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都内屈指の大型書店「丸善 丸の内本店」コンピュータ書担当の大崎さんに聞く。エンジニア必読の一冊
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都内屈指の大型書店「丸善 丸の内本店」コンピュータ書担当の大崎さんに聞く。エンジニア必読の一冊

金子 茉由
2022.08.04
この記事でわかること
コンピュータ関連の書籍でおよそ1万冊程度の蔵書がある「丸善 丸の内本店」
オススメ技術書の入門編、中級~上級者編を紹介
ビジネスで活かせるロングセラー書籍も

「オススメの技術書」という言葉から、みなさんはどのような本を思い浮かべるでしょうか。

たとえばこれからプログラミング言語の学習を始めたいと思ったとき、またたとえば後輩の新人エンジニアから参考図書について尋ねられたとき、市場ニーズの高い書籍に関する知識があれば、その選択がぐっと豊かになるはずです。 

今回は都内で第2位の売り場面積を誇る超大型書店「丸善 丸の内本店」にてコンピュータ書担当を務める大崎 朋彦さんに、エンジニア必読の“売れ筋”技術書や隠れた名著についてお話を伺いました。

1万冊の技術関連書籍のなかから、珠玉の6冊を選ぶ! ―入門編― 

金子 茉由

本日はよろしくお願いいたします。さすが丸善さんの本店店舗、売り場面積も広いですね。

大崎さん

そうですね。コンピュータ関連の書籍でおよそ1万冊程度の蔵書があるかと思います。

金子 茉由

1万冊ですか!魅力的なタイトルの本が多くて、どれを読めばよいか迷ってしまいそうですね。
ぜひ本日は丸の内店の売れ筋商品を中心に、大崎さんのオススメ技術書について教えていただければ幸いです。

大崎さん

はい。では入門編、中級~上級者編という順でご紹介できればと思います。

<入門編>

① ITエンジニアのための<業務知識>がわかる本(三好康之/著)

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【目次】 第1章 会社経営 第2章 財務会計 第3章 販売管理 第4章 物流・在庫管理 第5章 生産管理 第6章 人事管理

大崎さん

こちらは2004年に初版が発売され、2018年に最新の社会情勢や関連法規に対応した改訂新版(第5版)が出版されました。当店舗のみで累計200冊以上売り上げている人気の書籍です。
エンジニアが顧客課題を解決する際に知っておくべき会社経営の知識や、情報システム構築に必要な業務知識などが網羅されていて、ITストラテジストの試験対策にも使える本ですね。

② スッキリわかるJava入門(中山清喬/著、国本大悟/著、株式会社フレアリンク/監修)

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【目次】 JAVAをはじめよう 第1部 ようこそJAVAの世界へ(プログラムの書き方/式と演算子/条件分岐と繰り返し ほか) 第2部 すっきり納得オブジェクト指向(オブジェクト指向をはじめよう/インスタンスとクラス/さまざまなクラス機構 ほか) 第3部 もっと便利にAPI活用術(JAVAを支えるクラスたち/文字列と日付の扱い/コレクション ほか)

大崎さん

“基本文法やオブジェクト指向の「なぜ?」が必ずわかる”ことを標榜した、JAVAを学習される方の入門書籍として人気の本です。
2019年11月にJAVA11を基準とした第3版が刊行され、コレクションの解説が加わったほか、好評の仮想開発環境「dokoJava」もブラッシュアップされてさらに使い勝手がよくなったようです。

③ 新しいLinuxの教科書(三宅 英明/著、大角 祐介/著)

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【目次】 CHAPTER01 Linuxを使ってみよう/CHAPTER02 シェルって何だろう?/CHAPTER03 シェルの便利な機能/CHAPTER04 ファイルとディレクトリ/CHAPTER05 ファイル操作の基本/CHAPTER06 探す、調べる/CHAPTER07 テキストエディタ/CHAPTER08 bashの設定/CHAPTER09 ファイルパーミッションとスーパーユーザ/CHAPTER10 プロセスとジョブ/CHAPTER11 標準入出力とパイプライン/CHAPTER12 テキスト処理/CHAPTER13 正規表現/CHAPTER14 高度なテキスト処理/CHAPTER15 シェルスクリプトを書こう/CHAPTER16 シェルスクリプトの基礎知識/CHAPTER17 シェルスクリプトを活用しよう/CHAPTER18 アーカイブと圧縮/CHAPTER19 バージョン管理システム/CHAPTER20 ソフトウェアパッケージ

大崎さん

Web系エンジニアの方にオススメなのが、『新しいLinuxの教科書』です。こちらは2015年に刊行され、当店でも450冊以上の販売実績があります。
“MS-DOSを知らない世代のエンジニアに向けたLinux入門書”をテーマに、シェルスクリプトを用いたプログラミングや、Gitによるソフトウェア開発のバージョン管理などに関する解説が含まれている点が人気のポイントかと思います。

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1万冊の技術関連書籍のなかから、珠玉の6冊を選ぶ! ―中級~上級者編― 

<中級~上級者編>

④ ゼロから作るDeep Learning Pythonで学ぶディープランニングの理論と実装(斎藤康毅/著)

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【目次】 1章 Python入門 2章 パーセプトロン 3章 ニューラルネットワーク 4章 ニューラルネットワークの学習 5章 誤差逆伝播法 6章 学習に関するテクニック 7章 畳み込みニューラルネットワーク 8章 ディープラーニング

大崎さん

初版刊行から6年で当店でも2,700冊以上を売り上げた、ディープラーニングの本格的な入門書です。やはり昨今はPython関連の書籍が人気ですね。
特に「Pythonで〇〇しよう」といった活用技術に関する本が売れています。人気の言語という点では、あとはJavaでしょうか。C言語などはもはや新刊が出ていない状態ですね。

⑤ アジャイルサムライ 達人開発者への道(Jonathan Rasmusson/著、 西村直人・角谷信太郎/監訳、近藤修平・角掛拓未/訳)

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【目次】 第1部 「アジャイル」入門 第2部 アジャイルな方向づけ 第3部 アジャイルな計画づくり 第4部 アジャイルなプロジェクト運営 第5部 アジャイルなプログラミング

大崎さん

出版から11年が経過しても、依然として人気の高いロングセラーです。
アジャイル開発技法にとどまらず、具体的なワークフローやプロジェクトの進め方などがわかるので、システムエンジニアの方全般におすすめできる一冊です。

⑥ 体系的に学ぶ安全なWebアプリケーションの作り方 脆弱性が生まれる原理と対策の実践(徳丸浩/著)

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【目次】 1 Webアプリケーションの脆弱性とは 2 実習環境のセットアップ 3 Webセキュリティの基礎~HTTP、セッション管理、同一オリジンポリシー、CORS 4 Webアプリケーションの機能別にみるセキュリティバグ 5 代表的なセキュリティ機能 6 文字コードとセキュリティ 7 脆弱性診断入門 8 Webサイトの安全性を高めるために 9 安全なWebアプリケーションのための開発マネジメント

大崎さん

Webアプリ開発者が知っておくべき攻撃と防御の知識を詳しく解説した一冊です。
Webアプリにおいて脆弱性が生まれる原理と、セキュリティ向上のためにすべきことが豊富な実例とともに書かれているためわかりやすく、情報処理安全確保支援士を目指す人などにも入門的に読んでいただけると良いのではないかと思います。

数学的思考を養うロングセラーで、エンジニアに必要なスキルを身に付ける

金子 茉由

ありがとうございます。最近のプログラミング言語のトレンドはやはりPythonということですね。ちなみに昨今話題のWeb3.0やメタバースといった分野の書籍についてはいかがですか?

大崎さん

まさに人気のテーマですね。特にメタバース、CG、NFT、ブロックチェーン関連の書籍が売れています。
技術実務者でない一般の方が、ニュースなどでよく耳にするようなキーワードを解説した書籍がコンピュータコーナーに多数並んでいますが、立ち止まる方の数も多く注目度の高さを感じますね。

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金子 茉由

ここまで、初級者編、中~上級者編と教えていただきましたが、そのほかに「玄人好みの一冊」などはありますか?

大崎さん

難しいテーマですね(笑)直接エンジニア業務と関わる書籍ではないのですが、『いかにして問題をとくか』という本が、個人的にはオススメです。

⑦ いかにして問題をとくか(G. ポリア/著、柿内賢信/翻訳)

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【目次】 第1部 教室にて(目標/問題の区分と主な問い ほか) 第2部 いかにして問題をとくか(対話) 第3部 発見学の小辞典(ABC順)(新しい言葉と古い言葉/ボルツァノ ほか) 第4部 問題・ヒント・解答(問題/ヒント ほか)

大崎さん

本書は数学読み物のジャンルに区分されるのですが、数学的思考のプロセスから問題解決の方法を体系的に導く内容が特徴的で、エンジニアやビジネスパーソンのみなさんにも参考になる部分が多いかと考えます。
1975年に初版が出版されただいぶ長い歴史を持つ書籍ですが、基本的な概念は現代も変わらずビジネスで活かせる、まさにロングセラーです。

定番の一冊こそ、不朽の名著

金子 茉由

問題解決思考を学ぶ根幹に位置付けられるような、とても興味をひかれる内容で、ぜひ私も読んでみたいと思いました。最後に、「迷ったらとりあえずこれを読め!」といったオススメ技術書はありますか?

大崎さん

プログラマーの方に向けてということでしたら、当店でも人気の『リーダブルコード より良いコードを書くためのシンプルで実践的なテクニック』はいかがでしょうか?

⑧ リーダブルコード より良いコードを書くためのシンプルで実践的なテクニック(Dustin Boswell・Trevor Foucher/著、須藤功平/解説、角征典/訳)

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【目次】 第1部 表面上の改善(名前に情報を詰め込む/誤解されない名前/美しさ/コメントすべきことを知る/コメントは正確で簡潔に) 第2部 ループとロジックの単純化(制御フローを読みやすくする/巨大な式を分割する/変数と読みやすさ) 第3部 コードの再編成(無関係の下位問題を抽出する/一度に1つのことを/コードに思いを込める/短いコードを書く) 第4部 選抜テーマ(テストと読みやすさ/「分/時間カウンタ」を設計・実装する)

大崎さん

リーダブルコードとは、他者が一目で理解できる「正しく命名されたコード」のことです。本書では「コードは読んで理解しやすく、誰もが読んだとき短時間で理解できるように書かれるべき」として、実務に落とし込みやすい手法で手順が解説されています。プログラミングの基本的な概念を体系的に学びたい方におすすめしたい本ですね。

金子 茉由

まさにコーディングの原理原則に基づく実践的な一冊なんですね。いろいろとご紹介いただきましたが、大崎さんのお話を伺って感じたのは、エンジニアにとって基本的な考え方や技術手法が書かれた書籍は、やはり長く読み続けられるロングセラーになるということですね。

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大崎さん

結局は「定番」が残るんですよね。分野によっては新刊が続々と出るものの、ロングセラーが愛される理由は実際にそれらの本を手に取って読んでみるとわかるかと思います。
ちなみに当店は丸の内のオフィス街に位置していることもあってビジネスパーソンのお客様が多く、ExcelやPowerPointなどのビジネスにおける活用術に関する書籍も人気が高いです。入荷数が多く品揃えも豊富なため、ぜひニーズに応じてご利用いただければ嬉しいです。

<取材後記>

いまや本を買うのもクリック一つで完了してしまう便利な時代になりましたが、実際に書店に足を運んでみると興味深いタイトルの本が所せましと並んでいて、あれもこれも読んでみたいという衝動に駆られました。

なにより、探し求めている情報と関連するジャンルやテーマが一目でわかるため、幅広い知識を吸収できる場としての「本屋さんのよさ」を改めて痛感しました。

技術の基礎を学びたい方、話題のテーマに関する知見を深めたい方、ビジネス思考を鍛えたい方…。みなさんのあらゆる思いに、本屋さんはきっと応えてくれるはずです!

ライター

金子 茉由
12年勤務した大手人材会社を退職後、フリーランスライターに転身。会社員時代からIT業界のクライアントとの相性がよく、さまざまなIT系企業の採用活動支援や、エンジニアのスキル開発・育成支援業務に携わってきた。いまの一番の関心ごとは、子ども向けプログラミング教育の未来について。
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