Twitter上でエンジニアたちに共感されている #エンジニア漫画。かわいらしいキャラクターに癒やされるのはもちろん、駆け出しエンジニアの “あるある体験”に親近感を覚えるユーザーも多いようです。
エンジニアたちの心を鷲づかみにするエピソードの数々は、どのように生み出されているのか。実は作者のまふるさんは、異業界への転職なども経験している現役のWebエンジニア/ディレクターです。
まふるさんのキャリアを深掘りしながら、#エンジニア漫画 の背景にあるリアルな体験や、転職にまつわるエピソードについてお話を伺いました。
「まふる」プロフィール
WEBエンジニア/ディレクター/漫画家。新卒から6年間エンジニアとして従事するも、過酷な勤務と自身のスキル不足で一時断念。人材系サービス業で採用・教育・マネジメントを経験している。その後、コロナ禍のライフワークの変化でWEB業界に戻り、エンジニアとしてフルリモート勤務。経験を元にしたネタ漫画 #エンジニア漫画 をTwitterで連載しながら、漫画イラストの仕事も幅広く手がけている。
バグを擬人化した漫画がTwitterで話題に
まふるさんの漫画は、多くのエンジニアから共感を集めていますが、特に反響が大きかったのはどんな作品でしょうか?
最も反響をいただいたのが、バグを昔話に見立てて描いた「日本エンジニア昔話」です。リツイート1.2万、「いいね!」3.7万という、私にとって到底信じられない数値を記録しています。
私もTwitterで見ました!バグを擬人化していて斬新ですが、どのように思いついたんですか?
「あのとき見落としたバグです」という一文をネットでたまたま見かけたんです。そこから、「昔バグを見落としたままリリースして何事も起こらなかった」実体験を思い出しまして。バグがあるのに、ギリギリのところで上手く動いている。その理由を想像して漫画で描いた感じですね。
3コマですけど、すごく奥行きがあるというか。セリフとは別に描かれている「コォォォォオ」の擬音語もかなり雰囲気があります。
そのときの状況をわかりやすく伝えられるので、擬音語は積極的に使っています。共感してくださっているエンジニアの方が多く、本当にうれしいです。
こちらの下流と上流について描かれた漫画も多くの共感を集めていますね。
はい、コメントをたくさんいただきありがたいのですが、私の表現が足りなかったこともあり、「上流を経験した人が偉いのは違う」という声も一部であがっていました。漫画なので賛否が分かれることもあると思いますが、誰かを不快にさせないようにしようと改めて思いました。
エンジニアのメンタルについて描かれた漫画も話題になっていましたね。こちらの作品にはどのような思いが込められているんですか?
これは今の会社に転職したときの漫画ですね。入社後、わからないことを質問しにくいのは「あるある体験」ではないかと。#エンジニア漫画 の連載では、エンジニアとして働く自分の体験や、思っていることをそのまま描くようにしています。
Twitterで漫画を発信するようになったきっかけは?
高校時代からアニメや漫画の二次創作が好きで、社会人になってからも趣味で描き続けていました。本格的にTwitterで漫画を発信するようになったのは、今の会社に入る少し前からです。自分の経験をアウトプットしながらスキルを高めていこうと思い、本格的に描き始めました。
エンジニアとしてのキャリアを一時断念
エンジニアとしてのキャリアを教えてください。
実は、今までに5度の転職を経験しておりまして(苦笑)。地元・宮城県のWeb制作会社から始まって、WEBエンジニア/ディレクターとして働いている現在の会社は6社目なんです。
なるほど、いろいろな経験を積まれてきたんですね。そもそも、エンジニアになろうとしたきっかけは?
学生時代からブログで情報発信することが好きだったこともあり、HTMLやCSS、JavaScriptなどに触れていました。趣味で描いていたイラストを発信したりしていましたね。その後、新卒で地元・宮城県のWeb制作会社に就職。小さい会社だったので、自分でページのワイヤーフレームを引き、コーディングまでやっていました。
デザインなどにも携わり、マルチに活躍されていたんですね。
そこでPHPなども習得できたので、さらなるスキルアップを目指してデザインに強いWeb制作会社に転職しました。しかし、2社目が想像以上のハードワークで……。4名ほどの会社だったので、キャパを超える大きい仕事が来ると、エンジニアみんなで残業しても全然終わらないみたいな。
肉体的にも精神的にも、かなり追い込まれていたんですね。
ええ、毎日必死に働いているにもかかわらず、給料の遅延なども発生する過酷な環境でした。なんとか生計を立てるため、夜間に別でアルバイトをするしかない。そうすると、エンジニアとしてのパフォーマンスがどんどん落ちていくという悪循環に。3年目でついに心が折れてしまい、エンジニアとしての働き方を一時断念しています。
かなりブラックな環境ですね。その後、どのような仕事に就いたのでしょうか?
人材派遣の会社に拾ってもらい、エリアマネージャーとしてスタッフ教育に携わるようになりました。それまでエンジニアとして黙々とコードをかいていたので、接客に関する人材育成の仕事はとても新鮮でしたね。アルバイトさんやパートさんたちと一緒に働くのも楽しかったです。
やりがいを感じながらも、なぜまたエンジニアに戻ったのでしょうか?
コロナ禍の影響で出勤できない時期が続き、この先どうなるのかという不安が大きかったからです。同時期に結婚もしたので、家庭とのバランスも考えて安定的にリモートで働ける方がいいと思ったんです。
なるほど、コロナ禍が大きく影響しているんですね。
ただ、IT業界に戻ることを決意したものの、エンジニアとしてブランクがあったので、正社員でマッチングする就職先はなかなか見つかりませんでした。いろいろ転職活動をしたものの上手くいかず、最終的にSESのエンジニアとして働いています。
SESのエンジニアとしての働き方は、正社員のころと比べていかがでしたか?
仕事内容で比べると、派遣先によってはエクセルなど基本の情報整理で終始することもありました。単純作業で業務的にはラクなのですが、自分のスキルアップにはつながりにくいと感じることも。少しずつ危機感を抱いていたときに、派遣先のアプリ会社からスキルを認めていただき、正社員のオファーをいただいたんです。その後、派遣元の合意も得て、再び正社員のエンジニアとして働くようになりました。
エンジニア&漫画家として再スタート
5社目の会社では、どのような仕事を担当していたんですか?
Windows系のアプリケーション開発に携わっていました。それまで経験してきたPHPやHTMLの知識を活かすことができず、VB.NETやC#など今までやったことがない言語を一から学ぶ必要がありました。アプリ開発の領域はわからないことが多く、いろいろと苦労しましたね。
この時期にTwitterも始めてますよね。情報発信するようになったのは、どんな心境の変化があったのでしょうか。
私がそれまで覚えていたものが「古い」といわれる状態で、新しく覚えることばかりでした。そのため、「自分は初心者のぺーぺーなんだ」と心を入れ替え、他のエンジニアとの交流やアウトプットも兼ねてTwitterを始めています。
そこから現在の6社目に転職されたのは、どのような理由が?
5社目の会社はエンジニアとしてのスキルが高まるし、働きやすい職場だったのですが、2年ほど仕事を続けていくなかで、アプリよりもWebの仕事がやりたいなと。エンジニアのキャリアを始めるきっかけもWebですし、改めて自分の好きなことを突き詰めたいと思いました。
それに、以前エリアマネージャーとしてスタッフ教育や採用に携わったことで、少しずつマネジメントにも興味が出てきたんです。マネジメントに関する業務ができなかったので、思い切って現在の会社に移りました。
転職初日の心境は、漫画でも描かれていますね。
ええ、最初はWeb開発に注力して取り組んでいったのですが、とにかくわからないことが多くて。質問するのも遠慮していたのですが、社内の皆さんから手取り足取り教えてもらえたので本当に助かりました。
壁を乗り越えて上手くいったと思ったら、また新たな壁にぶちあたる——。最初の3か月間はそんなことの繰り返しでしたね。
つらい状況が漫画から伝わってきますね。漫画を描く上で意識していたのは、どんなことですか?
IT用語がラーメン店のオーダーに聞こえるなど、自分の感じていることを素直にアウトプットするようにしていました。
漫画で自分の状況をさらけ出すと、何に困っているのか客観視できるし気分を切り替えられるんです。失敗したことも素直に描くうちに、エンジニアの皆さんからたくさんのコメントをいただくようになりました。凹んでいるときに「あんまり気にすんな」と励ましのメッセージをいただくなど、救われたことも多いですね。
ちなみに、こちらのかわいらしいキャラクターのモチーフは?
一応、鹿なんです(笑)。自分の代わりになる主人公は、デフォルメして簡単に書ける動物がいいと思って。学生時代に友達から「鹿に似てる」と言われたことがあったので、それを思い出して鹿を採用しています。
マネジメントやPMOを経験し、会社の広報も担当
最近マネジメントの業務にも携わっているそうですね。
ええ、エンジニアとしてのスキルが少しずつ身についてきたことで、マネジメントやPMOの仕事にも携われるようになりました。今まで経験してこなかった領域なので戸惑うこともありますが、新たな気付きも多いですね。
例えば、エンジニアへの指示が曖昧だと後で地獄を見ることに……。「今週末までにお願いします」とエンジニアに投げても、全然私の思っているところまで終わっていない。もっと明確に指示するべきだという反省ですね(苦笑)。
エンジニアの2つのタイプを漫画で描いていたのも印象的でした。マネジメントでいろいろと感じることもあるんですね。ちなみにまふるさんは、左脳派と右脳派のどちらですか?
文章作成や計画を練ることがあまり上手くないので、私はおそらく右脳派ではないかと。社内のエンジニアを見ていると、自分の感覚的には左脳派の方が多いような印象です。デザインにも強いエンジニアは、どちらかというと右脳派タイプではないでしょうか。
直近では、所属している会社の広報にも就任されたとか?
ええ、テックビーンズという会社で働いているのですが、そちらの公式アカウントでも週一のペースで連載しています。
現在働いているテックビーンズはどんな会社ですか?
WEBサービスをメインに、モバイルアプリケーション、基幹システム、DX推進など様々なシーンにおいて、要件定義から設計、保守・運用まで、ハイスキルのエンジニアが一気通貫で対応——というのは会社の広報的な回答で(笑)。本音ベースで言ってもエンジニアファーストの働きやすい会社だと思います。やりたい仕事に携われるし、その後のキャリアも大切にしてくれるので、私のように働き方で悩んでいる方におすすめです。
理想のマネジメントは「上手な先回り」
今後のエンジニアとしての目標を教えてください。
最近になって今まで経験できなかったような上流の工程にも携われるようになったので、マネジメント領域のスキルも高めながらキャリアを広げていきたいと思います。
まふるさんにとって理想のマネジメントとは?
個人的に見習っているのは、現職と前職の上司のマネジメントです。私たちエンジニアが取りかかる前に先回りして、段取りをきちんと立ててくれる。何が起こるのか予測するのがすごく上手いので、自分の弱点である「スケジュール管理能力」を高めるためにも参考にしています。
まふるさんはエンジニアとして苦しい時期も経験されていますが、当時の自分に言葉をかけるとしたらどんなことを伝えたいですか?
「もっと勉強した方がいいよ」と声をかけるかもしれません。忙しくて目の前の仕事に追われていると、「言われたものをとにかく収めればいい」と考えるようになりがちです。でも、本来自分がやりたかったことは単純作業じゃないし、「このスキルが足りない」「この能力が弱い」と、改善するべきポイントに気づいていたはずなんです。苦しいなかで厳しいかもしれませんが、将来的なキャリアのためにもインプットの時間をちゃんと取るように伝えたいですね。
最後に、漫画家としての目標も教えてください。
最近、キャラクターアイコンの作成やプログラミングスクールのPR漫画など、少しずつ仕事の幅が広がってきたので、露出をもっと増やせるようにがんばっていきたいです。#エンジニア漫画 のなかでは、今後も自分のありのままをさらけ出していきたいなと。読んだ人が、クスッと笑えて少し元気になれるような漫画を発信していきたいと思っています。
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