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AIによりITエンジニアの仕事は本当に奪われるのか?エンジニア調査結果から見るAI活用術
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AIによりITエンジニアの仕事は本当に奪われるのか?エンジニア調査結果から見るAI活用術

岸 裕介
2024.01.09
この記事でわかること
エンジニア業務の中で、Generative AIはどのように活用できるのか
Generative AI活用における課題と、活用の際に気をつけるべきこと
AIによって代替される可能性のある仕事とは?

ChatGPT、GitHub Copilotなどの生成AIが取り沙汰されている昨今、ITエンジニアは実際にどの程度それらを活用しているのでしょうか。

フリーランスのITエンジニアやコンサルタントの人材紹介・プロジェクト案件紹介事業を行うITLOOP株式会社がITエンジニア173名に実施した調査によると、Generative AIを業務に活用していると答えたITエンジニアは4割という結果に。ソースコードをAIに記述してもらう、文章作成に活用するなど、エンジニアの業務効率化に寄与する兆しが見えてきています。

調査の詳細と今後のAI活用の可能性を探るべく、調査を実施したINTLOOP株式会社・バイスプレジデント本部長の廣瀬 明さんにお話を伺いました。

調査概要

調査期間:2023年5月22 日~2023年6月2日 調査機関:INTLOOP株式会社 調査方法:INTLOOPが運営する「TECH STOCK」の登録者を対象としたインター ネット調査 対象者:居住地 全国 年代:20~60代  性別:男女不問 回収サンプル数:173

今回のアンケート設計にもChatGPTを活用

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岸 裕介

2023年6月に実施された、ITエンジニアのAI活用状況に関するアンケート調査について詳しく教えてください。

廣瀬さん

はい、今回のアンケートの目的は、ChatGPTがどれだけエンジニアに使われているのかを調べることですが、実はアンケートの設計の素案をChatGPTが作っています。ChatGPTに必要な設問と選択肢を問いかけたところ、思っていたよりも精度の高い答えが返ってきたため、それをベースにして設計を進めていきました。

岸 裕介

ChatGPTの利活用のアンケートをChatGPTが設計していたのですね。それは面白いです。

廣瀬さん

もちろんその後に弊社のエンジニアに聞きながらブラッシュアップを行なっているのですが、ChatGPTがアンケート作成にも大いに役立っていますね。

岸 裕介

貴社の事業もChatGPTなどAIとの関連が深いのでしょうか?

廣瀬さん

そうですね、フリーランスのコンサルタントに案件を紹介する「High Performer Consultant(ハイパフォーマーコンサルタント)」や、フリーランスのエンジニア向けサービス「TECH STOCK」などを展開しており、一定数ですがAI案件の取り扱いがあります。

岸 裕介

DX領域はどのような業界が多いのでしょうか?

廣瀬さん

業界は製造業、金融業、小売業など多岐にわたり、基幹システムに課題のある中堅企業・老舗企業のシステム刷新、いわゆる2025年の崖にヒットする案件や業務システムの改善に携わることが多いですね。

岸 裕介

なるほど。AI関連の案件は増えてきていますか?

廣瀬さん

まだ案件数としては多くないですが、生成AIを活用した新規サービス開発・顧客検証に関するコンサルタント人材の要望は出てきているようです。

ソースコードの記述や文章作成にAIを活用

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岸 裕介

実際の調査結果について詳しく教えてください。

廣瀬さん

「現在の業務でChatGPTやGitHub CopilotなどのGenerative AIを利用していますか」という質問に対しては、4割の人が「利用している」と回答しました。弊社のエンジニアに実情をヒアリングしてみたところ、プログラマー・コンサル・アーキテクトなどのレイヤーの中で、プログラマーの利用が多いのではないかという見解でした。

岸 裕介

エンジニアはどのような業務にAIを活用しているのでしょうか?

廣瀬さん

サンプルコードを生成AIに作成してもらうなど、ソースコードの記述における使用用途が多いことが考えられます。ただ業務に本格的に活用しているエンジニアはまだ少なく、どんな問いかけをしたらどんな結果が出てくるのか、趣味程度に試しに使ってみている方がまだ多いのではないでしょうか。

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岸 裕介

調査結果でも、1番多いのが「ソースコードの記述」ですね。ドキュメンテーションの作成というのはどのような用途でしょうか?

廣瀬さん

メールの文章やチャットの文章が多いようです。エンジニアは文章力に課題を感じる方も多いので、生成AIでベースとなる文章を作成してもらうと考える時間が短縮できるのです。文章作成の業務を効率化することで、自分の得意なエンジニア領域の業務により集中できるようになったと聞いています。始末書や謝罪文の作成に活用することもあるようです。(笑)

廣瀬さん

弊社では営業部などのビジネスサイドでもメールの文章のたたきをChatGPTに作ってもらうというのを試験的に導入しており、エンジニアも同様の流れがあるのかと思います。

岸 裕介

回答にある、「ソースコードレビューのコメント作成」とはどのような内容でしょうか?

廣瀬さん

部下が作成したソースコードに誤りがないかをChatGPTにまずは問いかけ、レビューのコメントのたたきとしているようです。

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岸 裕介

設計・開発以外では、情報収集や企画・アイデア出しが多いですね。調査の設計にもAIを活用したとのことですが、企画・アイデア出しについてはどう感じられていますか?ChatGPTには嘘の情報も含まれるという話題もありますが。

廣瀬さん

大言語モデルはまだベースが出来上がっているだけで、業界やサービス特有のシチュエーションに合わせたアイデアを回答するのは難しいと思います。企画の本当のたたきの部分、一般論の回答を求めることはできますが、特定の個別条件にカスタマイズしようとしても、まだ返ってこないのが現状です。

岸 裕介

議事録作成での活用が意外に少ないのですね。

廣瀬さん

我々も実際に活用してみたのですが、誤字脱字が多いことや、会議の要約やネクストアクションの提示の精度が低いため、議事録として使えるものになるということが少ない印象でした。

精度の高いソースコードはPython?

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岸 裕介

Generative AIの機能について、「満足」「やや満足」の方が8割なのですね。

廣瀬さん

サンプルコードの作成など、特定の業務においてはある程度活用できるため、「満足」という結果に繋がっているのではと推測します。人が介入して編集する必要はもちろんありますが、何もないよりは良いという感覚でしょう。また、エンジニアからはソースコードの中でもPythonが得意で、C言語はそこまで得意ではないというコメントがありました。

岸 裕介

言語によって得意分野があるのですね。

廣瀬さん

言語の得意不得意について詳細はまだ解明されていませんが、エンジニアが実際にさまざまな言語で試してみた結果、言語によって精度の濃淡はあるようです。

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岸 裕介

Generative AIの使用に関する課題は、やはり信頼性・精度の問題ですね。「必要な情報を得るのに時間がかかる」という回答は意外だったのですが、どのような背景があるのでしょうか?

廣瀬さん

求める回答を得るまでのプロンプトの模索に時間がかかるという観点ですね。あくまで検索エンジンの代替として捉えているエンジニアも多く、検索しながらGPTに投げ、また検索し、併用しながら使用していることが多いです。

生成AIの進化でエンジニアの仕事はなくなるのか

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岸 裕介

Generative AIによりITエンジニアの業務がなくなる不安を抱える人も多いのではないかと思いますが、調査結果では意外にも「不安はない」という回答が多いようですね。

廣瀬さん

これは弊社に登録いただいているエンジニアが、スキルへの自負があるというのが起因していると捉えています。実はコンサルタントにも同様のアンケートを実施しているのですが、コンサルタントの方は「不安はない」と回答した方が8割弱でした。

廣瀬さん

ChatGPTが得意なソースコードと同程度のソースコードしか書けない、自分の仕事を代替される実感のあるエンジニアは不安に思うのでしょうが、上流工程が得意な人材はAIに代替される不安はないと考えているのかと思います。

岸 裕介

なるほど。

廣瀬さん

世の中にはChat GPTが書いたソースコードを丸々使うようなエンジニアもいらっしゃると聞いていますが、それはいわゆる“コピペ問題”と同様ではないかと感じています。自分で生成することなく、他者のソースコードに依存しているようなエンジニアは不安に思うのではないでしょうか。

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岸 裕介

Generative AIによって新たに生まれるエンジニア業務は何かという質問に対しては、「ソースコードの自動生成」という回答が多いですね。

廣瀬さん

AIが100%自動で生成することは難しく、最終的には人間がチェックする必要があります。その観点から言うと、ローコードやノーコードの領域で検証した方が再現性は高いかもしれません。テストケースの自動化に関しても同様で、全てをAIが自動化するのではなく、一度AIがテストした後に人間がチェックする必要があると認識しています。

岸 裕介

アンケート項目の「Generative AI学習のためのデータセット作成」というのはどのような内容でしょうか?

廣瀬さん

先述した現在AIが苦手としている特定の領域への回答にも適応できるようにするために、Generative AIに学習させるデータセットを作成する業務です。闇雲にデータを与えるのではなく、最適な形で与えないと精度は上がらないので、それを考える業務が発生するということです。

岸 裕介

システムアーキテクチャの設計・システム企画については、多くの選択肢の中で設計する必要があると思いますが、AIは素案を作るというイメージでしょうか?

廣瀬さん

そうですね。あくまでも素案の前のたたきのような感覚で、人間がブラッシュアップする必要はあります。

岸 裕介

プロンプトエンジニアリングというのは、プロンプトを最適化していくということでしょうか?

廣瀬さん

ええ。今後の活用にはプロンプトの最適な設計は欠かせないと思います。弊社ではマーケティング部署での記事制作でも、ファクトチェックや誤字脱字チェックにAIを利用していますが、やはり最新情報に関してAIが対応できないことも多いので、それらを目視でチェックするフローは必要になります。また、正確な出典元を提示しないケースも多いので、Bingの検索エンジンで出典元を確認する手間が発生しています。

■ Generative AIの活用アイデア(フリーワード)

「あなたが考えるGenerative AIの活用アイデアがあれば差し支えない範囲で教えてください」という質問にフリーワードで回答。

・人間が考えたシステムのアイデアを詳細に落とし込むところから支援し、コーディングやカスタマイズのパラメータのアシストやテストパターン、テストデータの作成支援など
・システム企画段階での情報収集とドキュメント作成(関係者へのヒヤリング、他社事例、費用対効果などの情報をとりまとめて資料課する際のたたき台として活用する)
・プログラミング知識のない人が出来上がったシステムのイメージを伝えることで、現場のニーズを反映したシステムの開発に役立つかも
・易しい日本語で高齢者の方への説明を生成すること

岸 裕介

Generative AIの活用アイデアについて、調査では「易しい日本語で高齢者の方への説明を生成すること」という回答がありましたね。

廣瀬さん

ネットリテラシーやシステム知見がない人に向けて、分かりやすくシステムを説明する文章生成に関しては一定の評価がされています。プロンプトを正しく与えればGPTが分かりやすい文章を生成するので、教育関連の事業で力を発揮するのではないでしょうか。

岸 裕介

その他、エンジニアから活用アイデアはありましたか?

廣瀬さん

リサーチ業務については活用できるという声が多かったです。リサーチ後のサマリーの仕方や見せ方は人間が担っていくと思いますが、リサーチ自体は、データ量が豊富なGPTが代替していくと考えています。

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岸 裕介

調査を踏まえ、今後のGenerative AI活用の展開についてはどうお考えですか?

廣瀬さん

エンジニアからは、生成AIを活用した個別のSaaSサービスが出てくる可能性が高いと聞いています。業種や職種に特化したサービスが磨かれていくと、さらなる普及に繋がるのではないでしょうか。

岸 裕介

確かにそうですね。人材事業に関しての影響はいかがでしょうか?

廣瀬さん

議事録作成や調整業務の精度が上がっていくと、例えばコンサルティングファームの新卒が行う仕事が減っていくという弊害はありそうですよね。どうやって新卒の仕事を作っていくかは課題になっていくのではないでしょうか。

岸 裕介

なるほど。

廣瀬さん

また、生成AI自体に仕事を奪われるというよりも、プロンプトのあり方を科学し、生成AIを上手く活用できる人材が求められていくことは考えられます。無駄な作業がどんどん減っていくので、自分のやりたい仕事に集中できるという点では良い傾向ではないでしょうか。

廣瀬さん

一方で、スタートアップ企業などで人を雇わず、生成AIだけで業務を回していく企業も増えてくると思います。スタートアップ企業は人件費や事業所の家賃を抑えることができ、資金調達した金額を事業投資や広告宣伝費などに集中させることができるようになります。そうなると、投資する側にとっても、投資先や投資の仕方に変化が発生していくのではないかと考えています。

岸 裕介

AIを活用できる人と企業が、より事業に集中し価値を発揮できる環境が整っていくのですね。単純業務を行なっている人材にとっては、仕事を奪われる危険性はありそうです。

廣瀬さん

ええ。BPOや簡単な事務作業や単純作業は今後AIに代替されていく未来がくるかもしれません。生成AIを理解し、活用していくことで自身のバリューを発揮していくことは、どの職種においても重要な課題だと言えます。

ライター

岸 裕介
大学卒業後、構成作家・フリーランスライターとして、幅広いメディア媒体に携わる。現在は採用関連のインタビュー記事や新卒採用パンフレットの制作に注力しながら、SaaS企業のマーケティングにも携わっている。いま一番関心があるのは、キャンプ場でワーケーションできるのかどうか。
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