リモートワークなど働き方の変化に伴って、全国各地で増えているコワーキングスペース。いつもとは違う環境でリフレッシュできるため、エンジニア界隈でもフリーランスの方々を中心に利用が広がっています。
しかし、いざワークプレイスを探そうとすると、設備以外の情報がわかりにくいことも。新しい場所や人との出会いで刺激が欲しかったのに、結局アクセスの良さだけで選んで「家と変わらない」と後悔することも少なくありません。
そこで今回は、仕事場のサブスクサービス『AnyWhereパス』を提供している株式会社AnyWhereの代表・斉藤 晴久さんを直撃。エンジニアが気分転換できて、自分らしく働けるコワーキングスペースについて聞いてみました。
全国各地のコワーキングスペースなどのワークプレイスを利用できるサブスクリプションサービス。全国163拠点のワークプレイスで利用可能(2024年1月現在)。
コワーキングスペースが増えている本当の理由は?
コロナを経て、自宅やコワーキングプレイスなど働く場所が多様化しているような印象です。それに伴って、ワークプレイスへの考え方はどのように変わってきているのでしょうか?
コロナ前よりも、コミュニケーションに関する課題を抱えている方が多いように思います。リモートワークが広く浸透したことにより、従業員同士のコミュニケーションがコロナ前に比べると減少傾向にあるからです。その課題を解決するために、共創空間や交流空間としてコワーキングスペースの利用が一部増えているのかもしれません。
なるほど。私のまわりでコワーキングスペースの利用の仕方を見ていると、自宅のリモート勤務で行き詰まったときに、ある種の気分転換として利用するケースも多いように感じます。
コワーキングスペースに限らず、オフィスでも同様のニーズが高まっています。コミュニケーション促進や気分を変える目的で、従業員同士が自由に話せるコミュニティエリアが増えているように思います。
フリーアドレス制が広がっているのもコミュニケーション活性化の目的が大きいので、「人とのつながり」は現代社会における重要なテーマなのかもしれませんね。
私たちも単純な場所ではなく「人でつなげる」ことを目指して、「TeamPlace®」というワークプレイスプラットフォームを提供しています。本サービスを利用することで、ユーザーは全国に点在している魅力的なワークプレイス(場所)とそれに付随したイベント(コト)を見つけることができます。
「人でつなげる」というのは画期的ですね。今どれくらいのワークプレイスと連携されているんですか?
「TeamPlace®」では、全国750か所以上のワークプレイスと連携しています(2024年1月現在)。ユーザーは、自分の価値観やニーズに合った場所・コミュニティを全国から探すことができます。また、各地域のワークプレイスをスポットで利用できる『TeamPlaceエリアパス』、全国のワークプレイスをサブスクリプションで月10時間から利用できる『AnyWhereパス』なども提供しています。
全国のワークプレイスの特徴がひと目でわかるので、マッチングの失敗も少なくなりそうです。
ページ内では、スタッフ常駐の有無や機材設備などの情報はもちろんですが、運営者の強みや価値観についても掲載するようにしています。X(旧Twitter)に投稿されたリアルタイムの情報も確認できるので、自分に合ったコワーキングスペースを見つけやすいと思います。
自分らしく働ける場所が見つかる『TeamPlaceアワード2023』
TeamPlace®では、最も自分らしく働ける場所を決める『TeamPlaceアワード2023』が開催されていましたね。
ええ、TeamPlace®が大切にしている「人・こと・場所でつながる」をテーマにそれぞれ表彰させていただきました。より多くの人に自分らしく働ける場所を見つけてもらいたい、という思いで今回開催しています。住む場所を変えるのはなかなか難しいですが、新しいワークプレイスを見つけることで働く場所と付き合う人は変えられます。その結果、より自分らしく働ける環境を見つけられるのではないでしょうか。
それぞれの施設の運営者さんの思いも伝わってくる、とても素敵なアワードだと感じました。
ありがとうございます。今回エントリーしてくださったワークプレイスの運営者さんたちは、それぞれのワークプレイスや場所に対して強い思いがあり、私たちもそれぞれのエピソードに強く心を打たれました。できれば全てのワークプレイスを紹介したいのですが、各施設のコンセプトやエピソード、現在に至るまでの歩みをスタッフ一同で確認しながら、泣く泣く厳選しています。
「人」「場所」「こと」という部門に分かれているので、どんなコワーキングスペースが選ばれているのか楽しみです。
場所の魅力はもちろんなのですが、運営者さんの思いや開催しているイベントについても、この機会にぜひ知ってもらえればと思います。
「人でつながる」コワーキングスペース
「人でつながる部門」は、 どういった基準で選ばれたのでしょうか?
TeamPlace®の価値観として大切にしている「人」とのつながりが最も強いと感じるワークプレイスの賞になります。
『コワーキングスペースツナグ』(東京都足立区)
「人でつながる部門」は、地元に根ざした活動をされていてキッズスペースも併設されている『コワーキングスペースツナグ』が受賞しています。保育園も併設しており、ママにもパパにもやさしい「子育てと仕事を両立できる」ワークスペースになっています。
お子さんのいる方が安心して働ける場所ですね。
また、行政書士やデザイナーが常駐しているので、フリーランスの方や開業・副業を検討している人にとっては助かる場面も多いのではないでしょうか。名刺やHPデザインなどで困ったときに気軽に相談できます。
フリーランスのエンジニアにとってもやさしい施設ですね。
『コワーキングスペースツナグ』を運営されている渡辺さんからは、次のような受賞コメントをいただいています。
コロナ前に、育児奮闘中のイチ母親が「人と仕事がつながる場所を作る」「子育ても仕事も諦めない社会の実現」という大きな目標を掲げてオープンした施設です。コロナという予期せぬ敵を前に人々が集えない時期が続きましたが、やはり人間はつながっている方が楽しい!と再認識できたところです。これからは新しい事業(カフェ)にも挑戦し、オンラインという武器も適度に使いながら、この空間をそれぞれうまく利用してもらえるようにがんばります。
「場所でつながる」コワーキングスペース
「場所でつながる部門」は、どのような賞なのでしょうか?
地域の住民や地域経済など「場所」とのつながりが最も強いと感じるワークプレイスへの賞です。今年は2つのワークプレイスが受賞しています。
『enun | 縁雲』(島根県松江市)
「場所でつながる部門」で受賞した島根県松江市『enun | 縁雲』は、ホテルと一体型になったコワーキングスペースです。温泉など、その土地ならではの楽しみ方をできたり、日本でも有数の大きな湖・宍道湖(しんじこ)を一望できたりするなど、地方の魅力を思う存分楽しめます。
『enun | 縁雲』という施設の名前も、雰囲気があって素敵ですね。
「縁がつながって雲のように人が自由に集まり、あたらしいことに出会える場所」という意味が込められているそうです。私も2023年の1周年記念イベントに登壇・参加したのですが、多様な地域の人がつながって、新たなコラボレーションやビジネスが生まれていることを実感しました。
「人」とのつながりも感じられそうな場所ですね。
『enun | 縁雲』のある島根県松江市は、プログラミング言語「Ruby」発祥の地としても有名です。施設を運営されている方々も、IT関連の知識が豊富なので、エンジニアの皆さんもコミュニケーションが取りやすいのではないでしょうか。ちなみに、本施設は2022年に全国で初めて「安心安全テレワーク施設認証プログラム(※1)」のプレミアムグレードに適合しており、信頼してテレワーク可能な環境になっています。
なるほど、エンジニアも安心して作業できそうですね。
『enun | 縁雲』を運営されている皆さんからは、次のような受賞コメントをいただいています。
『enun | 縁雲』のコンセプトは「つながる、ひろがる、はじまる。」です。地域やワーケーション、さらにはビジネス・旅行で訪れた方、デジタルノマドの方などが出会うことで『つながる』、新たなネットワークや知見が『ひろがる』、チャレンジが『はじまる』場所になっています。皆さまとのご縁を大切にしながら、ユニークなコミュニティマネージャはじめ関係者一同でお迎えしたいと思います。
『小高パイオニアヴィレッジ』(福島県南相馬市)
地元だけでなく都市部も巻き込んだコミュニティを作っている『小高パイオニアヴィレッジ』も、「場所でつながる部門」で受賞されています。
福島県の沿岸部は東日本大震災で被災していることもあり、苦労も多かったのではないかと想像します。
そうですね、『小高パイオニアヴィレッジ』は原子力災害で無人になった町に新たな営みを生み出す拠点として、2019年に誕生したコワーキングスペースだと聞いています。自分たちが望む未来をかたちにしていこうとする姿勢に、私たちも感銘を受けました。「未来は拓ける」という本施設のコンセプトに共感した個性豊かな“チャレンジャー”が、全国各地から訪れるそうです。
たしかに、施設自体にストーリーがあり前向きなメッセージを感じられるので、私もぜひ行ってみたいと思いました。
ワークスペースも個性的で、テーブル席、スタンド席、ひな壇、さらにはゲストハウスで宿泊もできるなど、既成概念にとらわれない使い方ができます。『小高パイオニアヴィレッジ』を運営されている野口さんからは、次のような受賞コメントをいただいています。
福島県の沿岸部はかつて原子力災害により苦境に立たされましたが、今では無限の可能性を秘めたフロンティアとして、多くの人々が集まるエリアとなっています。小高パイオニアヴィレッジを含む浜通りのコワーキングスペースは、地域の活力の源として機能しています。一緒に活動できることを心から願っています!
「ことでつながる」コワーキングスペース
「ことでつながる部門」は、どのような基準で選んだ賞なのでしょうか?
「ことでつながる部門」は、イベントなどの催し「こと」でのつながりが最も強いと感じるワークプレイスに贈られる賞です。
『ADLIV』(徳島県美馬市)
印刷工場をリノベーションして作られた『ADLIV』(アドリブ)が、「ことでつながる部門」で受賞されています。月に一度の「アドリブ大学」という地域の方々や移住者が集まるコミュニティー大学を運営し、人とのつながりを創出し続けている魅力的な施設です。
「アドリブ大学」はどんなイベントなんですか?
地域×人×スキルの連携で新たなネットワークを形成し、人とのつながりを深めるUniversityだと聞いています。スピーカーは、地域と関連のある大学講師や専門家、さらにはITに造形の深い事業家、アーティストまでさまざま。決して一方的な情報提供ではなく、参加した“生徒”は自分のスキルをシェアし、地域に賑わいをもたらす活動をしながら、ヒト・モノ・コトでつながっていきます。
地域に根ざしたイベントを開催しているんですね。しかも、『ADLIV』は「The TeamPlace2023(※2)」をW受賞されているとか。
はい、地域に対して継続的に関わる方を増やすために、「仕事」「遊び」「出会い」「助け合い」をテーマに、多くのイベントを開催しているのが主な選考理由です。今回のアワードでも大切にしている「人・こと・場所」で、新たなつながりを創出しているのが素晴らしいと思いました。『ADLIV』を運営されている中川さんからは、次のような受賞コメントをいただいています。
ADLIVは、地域と「人」が交わる関係案内拠点として立ち上がり、5年が経ちます。印刷工場に泊まりながら、スキルをSHAREして自分らしく自由に楽しむ、暮らしながら働き新しいライフスタイルを実現できるよう努力していきます。ローカルでの関係人口や地域内交流人口を増やしていけるように、TeamPlace®さんのコンテンツと一緒に盛り上げていきたいと思っています。
『コワーキングスペース -GRANDSLAM-』(大阪府大阪市)
受賞された施設以外にも、全国には魅力的なコワーキングプレイスがたくさんあります。例えば、近畿地方でいうと大阪府大阪市にある『コワーキングスペース -GRANDSLAM-』が「ことでつながる」施設として特徴的です。
どんなコンセプトを持った施設なんですか?
単なる“作業場”を提供するのではなく、ビジネスを成長させるヒト・コト・情報が集まり、それぞれが有機的につながって新たな価値を生んでいけるプラットフォームを目指しています。イベント・会議室スペースもあり、ユーザーが積極的にイベントなどを開催。コミュニティマネージャーが人とのつながりをサポートしているのも特徴的です。
どんなイベントを開催しているんですか?
ビジネススキルを磨くセミナーを定期的に開催しているのはもちろん、ビジネス研修やワークショップ、さらには定期的に交流会も行い、新たな出会いの場を創出しています。成長・共創・つながりを生み出す、コワーキング・イベントスペースとして注目されています。
コワーキングスペースは今後どう変わるのか
これからのワークスペースは、どんな風に変わっていくと思いますか?
今後も、リモートワークを駆使したハイブリッドな働き方が主流になっていくと思います。そのときに、コワーキングスペースへのニーズも、少しずつ変化していくかもしれません。例えば、チームで新たなプロジェクトやサービスに取り組むときに、アイデアを活性化させるコミュニケーションの場として活用されることも考えられます。
そのなかで、TeamPlace®はどのようなことに取り組んでいくのでしょうか?
人のつながりや新たなコラボレーションを生み出すきっかけを提供していくのは変わりません。それに加えて、今後は施設の運営者同士のつながりも創出していきたいと考えています。
横のつながりも構築していくということですね。
はい、それと同時にユーザーとの日々のコミュニケーションがラクになるツール機能やサービスを実装していきたいなと。ユーザー体験の向上も視野に入れながら、今後もさらなるサービス改善に取り組んでいきます。
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