「エンジニア×マンガ」で切り開くマンガの未来。集英社がマンガアプリの先に見据えるもの。
集英社が今、あなたの持つ尖った技術を求めている。
集英社がスタートアップとともに、マンガの未来を切り開く事業を作るプログラム、「マンガテック2020」。
本を作って売る出版社が、なぜIT系のスタートアップと組むのか。
疑問に答えてくれるのは、Appleから集英社に転職し、次々と新規事業を立ち上げ続ける新規事業開発部の森 通治さん。
「マンガテック2020」も担当する森さんが語るのは、常識を覆す集英社のチャレンジの連続と、マンガのワクワクする未来だった。
集英社は変化を恐れない。「紙の雑誌だけではない」先を見据えるDX
今回の「マンガテック2020」もそうですが、「少年ジャンプ+」なども含め、出版社がIT系のプロジェクトを進めるのは、かなり大変だったんじゃないでしょうか。 組織内部の反発もありそう。
経営的な話も含む内容なので、僕が全てを語ることができるか分からないんですが。 体感だと、集英社は変わることに関してはあまり恐れてないというか。
え!勝手に保守的なイメージを持っていました。 紙にこだわっているというか。
確かに、マンガ市場は紙ではまだまだ売れているし、重要な商品なんですけど。 以前、「週刊少年ジャンプ」前編集長に新企画の相談をしているときに、世の中は変わっていくという前提に立って、将来紙の雑誌がなくなってしまうかもしれないという危機感で新しい事を考えてみて、ということを言われて。
紙の雑誌がなくなる危機感…! なんとなく、出版社の人たちが一番回避したい未来のように思いますが。
もちろん、紙の雑誌の売り上げ維持は最重要な課題ですし、より紙のコミックスが売れることは望ましいことです。 ただ、集英社はもうちょっと幅広い視野でクリエイターと作家を捉えてるというか、その辺に関してはすごく面白い組織だなと思ってます。
もう少し広い視野?
そもそも、出版社って紙で雑誌を作ること自体がバリューじゃないんですよ。
出版社なのに紙で雑誌を作るのがバリューじゃない…?
紙の本は良いところがたくさんあります。 版を作って刷って、大量に生産して多くの人に情報をお届けできる。 印刷物って物理的に運べる限り、情報も低減しないじゃないですか。
電子版は電波が届かないと読めないし、データが消えてしまうリスクもありますね。
情報の媒体として、紙は非常に優れた手段だと思いますし、インターネットが普及した現代でも、それは大きく変わらないと思うんです。 でも、我々が売っているのって、紙そのものじゃない。 マンガでいうとクリエイターさんが作った物語や、キャラクターじゃないですか。根源的な価値は情報にあるんですよね。
た、たしかに。 出版社=紙、みたいなイメージが有りましたが、その上に載ってる情報が一番大事ですもんね。
物語を作ってどう届けるのか、そこに重きを置いている。 だから「ジャンプ+」のように、マンガを届けるのにマンガ誌アプリという形があってもいいんじゃないかという柔軟性があるんだと思います。
なるほど。
というか、読者がスマホでの体験を求めてますよねと。 読者が求めてるものに対して、やっぱ作家は描きたいですよねと。であれば、環境を用意するのは必然ですよねっていうのが背景だと思うんです。
す、すごい…。スタートアップ企業が言うならまだしも、集英社くらい歴史のあるところがそう言えちゃうのはすごいです。
いま電子書籍の市場って、新しい会社がどんどん参入してますけど、実は既存の出版社が主導になっていると思います。 それって、おそらく集英社だけじゃなくて、他社さん、講談社さんとか小学館さんとかを含めて近しい文化があるからなんですよね。 出版社がIT系の会社と戦えているっていうのは、そういう文化が理由なんじゃないかと思っています。
これは出版社に転職したくなるエンジニアが増えちゃいそうだな…!
集英社がこれまでに立ち上げたアプリの数は、なんと…!
森さんは今「マンガテック」以外にも新規事業を立ち上げているんですか?
話せないことも結構多いんですけど…。 今私の担当だけで、並行して12個ぐらい新規事業のプロジェクトをやっていて、そのうちの1個がマンガテックです。
12個!?
大なり小なりあって。マンガテックは比較的大きな方なんですけど。 ゲームのプロジェクトもやったり、AI系のことも取り組んでたり、あとは、都市開発みたいな話もあったりとか、いろいろあります。
す、すげ〜…。 集英社の都市開発とかめちゃくちゃ面白そうですね。 先程アプリ立ち上げの話もありましたが、入社されて何個くらいアプリを立ち上げたんでしょうか?
中心メンバーとしての立ち上げは2〜3個ですが、お手伝い含めてだと8個くらいはあるかもですね。
森さんが入社して5年だから、1年に1,2個は立ち上げてますよね…!
もちろんライトな関わり方もあるので、ガッツリやったのは数個ですが。
いや、数個でもすごいというか。 それだけ新しい事業やアプリが立ち上がる会社なんですね。
そうですね。マンガに関連するアプリだと、たぶんトータル40は超えてるんじゃないですかね。
40!?「ジャンプ+」「ジャンプBOOKストア!」「ゼブラック」とかですよね。
40個立ち上げてますけど、うまくいかなかったものや、キャンペーンなど期間限定のものもあるので、皆さん知らないものが多いとは思います。
「週刊少年ジャンプ」の連載くらいのシビアさなんでしょうか。
単純にマンガの連載とは比較はできないかもしれないですが、サバイバルゲームではありますね。 自分なんかはまだあまりうまくいっていないほうで、立ち上げがもっとうまい人はいます。 でも、いろんなものに携わった経験自体は評価してもらってるのか、ありがたいことにいろんな人に声は掛けてもらえます。
再チャレンジを応援する社風も、「ジャンプ」っぽいなぁ。アプリの開発ってどのような感じで始まるんでしょうか?誰かが号令をかけるとか?
アプリの開発自体は、やりたい人間がやるっていう感じです。ある意味、社内ベンチャーみたいな。 僕なんか転職して1年ぐらいで、「サービス立ち上げたいです」ってやらせてもらいましたし。 やりたい、やる気がある人間を応援してくれる組織な感じはします。
「ジャンプ+」なんかは、実際どうだったんでしょうか。
僕は当時は転職前で「ジャンプ+」の立ち上げ自体には携わってないんですけど、「ジャンプ+」は「少年ジャンプ」を超えるっていうメッセージの下で立ち上がってるアプリなんです。 中の人たちは、変わらなきゃとか新しい何かを生み出さなきゃっていう意志がすごく強い組織で。 新しいことを、上が無理やり止めるってこともあんまりないですし。
歴史ある企業とは思えないくらい柔軟でチャレンジングな社風だ…。これ出版社のイメージがガラッと変わりますね…。
「編集者」はプロダクトマネージャー。エンジニアの手綱もがっちり握れる。
森さんのいる新規事業開発部って、何人くらいなんでしょうか?
専任だと9人ですね。そのうち僕ひとりが「マンガテック」を担当しています。
え、ひとり!?
あとのメンバーは編集部の人たちですね。 編集部と共同主催なので。
編集部ってつまり、「マンガの編集者」の方たちですよね。 ちょっと意外というか、編集の人たちはあまりビジネスやテクノロジーのことに足を踏み入れたくないのかなと思っていました。 マンガづくりに集中したいのかなって。
編集者っていうのもまたいろんな形があるのかなと思っています。 もちろん、皆さんがイメージされているようなマンガを立ち上げるのがめちゃくちゃうまい編集者もいます。 そういう人たちももちろん大事だったりするんですが。
そういう人をイメージしていました。
ただ、編集者は今、事業プロデューサー的な人が増えていますね。 ライセンス的な仕事、アニメの仕事とか、作品自体がマルチメディア化していく流れが、最近すごく強まってるので。 作品をマンガの誌面だけで人気を上げていくっていうスタイルもあれば、メディアミックスで複合的に知名度を高めていくみたいな観点でやってる人間もいます。
『鬼滅の刃』はアニメとのメディアミックスで爆発的に人気が出ましたよね。
そうなると、オプションの一つとして、アプリを作るとか、自分たちでメディアを立ち上げたほうがいいじゃん!とか、そういう人間はやっぱり出てくる。 だから、一概に編集者といっても、いろんな観点でマンガビジネスに携わっている社員がいますね。
そ、そうか〜。 マンガを作るだけじゃなくて、どう届けるか、どう人気を得ていくかを考えるのも編集者の仕事なんですね。 「紙を刷るのが一番のバリューじゃない」という話がここでも効いてきますね。じゃあ、編集者の人たちも、アプリの開発現場に関わったりするんですか?
もちろん!「ゼブラック」の担当者は、編集者歴が長いのですが、横で見ていて開発会社の人とのコミュニケーションがうまいイメージで、実際にサービスもとてもきれいに立ち上がりました。
編集者ってずっとクリエイターと向き合ってるじゃないですか。 エンジニアの方々も、言ってしまえばクリエイターのような方が多いと思うんです。 こだわりを持っているというか。
だから、編集者とエンジニアって実は相性がいいんじゃないかなって。 コミュニケーションの進め方っていうのは、面白い共通点だなと思いながら見てたりします。
た、たしかに! 編集者とエンジニアってコミュニケーション難しそうだな〜と勝手に思ってましたが、意外な共通点だ。 めちゃくちゃおもしろい話ですね!
開発特有の専門用語があるので、自分が間に入ることもあるんですけど。 僕が入らないほうが円滑だなと思うことも多々あります。
つまり、「マンガテック2020」に応募すると、今の超人気マンガを担当する編集者と一緒に開発できる、なんていうことも…?
もちろん。それが望ましいと思ってますし。
めちゃくちゃ夢がある〜〜〜〜!エンジニアの皆さん、今すぐ応募しよう!
編集者ってよく、作家を支える裏方的な存在、みたいな言い方もしますけど。 クリエイターのモチベーションを高めることを一生懸命やってたりするんで、エンジニアの人たちとの相性は意外といいんじゃないかなと思っています。
意外な発見です。 エンジニア的に言うと、編集者は面倒見の良いプロダクトマネジャーみたいな立ち位置で働いてくれるかもしれないっていうことですよね。
そうですね。いろんな観点で集英社の編集者の強みは出せると思います。
インタビューしてよかった〜。
出版社の在り方って、実は色んな所とつながっているんですよ。 VC(ベンチャーキャピタル)の人たちと、「VCとマンガのビジネスって似ているね」という話をよくしていて。
というと?
僕らのビジネスって、新人の作家やクリエイターを発掘して、支援して、作品を大きくして、その過程でお金を頂くという、未来の才能に再投資するっていうことをずっとやっていて。
VCの人たちも、未来の才能を発掘して、ファンディングして企業を大きくして、その大きくなったお金をファンドに戻して、次の新しい才能に再投資するっていうやり方で、一緒ですねって。
ほ、ほんとだ…。
だから、スタートアップ系の会社と出版社は相性がいいかもしれないですねって話はよくしてて。 なので、今回の「マンガテック」も、やってみましょうか、という話になったんです。
完全に点と点が線で繋がりました。出版社がスタートアップのインキュベーションをするのは、ある種必然だったのか…!
集英社のライバルはYouTube、Netflix
それだけ新しいアプリを作ってると、お互いに市場を食い合わないのかなって思います。 自分は「週刊少年ジャンプ」の電子版の購読のために「ジャンブBOOKストア」をインストールしたんですけど、「あれ?この機能『ジャンプ+』にもあるじゃん」みたいな。 「ゼブラック」も後で入れるか…って放置しちゃってます笑。
どのアプリがどう違うの?という疑問はユーザーさんからするとわかりにくくて、課題だなと思ってます。 そういったご意見はごもっともなので、改善したいんですけど。 まだまだ発信力やマーケティング力が足りないと言うか。
あ、なんかクレームみたいになってしまった。 すみません…。
「ゼブラック」は他社さんの作品もあるし、使い方がぜんぜん違うアプリなので、ぜひ入れてみてください笑。 ユーザーさんへの見せ方は我々も考えなきゃいけないんですが。
すぐ入れます!
ただ、結構面白いのが、それぞれのアプリって、意外とユーザーがかぶってないんです。 事実それぞれユーザーが増えているので、今のところ、機能かぶりを許容しつつユーザーを広げるのが大事かなと思ってます。
え、ユーザーってそれぞれ増えてるんですか!?よく、国内市場の飽和とかが叫ばれる業界だと思うんですが。
国内もまだまだ伸び代があると思いますし、一方で海外もまだまだなので、全然やりようがあります。 戦わなきゃいけないのは、マンガアプリ同士というよりはYouTubeとかの動画サービスや、ゲームアプリ。 つまり可処分時間の奪い合いなんですよね。
よりマンガに触れてもらうきっかけを増やすためには、一緒に道を切り開いてくれるパートナーさん探しも含めて、やはり新しいことはどんどんやんなきゃいけないなって感じです。
そうか、「週刊少年ジャンプ」ってライバルは他の雑誌だと思ってましたが、海外も含めるとそういう戦いになってくるんですね。 集英社が、YouTubeやNetflixと並ぶ世界的なコンテンツカンパニーになる日も来るかもしれない。
かもしれない、というか、ならなきゃいけない。 ディズニーさんとかポケモンさんとか、すごくうまくやられてる印象があります。 それに続け、じゃないんですけど。 全く同じやり方してもたぶん勝負はできないので、僕らなりのやり方でやっていかなきゃなとは思ってます。
そうですね、なるかもしれない、じゃなくて、ならなきゃいけないんですね。 少年マンガみたいなアツい展開だ。
マンガの未来を集英社と切り拓く。「マンガテック2020」の目指すもの。
もうここまで読んだエンジニアなら、集英社と一緒にマンガの未来を切り開きたくてウズウズしていると思います。 応募したいエンジニアのためにも、「マンガテック2020」の詳細を伺いたいんですが。
集英社ではすでに「ジャンプアプリ開発コンテスト」を2017年から実施して、外部企業とマンガ関連のサービスを立ち上げてきましたよね。 今回の「マンガテック」と「アプリ開発コンテスト」の違いは何なんでしょうか?
「ジャンプアプリ開発コンテスト」は、実現性があるものに5000万円開発費を渡すという規模感の大きなので、大きな企画しか拾えてなかったんです。 取りこぼしていた小さな企業や企画も拾いたい、ということで、「マンガテック2020」が始まりました。「ジャンプアプリ開発コンテスト」は「ジャンプ・デジタルラボ」がその窓口を引き継いでいます。
集英社がスタートアップを支援する、つまりインキュベーションという形を取ったのはなぜなんでしょうか? たとえば、アイディアだけもらうコンテストという形もありえたと思います。
集英社は、物語でキャラクターを作ることを何十年もやってきて、長(た)けている会社だと思うんですけど、そういった新しい技術を活用する人材とか組織関係ってまだまだ足りないんです。
中に無いなら、外から呼んじゃえということで、外部のスタートアップと手を組むんですね。
急速に組織を転換するのは難しいので、外の方々の力を借りなければいけない。 さらに、僕らも想像つかないような技術とか未来っていうのは、結構若い人から出ることが多いと思います。 若い才能とか、僕らが気付けてないような視点の技術を、マンガの根源的な価値と組み合わせることで、より面白い未来がつくれるんじゃないか。 それが今回の「マンガテック2020」の企画意図ですね。
ワクワクしてきますね。 たとえば「技術的に面白いけど、サービスになるかな?」といった段階の応募でも良いんでしょうか?
もちろんです。 まだサービスとして固まっていなくても、どんどん応募してほしいです。 そのための強力なメンター陣に参加いただいています。
「アル」のけんすうさんや有名なVC(※ベンチャーキャピタル。ベンチャー企業向けの投資集団)の方々など、そうそうたるメンバーですよね。
今回ありがたいことに、超すごいメンターの皆さんにご協力いただいています。 集英社からも、今日ずっと話に出ていた「ジャンプ+」の立ち上げを担った細野&籾山など、面白いメンバーが参加しています。
集英社さん的に、こういう技術がほしいとか、こんな会社に来てほしいとかってありますか?
いや、縛りを付けたくないんですよね。 「マンガテック2020」のゼネラルプロデューサーをしている「ジャンプ+」編集長の細野とも話をしてるんですけど、僕らが驚くようなものを提案してくれる人がありがたいです。
僕らとは全然違う視点でエンジニアの人たちは仕事をしてると思うので、僕らの視点と組み合わせたらすごく面白くなるんじゃんっていうのは、たぶんいっぱいあると思うんです。 「うち、こんな技術あるんです、面白くないですか?」って感じで応募してもらえると。
個人での応募でも大丈夫ですか?
もちろんです。 ただ、最終的には我々と一緒にサービスとしてローンチを目指したいので、組織づくりみたいなところも頑張っていただけると嬉しいですね。
マンガ家が知りたい、これからのマンガの形。
自分は開発の仕事の他に、マンガも描いていて。 これはエンジニアでありマンガ家である自分の質問なんですが、マンガの未来ってどうなっていくと思いますか?
たとえば、今のマンガって紙の本を前提にしているから、「見開き」があって、「ページ」があって、「コマ」がある。 その制約でみんなマンガを作ってると思うんですけど。
でも、韓国ではページの概念をなくして、スマホの縦スクロールに合わせて、ずっとコマが縦に続くマンガがあったりする。 YouTubeなんかでも、マンガ風の動画が流行ってますよね。
いま、集英社が集めている技術を使うと、マンガってどうなっていくんでしょうか。
その答えを僕はまだ持ち合わせてなくて。 逆に言うと、それを一緒に考える人たちが、「マンガテック」とかを通して出てくれば面白いなと思ってはいるんですけど。
そ、そのとおりだ…! まさにそんな「マンガの未来」を作るために「マンガテック」があるんですよね。
今のコマ割り進行の読み方っていうのは、劇的に数年単位では変わんないんじゃないかと思います。 ただ、ちょっとずつ実は変化をしていて、30年ぐらい前の雑誌に載っていたマンガと今のマンガって、やっぱり作り方が全然違うんです。
というのも、さっきおっしゃったように縦スクロールのものが出てる。 昔の巻物がスマホの形に合わせて縦になっただけで、実は縦スクロールで物語を読むっていうのは昔から存在してるんですけど。 あと、昔だとコマ数が1ページ当たり十何コマとかあったりするんですけど、今ってコマが少なくなってますよね。 こういったスマホ時代に合わせた変化も起きています。
確かに昔のマンガって細かく分けてますね。 マンガ家同士でも「1ページ6コマくらい」といった目安の話をします。
今はスマホで見られる前提になったりするので、コマを大きくする必要がある。 「ジャンプ+」とか、あえて意図的にコマを減らすように作る作品もでてきていますし、作り方自体もちょっとずつ変化はしてるんです。 見開きをなるべく使わないようにしたりとか。
今のマンガのかたちって、大きな市場がある日本人が慣れてる仕組みなので、劇的にすごく変わるとかはないんじゃないかとは思っています。 ただ、映画の世界でCGが出てきたり、YouTubeのように個人クリエイターが才能さえあれば動画が作れる時代がきたりとか、マンガでも新しい流れは作れるかもしれない。 そういうものを「マンガテック」でエンジニアの人たちと一緒に作っていく、というのはできるかなとは思ってます。
アツい…! マンガの未来を作るのは何もマンガ家や編集者だけじゃない。 それを支える技術が、エンジニアが未来を切り開くかもしれないんですね…!
最後に…。 森さんご自身は、どんな思いで新規事業のお仕事をされているんでしょうか。 ゲーム開発など、たくさんの新規事業を並行されていると思いますが、なにか一貫した目標はありますか?
作家やクリエイターの方々がお金を稼ぐ機会が広がることが一番だと思っています。 あくまでわれわれは今、マンガを中心としたビジネス設計になっていたりするんですけど。 作家やクリエイターさんの機会って、別にマンガが入り口じゃなくてもいいんじゃないかって思っていて。
マンガが入り口じゃない、マンガ家っていうことですか?
例えば、ゲームの仕事をきっかけにマンガを描くようなことも生まれればいいと思うんです。 逆もしかりで、今はマンガ家をやってるけど、ちょっと幅を広げてゲームのキャラクターデザインやシナリオの仕事をやってみようとか。 さらに広げると、AR、VRみたいな領域で才能が開花する人がいるとか、平面絵ではなくて3Dの方が向いてる人がいるとか。
集英社自身がクリエイターに提供できるビジネスの機会を増やして、そういう幅広いクリエイターさん達がわれわれの元に集まっていただけると、さらに集英社の事業領域が広がっていくので、面白いかなと思っています。
めちゃくちゃおもしろい未来が来そうだ…!
ただ、全然分からないです、まだ。 やってみないと分からないですし、私もいま新規事業を12個やってるって言いましたけど、2、3個成功すれば御の字じゃないかとすら思っています。 もちろん、すべてのプロジェクトに一生懸命取り組んではいますが!
「ジャンプ」のマンガ賞受賞者へのアドバイスで、『暗殺教室』の松井優征先生が「(マンガ家は)野球と同じで3割もヒットすれば上々の世界」とおっしゃっていたのを思い出しました。 マンガもビジネスも、どんどん新しいことにたくさんチャレンジしていく精神が、集英社のDNAとして存在しているんですね。
マンガの未来を創りたいエンジニアの皆さんもそれは同じ! 今すぐ「マンガテック2020」に挑戦しましょう! 森さん、貴重なお話をありがとうございました!
ライター
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