IT業界の人材育成と医療系人材紹介を主軸に事業を展開している株式会社SEプラス。IRA認定のeラーニングや業界初の定額制研修など、独自の教育コンテンツを提供し、DX研修にも注力しています。
同社が開発した「ICTかるた」は50種類のIT基本用語を遊びながら学ぶことができ、葛飾区のサッカークラブ「南葛SC(※1)」とのコラボで、葛飾区の全小学校5、6年生クラスに1セットずつに配布する予定とのこと。「ICTかるた」の魅力や南葛SCとのコラボ内容について、同社でIT教育サービス事業のマネージャを務める山田裕輔氏と広報担当の寺井彩香氏にお話を伺いました。
「ICTかるた」
IT教育サービスを手がけるSEプラスが、葛飾区のサッカークラブ「南葛SC」と共同で開発。ITの基本用語50種類を遊びながら学べる(読み札50枚、取り札50枚)。
南葛SCとコラボした「ICTかるた」はどのように誕生したのか
「ICTかるた」は小学生向けに開発されたとのことですが、小学校でのIT教育は現状どのようになっているのでしょうか?
多くの小学校でタブレットが導入され、プログラミング教育も取り入れられています。論理的思考を育む体験が増えてきており、プログラミング教育は小学5〜6年生から始まる学校が多いようです。授業は週1回もしくは2週に1回といった頻度で行われ、最初はゲーム感覚でプログラミング的思考を学ぶことから始めるケースが多いようです。
「ICTかるた」を開発したきっかけや動機について教えていただけますか?
当社は法人のお客様を中心にIT教育サービスを展開していますが、子どもやそのご家族にSEプラスという会社を知ってもらいたいという思いがありました。その中で「ICTかるた」というアイデアが生まれたんです。アイデアコンテストがあり、社員が新しいアイデアを発表する場があるのですが、「ICTかるた」もその一環で提案されたものです。
なるほど、社員のアイデアから生まれたんですね。
ただ、小学生向けの教育コンテンツの制作に今まで取り組んでいなかったため、どのように展開するかが当初の課題でした。その後、南葛SCとのパートナー契約により、葛飾区の小学生向けに「ICTかるた」を展開するストーリーが具体的になり、今回のプロジェクトが立ち上がりました。
南葛SCとのパートナー契約はどのような内容なのでしょうか?
サッカーチームにおける一般的なスポンサー契約のように当社が経済的な支援をするだけではなく、南葛SCと協力してお互いに利益を生み出す関係を築いています。当社から教育コンテンツを提供し、南葛SCのスタッフの皆さんでIT研修を実施することもあります。
南葛SCは葛飾区の小学生向けにサッカースクールを運営するなど、地域密着型の活動に積極的な印象があります。「ICTかるた」は、南葛SCが培ってきた地域コミュニティの中で配布されるのでしょうか?
配布先は葛飾区の全小学校を想定しています。2024年の2学期を目処に、各校の5・6年生の各クラスに1セットずつ配布予定です。区内全校を訪問しての配布は難しいと思いますが、いくつかの小学校には南葛SCと連携して直接渡しに行こうと思っています。
南葛SCと貴社がコラボしてIT教育に取り組むのは、南葛SCが掲げるビジョンや運営方針が関係しているのでしょうか?
南葛SCには、葛飾区の人々にチームのことを広く知ってもらい、葛飾区民全員に応援されるクラブになりたいというビジョンがあります。その中で、これまで当社と一緒に社内のIT教育を進めてきた経験を活かし、「葛飾区民に対してIT教育を提供しよう」という考えが生まれたのだと思います。SEプラスにとって、このような地域貢献活動は初めての取り組みなので、南葛SCとのコラボは大変心強く思っています。
IT書籍のベストセラー著者の監修で、デザインは社内制作
「ICTかるた」ではどのような用語がカバーされていますか?
ITを勉強する前に覚えておきたい基本用語を50種類厳選しました。小学校向けの情報のテキストを参考にしながら、社員の子どもに聞いてみて理解できるかどうかを確認し、監修の矢沢さんにも相談して用語を絞りました。矢沢さんは『プログラムはなぜ動くのか』をはじめとするIT書籍を多数出版されている方で、当社のIT研修サービスではプログラミング講師としてご協力いただいています。
使い方についても教えてもらえますか。
一般的なかるたと同じような遊び方です。
1. 読み札と取り札が各50枚あり、まず取り札を場に並べる。
2. 先生(もしくは大人)が読み札を読み上げ、みんなで内容にマッチした取り札を取る。
3. 取り札が正しかった場合は、先生(もしくは大人)が読み札の裏に書いてある解説を読み上げ、みんなで用語の意味を学習する。
4. 持ち札の枚数を数える。
遊びの中で自然に学べるということですね。
そうですね。カードのデザインもかわいく仕上げて、子どもたちが楽しんで参加できるよう工夫しました。実は社外のデザイナーなどに依頼することなく、デザインは社内でラフ案から最終デザインまで行っています。趣味でイラストや絵を描いているメンバーなど私を含む7名で進めていき、絵コンテの作成前に全員で各かるたのデザインイメージを練り上げました。
デザインを考える上で大変だったことは?
とにかくデザインを決めるのに時間がかかりましたね。というのも、IT関連の用語を表現する際、どうしても他と似たようなデザインになりやすいんです。例えば「DX」「IT」「インターネット」など絵にしようと思うと似てしまうものもあるので、それぞれを分かりやすく区別した絵にすることに苦労しました。
たしかにデザインの差別化は大変そうですね。でも、Cookieのイラストを拝見すると食べ物のクッキーをモチーフにされていて、履歴を連想させる足跡が付いていたりするなどデザインの工夫が感じられて面白いと思いました。
作業を進めていく中で難しさもありましたが、IT教育事業を展開している当社ならではの強みも感じました。というのも、開発担当者が全員ITパスポート以上の資格を持っているため、IT用語に対する共通理解がある状態でデザイン作成に取り組めたのです。その点はデザイン制作を何とかスケジュール通りに進められた要因の一つだと思います。
「ICTかるた」で学ぶ!大人も意外と説明できないIT用語
小学生向けの「ICTかるた」ですが、大人の学習ツールとしても活用できますか?
そうですね、「ICTかるた」で収録している50種類のIT用語の中には、大人でも意外と説明できない用語が含まれています。例えば、次の用語を解説できますか?
「IoT」ですか。何となく意味はわかりますが、解説しろと言われたら困ってしまいます…。
IoTは「Internet of Things(インターネット・オブ・シングス)」の略語で、身の回りのあらゆるモノをインターネットにつなげる技術のことです。スマート家電やウェアラブルデバイスなどがIoTの一例です。次のIT用語はいかがですか?
LANも普段使っているものの、何の略語なのかいきなり言われると…。
LANは「Local Area Network(ローカル・エリア・ネットワーク)」の略語で、企業内や家庭内の小規模なネットワークを意味しています。続いてのIT用語はいかがですか?
SNSも毎日使っているのでどういうものかは分かりますが…。
SNSは「Social Networking Service(ソーシャル・ネットワーキング・サービス」の略語で、インターネット上で人々がつながり、交流するためのプラットフォームのことです。代表的なSNSとして、Facebook、X(旧Twitter)、Instagramが挙げられます。
こうして問題という形で出されると、大人でもすぐに説明できない答えられないIT略語は多いですね。小学生たちが「ICTかるた」を学習ツールとして活用すれば、大人よりIT用語に詳しくなるかもしれません。
子どもが物事を効率良く覚えるツールとして、かるたは有効だと思います。例えば、都道府県や国名が書かれたかるたで遊んでいた子どもが、大人顔負けの知識量に達することも珍しくありません。
南葛SCの先進的なICT活用法
南葛SCのICT活用について教えていただけますか?
南葛SCでは試合のチケットが全てQRコードで管理されており、これは関東リーグ一部のサッカークラブとしては珍しい取り組みです。以前は無料だった試合観戦を有料化したタイミングでQRコードによるチケット管理をスタートしたので、ICT導入のタイミングとしても最適だと思いました。
組織内のペーパーレス化も進んでいるのでしょうか?
はい、営業活動や在庫管理においてペーパーレス化を進め、ITを積極的に活用している様子です。南葛SC自身がICTの活用をビジョンとして掲げているため、選手や社員もそのビジョンに沿って活動しています。ビジョンの達成に向け、社員一人ひとりのITリテラシー向上をサポートしているのが当社の役割でもあります。
具体的にはどのような機器やITツールを活用しているんですか。
南葛SCの選手兼社員には全員パソコンが配布され、SlackやGoogleスプレッドシートを活用。サッカークラブは選手の入れ替わりが激しいため、すぐに情報を引き継げるようにクラウド上での情報共有が重要になってくるそうです。
一般的なIT企業よりも進んでいる部分があるかもしれませんね。他のクラブチームも同じように進んでいるんですか?
ホワイトボードで管理しているクラブチームもあるので、一概には言えません。ただ、その中でも南葛SCのIT活用レベルは突出していると思います。
SNSに投稿する親御さんも。今後は葛飾区内全ての小学校にも配布予定
「ICTかるた」のリリース後、どのような反響がありましたか?
反応は良好ですね。「ICTかるた」で遊んでいるお子さんの様子をSNSに投稿している方もいて、うれしく感じています。当社 主催のサッカーイベントに参加してくれた子ども300人に配布済みの状況で、今後は葛飾区内の全ての小学校に配布する予定です。
他の地区のお子さんからも「ほしい!」と言われそうですね。
そうですね、「ICTかるた」の情報が新聞に掲載されたときには「かるたを売ってほしい」といった問い合わせも。お力になりたいのは山々でしたが、販売の予定はないため丁重にお断りしました。
葛飾区の小学校には、これから配布する予定ですか?
はい、夏休み明けの2学期に配布予定です。各クラスに1セットずつ配布する予定です。
また問い合わせがくるかもしれませんね。
その可能性はありますね。南葛SCの試合でも「ICTかるた」を配布したことがありますが、数量に限りがあったため、もらえなかった子どももいました。複数の入口で「ICTかるた」を配布していたのですが、在庫がなくなると別の入口に移動して「ここにはありますか?」と尋ねる子どもまでいたんですよ。全員に渡せなかったのは残念でしたが、子どもたちの想像以上の好反応に驚きましたね。
「キャプテン翼」とのコラボも、SEプラスの「ICTかるた」が注目される要素となっているのでしょうか?
そうですね。「キャプテン翼」とのコラボレーションが、「ICTかるた」の注目度を高めています。「キャプテン翼」の新しいシリーズがアニメで放送されているほか、高橋先生の新作も話題になっているので、タイミングも良かったと思います。
南葛SCとは他のコラボも今後展開していく予定ですか?
詳細はまだお話できませんが、今後もワクワクできる企画を計画しています。すでに実施済みの企画としては、5月に開催した当社冠試合があります。『THIS IS IT(アイティー) DAY~SEプラススペシャルマッチ~』として、南葛SCの選手たちとITを使ったゴール後のパフォーマンスゲームや、タイピングスピードを競うイベントなどを開催しました。
他の企業や団体とコラボレーションして別のかるたを提供する可能性もありますか?
その可能性は十分にあります。取り掛かり中の案件が多く詳細はまだお伝えできませんが、シリーズ展開も考えて動いている状況です。今回の「ICTかるた」を単発の取り組みにせず、次のステップにつな げていこうと考えています。
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