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売り切れ続出?!CISCO、A10、古河電工のネットワーク機器を忠実に再現した本格派「カプセルトイ」とは
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売り切れ続出?!CISCO、A10、古河電工のネットワーク機器を忠実に再現した本格派「カプセルトイ」とは

岸 裕介
2023.09.19
この記事でわかること
ネットワーク機器をミニチュア化、カプセルトイに。その経緯は?
「手のひらネットワーク機器」商品化に向けたこだわりとは
エンジニアの反響の大きさ、今後の展望

ネットワーク機器を忠実に再現したカプセルトイ「手のひらネットワーク機器」がエンジニアを中心に話題となっています。本製品はA10ネットワークス、シスコシステムズ、古河電気工業のスイッチやルーターなどのネットワーク機器をミニチュア化したカプセルトイ。全4種の機器は組み立て式のサーバーラックに搭載できるだけでなく、LANケーブルのパーツで機器同士を繋ぐこともできます。

あまりの人気ぶりに発売日に売り切れとなる販売店も続出し、発売から1週間経たずに2023年9月の再販が発表されました。(2023年9月26日より小売店にて順次販売開始。売り切れ次第終了)

企画を手がけた株式会社エーピーコミュニケーションズの広報担当・小松千恵さんと、制作を手がけた株式会社ターリン・インターナショナルの代表取締役社長・佐藤直志さん、開発生産部・堀康史さんに開発の背景とリリース後の反響について伺いました。

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(左)株式会社エーピーコミュニケーションズ 社長室広報グループ 広報担当 小松 千恵さん、(中)株式会社ターリン・インターナショナル 代表取締役社長・佐藤直志さん、(右)同社・開発生産部 企画開発課 リーダー 堀 康史さん

インフラエンジニアのことを知ってほしい。接点を増やすために商品開発へ

岸 裕介

「手のひらネットワーク機器」とはどのような商品なのでしょうか?

小松さん

ITインフラを支えるスイッチやルーターなどのネットワーク機器と、それを搭載するためのラックをミニチュアサイズで再現したカプセルトイです。本企画に賛同していただいたシスコシステムズ・古河電気工業・A10ネットワークスの3社にご協力いただき、4社共同で監修をしています。

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岸 裕介

現在発売されているセットについて伺えますか?

小松さん

①「A10【Thunder 7655S】」ミニチュアセット、②「Cisco【C9300-48UXM】」ミニチュアセット、③「Cisco Meraki【MX85】」ミニチュアセット、④「古河電工【FITELnet FX2】」ミニチュアセットの4種が現在リリースされています。冷却ファンやケーブルホルダー、電源タップ、棚板がそれぞれのセットに入っており、4カプセル集めると組み立て式のラックに収納できるようになっています。4種類集められなくても、4カプセル分購入すればラックの組み立てができる点も特徴です。

岸 裕介

なるほど。皆さん4種類を集められているのでしょうか?

小松さん

SNSを見ていると、ラックを組み立てられるように4カプセル以上を購入されている方が多いようです。また、「同じものがダブってしまってもハズレ感がない」と言っていただけるのも特徴の一つだと思います。エンジニアの方に限られる特徴ですが(笑)。

小松さん

というのも、現実のシステムでは1台が故障しても運用を継続できるように、同じ機種を2台セットにして冗長構成を組むのが基本なので、「むしろ2台欲しい」といった声も少なくありませんね。

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岸 裕介

皆さん本格的に楽しんでいるんですね。企画の背景としては、どのような想いがあったのでしょうか?

小松さん

元々、当社がインフラエンジニアの採用に困っていたという背景がありました。というのも、IT系を志す学生さんであっても、「エンジニア」と聞くとプログラマーなどの開発系のエンジニアを思い浮かべる方がほとんどで、ITインフラエンジニアを思い浮かべる人が少ないんです。

小松さん

普段ITに関わりのない方は、インフラエンジニアについて知る機会がありません。そこで、ITに関わらない人たちにも「ITインフラ」という業界を知ってもらいたいという想いで今回の企画を立案し、A10ネットワークス様・シスコシステムズ様・古河電気工業様にご賛同いただき企画が実現しました。

コロナ禍と共に広まったカプセルトイ。市場規模は倍に成長

岸 裕介

発売後の「手のひらネットワーク機器」への反響はいかがしたか?

弊社のTwitterは、新商品を販売するたびに大きな反響があるのですが、「手のひらネットワーク機器」は発表時にあまり反応がありませんでした。正直「ダメだったかなあ」と思っていたんですが、エンジニア界隈でバズっていて、気づけばYahoo!ニュースに掲載されるという事態に。弊社のTwitterのフォロワーも1,000人ほど増えて、普段とは異なるファン層の方々がカプセルトイに触れていることを知りました。

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岸 裕介

お店では売り切れが続出されているそうですね。

ええ。店舗リストを見て買いに行っていただいても、午後には完売しているお店が多かったようです。おそらく大人になってから初めてカプセルトイを回した方も多かったのではないでしょうか。カプセルトイの新規ユーザーを開拓できたことに加えて、ネットワーク機器を身近に感じる機会にもなるなど、相乗効果を生んでいることを実感しています。

岸 裕介

予想以上の反響だったということですね。

正直、1%〜2%くらいの限られたエンジニアの方々が反応するのかなという予想だったので、本当に驚きましたね。それに、通常カプセルトイは1個2個で終わるところを「全種類揃えたい」と何度も購入する方も多く、1人あたりの購買数が多かったのも特徴的でした。あまりの人気で転売も増えてしまったため、まだ店舗に在庫が残っている状態で2023年9月からの再販を発表するほど、想定以上の大ヒットとなっています。

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岸 裕介

そもそも、カプセルトイの市場は今どのようになっているのでしょうか?

市場は昨年度で610億円ほど、ここ数年で倍に成長しています。コロナ禍で商業施設の空きテナントが出たことで、そこにカプセルトイの専門店が多数出店するようになりました。市場規模の拡大に寄与しているのは女性層で、雑貨やキャラクターものが主流です。弊社では以前「手のひらPC」という製品を出していましたが、そこまで大ヒットには至りませんでした。ですから、今回「手のひらネットワーク機器」の反響にはとても驚いています。

岸 裕介

製品は専門店で買えるのでしょうか?

以前はどこでどのカプセルトイを売っているのかをお知らせすることが難しかったのですが、今回こちらの商品はカプセル専門店をお持ちの代理店様のご協力で発売店舗リストを公表することができました。どこで買えるか分かるようになったことも、今回のヒットの相乗効果になったと思います。

岸 裕介

時代の波にも上手く乗っていた商品だったのですね。カプセルトイでこれまでにヒットした面白い商品があればご紹介いただけますか?

「誰得シリーズ」で出したパイプ椅子なんかは反響がありました。最近では、ねぎのための専用袋「ねぎ袋」はテレビでも何度も取り上げていただいた商品です。

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12分の1に設計、リアルにネットワーク機器をミニチュア化

岸 裕介

「手のひらネットワーク機器」はどのように作られていったのですか?

小松さん

A10ネットワークス・シスコシステムズ・古河電気工業の各社様から機器の画像や資料をいただき、ターリンさんにモデリングして3Dプリンターでサンプルを作っていきました。ラックの細かい設計や搭載の仕方は当社にお越しいただいて実物のラックを見ていただいて、ケーブルやファンのつき方まで細かく見ていただきました。

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天板の裏側に「冷却ファン」を取り付け
岸 裕介

苦労したのはどんなところですか?

堀さん

各社様からいただいた情報を元に、図面の寸法の12分の1で設計していったのですが、商品が「板状」なのに対してカプセルトイは「球状」なので、カプセルに上手く収まらないんです。そのため、他の機器よりも奥行きの長いA10ネットワーク様のThunder 7655Sは前後2つのパーツに分けるなど工夫を重ねました。

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「A10【Thunder 7655S】」はカプセルに入るように、2つのパーツに分けて設計。
岸 裕介

なるほど。ラックに関してはいかがでしたか?

堀さん

ラックの制作は苦労しました。実際のサーバー機器はネジ止めされていますが、ミニチュアではネジ止めができないため、差し込む形にしました。ミニチュアにすることで再現できないこともある中で、いかに忠実に見えるようにするかというのはこだわったポイントです。

堀さん

また、塗装は通常は2〜3週間で製作するのですが、「手のひらネットワーク機器」では前面と背面にケーブルを挿すための穴の位置などがあるので、被らないように調整を重ねて、2ヶ月くらいかけて設計・製作しました。

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岸 裕介

他にこだわった点があれば教えてください。

サイズ感はとてもこだわったポイントで、弊社の商品「手のひらPC&サプライ」との互換性を持たせられるようにサイズを合わせているので、ネットワーク機器にPCを接続する感覚で繋げることができます。

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以前発売されていた「手のひらPC&サプライ」
岸 裕介

そこまでリアルに再現されているのですね。「手のひらPC」はまだ購入することができるのでしょうか?

いえ、カプセルトイは一期一会でして、1ヶ月くらいで商品はなくなってしまうんです。もしかしたら再販することもあるかもしれませんが、現状は既に持っている方しか接続できません。

ラックへのネットワーク機器の搭載はエンジニアにとって貴重な経験に

岸 裕介

細かいこだわりの詰まった本商品に対する、エンジニアの反応はいかがですか?

小松さん

実は、このカプセルトイで初めて「ラックに機器を搭載する」経験をした方も多いようです。ITインフラエンジニアと一言で言っても、さまざまな役割があります。例えば、お客様の要件定義を行うエンジニアから、実際に設計を行いテストするエンジニア、図面を作るエンジニア、図面をもとにラックの中へ機器を搭載するエンジニア、24時間365日監視する保守運用エンジニア、セキュリティエンジニアなど、フェーズごとに業務内容が異なります。

岸 裕介

なるほど、インフラエンジニアには様々な仕事があるんですね。

小松さん

今回のカプセルトイではラックに色々な機器を搭載してケーブルを配線することを体験できますが、実はこの仕事を経験したことのあるITインフラエンジニアは多くないんです。それぞれの領域がありますし、一回ラックに機器を搭載し配線したら基本的にはそれを使い続けて、故障した機器や保守期限が切れた場合などにその機器だけを交換するという形なので。まっさらなラックに機器を搭載するという経験は、インフラエンジニアにとってもこのカプセルトイが初めてだったという声が多くありました。

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ラックには「ケーブルホルダー」も取り付けられる。
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「電源タップ」も取り付けて、自由に配線することも可能。
岸 裕介

擬似的にインフラエンジニアの経験ができる機会でもあるわけですね。

小松さん

ええ。今はクラウドが全盛になっていることもあって、機器を直接触ることがあまりないんです。でも今回のカプセルトイを通じて、クラウドの向こう側にはこんな機器が並んでいて、搭載や配線作業があるのだとイメージすることができる。そういった意味でも良かったなと思っています。

岸 裕介

今回の反響を受けて、他にもエンジニア向けのカプセルトイ商品も増やしていくのでしょうか?

そうですね。今回の「手のひらネットワーク機器」でまだ隠れたカスタマーがいたんだということに大変驚きました。IT業界以外にも、きっと私たちがまだ見えていない業界があるのだと思います。カプセルトイはメーカーさんと1社単位でコラボすることは多いのですが、今回のように数社でコラボするというのはとても新しい取り組みでした。

岸 裕介

エンジニア業界で3社が一緒にというのは斬新ですね。A10ネットワークス・シスコシステムズ・古河電気工業という3社を集めるのに苦労もあったのでは?

小松さん

実は企画時点で10社くらいに打診しているんです。お話しさせて頂いた担当者の皆さんは「面白いですね」と言ってくださるんですけど、そこから実際に商品化までにはさまざまな調整が必要で、「ロゴを使わせてほしい」、「筐体の意匠を使わせてほしい」という話になると、広報や親会社の許可も取らなければならず、なかなか実行フェーズには進めることができませんでした。

小松さん

そのなかで本当にありがたいことに今回の3社様にご賛同いただきました。A10さんやCiscoさんはアメリカに本社があるのですが、まずカプセルトイの存在を知らないので、そこから説明して許可をとってくださったそうです。そのあたりは担当者の皆様がとても尽力してくださいました。

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岸 裕介

いろいろな苦労があったんですね。完成後の各社の反応はいかがでしたか?

小松さん

「やって良かった」と各社の担当者様から喜びの声が届いています。エンドユーザーからの反響も大きかったので、今までの苦労も報われますね(笑)。

当社には、ある大学の教授から「授業で使いたい」という打診がありました。今までのカプセルトイにはない反響だったので驚きましたね。

小松さん

当社にもITの専門学校様からご相談がありました。入学する高校生向けに、学校祭で使用されるとのことでした。元々エンジニア以外の方にも接点を持ってもらいたいという意図があったので、うれしい反響でしたね。今後もインフラエンジニアをより身近に感じていただけるような取り組みを進めていきたいと考えています。

ライター

岸 裕介
大学卒業後、構成作家・フリーランスライターとして、幅広いメディア媒体に携わる。現在は採用関連のインタビュー記事や新卒採用パンフレットの制作に注力しながら、SaaS企業のマーケティングにも携わっている。いま一番関心があるのは、キャンプ場でワーケーションできるのかどうか。
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