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未経験から4か月でエンジニアに!?「LINEヤフーテックアカデミー」受講者に聞いてみた
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未経験から4か月でエンジニアに!?「LINEヤフーテックアカデミー」受講者に聞いてみた

岸 裕介
2024.01.11
この記事でわかること
リスキリングのスクールを選ぶ際に重要視したいこと
「何から始めればいいかわからない」という人にもおすすめのスクール
次世代のリスキリングはメタバースの領域へも展開している

業務の自動化やAIの急速な進化で、私たちの仕事の一部が代替されつつあります。従来の働き方では社会のシステムから取り残される可能性もあるため、新たなスキルを習得しようとリスキリングへの興味関心が高まっています。

各社のリスキリングにおいて特に注目されているのが、2023年10月にLINEとヤフーが合併して誕生したLINEヤフーが運営している「LINEヤフーテックアカデミー」です。未経験から約4か月(16週間)でITエンジニアになれるというのは本当なのか。実際にコースを受講しエンジニアへの転職を叶えた田中亮輔さんと、LINEヤフーテックアカデミーで事業推進責任者を務める佐野ひかりさんにお話を伺いました。

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LINEヤフーテックアカデミーとは?

岸 裕介

LINEヤフーテックアカデミーは、どのような目的で始まったのでしょうか?

佐野さん

IT人材不足の課題解決が大きな目的です。経済産業省の調査でも、2030年には最大で79万人のIT人材が不足する可能性がある(※1)とされており、IT人材の育成が急務となっています。

佐野さん

それらの課題を解決するため、テックアカデミーを運営するキラメックス社と協業し、リスキリングプログラム「Yahoo!テックアカデミー」をスタートしました。現在は、LINE社との合併で「LINEヤフーテックアカデミー」に名称を変更しています。

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岸 裕介

ヤフー社がこういったeラーニング事業に取り組むのは、初めてのことですか?

佐野さん

お子様向けのプログラミング学習コンテンツの提供や、外部向けのセミナー開催・講師派遣などは今までも積極的に行ってきましたが、社内のノウハウをリスキリングというかたちで社外に還元するのは初めての試みです。

岸 裕介

キラメックス社との協業で、どのようなシナジーを発揮しているのでしょうか?

佐野さん

まず私たちの強みは、ポータルサイトやオンラインサービスの提供で積み重ねてきた長年の経験と実績です。世間で必要とされている技術とは何か、しっかり見据えた上で提供できます。

佐野さん

一方、キラメックス社の強みはこれまで培われてきた学習支援力や充実した講師陣、受講生の満足度を上げるノウハウです。事業会社ならではのノウハウが詰まったカリキュラムを、学習支援力と掛け合わせる。これがLINEヤフーテックアカデミーの一番の強みだと考えています。

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LINEヤフーテックアカデミーで事業推進責任者を務める佐野ひかりさん
岸 裕介

なるほど。受講生の年代や性別など、何か特徴はありますか?

佐野さん

初回の実績ですと、20代が46%、30代が22%、40代が24%、あとはその他で、20代が半数弱となりました。

岸 裕介

こちらは予想通りでしたか?

佐野さん

20代の方に向けてカリキュラムを整えていたわけでもなかったのですが、転職支援サービスなども組み込んだスクールなので、比較的若い方が多くなるだろう、とある程度の予想はしていました。

岸 裕介

申込者の受講目的についてはいかがですか?

佐野さん

意外なことに6割以上が転職以外の目的です。転職目的で受講される方が過半数だと思っていたところ、実際は40%ほどだったので驚きましたね。

岸 裕介

それは意外な結果ですね。転職以外の目的で多いのは?

佐野さん

ご自身のスキルアップを目的にされている方が、かなり多かったです。また、社内のプロジェクトで活かせるスキルを得たい、という方も転職目的とほぼ同じ割合でいらっしゃいました。他には、副業目的や、明確に今作りたいものがありプログラミングの知識を介してアウトプットしたい方、さらには起業したいという方もいらっしゃいます。

岸 裕介

さまざまな目的の受講生がいるんですね。初回のYahoo!テックアカデミー(現:LINEヤフーテックアカデミー)は、申し込み開始3日で100名を超えたそうですね。

佐野さん

はい、うれしいかぎりです。前回は初回だったので100名の上限を設けていましたが、今回は予想を超える応募をいただいたため、大幅に増枠させていただきました。できるだけ多くの方をお迎えできるように体制を強化し、これまで設けていた応募条件や応募期限を撤廃しています。

※1 経済産業省 IT人材育成の状況等について

未経験でもエンジニア職への転身が叶うカリキュラム

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Yahoo!テックアカデミー(現:LINEヤフーテックアカデミー)を受講した田中亮輔さん
岸 裕介

田中さんは実際にYahoo!テックアカデミー(現:LINEヤフーテックアカデミー)を受講し、エンジニアとしての転職も叶ったと伺いました。受講のきっかけからお伺いできますか。

田中さん

前職でホテルに勤めていて、やりがいもあり、環境もよく、いい職場ではあったのですが、コロナ禍で将来を考えるようになりました。そんな時にYahoo!テックアカデミーを見つけ、応募しています。

岸 裕介

リスキリングのスクールが数多くある中で、Yahoo!テックアカデミーを選んだ理由は何だったのでしょうか。

田中さん

やはりヤフーというネームバリューと信頼感ですね。ミーハーかもしれませんが、「誰もが知っているヤフーであれば間違いないだろう」という気持ちは確かにありました(笑)。また、プログラミング言語をJavaに特化し、Javaを使って一つのアプリを作り上げることも魅力に感じました。

岸 裕介

プログラミング言語をJavaに特化して提供している理由についてもぜひ伺いたいです。

佐野さん

2つありまして、まず一つはLINEヤフーで使用している言語のひとつがJavaであること。もう一つが、プログラム未経験の方がWeb業界のエンジニアとして働くと考えたとき、いろんな会社で需要が高い言語を習得しているほうがいいだろう、ということです。

岸 裕介

Javaのみのカリキュラムになっているのですか?

佐野さん

はい、いろんな言語を少しずつ学ぶのではなくてJavaをプログラミング言語として扱い、Java言語の環境化で使用できるSpring Bootをフレームワークとして入れています。

岸 裕介

なるほど。現場での使い方がちゃんと学べると。

佐野さん

自分でアプリケーションを開発するための4ヶ月になっているので、最初の要件定義から始めて、バックエンドの開発、フロント部分ではどのようなビューでアプリを作るかを含め、自分で書いて動かすところまでやれる。一つのWebアプリケーション開発をご自身で完結いただけるという内容になっています。

岸 裕介

田中さんが実際に学ぶ中で、特に勉強になった部分を教えていただけますか。

田中さん

佐野さんもおっしゃった通り、Javaを使ってアプリを完成まで導ける経験ができたのは自分にとってすごく良かったです。また、インフラエンジニアを希望していたのもあってサーバー系のカリキュラムの中で「Linux」にひと通り触れられたことや、ものづくりにおいてまず何を知っておくべきか、そして知り得た情報をどう使っていくべきかなど大枠の部分が幅広く学べたことも良かったです。

佐野さん

うれしいお声をありがとうございます。現場で使える技術をわかりやすく伝えることには、とてもこだわっています。カリキュラムの構成はもちろん、復習のしやすさや、チームで動くことを想定した上でのプログラムの書き方など、実際に開発現場で働くことを想定した上でカリキュラムを設計しています。

「調べる力」も身につけられる

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岸 裕介

LINEヤフーならではのカリキュラムの設計を教えていただきたいです。

佐野さん

LINEヤフーに所属しているエンジニアも、常に調べながらプログラミングを進めているので、シニアエンジニアになったとしてもわからないことは決してなくなりません。そのため、知識をカリキュラムで全て説明するのではなく、自分で調べて解決へ導く部分をあえて用意するようにしています。

岸 裕介

つまり、テキストを丸暗記してもあまり意味がないということでしょうか。

佐野さん

おっしゃる通りで、私たちは「Why(なぜ)」にとてもこだわって作っていっています。というのも、「How(どのように)」から「What(何を)」は後からでも身につきますし、日々進化する業界なのでたとえ学んだとしても変わってしまう部分もあるからです。そのため、まずは原理原則を理解して、あとは都度自分で調べたり、1回やってみてメンター(講師)からフィードバックをもらったりすることで、自然とスキルが高まっていきます。

岸 裕介

田中さんは実際に学んでみて、調べて進めていくことについてどう感じられましたか?

田中さん

プログラミングでモノが動かせるようになるところまでは、ある程度の時間はかかるのですが、わからないことがあればコツコツ調べて学んでいくしか道は開けないのではないかと。前半の約2ヶ月でしっかり基礎を学び、後半2ヶ月の実務部分で蓄積した知識を存分に活かすことができたので達成感がありました。

岸 裕介

4ヶ月間の中で難しかったことや、「ここを乗り越えたから成長できた」と感じていることがあれば教えていただきたいです。

田中さん

最初のほうに出てくるオブジェクト指向の部分はなかなか理解できませんでしたが、自分で調べながらメンターにも聞いて地道に進めていく中で、「これってこういうことなのか」と気づく瞬間があり、そこから一気に理解することができました。自分で正解を見つけ出す喜びも感じられて、とても貴重な経験になったと思います。

メンターという存在のありがたさ

岸 裕介

手軽にITが学べる無料のプログラミング学習ツールもあったりする中で、Yahoo!テックアカデミー(現:LINEヤフーテックアカデミー)を選んで良かったと感じていることがあれば教えていただきたいです。

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田中さん

受講生一人ひとりにメンターが付いてくれることですね。週に2度、メンタリングという面談の時間が設けられていてリアルタイムで会話できますし、メンタリング外でも15時〜23時の間ならチャット機能を使って別のメンターに対応してもらえます。また、一人で続けているとモチベーション維持も難しいと思うのですが、メンターとの会話の中で「次のメンタリングまでにはここまで終わらせよう」といった目標も立てられ、学習意欲の面でもすごく助かりました。

岸 裕介

メンタリングでの具体的なエピソードなどがあればぜひ教えてください。

田中さん

所属しているメンターの皆さんは、実際に現場でエンジニアとして働いている方々なので、現場で使っている知識が豊富なんですね。例えば、カリキュラムの中で躓く部分について相談した際に「これは現場ではあまり使わないので知識だけ押さえておきましょう」というアドバイスや、「この部分はよく使うからしっかり」という重要ポイントも教えていただきました。学習にメリハリがついて、とても進めやすかったです。

岸 裕介

メンタリングはどんな風に進めていますか?

佐野さん

オンラインで画面共有しながら、「今こんな状況です」などと一対一でお話しいただけます。また、自分のペースで学習を進めるにあたって「クイックに完結したい」という要望もありますので、先ほど田中さんもおっしゃったように15時から23時まで、テキストベースでのチャットのサポート体制もオープンしています。現役のエンジニアの方々によるアドバイスなので、回答の質が低いなどということは全くありません。

リスキリングプログラムの選び方って?

岸 裕介

リスキリング全体についてもお伺いしたいのですが、エンジニアを目指す際にはどのような基準でスクールを選ぶと良いでしょうか。

佐野さん

どのスクールにも言えると思うのですが、手当たり次第にやってみるのではなくて、ひとつ決めたものをやりきることが大事かと思います。私たちはJavaを軸にしたWebアプリケーション開発のカリキュラムを提供していますが、プログラミング言語だけでもC言語やPythonもあるので、中には幅広くやってみようと思われるかもしれません。ですが、説明文を読んで興味が湧いたり、明確に作りたいものがあったりすれば、まずはそれを完結させてみる。作り切った経験があれば、全体の仕組みを理解することができ、次にも発展しやすくなります。

岸 裕介

リスキリング経験者の田中さんはどう思われますか?

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田中さん

私がカリキュラムを最後までやり遂げて転職も叶えられたのは、メンターさんがいたからこそです。自分ひとりだと解決できないことや、「もういいや」と諦めてしまいそうなときも、メンタリングの時間で相談すれば、とても適切なアドバイスをいただくことができました。目標設定も明確になるので、スクールを選別するときはサポート体制が整っているかどうかを重視するのが良いのかなと思いますね。

岸 裕介

メンターは皆さんレベルが高いのですか?

佐野さん

はい、現役のエンジニアですので適切なアドバイスを提供できます。それと同時に、受講者の皆さんに性格診断のようなテストを受けていただいて性格の傾向を把握し、その方に合ったメンターをアサインするようにもしています。

メタバース空間を活用した「次世代のリスキリング」

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LINEヤフーテックアカデミーが提供しているメタバース空間の全景
岸 裕介

LINEヤフーテックアカデミーでは、リスキリングにメタバース空間も活用しているそうですね。導入の背景をぜひお伺いしたいです。

佐野さん

連携しているキラメックス社の独自コースの中でメタバースの実証実験をしており、導入することで試験の合格割合が高くなるという結果が出ています。それを踏まえて、LINEヤフーテックアカデミーの受講生にとってもプラスになるだろうと考えて導入に至りました。

岸 裕介

メタバース空間で、オンラインのカリキュラムでも受講生同士の交流がより活発になりそうですね。

佐野さん

おっしゃる通りで、本格導入の前にトライアル的に懇親会という形でメタバースを導入したところ、参加した受講生の満足度は非常に高かったですね。自分のアバターが登場することでリラックスして参加できたり、他の受講生との会話も気兼ねなく楽しめたりするようです。「自分だけが困っていたんじゃない」と気がラクになる方も多く、交流がより活発化しました。

岸 裕介

田中さんが受講していたときには、メタバース空間が実装されていませんでしたが、今の話を聞いて率直にどのような感想を抱かれますか?

田中さん

同じ環境でがんばっている仲間の存在が近くに感じられるメタバース空間は、とても励みになると思います。メタバース空間に入ることで勉強のスイッチが入る、そんな方もいるのではないでしょうか。

岸 裕介

現在は自習室、メンター相談室、イベントブースにメタバースを実装されているとのことですが、それぞれどのように活用されているのでしょう。まずは自習室からお伺いできればと思うのですが。

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佐野さん

メタバース空間にある自習室に受講者が集い、それぞれ勉強しています。自習は一人でもできますが、いろんな人が自習室に集うので「仲間がこれだけいて、みんな頑張っている」と実感できます。掲示板機能も実装しているので、誰かが「今日ここまで進めます」と目標設定すれば、別の方がそれを確認してモチベーション維持にもつながります。

岸 裕介

次にメンター相談室ですが、従来のメンタリングと何が違うんですか?

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佐野さん

メンタリングは決まった時間に相談できるのに対して、メンター相談室は常時オープンしています。メンターさんに直で相談したい時にメンター相談室を活用いただくことで、文字ベースよりも細かな質問が直でできるというメリットがあります。メンター相談室はいわば職員室のようなイメージで、メンタリングと併用しつつ「駆け込み寺」的に使っていただくのがいいのかなと思います。

岸 裕介

なるほど。最後にイベントブースですが、この空間を活用して講義をするイメージですか?

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佐野さん

はい。メインコンテンツとして予定しているのが、LINEヤフーの現役エンジニアが2週間に1回登壇して開くトークイベントです。

岸 裕介

オンラインのウェビナーなどとの違いは?

佐野さん

通常のウェビナーの場合、講師だけが見えているので質問がしにくかったり、当事者感が薄まったりすることがあります。しかし、メタバース空間なら講師のもとに受講生が集まっている状態が可視化されるので、リアルなセミナーのような一体感があると考えています。話す内容についてのリアクションもできますし、質問する際にも誰がしているのかが明確になります。

女性のキャリア形成に寄り添ったコースも開設

岸 裕介

今後の展開についてもお聞かせいただけますでしょうか。

佐野さん

私たちは日本のIT人材不足の解消を目指す中で、未経験からエンジニアへの転身ができ、かつWebアプリケーションも作れるエンジニアになれるようにサポートをしております。今後もこの分野に力を入れつつ、Webアプリケーション以外の領域や未経験に特化しないプログラムなど、領域をどんどん拡大はしていきたいと考えています。

岸 裕介

女性のキャリア形成に寄り添ったコースも開設したそうですね。

佐野さん

はい、2023年12月に「Webアプリケーション開発コース for women」を開設しました。ライフステージの変化によって影響を受けやすい女性のキャリアについて、受講生同士で対話する「オンラインキャリアセッション」や、メタバース空間における女性向けフロアの提供も始まっています。

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岸 裕介

女性悩みを打ち明けられる環境もあるということですね。全体のプログラムをブラッシュアップするなど、リスキリングの質もさらに高まっていくのでしょうか。

佐野さん

私たちが得意としている学習体験の設計とともに、Webサービスを世の中に提供しているLINEヤフーならではの知見を反映できれば、より最適なプログラムを提供できるのではないかと考えています。キラメックス社の知見と掛け合わせつつ、現場で即戦力となるエンジニアを育てるコンテンツが作れたらいいなと思っています。

岸 裕介

コンテンツがどこまで進化していくのか楽しみです。

佐野さん

AIなどの分野が発展していくにつれ、今後ますますリスキリングに注目が集まることが予想されます。そんな中で何を学ぶべきか、そしてそれをどこで学ぶべきかで、スキルに大きな差が生まれることでしょう。質の高いリスキリングを提供し続けられるように、私たちも努めてまいります。

ライター

岸 裕介
大学卒業後、構成作家・フリーランスライターとして、幅広いメディア媒体に携わる。現在は採用関連のインタビュー記事や新卒採用パンフレットの制作に注力しながら、SaaS企業のマーケティングにも携わっている。いま一番関心があるのは、キャンプ場でワーケーションできるのかどうか。
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