

田中さん

2つあると思っています。1つが、美容師やヘアメイクとしての活動を進めるなかで、顧客向けサービスサイトの構築を行う機会が多く、単純にWeb開発への興味が沸いたこと。そしてもう1つが仕事の特性です。

田中さん

美容師やヘアメイクは、いわば「待ち」の側面が強いんです。もっと働きたいと思っても、自らの意志で仕事を増やすことが難しいんですね。一方、Web開発はやればやるほど成果につながります。「待ち」ではなく、「攻め」に転じることができると思ったことが大きいですね。

金子 茉由

Web開発については全くの未経験だったと思うのですが、どのようにスキルを身につけたのでしょうか?

田中さん

最初は独学でWebサービスを開発していたのですが、わからないことだらけで悔しい思いをしました。そこでIT企業に就職し、短い間でしたけど修行していたんです。切磋琢磨する仲間もほしかったので、エンジニアのコミュニティにも頻繁に顔を出しましたね。

金子 茉由

それはすばらしいですね。現在の状況に至るまでには、相当な努力を重ねてこられたのではないかと思うのですが。

田中さん

運がよかった、という感じでしょうか(笑)。元々僕はJavaScript(現在はTypeScript)が得意だったのですが、先ほどお話ししたエンジニアコミュニティにおいてReactについて深く学びました。ある意味“賭け”の要素もあったのですが、たまたま人気が出てくる言語やライブラリを選んで突き詰めた結果、今の自分があるというイメージです。

二刀流のメリットは「収入の安定」だけではない

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金子 茉由

田中さんにとって“二刀流”で活動するメリットを教えてください。

田中さん

大きく2つあります。1つは、収入の柱を複数持つことで精神的に安定することでしょうか。美容師1本で生計を立てようとしていた頃は、毎月の売上を気にしてしまい心に余裕がありませんでした。しかし、二刀流でエンジニアをはじめてからは、その時々の状況に合わせてエンジニア関連の仕事を増やすことができる。その結果、収入が安定して心に余裕が生まれましたね。

田中さん

もう1つは、それぞれの仕事で培ったスキルが、もう一方の仕事に活かせるようになったことです。例えば、コーディングで培った「細かさ」がカットに活かされることがありますし、美容師で培ったコミュニケーション力がプロジェクトで開発を進める際に活かされることもあります。僕がITプロジェクトで重宝されるのも、美容師で培った“相手の気持ちを考えてコミュニケーションを図る力”があるからだと思います。

金子 茉由

なるほど、それぞれの仕事で得られたスキルが、双方の仕事にプラスの影響をもたらしているのですね。

田中さん

はい。ただ、エンジニアの仕事も美容師の仕事も、実は共通する部分が多々あるんですよ。例えば、コーディングもカットも“目指すゴールのために、小さな作業をコツコツと積み重ねていく”プロセスが大切です。

田中さん

あとは「流行り廃り」があることも共通ですね。流行のファッションがあるように、コードにも流行がある。どちらの仕事においても、流行をキャッチアップするためのアンテナを張ることが求められていると思います。

美容業界の常識をくつがえしたい

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金子 茉由

今後は1つの道を極めるのか、マルチで続けていくのか、どちらの想いが強いですか?

田中さん

僕としてはやはりマルチで続けたいですね。個人的には、職業を1つに絞る理由はそれほどないと思っています。いろいろな職業に関わることで得られるスキルも多いですし。特に世の中の美容師さんたちにさまざまな働き方があることを紹介することで、美容業界がよくなるために貢献していきたいという想いもあります。

金子 茉由

そう思うのは、今の美容師さんたちの働き方に課題を感じているからですか?

田中さん

そうですね。美容師はスキルに見合ったリターンを得ることが難しいので、そんな業界の常識を変えていきたい。その手段の1つとして、僕の働き方を参考にしてくれたら嬉しいですね。

田中さん

業界を変えるという意味では、NEJIKOも美容師の収入アップに貢献できると思っています。NEJIKOはお客さま一人ひとりに合わせてウィッグをカスタマイズして、カットやスタイリングまで行うサービス。NEJIKOに関わることで、美容師さんたちの隙間時間を活用する仕事が生まれたり、休眠美容師さんたちに自宅で作業していただく仕事が生まれたりすることも、新たなビジネスモデルとして期待している部分です。

金子 茉由

NEJIKOとして今後注力したいことはありますか?

田中さん

現状ではウィッグというと「医療用」のイメージが強い。ウィッグやかつらというワードがもつイメージを払しょくし、ファッションやアクセサリーとしてウィッグを被ることが当たり前の世の中にできたら嬉しいですね。そうすることで、病気などの事情でウィッグを使わざるを得ない方々にとっても、間接的に手を差し伸べることができると思います。

大切なことは好奇心と探究心。プライドを捨て、新たな一歩を踏み出そう

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金子 茉由

副業やダブルワークが主流になるなかで、田中さんの考える“二刀流”に向いているエンジニアとはどのような人ですか?

田中さん

好奇心旺盛で、真理を追究する能力に長けている人ですね。ただ、エンジニアのなかには、違う領域の人と接点を持つことを避ける人や、周囲を巻き込んで新しいことを始めることが苦手な人も多い。まずはプライドを捨て、新しい挑戦への一歩を踏み出すことが重要だと思っています。

金子 茉由

そのためには、どのような取り組みが必要だと思われますか。

田中さん

コロナの時期ではありますが、いろんな人に会うことですね。ちなみに僕は「1日に最低1つは億劫で苦手なことをしよう」と決めています。たとえば、掃除をしたり、得意でない人に自分から話しかけてみたり、ゲーム感覚で自分にタスクを課しているんです。そうすることで新しい取り組みへのハードルが下がる気がしますね。

<取材後記>

一つひとつの質問にとても前向きな言葉で答えてくださる田中さんからは、心の底から今の仕事を楽しんでいる様子が伝わってきました。外部から見るとまったく異なる業務のように感じられる仕事も、実はどこかで共通点があること、また相乗効果で生み出せる価値やメリットがあるということも大きな気づきでした。ぜひパラレルキャリアを目指すエンジニアのみなさんの、一つのヒントとなれば幸いです。

ライター

金子 茉由
12年勤務した大手人材会社を退職後、フリーランスライターに転身。会社員時代からIT業界のクライアントとの相性がよく、さまざまなIT系企業の採用活動支援や、エンジニアのスキル開発・育成支援業務に携わってきた。いまの一番の関心ごとは、子ども向けプログラミング教育の未来について。
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