MIXIといえば、2000年代中頃に招待制で一世風靡した画期的なSNS『mixi』。
そして実はMIXIは、今年10周年を迎えるロングセラーのスマホゲーム『モンスターストライク』、通称『モンスト』を開発した会社でもあるのです。
インターネットを活用したサービスという点で共通するとはいえ、「MIXIがゲーム?」と少し意外な感じがするかもしれません。
でも、MIXIが掲げる「豊かなコミュニケーションを広げ、世界を幸せな驚きで包む。」というパーパスと「『心もつながる』場と機会の創造。」というミッションを知ると、その目指すところが見えてきます。
今回インタビューさせていただいたのは、MIXIのゲームエンジニアである角龍徳(かくたつのり)さん。 ゲームに魂を捧げる角さんのお話を通して、ゲームエンジニアという職業やMIXIならではの心地よい社風に迫ります。
角龍徳は、一生ゲームに関わっていくための進路を選び続けている
角さんはWantedlyのプロフィールで「ゲームに魂を捧げている」と自己紹介されていますが、子どもの頃からゲームが好きだったんですか?
物心ついた頃からずっとゲームが大好きでした。宿題は学校の休み時間中に終わらせて、帰ったらすぐゲームをする日々でした。1日5~6時間はプレイしていたと思います。PS2のソフト『アルトネリコ ~世界の終わりで詩い続ける少女~』は、特に好きでした。
ゲームエンジニアになりたいと思ったのは、いつごろからでしょう?
高校生になってゲームを作りたい意識が芽生え『RPGツクール』[※1]を触ってはいたものの、ゲームエンジニアになりたいとまでは考えていませんでした。
※1 RPGツクールとは
でもご出身は、東京工芸大学のゲームコースですよね?
ゲームを作りたい気持ちは高まっていたので、ゲーム業界に進もうとは思っていました。ちょうど東京工芸大学の芸術学部にゲームコースが新設されると知って、そちらに決めたんです。
ゲームコースについて調べているうちに、ゲームを作るエンジニアになろうと思ったということですか?
東京工芸大でゲームを作る方法が学べる!その気持ちだけで飛び込んだため、内部で企画分野・デザイン分野・プログラミング分野に分かれていることを入学後に知りました。でも結果として、プログラミング分野の道を選択したことは自分にとって正解でした。
そのよくわかっていないままに突き進んだ感じからは逆に、「とにかく、よりゲームを作れる道へ!」という並々ならぬ決意が伝わりますね。
ただただ一生懸命でした。その分、両親を不安にさせてしまいましたが‥‥。
スマホゲームの時代到来での転職。MIXIは「面接が楽しかった」
大学卒業後の就職先は、どのように選びましたか?
コンシューマーゲーム[※2]を作ることに憧れていたので、まずはそちらの道を目指しました。
※2 コンシューマーゲームとは
子どもの頃から慣れ親しんできたゲームは、そちらですもんね。
新卒で入社したのは2011年で、山あり谷あり4年ほど働きました。その頃、一気にスマホゲームの市場が広がったため、スマホゲーム開発のスキルを身に付けたくて転職しました。
スマホゲームの開発なら、個人開発で勉強するという選択肢もありますよね。なぜ転職を選ばれたのでしょう?
実務レベルでの開発を学びたかったからです。個人開発も続けていたので、道を選ぶにあたって比較がしやすかったです。
ただ、転職した会社がゲーム開発事業自体をやめることとなり、異動して別の職種に就く選択肢もありました。でも僕はゲームエンジニアとしてゲームを作り続けたかったため、再び転職活動しました。
それで入ったのが、MIXIだったんですね。SNS『mixi』に親しみがあったとか、モンスト[※3]をやりこんでいたとか、そんな理由があったんですか?
※3 モンスターストライク(モンスト)とは
いえ、SNS『mixi』はやっていませんでした。モンストも面接を受けるにあたって触ってみた程度です。にもかかわらず、面接ではゲームの話で盛り上がりました。楽しい時間でしたね。
大人数が受ける新卒採用に比べて、転職の面接はより企業色が出ますよね。その面接が楽しいって、すごくいいですよね。
僕は「ゲームは楽しいものであるべき」だと思っています。なので、ゲームの話をしているのに硬い空気の会社だと身構えてしまうんです。MIXIはその点、とても楽しくて安心できました。
自分が満足できるゲームを求めて、ゲームを作り続けていく
ゲームエンジニアとして、「これができたときは最高!」というような醍醐味はありますか?
僕は今でも、自分の書いたコードでキャラクターが動くだけで嬉しいんです。
10年以上のキャリアを積んでも、初心というか、原点の喜びが薄れないんですね。ゲームに対する愛情がひしひしと伝わりますし、「ゲームに魂を捧げている」とおっしゃるのが誇張ではないことがよくわかります。
自分が納得できるまでゲームを作り続けるつもりです。たとえ一度満足しても、次はもっと良くできると考えてしまうため、もしかしたら終わりは来ないのかもしれません。結果的にゲームに人生を捧げることになると思っています。
キャリアも選びやすいMIXIの仕事環境
実際に入社されてみて、MIXIの仕事環境はどうですか?
MIXIは、すごく働きやすい職場ですね。
具体的には、例えば?
MIXIには自由に話せる空気感があって、エンジニアからの企画提案もできる環境です。必ずしも詳細を掘り下げる必要はなく、「こういう動きってロマンがあるよね」「こうしたらおもしろいよね」という段階で意見を言えますし、なにより聞く耳を持ってもらえます。
ブレスト的に何でも言えると、ゲームもよりおもしろいものになりそうですね。
それに、企画の人のエンジニアへの理解が深く、開発工数や実装難易度に対する意見をスムーズに判断してくれます。難易度の高い相談が来ることももちろんありますが、「無理とは思ってますが相談いいですか?」「こっちの方法だとどんな感じ?」などの気さくなコミュニケーションで、こちらからも代替案を提示しやすいです。
実際に開発していないとわかりづらい「簡単に見えて難しいこと」を理解してもらえるんですね。コミュニケーションを取れる空気があるからこそでしょうか。
MIXIはコロナ禍で「マーブルワークスタイル」[※4]を導入し、僕も出社日数が減りました。オンライン会議でも自由に話せる空気感を維持するためにチームアップの工夫をしています。
※4 マーブルワークスタイルとは
ところで角さんは、今はチーム内でどんな立場ですか?
初期からいるという立場で、今はマネジメント的なことも少しだけやっています。チームメンバーは総勢で20名くらい、エンジニアは短期の応援要員も含めると10名弱です。
将来的に、マネージャー的な仕事もしていきたいという展望があるんですか?
今のところ関心は薄いですね。自分の手でコードを書いて実装する方が性に合っています。
エンジニアにはキャリアアップすればするほど開発の仕事から離れてしまうというジレンマがありますが、そこはどう折り合いをつけていく予定ですか?
MIXIは会社の制度として、マネジメント系かスペシャリスト系か、キャリアプランを選べるようになっているんです。僕はスペシャリスト系の道を選んで、「とりあえず角に聞いておけば良い」と思われるようになるまで極めたいと思っています。
リリース前とリリース後、ゲームエンジニアの大変さはどう違う?
2016年のMIXI入社後、角さんはどんなゲームを手掛けてこられましたか?
最初はモンスト事業部に配属されましたが、現在は新作『Asym Altered Axis(エイシム オルタード アクシス)』(以下『Asym』)[※5]に所属しています。
※5 Asym Altered Axisとは
モンストのリリースは2013年なので、リリース後ですね。一般的なシステムの場合、リリース後は主に保守の仕事ですが、ゲーム開発の場合はどんなことをするのでしょう?
モンストはリリース後もアップデートを続けています。僕は主に新しいストライクショット(必殺技)や友情コンボ(味方同士が触れ合うことで発動する能力)の実装を担当していました。
今所属していらっしゃるAsymは、まだ開発段階ですね。リリース前の参画とリリース後の参画を両方経験されてみて、仕事内容や大変さに違いはどうでしょうか?
リリース後は、開発工程の運用フローがある程度確立されているので、「どうやって実現しようか?」の答えが既にあることも多いですね。リリース前はその逆で、あらゆることが決まっていない状態なので大変です。
大変というのは、マネジメント面ですか?それとも、エンジニアとしての開発面でしょうか?
運用フローも開発ツールも決まっていないし、稟議も回さないといけないので、どちらの面もありますね。後の開発工程に与える影響が大きいため、モンストと同じ開発方法がAsymに適しているかどうかは慎重に検討する必要があります。
リリース後ならではの大変さもありますか?
リリース後はすでに使っているユーザーさんがいる状態での開発になるため、バグ修正のパッチや期待されているアップデートのリリースは比較的短い期間で行われます。ユーザーさんにより楽しんでもらうためです。でも、時間がないからと中途半端な実装をするのはもってのほかです。そこはリリース前の開発よりも大変なところです。
今はスマホゲームだけでなく、ソフトを購入するコンシューマーゲームでもアップデートや期間限定イベント、追加コンテンツの販売などがあります。リリース後のアップデートができるようになって、ゲーム開発事情は変わりましたか?
今は「リリース初日にパッチをリリース」ということもあるので、完成した後に長期の休暇を取る機会が少なくなったように思えます。それから一時期は、7割程度の完成度でリリースされる、高品質とは言えないゲームが量産されていました。
後で直せると言っても、レベルが低すぎるとアップデートを待たずにユーザーが離れてしまいますね。
最近のゲームでは、α版、β版、アーリーアクセスなどユーザーと開発者双方合意の下でのプレリリースを経て正式リリースという流れもできている、これは良いことだと思います。
息の長いゲームは、“コミュニケーションツール”でもある
ゲームがアップデートありきの時代になると、「大多数のユーザーがクリアしたらいったん終わり」といった区切りがなくなりますよね。モンストのように長期間人気を維持するゲームに育てるために必要な要素はあるのでしょうか?
個人的には、遊び続けてもらうには「人」が重要であると考えています。友達とやるのが楽しい、好きなYouTuberやVtuberがやっているから自分もやる、ユーザー参加型のイベントが楽しいなど、コミュニケーションツールとして成り立っているゲームは息が長いと感じます。
わたしはSNS『mixi』をやっていたのですが、通じるところが多いですね。友達と交流したり、好きな有名人のアカウントを見たり、同じ趣味の人たちと集ったり、そんな楽しみ方をしていました。
運営型の息の長い人気ゲームほど顕著に感じています。ゲーム自体の遊ぶ楽しさももちろん大切ですが、一緒に遊べたり語り合えたりできる友人、仲間、コミュニティもより大切だと思っています。
<取材後記>
今の時代のゲームは、「ひとりでも遊べるけどひとりではない」のだなと感じました。学校や職場の友達だけでなく、Webを通じても繋がりが広がっています。コミュニケーションインフラを牽引するMIXIで、人を重視するゲームエンジニアの角さんがどんなゲームを作り続けていくのか、とても楽しみです。
◆株式会社MIXI:https://mixi.co.jp/
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