“悪い姿勢“が本当に危険な理由を知ってますか?エンジニアは「姿勢」と「ストレッチ」が命。動画つきで解説!
外出自粛やリモートワークの影響で運動不足になり、体の不調を感じ始めた人も多いはず。
一日中座ってキーボードを叩き続けるエンジニアは、特に首や肩のコリが気になるのではないだろうか。
すぐできて、覚えられて、一気に身体がラクになる方法はないものか…。
アンドエンジニア編集部、今回はそんなエンジニアのわがままに応えてくれるプロを探してきました!
話を聞いたのは、NODAPAI GYM(地図)を経営し、東大卒パーソナルトレーナーとして多くの人に指導実績を持つのだぱいさん。
曲がった背筋や首肩のコリを改善するためのトレーニング方法について、じっくり話を聞いてきました!
記事の末尾には、ストレッチの方法を解説する動画を記載したので、仕事の合間に是非やってみよう!
「エンジニアは無自覚に身体に悪いトレーニングをしている」
まず、エンジニアの人はコードを書きながら首や肩を悪い方向にトレーニングしているっていう自覚はあります?
最近はリモートワークで家にこもっていて、コンビニに行く以外全く動かないです。 トレーニングなんてしてるわけないじゃないですか。
何もしていないように見えて、エンジニアは無自覚に身体に悪いトレーニングをしているんですよ。 アンドエンジニアの人はどんな姿勢で作業していますか?
メンバーのひとりはこんな感じです。
うわ〜、最悪の姿勢ですね。 下位頸椎の屈曲ならびに上位頚椎の伸展により頭部が前方突出して顎が上がってる、肩甲骨が挙上&外転し巻き肩になってて、肩の内旋と手関節の背屈維持を強いられてて疲れそうですね…。
…すみません、いきなり専門用語が連発していますが、めっちゃ姿勢が悪いんだろうなというのはなんとなく伝わってきます。
自然な状態から外れた姿勢に無理やり筋肉を固定して体重をかけているので、 これは立派なトレーニングになっています。悪い方向への。
成人男性の頭部はボーリングの玉くらい重いってハンターハンターで読んだことあるな。
しかも、この曲がり方は明らかに人間の自然な状態じゃないです。 トレーニングの「特異性の原理」って言うんですが、筋肉が「この状態を目指そう!」と鍛えられていくので、どんどん悪い姿勢で固定されていくということですね。
悪い姿勢があなたの健康を脅かす。恐怖の4段階!
姿勢が悪いとダメってよく言うけど、具体的に何が悪いんでしょうか? 正直、猫背でも、自分はあまり人前に出ないし、良いかなって思うんですけど…。
はぁ〜〜〜〜〜(大きなため息)
印象が悪くなるのももちろんありますが、一番の問題は「健康」と「日常生活」に影響があるという点です。 英国カイロプラクティック協会の調査では、姿勢が悪いとBMI30以上の肥満体型の人と同じくらいの死亡リスクが有るなんていう記事もあるくらいです。
えっ!?BMI30以上って相当ですよね。 なんで姿勢が健康や日常生活に影響があるんですか?
姿勢が悪いと何が良くないか、ポイントは 1. マイナスはマイナスのまま 2. マイナスは増えていく 3. マイナス×プラス=マイナス 4. バタフライエフェクト です。 順を追って説明しますね。
わ〜い!
1.マイナスはマイナスのまま
まず、「可逆性の原理」といって、筋肉には鍛えても放っておくと元に戻っちゃうという仕組みがあります。 エンジニアは首や肩の悪いトレーニングをしているという話がありましたが、 適度に休みをとってストレッチやトレーニングで姿勢を正せば、悪い状態に固定された筋肉もある程度は元に戻せる、と言うこともできます。
やった〜!問題解決!
でも、可逆性の原理にも限界があって、悪い姿勢を取り続けてると、 ①癒着→②糖化→③繊維化という順で筋組織(筋筋膜)が拘縮し、③繊維化まで変性してしまうと、もう元には戻らなくなります。 これが「マイナスはマイナスのまま」です。
戻らないって…?
おじいちゃんおばあちゃんで、腕や腰が曲がっちゃってまっすぐにできない人が居ますよね。あの状態です。 エンジニアがキーボードを叩く姿勢では首や肩だけではなく腕が内側にねじれ、肘も曲がりっぱなし。 試しに立ったまま腕をだらんと垂らしてみてください。 ちょっと腕が前に曲がってると思います。
え、これってみんなそうじゃないんですか?
少し曲がっている程度は自然な範囲内ですが、これはちょっと曲がりすぎですね。 これが続くと、本当に曲がったままになっちゃうということです。そうなると日常動作が不自由ですよね。
これはイヤすぎる…。
2.マイナスは増えていく
そして「マイナスは増えていく」に移行するわけですが、 硬くなった筋肉をかばうように他の筋肉が不自然に働くことで、悪影響が連鎖していきます。 たとえば、腕が出て重心が前に変位することで、バランスを取ろうと背中が曲がって猫背になる、そんな感じです。 専門用語では「代償動作」なんて言ったりしますが、一箇所をかばい始めると色んな所がどんどん悪くなって、もはや原因が何だったかわからなくなるんですね。
どこかで聞いたような話だ…。
エンジニアの人も、バグを改修するためにパッチを当て続けた結果、なんのためのコードなのか後で分からなくなることってありますよね。
えっ、急に本当に怖い話するじゃないですか。 人体の話をしましょうよ。
人体にはコメントアウトもないですから余計に大変です。 整体に行くとよく「肩が上がってますね」って言われると思うんですけど。 言われたことありませんか?
言われますね。 ちなみに僕は整体にかれこれ数十万円かけてます。
実は「肩が上がってる」って、肩だけの問題なのか、足ウラのアーチが潰れてるからその副作用で肩が上がってるのか、パッと見でわからないんですよ。 でも肩の位置は患者からもわかりやすいので、整体師さんはとりあえず「肩が上がってる」って言うんですね。
たとえば、プログラミングわからなくてもUIの崩れはわかるじゃないですか。 でもUIが崩れてるときって、単にUI側だけの問題じゃないことが多いですよね。
ウグウゥ〜ッ(うめき声)
3.マイナス×プラス=マイナス
最近は筋トレブームと言うか、困ったら筋トレしろ!みたいに言われていますよね。
みんなジム行ってますよね。僕はNHKの筋肉体操で挫折しましたが。
筋トレは良いことなんですけど、姿勢が歪んでいる人が筋トレをするとどうなるかわかりますか?
え、姿勢が良くなるんじゃないですか? 筋トレすると姿勢良くなるって言いますよね。
筋トレで姿勢が良くなるというのは誤解です。 姿勢の悪い人がただ普通にトレーニングしても、変な負荷がかかり、筋肉を鍛えるどころか筋肉を痛めていくだけなんですね。 姿勢が良くなるどことかむしろ悪くなっていきます。 有名な症状だと、ベンチプレスや腕立て伏せを間違った姿勢で行って発症する「肩峰下インピンジメント症候群」とか。
インピ…え?
腕を90°真横に開いて腕立て伏せをしてませんか? これは怪我をしたい人が肩を痛めるためにやるクソトレーニングですよ。 せっかく努力しても姿勢が悪いと間違った方向の努力になってしまう。 これが「マイナス×プラス=マイナス」です。
エンジニアの人たちも、最初から悪い設計で始めたり、変なライブラリに依存したりすると、後でバグが起きたときに、何が原因かわからなくなったり、悪い設計をカバーするために、更にクソコードを書く羽目になったりしますよね?
やめて!今日は姿勢のことを聞きに来たの!怖い話しないで!
4.バタフライエフェクト
さらに状態が悪化して、もはや手のつけようがないほどコードがぐちゃぐちゃになると、ちょっとした改修で全く予期しないバグが発生すると思います。
作り直したほうが早い状態です。
人体も同じで、いや、人体は作り直せ無いのがもっと最悪なんですが。 悪い姿勢を取り続けて四十肩、つまり肩が上がらなくなると、高いものを取るときにバランスを崩しますよね。 そうすると転倒して骨折のリスクになったりする。 高齢の方にありがちな事故です。
姿勢悪い人が寝たきりになったらもう復活できなさそう。
また、肩が内側に入って背筋が曲がると呼吸が浅くなり、脳に酸素が行かなくなったり肺の機能が低下したりして様々な疾患の原因になります。 これが最後の「バタフライエフェクト」です。
脳に酸素が行かないとプログラマーは結構致命的な気がするんですが…。
この姿勢の彼は脳にあまり酸素が行ってないってことですか?
そういうことになります。
ちゃんと仕事できてるのかな…。 姿勢が悪くなった人はどうすれば良いんだろう…。
筋肉には可逆性の原理があります。 早い段階から悪い姿勢をやめ、筋肉をもとに戻すようなトレーニングをすれば大丈夫ですよ!
どうすればいいか教えて〜〜〜!
今すぐできる!「5分ストレッチ」で姿勢を直そう!(動画付き)
アンドエンジニア読者のために、のだぱいさんがストレッチ解説動画を撮ってくれた。 のだぱいさんによる解説動画を見ながら、実際にストレッチをしてみよう。 今すぐ自宅やオフィスのデスクでできる内容だ。 (*体に痛みや違和感を覚えたら、すぐに止めてのだぱいさんに相談しよう)
この記事を読みながらできる!チェアグリップ
キーボードを叩くとき、首が曲がったり肩が上がってたりして疲れてきますよね。 上がる・疲れるというのは筋肉に力を入れて悪いトレーニングをしているということ。 そこで負荷のかかっている筋肉を伸ばすストレッチがチェアグリップ・ラテラルリーニングです。 椅子に座った状態で、ちょっと右に寄り、左手で椅子の座面を掴んで右に体を傾けます。
首のあたりがすごく伸びている気がします。
人によっては肩甲挙筋、斜角筋群、胸鎖乳突筋あたりなんかも伸びると思います。 胸鎖乳突筋はいわゆる「ファイター筋」ですね。 首が曲がってるエンジニアは、ラグビー選手やプロレス選手のように緊張・興奮してて、全然休めていないことになります。 首もしっかり意識して伸ばしましょう。
あ〜〜自分で首を動かしてみると伸びるポイントが分かって気持ちいい…。 Slackなどでリマインダーをセットして1時間に1回やるようにするとよさそう。
目の前のデスクでできる!リバースプッシュアップ
悪い姿勢でキーボードを叩いている人を見ると、肩が上がって首が埋もれてますよね。 肩が上がっているというのは、その部分が固まっていることもそうですが、下げる筋肉が弱っちいというのがより根本的な問題です。 そこで逆の動き、つまり肩を下げるトレーニングをしてもとに戻す必要があります。 手のひらで座面を、頭頂部で天井を押すくらいの気持ちで首を伸ばして肩を下げましょう!
簡単に動く椅子だと危ないので、車輪の付いていない椅子か、適度な高さのデスクでやったほうがいいですね。
姿勢は筋肉の張力バランスによって成り立っているので、弱った筋肉を鍛えてあげないと根治には至りません。いくら整体院でほぐしても、それはただの対症療法ですからね。しっかり筋トレしましょう!
バックエクステンション(上体起こし)
自宅でマットやカーペットなどの上でできるトレーニングです。 猫背になっているということは、背中側の筋肉が伸ばされていますよね。 このように伸長性収縮の状態が続くことが、何よりも筋肉を「拘縮(硬く凝ること)」させてしまいます。 そこで、変に伸びながら固まってしまった筋肉が適切に縮んで働くように、トレーニングする必要があります。
ヘッドスタンド(三点倒立)
上体起こし以外にも、姿勢改善のトレーニングには三点倒立がかなり効果的ですよ。
小学校の体育の授業でやった記憶が……
首(頸部)は立派な体幹です。首で体を支えてバランスをとることで、頭を前に出す胸鎖乳突筋の反対の働きをする拮抗筋である「椎前筋群」のスピードトレーニングになります。 ヘッドスタンドは、あらゆる体幹トレーニングの中でもその頂点に立つ、「King of Core Training」ですね。 これを知らない人に運動を語る資格はありません。
これオフィスでやってる人が居たらめっちゃ意識高いですね……
座ったままできる肩のエクササイズ!ショートver 10分
肩こりと戦う30分!座ったままできる肩のストレッチ&エクササイズ!ロングver
本当は他にもやるべきストレッチや姿勢の話がたくさんあるんですが、今回はこの辺にしておきましょう。 次回以降、眼精疲労のためのストレッチやトレーニングの紹介もできればいいなと思ってます。
眼精疲労めっちゃ悩んでます。たのしみ〜!
ライター
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