「ゲームはコミュニケーションツール」。MIXIのゲームエンジニア・角龍徳が考える、働きやすい職場と息の長いゲームの秘訣
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「ゲームはコミュニケーションツール」。MIXIのゲームエンジニア・角龍徳が考える、働きやすい職場と息の長いゲームの秘訣
一番ヶ瀬 絵梨子
2023.05.24
この記事でわかること
ゲームエンジニア・角龍徳はゲームに魂を捧げている。
コミュニケーションの自由度が高いMIXIは、ゲームエンジニアが働きやすい環境である。
長く遊び続けられているゲームは、コミュニケーションツールとして成立している。

MIXIといえば、2000年代中頃に招待制で一世風靡した画期的なSNS『mixi』。

そして実はMIXIは、今年10周年を迎えるロングセラーのスマホゲーム『モンスターストライク』、通称『モンスト』を開発した会社でもあるのです。

インターネットを活用したサービスという点で共通するとはいえ、「MIXIがゲーム?」と少し意外な感じがするかもしれません。

でも、MIXIが掲げる「豊かなコミュニケーションを広げ、世界を幸せな驚きで包む。」というパーパスと「『心もつながる』場と機会の創造。」というミッションを知ると、その目指すところが見えてきます。

今回インタビューさせていただいたのは、MIXIのゲームエンジニアである角龍徳(かくたつのり)さん。 ゲームに魂を捧げる角さんのお話を通して、ゲームエンジニアという職業やMIXIならではの心地よい社風に迫ります。

角龍徳は、一生ゲームに関わっていくための進路を選び続けている

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Wantedlyのプロフィールページより(2023年3月時点)
一番ヶ瀬 絵梨子

角さんはWantedlyのプロフィールで「ゲームに魂を捧げている」と自己紹介されていますが、子どもの頃からゲームが好きだったんですか?

角 龍徳さん

物心ついた頃からずっとゲームが大好きでした。宿題は学校の休み時間中に終わらせて、帰ったらすぐゲームをする日々でした。1日5~6時間はプレイしていたと思います。PS2のソフト『アルトネリコ ~世界の終わりで詩い続ける少女~』は、特に好きでした。

一番ヶ瀬 絵梨子

ゲームエンジニアになりたいと思ったのは、いつごろからでしょう?

角 龍徳さん

高校生になってゲームを作りたい意識が芽生え『RPGツクール』[※1]を触ってはいたものの、ゲームエンジニアになりたいとまでは考えていませんでした。

※1 RPGツクールとは

株式会社KADOKAWAから発売されている、プログラムの知識がなくても簡単にオリジナルRPGを作ることができるソフト。
一番ヶ瀬 絵梨子

でもご出身は、東京工芸大学のゲームコースですよね?

角 龍徳さん

ゲームを作りたい気持ちは高まっていたので、ゲーム業界に進もうとは思っていました。ちょうど東京工芸大学の芸術学部にゲームコースが新設されると知って、そちらに決めたんです。

一番ヶ瀬 絵梨子

ゲームコースについて調べているうちに、ゲームを作るエンジニアになろうと思ったということですか?

角 龍徳さん

東京工芸大でゲームを作る方法が学べる!その気持ちだけで飛び込んだため、内部で企画分野・デザイン分野・プログラミング分野に分かれていることを入学後に知りました。でも結果として、プログラミング分野の道を選択したことは自分にとって正解でした。

一番ヶ瀬 絵梨子

そのよくわかっていないままに突き進んだ感じからは逆に、「とにかく、よりゲームを作れる道へ!」という並々ならぬ決意が伝わりますね。

角 龍徳さん

ただただ一生懸命でした。その分、両親を不安にさせてしまいましたが‥‥。

スマホゲームの時代到来での転職。MIXIは「面接が楽しかった」

一番ヶ瀬 絵梨子

大学卒業後の就職先は、どのように選びましたか?

角 龍徳さん

コンシューマーゲーム[※2]を作ることに憧れていたので、まずはそちらの道を目指しました。

※2 コンシューマーゲームとは

スマホやPCではなく、家庭用ゲーム機で遊ぶゲームのこと。近年はテレビに繋ぐ据え置き型だけでなく、持ち運びできるポータブルゲーム機も含むのが一般的。
一番ヶ瀬 絵梨子

子どもの頃から慣れ親しんできたゲームは、そちらですもんね。

角 龍徳さん

新卒で入社したのは2011年で、山あり谷あり4年ほど働きました。その頃、一気にスマホゲームの市場が広がったため、スマホゲーム開発のスキルを身に付けたくて転職しました。

一番ヶ瀬 絵梨子

スマホゲームの開発なら、個人開発で勉強するという選択肢もありますよね。なぜ転職を選ばれたのでしょう?

角 龍徳さん

実務レベルでの開発を学びたかったからです。個人開発も続けていたので、道を選ぶにあたって比較がしやすかったです。

角 龍徳さん

ただ、転職した会社がゲーム開発事業自体をやめることとなり、異動して別の職種に就く選択肢もありました。でも僕はゲームエンジニアとしてゲームを作り続けたかったため、再び転職活動しました。

一番ヶ瀬 絵梨子

それで入ったのが、MIXIだったんですね。SNS『mixi』に親しみがあったとか、モンスト[※3]をやりこんでいたとか、そんな理由があったんですか?

※3 モンスターストライク(モンスト)とは

スマートフォンの特性を活用した、誰でも簡単に楽しめる爽快アクションRPGです。自分のモンスターを指で引っぱって弾き、敵のモンスターに当てて倒していくターン制のゲームで、一緒にいる友だちと最大4人まで同時に遊べる協力プレイ(マルチプレイ)が特徴。2013年10月より提供開始し、2022年11月時点では世界累計利用者数が5,900万人を突破。
角 龍徳さん

いえ、SNS『mixi』はやっていませんでした。モンストも面接を受けるにあたって触ってみた程度です。にもかかわらず、面接ではゲームの話で盛り上がりました。楽しい時間でしたね。

一番ヶ瀬 絵梨子

大人数が受ける新卒採用に比べて、転職の面接はより企業色が出ますよね。その面接が楽しいって、すごくいいですよね。

角 龍徳さん

僕は「ゲームは楽しいものであるべき」だと思っています。なので、ゲームの話をしているのに硬い空気の会社だと身構えてしまうんです。MIXIはその点、とても楽しくて安心できました。

自分が満足できるゲームを求めて、ゲームを作り続けていく

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角さんが開発したモンストのストライクショット
一番ヶ瀬 絵梨子

ゲームエンジニアとして、「これができたときは最高!」というような醍醐味はありますか?

角 龍徳さん

僕は今でも、自分の書いたコードでキャラクターが動くだけで嬉しいんです。

一番ヶ瀬 絵梨子

10年以上のキャリアを積んでも、初心というか、原点の喜びが薄れないんですね。ゲームに対する愛情がひしひしと伝わりますし、「ゲームに魂を捧げている」とおっしゃるのが誇張ではないことがよくわかります。

角 龍徳さん

自分が納得できるまでゲームを作り続けるつもりです。たとえ一度満足しても、次はもっと良くできると考えてしまうため、もしかしたら終わりは来ないのかもしれません。結果的にゲームに人生を捧げることになると思っています。

キャリアも選びやすいMIXIの仕事環境

一番ヶ瀬 絵梨子

実際に入社されてみて、MIXIの仕事環境はどうですか?

角 龍徳さん

MIXIは、すごく働きやすい職場ですね。

一番ヶ瀬 絵梨子

具体的には、例えば?

角 龍徳さん

MIXIには自由に話せる空気感があって、エンジニアからの企画提案もできる環境です。必ずしも詳細を掘り下げる必要はなく、「こういう動きってロマンがあるよね」「こうしたらおもしろいよね」という段階で意見を言えますし、なにより聞く耳を持ってもらえます。

一番ヶ瀬 絵梨子

ブレスト的に何でも言えると、ゲームもよりおもしろいものになりそうですね。

角 龍徳さん

それに、企画の人のエンジニアへの理解が深く、開発工数や実装難易度に対する意見をスムーズに判断してくれます。難易度の高い相談が来ることももちろんありますが、「無理とは思ってますが相談いいですか?」「こっちの方法だとどんな感じ?」などの気さくなコミュニケーションで、こちらからも代替案を提示しやすいです。

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自由に意見を出し合えるのが、MIXIの特長
一番ヶ瀬 絵梨子

実際に開発していないとわかりづらい「簡単に見えて難しいこと」を理解してもらえるんですね。コミュニケーションを取れる空気があるからこそでしょうか。

角 龍徳さん

MIXIはコロナ禍で「マーブルワークスタイル」[※4]を導入し、僕も出社日数が減りました。オンライン会議でも自由に話せる空気感を維持するためにチームアップの工夫をしています。

※4 マーブルワークスタイルとは

2020年7月より試験運用し、2022年4月に正式に制度化したMIXI独自のワークスタイル。部署ごとに最適な出社回数を選択でき、フルリモートワークも可能。12時までに出社できるエリアであれば日本全国どこでも居住可能で、交通手段は飛行機や新幹線、フェリーなどに範囲を拡大。交通費は上限15万円/月まで実費支給される。
一番ヶ瀬 絵梨子

ところで角さんは、今はチーム内でどんな立場ですか?

角 龍徳さん

初期からいるという立場で、今はマネジメント的なことも少しだけやっています。チームメンバーは総勢で20名くらい、エンジニアは短期の応援要員も含めると10名弱です。

一番ヶ瀬 絵梨子

将来的に、マネージャー的な仕事もしていきたいという展望があるんですか?

角 龍徳さん

今のところ関心は薄いですね。自分の手でコードを書いて実装する方が性に合っています。

一番ヶ瀬 絵梨子

エンジニアにはキャリアアップすればするほど開発の仕事から離れてしまうというジレンマがありますが、そこはどう折り合いをつけていく予定ですか?

角 龍徳さん

MIXIは会社の制度として、マネジメント系かスペシャリスト系か、キャリアプランを選べるようになっているんです。僕はスペシャリスト系の道を選んで、「とりあえず角に聞いておけば良い」と思われるようになるまで極めたいと思っています。

リリース前とリリース後、ゲームエンジニアの大変さはどう違う?

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角さんが最初に参画したモンスト(1枚目)と、現在開発中のAsym Altered Axis(2枚目)
一番ヶ瀬 絵梨子

2016年のMIXI入社後、角さんはどんなゲームを手掛けてこられましたか?

角 龍徳さん

最初はモンスト事業部に配属されましたが、現在は新作『Asym Altered Axis(エイシム オルタード アクシス)』(以下『Asym』)[※5]に所属しています。

※5 Asym Altered Axisとは

Asym Altered Axisは、「リアルタイムストラテジー」と「ステルスアクション」のクロスジャンルで、1人VS最大5人パーティで争う非対称型対戦ゲームです。潜入側のアクションプレイヤーたちは、フィールド上に配置されている財宝"NEXUS"を盗み出し、無事に脱出を果たせば成功。防衛側のストラテジープレイヤーはトラップ、NPC(ノンプレイヤーキャラクター)、直接攻撃などで潜入側の奪取を阻止、撃退することが主な目標です。
一番ヶ瀬 絵梨子

モンストのリリースは2013年なので、リリース後ですね。一般的なシステムの場合、リリース後は主に保守の仕事ですが、ゲーム開発の場合はどんなことをするのでしょう?

角 龍徳さん

モンストはリリース後もアップデートを続けています。僕は主に新しいストライクショット(必殺技)や友情コンボ(味方同士が触れ合うことで発動する能力)の実装を担当していました。

一番ヶ瀬 絵梨子

今所属していらっしゃるAsymは、まだ開発段階ですね。リリース前の参画とリリース後の参画を両方経験されてみて、仕事内容や大変さに違いはどうでしょうか?

角 龍徳さん

リリース後は、開発工程の運用フローがある程度確立されているので、「どうやって実現しようか?」の答えが既にあることも多いですね。リリース前はその逆で、あらゆることが決まっていない状態なので大変です。

一番ヶ瀬 絵梨子

大変というのは、マネジメント面ですか?それとも、エンジニアとしての開発面でしょうか?

角 龍徳さん

運用フローも開発ツールも決まっていないし、稟議も回さないといけないので、どちらの面もありますね。後の開発工程に与える影響が大きいため、モンストと同じ開発方法がAsymに適しているかどうかは慎重に検討する必要があります。

一番ヶ瀬 絵梨子

リリース後ならではの大変さもありますか?

角 龍徳さん

リリース後はすでに使っているユーザーさんがいる状態での開発になるため、バグ修正のパッチや期待されているアップデートのリリースは比較的短い期間で行われます。ユーザーさんにより楽しんでもらうためです。でも、時間がないからと中途半端な実装をするのはもってのほかです。そこはリリース前の開発よりも大変なところです。

一番ヶ瀬 絵梨子

今はスマホゲームだけでなく、ソフトを購入するコンシューマーゲームでもアップデートや期間限定イベント、追加コンテンツの販売などがあります。リリース後のアップデートができるようになって、ゲーム開発事情は変わりましたか?

角 龍徳さん

今は「リリース初日にパッチをリリース」ということもあるので、完成した後に長期の休暇を取る機会が少なくなったように思えます。それから一時期は、7割程度の完成度でリリースされる、高品質とは言えないゲームが量産されていました。

一番ヶ瀬 絵梨子

後で直せると言っても、レベルが低すぎるとアップデートを待たずにユーザーが離れてしまいますね。

角 龍徳さん

最近のゲームでは、α版、β版、アーリーアクセスなどユーザーと開発者双方合意の下でのプレリリースを経て正式リリースという流れもできている、これは良いことだと思います。

息の長いゲームは、“コミュニケーションツール”でもある

一番ヶ瀬 絵梨子

ゲームがアップデートありきの時代になると、「大多数のユーザーがクリアしたらいったん終わり」といった区切りがなくなりますよね。モンストのように長期間人気を維持するゲームに育てるために必要な要素はあるのでしょうか?

角 龍徳さん

個人的には、遊び続けてもらうには「人」が重要であると考えています。友達とやるのが楽しい、好きなYouTuberやVtuberがやっているから自分もやる、ユーザー参加型のイベントが楽しいなど、コミュニケーションツールとして成り立っているゲームは息が長いと感じます。

一番ヶ瀬 絵梨子

わたしはSNS『mixi』をやっていたのですが、通じるところが多いですね。友達と交流したり、好きな有名人のアカウントを見たり、同じ趣味の人たちと集ったり、そんな楽しみ方をしていました。

角 龍徳さん

運営型の息の長い人気ゲームほど顕著に感じています。ゲーム自体の遊ぶ楽しさももちろん大切ですが、一緒に遊べたり語り合えたりできる友人、仲間、コミュニティもより大切だと思っています。

<取材後記>

今の時代のゲームは、「ひとりでも遊べるけどひとりではない」のだなと感じました。学校や職場の友達だけでなく、Webを通じても繋がりが広がっています。コミュニケーションインフラを牽引するMIXIで、人を重視するゲームエンジニアの角さんがどんなゲームを作り続けていくのか、とても楽しみです。

◆株式会社MIXI:https://mixi.co.jp/

ライター

一番ヶ瀬 絵梨子
心理学科卒業後、新卒未経験でSI企業に就職し、Java系のSEとして10年。 結婚出産を経て、2015年にトラベルライターに転身。 現在はMONOLISIX株式会社に所属しweb編集やマーケティング業務にも携わっている。 新婚旅行では1年かけて世界50ヶ国を巡るほどの旅行好き。 日々の晩酌が何よりの楽しみ。
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