地方在住、リモート歴4年のCTOが説く!エンジニアが在宅でも結果を出す方法は「すべて文字に残す」こと
コロナの影響で急速に普及したリモートワーク。 緊急事態宣言から2ヶ月が経過したいま、リモートワークならではの新しい悩みや課題も浮上してきています。
「腰が痛い!」 「食事が偏る!」 「運動できない!」 「いつまでも仕事してしまう!」 「オンラインでうまくコミュニケーションがとれない!」
今回アンドエンジニア編集部では、 こういった「リモートワーク特有の問題」について、その道の“プロ”に解決策を提示してもらうことにしました! 話を聞いたのはリモートワーク歴4年、オーディオブックの配信サービスなどを手掛ける株式会社オトバンクでCTOを務めている佐藤佳祐さん(以下、佐藤さん)。 自宅のある釧路からオトバンク本社のある文京区本郷までの距離は約1400km。 佐藤さんによると、それでも「快適にリモートワークできている」といいます。 いったい、どうやって…?
東京から約1400km。それでも「問題ない」
CTOである佐藤さんは現在のような状況になる前から、ずっとリモートワークを続けられてきたんですよね。
リモートワークを始めたのは2016年なので現在4年目ですね。 元々は埼玉に住んでいて、「基本リモート、たま〜に出社する」という状態だったんですが、2018年に釧路に来て、完全にリモートワークになりました。
4年前から…! コロナ以降にリモートになった人からすると、大先輩ですね。
世間は今リモートワークで騒いでますが、「オトバンク」は以前からリモートワークを推進していたので、あまり大きな混乱はなかったですね。
埼玉から釧路と聞くと、思い切った選択のように思えますが、何か理由があるんですか? 東京から1400kmも離れてるじゃないですか。
まず、「僕が釧路出身だった」ということがあります。 それと、「子どもを都会で育てるイメージが湧かなかった」というのも大きな理由ですね。
子育てが大きな理由だったんですね。 ただ、最近在宅で仕事をしている人に話を聞くと、子どもがいる環境だと仕事に集中できなかったり、リモート会議に子どもが乱入したり、大変という声も聞きますが…?
自分の場合、子どもがいることで大変だなと思ったことはないです。 それは「釧路にいるから」ということが大きいかもしれませんね。 今、6SLDKの戸建てに住んでいて、仕事のための専用の部屋もありますから。 都会だと、大変なことは多そうですね。
6SLDK!? 都内じゃ、そんなに広い家に住める人はほとんどいないですね。 ちなみに、釧路の6SLDKのお家はおいくらなんでしょうか…
ざっくりですが、都内の高級住宅街ではないエリアの1LDKのマンションくらいの値段で住めます。 庭もあるし、休みの日はバーベキューもできるし楽しいですよ。
(だいたい2000〜3000万円くらいか…)
もちろん、釧路に住んでいて、子どもの教育という面では課題がないわけではありません。 都心のほうが学校も多いし、選択肢も豊富ですから。 とはいっても、今は「いい大学に入ればOK」という時代でもなくなってきているので、大きく問題視はしていないです。 特に、エンジニアって「学歴よりも、スキル」な側面もあるじゃないですか。
たしかに…!
リモートマネジメントの極意は「すべて文字で残す」こと
佐藤さんの仕事って「CTO」なので、会社のマネジメントも含まれていると思いますが、そもそもリモートでマネジメントなんて可能なんですか?
正直、オフラインでやっていることをそのままやろうとすると難しいです。 なので、考えを変える必要がありますね。
「考えを変える」とは…?
大きく2つあります。 一つ目は、「対面を補助と考える」。 直接会うのは月に一回あるかないか、年に数回だけということもあります。 直接会うのは補助的なものとまず考えること。
二つ目は、「残す」。 やり取りは必ず文字ベースで残すことです。 これは徹底しています。 もう、ドキュメントが残っていない話はなかったことにする、くらいがちょうどよい(笑)。
なるほど…。
とにかく、どんな些細なことでも、ドキュメントに残すんです。 たとえ文章が下手でもいいから、絶対に何か書くようにと伝えてます。 最初はみんな慣れず直すことが多かったですが、最近はそれも激減しました。
よくそこまで普及させたな…。 慣れないことでも、できるものですか?
とりあえず蓄積させることが大事です。 どう書けばいいか分からない場合でも、過去の蓄積を参照すれば大体わかるので、中途で入ったメンバーでもうまく馴染んでくれます。
なので、カルチャー作りからやっていくことが必須かもしれませんね。 特にトップが自ら実践しないとカルチャーは根付かないので、そのプロジェクトのリーダーが、率先してやることが重要ですね。
「Slack即レスは必要ないと思います」
ただ、リモートワークの問題ってまだ残ってると思うんです。 よく聞くのは、「Slackに即レスすると集中力を削がれる」という声とか…。
うーん…。 これは僕と考え方が違いますね。 Slackを含めた文字ベースのコミュニケーションツールを、僕は非同期的なコミュニケーションに分類しています。 つまり、僕は「Slackに即レスは必要ない」と思っていますね。
お〜っと!? 理由をお聞かせ下さい。
他職種はともかく、エンジニアが即レスを求められる機会って少なくないですか? エンジニアは文字ベースのコミュニケーションで動いていて、例えばGitHubでのissueがまさにそうですよね。 そして、そのコミュニケーションは基本的に非同期です。
もちろん、サーバダウンへの緊急的な対応だったり、リリース前だったり、即レスが必要になる場合もありますが…。 そういった場合は、文字ベースのコミュニケーションとは別に、同期的なコミュニケーションを事前に用意しておくべきだと思っています。
なるほどなぁ…。 ちょっと極端な考え方な気もしますが、たしかに論理は通っていますね…。
少し別の話題になるんですが、リモートワークで食生活が偏っているという話もよく聞きます。 これへの対処法ってあったりしますか?
「自炊にハマること」じゃないでしょうか。 もともと、エンジニアって、料理にハマる素養があると思うんですよね。 「〇〇と〇〇の要件をそろえた料理を作ろう」とか言ってるエンジニアってわりと見る気がします。
あとは、社内のチームで何か共通のテーマで料理を作ってみようと提案するのもいいかも。 最近オトバンクでは、釜メシ大会という名の料理大会をSlack上で開催して、かなり盛り上がりました。
健康的な食事も、コンテンツ化・プロジェクト化しちゃうという訳ですね。
リモートワークは「チーム戦」、情報の蓄積と仕組みづくりが鍵
今までの質問で分かったのですが、知識や経験を蓄積し、それを共有するのが何より大切ですね。 オトバンクでは、エンジニアはコロナ前からリモートでしたが、最近は営業などの他部署もフルリモートになりました。 なので、エンジニアが筆頭になって、非エンジニアに対して、リモートワークに関する「先人の知恵」を教える動きができてますね。
「先人の知恵」とは?
リモートワークでハマりがちな罠とその対処法ですが、やっぱり一番多いのは「Wi-Fi環境」ですね。 例えば、「家のWi-Fiが遅くて困っている」となったときに、「ここ測定して」「ここの状況教えて」と聞きまくって、ボトルネックを見つけてあげる。 この辺は、エンジニアが得意な領域なので、生き生きとしています(笑)。
帯域幅やスループット、レイテンシ、IPv4/IPv6の区別など、非エンジニアには難しい点が多いですもんね(笑)。
そうなんですよ(笑)。 あと、オトバンクはリモートワーク無期限延長を決めるにあたって、社員全員にリモートワーク支援金として3万円支給しました。 「これで机や椅子やWi-Fiとかの作業環境を整えてね」というものです。
「先人の知恵」に「リモートワーク支援金」…。 会社として、各人がリモートワークでパフォーム出来るように、かなり頑張って仕組みを整えているんですね。
まさにそうですね。 実は今、オトバンクではリモートワークに関する知見をwikiにまとめているんですよ。 #help-wfhという専用のSlackのスレッドもあって。これは社会貢献のひとつとして、いずれ社外にも公開したいと思っています。
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