2024年1月に発売されたシステムエンジニアのための日本酒『ソースコード』。ラベル内に書かれたコードを実際に打ち込むと、あるメッセージが浮かび上がると話題になっています。
エンジニアが思わず読み解きたくなるロジックが詰め込まれた『ソースコード』はどのように生まれたのでしょうか。本商品を手がけたKURAND株式会社で広報を担当している遠山 彩華さんに、斬新な商品が生まれるまでの過程やエンジニアにおすすめのお酒について伺いました。
ソースコード
日本酒/アルコール度数:15.5% 内容量: 720ml 製造元:渡會本店(山形県) 販売価格:1,990円(税込) 詳細URL:https://kurand.jp/products/sourcecode
KURAND株式会社
全国各地の酒造メーカーとの提携で自社ブランドのお酒を企画し、オンラインストアで販売。「商品開発」から「販売」まで一貫して行う今までにない新しいオンライン酒屋を運営している。全国200社以上の酒造メーカーと共に、今まで約500種類以上のお酒を開発。
500種以上のオリジナル商品が並ぶオンライン酒屋
「クランド」のサイトを拝見して、今まで見たことのないユニークなお酒がたくさんあって驚きました。
ありがとうございます。オンライン酒屋「クランド」では、500種を超えるクラフト酒を販売しており、どれもクランドだけで買えるオリジナル商品です。
「クラフト酒(しゅ)」というのはなんですか?
小規模生産でつくられた個性あふれる新しいお酒のジャンルを、「クラフト酒」と私たちは呼んでいます。小規模だからこそ、酒蔵さんとの一期一会の出会いがあり、こだわりが詰まった手仕事を届けられると考えています。
酒蔵さんと二人三脚で商品開発しているんですね。
はい、酒蔵出身の社員やお酒に関するプロフェッショナルが、日本全国の酒蔵さんと共に新しく美味しいお酒を開発しています。
商品開発で特に注力しているのはどんなことですか?
思わず手に取りたくなるパッケージデザインや記憶に残るネーミングです。「クランド」は20〜30代の若い世代に人気がありますが、瞬間的にバズるだけでは意味がありません。商品の味やストーリーも踏まえながら、どうしてそのパッケージなのか、なぜそのネーミングなのかを、チーム全員で考えるようにしています。
商品企画のスタートは、KURANDさんと酒蔵さんのどちらですか?
基本的には私たちKURANDから酒蔵へ企画提案をすることがほとんどです。中には酒蔵から「こんな美味しいお酒ができたんだけどどうですか?」とご提案いただくこともあります。200以上の酒蔵さんとお取引があるので、企画の進め方は本当にさまざまですね。
「クランド」のサイトで特に人気なのはどんな商品ですか?
毎回たくさんお問い合わせをいただくのは、アニメ、漫画、音楽、映画などとコラボレーションした「コラボ酒」です。今まで『進撃の巨人』『刀剣乱舞』『東京リベンジャーズ』『ブルーロック』『クレヨンしんちゃん』などの人気作品とのタイアップ商品を展開してきました。
アニメの世界観をお酒で味わえるのは斬新ですね。
その他にも、特にご好評いただいているのは「酒ガチャ」です。お酒をランダムに詰め合わせたセットで、届くまでどんなお酒がくるかわかりません。レアで高額なお酒が当たることもあり、自宅でドキドキ感を楽しめます。
自分の好みと全く違うお酒が届くこともあるんですか?
その点はご安心ください。好みや気分に合わせて、お酒の種類を選択することができます。また、過去にお届けしたお酒と同じものが届かないように、購入履歴をもとに新たなお酒を提案しています。
なるほど。「クランド」ではいろいろなお酒を扱っているので、新たな出会いでお酒の世界が広がりそうですね。
『ソースコード』でエンジニアの探究心をくすぐりたい
エンジニアの皆さんに人気の日本酒『ソースコード』ですが、どんなきっかけで開発したんですか?
アイデアの発端は社内のエンジニアからの声です。味わいはもちろんですが、デザインも楽しんでもらえる商品がないか考えた時に、SE(システムエンジニア)時代の経験を思い出したそうです。コードが書いてあるとついつい読んでしまいますし、謎が含まれているとワクワクしていた記憶があります。そこでラベルに謎を含んだ「飲めるソースコード」があれば、コンセプト的に商品が届く前からワクワクしていただけるのではないかと考え企画しました。
エンジニアが考えた、エンジニアのための日本酒ということですね。
たしかにそうですね(笑)。そこから商品名を社内で出し合い、一番シンプルで世界観が伝わりやすい『ソースコード』に決まりました。
日本酒はどんな基準で選ばれたのでしょうか?
正直なところ、味とのバランスはかなり難しかったですね。議論を重ねて行き着いたのは、日本酒の奥深い味に思いをめぐらせながら楽しんでいただくことが、エンジニアの探究心をくすぐることにつながるのではないかということ。甘み、渋み、酸味など味に広がりがあって、さまざまな楽しみ方ができる日本酒を選ばせていただきました。
エンジニアに共感していただけそうなコンセプトですね。酒蔵さんの反応はどうでしたか?
とても好意的な反応でしたね。『ソースコード』をつくっていただいたのは、山形県鶴岡市で約400年以上続く渡會(わたらい)本店さんですが、これまでもいくつも商品開発を行っていて「今回も面白そうだね」とうれしい声をいただきました。
リリース直前に想定外のバグが見つかる
斬新なパッケージはどのように生まれたんですか?
プログラミング言語を商品にデザインすること自体は、ファッションの世界で今までにもあったと思います。しかし、それを日本酒のパッケージに反映させるのは、クランドが初めてではないかと。エンジニアの皆さんが楽しめるように、ラベルにも遊び心を取り入れたいと考えました。
面白いアイデアですよね。ちなみにラベルのコードをJavaScriptにした理由は?
使用頻度の多い言語というのもありますが、記号で全てのコードを置き換えられるのでJavaScriptを選んでいます。
なるほど。ラベルのコードを実際に入力すると、どうなるんですか?
あるメッセージが浮かび上がります。実は「謎解き」の要素をラベルに入れるのは以前もやっていて、多くの方から反響をいただきました。「クランド」の5周年記念としてオリジナルボトルを作成し、そのラベルで謎解きに挑戦できるという企画です。導き出した答えを専用フォームに入れると、お酒が追加で当たるように設定していました。
思わずわくわくする企画ですね。
ちなみに『ソースコード』ではどんなメッセージが浮かび上がるんですか?
それはぜひエンジニアの皆さんに試していただければと(笑)。コードを実際に入力して、難解なロジックを解いていただければと思います。
ぜひやってみたいです。エンジニアの皆さんからの反響はいかがですか?
「ひと目見て飲みたくなる」「色んなアイデアが湧いて芸術的な気持ちに」などうれしいお声をたくさんいただいています。ただ、販売直前にはちょっとしたバグが見つかりまして…。
バグ!? Webサイトのシステムで起こったんですか?
いえ、浮かび上がるメッセージのスペルミスです(苦笑)。
こちらは修正されたんですか?
社内のエンジニアともすぐに話し合って、あえてバグを残すことを決めました。もう一段階楽しめるギミックを追加したほうが、単純に修正するよりも楽しんでいただけるのではないかと考えました。
仕掛けがさらにパワーアップしているということですね。何が出てくるのか、コードを入力するのが楽しみです!
創業400年の「完全発酵」で味にもこだわり抜く
『ソースコード』を実際に飲んでみたのですが、思っていた以上に深い味わいでいろんな飲み方を試してみたくなりました。お客様の声を見ても、味への評価がかなり高いですね。
・お味はすっきり後味辛口、だけれど香りが芳醇で日本酒の良さをたくさん感じられます。
・想像していたよりも、かなりスッキリしていてフルーティで美味しかったです。
・冷やしても美味しいですが、軽く燗をつけてあげるとより香りが立ち、飲み口はまろやかに。そして喉越しのキレも残ります。
・いろいろな食材にあう良い酒で大いに飲ませていただきました。
ありがとうございます。「渡會(わたらい)本店」さんが、地元の月山・朝日山系の山々から流れる清浄水と、山形県のオリジナル酒米「出羽の里」で丁寧に仕込んでいらっしゃいます。お米の旨みと雑味の少ない上品な味わいを感じられると思います。
冷酒から常温、ぬる燗まで幅広く楽しめるのも良いですね。
製法にもこだわっており、お酒を仕込む際に自然にゆだねて酵母が糖を分解しつくすことで発酵を止める「完全発酵」でつくっています。手間もかかりますし、酒蔵さんの技術が高いからこそ実現できる製法だと思います。
米の甘みと酸味のバランスが良く、どんな方でも楽しめる味だと感じました。エンジニアへのプレゼントにも良さそうです。
エンジニアにおすすめの『理系兄弟』
『ソースコード』の他にも、エンジニアにおすすめのお酒があれば教えてください。
ぜひおすすめしたいのは、つくり手のストーリーが感じられる『理系兄弟』という日本酒です。「クランド」でも人気のお酒で、商品名の通り理系の兄弟がつくっています。
もしかしてエンジニアですか?
いえ、薬剤師の兄と、遺伝子レベルで免疫を研究していた杜氏の弟です。日本一理系の兄弟蔵元といっても良いかもしれません。
理系の数式と日本酒づくりにどんな共通点があるのか気になります。
お二人が言うには、日本酒づくりの変数を徹底的に分析し、よりシンプルな数式に置き換えることで緻密な酒質設計を立てられるとのこと。5年間にわたってさまざまな組み合わせの仕込みを繰り返し、数値をデータ化。そこで導き出された酒質設計で「理系兄弟」を生み出しています。
計算され尽くした味がどんなものなのか、実際に飲んでみたいです。
辛口なんですけど香りがフルーティーなので、最後まで美味しく楽しめると思います。クランドには、理系だけではなく文系のためのお酒も。その名も『文系姉妹』という日本酒です。
こちらはつくり手が文系の姉妹なんですか?
はい、経済学部出身でコミュニケーションを得意とする姉の長谷川祐子さんと、情報系の学部出身で迅速かつ正確な作業を得意とする聡子さんがつくっています。心温まる日本酒を目指して二人がたどり着いたのは、「多くの方に飲みやすいと感じてもらえるお酒」です。
どんな味なのか、こちらも気になりますね。
お米の旨みと甘みを感じつつも、最後に訪れるキレの良さが魅力です。本当に飲みやすいので、日本酒ビギナーの方にもおすすめです。
ラベルと飲み方に遊び心満載の『シロクマ・ロック』
他にもエンジニアにおすすめのお酒があれば教えてください。
当社のエンジニアが強くおすすめしているお酒として、『シロクマ・ロック』という商品があります。『ソースコード』と同じくラベルの仕掛けにこだわった商品です。
シロクマのイラストがデザインされていますが、どんな仕掛けが?
明るいところで見るとかわいらしい印象ですが、暗いところに置くとシロクマたちがカッコよく変身します。
すごい、光ってますね!こちらはどんな仕組みなんですか?
水色のラベルが蓄光インクになっていて、暗闇で光るようになっています。明るいところに置いておくことで自然と光を蓄えるということですね。
真っ暗にするとさらにロックな印象ですね!
ロックなのは見た目だけじゃありません。日本酒では珍しい、氷を入れてロックで楽しむ純米大吟醸酒です。フルーティな香りと清涼な甘みをひんやり楽しめると思います。
飲み方もロックなんですね! 味わいは辛口なんですか?
ええ、爽やかでクリアな印象です。酒蔵さんは、江戸時代末期から続く日本泉酒造さんで、名水百選のひとつである長良川の水を地下100メートルから汲み上げて丁寧に仕込んでいます。昔ながらの伝統製法「木槽しぼり」を用いて手作業にこだわってつくっているのも特徴です。
本格派の味を楽しめるんですね。ロックな飲み方で、アウトドアにも良さそうです。
ヴィンテージを楽しめる梅酒『UMESHU THE AMBER』
日本酒以外でもおすすめのお酒はありますか?
「クランド」では梅酒もかなり人気がありまして。大体70種ほどのオリジナル商品を扱っています。
梅酒だけで70種類ですか!? 充実したラインナップですね。
その中でも特におすすめしたいのが、ヴィンテージ梅酒です。長年熟成させた味を楽しむ飲み方がウイスキーやワインでは定着していますが、梅酒の世界では今までありませんでした。私たちがつくり出した『UMESHU THE AMBER』は、ヴィンテージとして年代の個性を楽しむ梅酒ブランドです。
ラベルの高級感がすごいですね。どれくらい熟成された梅酒なんですか?
15年以上熟成した2007年ヴィンテージをはじめ、熟成期間や製造方法の異なる4種類の梅酒をアッサンブラージュしています。
アッサンブラージュ?
アッサンブラージュは、複数の異なるお酒をブレンドすることで、単体のお酒ではつくれない新たな味わいを生み出す手法です。『UMESHU THE AMBER』は年代や製造方法の異なる梅酒を掛け合わせて、ゆっくりと低温で熟成させています。こだわり抜いた素材同士が合わさることで、途方もなく芳醇な味わいを生み出せるのです。
実際に飲まれた方の感想でも、「ウイスキーのように濃厚な梅酒」という声が多いですね。
注いだ瞬間に広がる香りから、次のひと口へとつながる余韻まで、時を忘れて楽しめるハイクオリティな梅酒です。
『ソースコード』の第2弾はあるのか?
今後のクランドの運営や商品開発で、どんなことに注力していきたいですか?
クランドの一番の強みは、商品開発のスピード感だと思っています。まずは少量で販売してみてトライ&エラーを繰り返していく。その中で反響の大きかったものは、『理系兄弟』のようにシリーズ化していきます。いずれは海外のみなさんにも楽しんでいただけるようなブランドを育てていきたいですね。
『ソースコード』の現在の反響はいかがですか?
エンジニアの皆さまからの反響に驚いています。販売前は『ソースコード』がここまで注目されるとは、全く想定していませんでした。
反響が大きかったということは、第2弾も期待できそうですね。
まだ明言はできませんが、今後も『ソースコード』のようにいろいろな楽しみ方ができるお酒を開発していきます。クランドでしか出会えない、独創的なアイデアでつくられたお酒をぜひ楽しんでいただければと思います。
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