“いまだない出会いから、いまだない未来をつくる”をコンセプトに、リモート時代の新たな人と人とのつながりを提供するWebサービス『バーチャルランチクラブ』。
「はじめまして」や「ひさしぶり」の人とランチ感覚で1対1のビデオ通話ができるビジネスマッチングサービスです。
今回は「バーチャルランチクラブ」の開発者であるエッグフォワード株式会社CIOの山本大策さんに、開発に込めた想いなどについて伺いました。
「ランチ」感覚のカジュアルなマッチングから、新たなビジネスが生まれることも
まずはバーチャルランチクラブのサービスの特徴について教えていただけますでしょうか。
バーチャルランチクラブは、気軽なコミュニケーションのことを“ランチ”と表現し、「いつか⼀緒に仕事できるかもしれない⼈とオンラインで15分だけ話してみよう」というテーマで開発したサービスです。
2022年5月時点でのユーザー数は約1万5000人にのぼり、サービス内のマッチング数は累計7万回を超えました。現在は個人向けサービスだけでなく、企業向けサービスである『バーチャルランチクラブ for Biz』も展開していて、企業内のコミュニケーション活性化やコミュニティの創出にも貢献しています。
なるほど。実は私もユーザー登録してみたのですが、気軽に様々なジャンルの人と知り合えて面白いですよね。
そうですね。バーチャルランチクラブの開発では、「気軽さ」と「スピード感」にこだわりました。
「気軽さ」については、登録からマッチング、その後の相互レビューまでをサービス内で一気通貫で行えるしくみで、ZoomやSkypeなどのアプリを使用しなくてもブラウザ内でカジュアルな会話が楽しめる点が特徴です。
「スピード感」に関しては、相手にランチ申請後、承諾されれば即時で会話ができるため、たとえばランチの翌日にはもう新たなビジネスが生まれていた事例もあります。
登録後すぐに10人からのランチ申請!そのからくりは?
ユーザーはどのような属性の方が多いのでしょうか?
25~35歳くらいの世代がコアユーザーですね。今後のキャリアについて誰かに相談したいと思っている方々が多い印象です。利用の目的はさまざまですが、まずは気軽に人脈を作りたいといったライトなニーズから使い始め、何回かやりとりを重ねるなかでビジネスでの協業や仕事での関係性づくりに発展するケースも多いようです。
私も実際にユーザー登録してみたのですが、2日間で10名程度の方からランチの申請をいただき、驚きました。
まさにそこが開発のポイントで、初めてサービスを利用した人が目立つようなしかけが特徴です。C to Cのマッチングにおいては、リピーターと新規利用者のバランスが大事なんです。アクティブユーザーであるリピーターにうまく誘導してもらいながら、いかに新規の方が入りやすいしくみをつくるかということですね。
そのためには、場の活性度がとても重要な要素となります。実際にバーチャルランチクラブでも、新規登録者の半数以上が1か月以内にマッチングしているというデータが出ています。
確かにサイトのLPも、マッチングが活発に行われていることがわかりやすい仕様になっていますね。サービス開発にあたってはどのような背景があったのですか?
実は私自身、前職でマッチングをテーマとしたサービスをいくつか開発していたんです。2012年には、“コーヒー1杯を飲む時間を一緒に過ごしたい人”同士のマッチングを行う「CoffeeMeeting」というサービスを立ち上げ、独立後には個人が気軽に時間を売買できるサービス「TimeTicket」を開発・運営していました。
そもそも当時このようなビジネスマッチングサービスを開発しようと思ったのは、自分自身の人間関係を見直したときに、会社や仕事関係の知り合い・友人しか増えていないことに気づいたからなんです。自分とどこか接点のある人、話題が合う人とつながりたいという思いがきっかけとなりアイデアが生まれました。
バーチャルランチクラブに関しては、特にこのご時世、対面でのコミュニケーションが少なくなってきているという社会背景も踏まえて、オンラインを活用したビジネスマッチングのサービスを開発するに至りました。
特にコロナ禍ではプライベートでもビジネスでも人と気軽に会うことが難しくなりましたもんね。ところでバーチャルランチクラブの開発にあたり、事業成功のゴールとマイルストーンはどのように設定されたのですか?
かっちりとしたマイルストーンというよりは、まずは本サービスを使ってくれるユーザーを増やすことを目標にしました。そのための指標として、LPからのコンバージョン率やMAU(月あたりのアクティブユーザー数)を分析しました。やはり定期的に使ってもらってこそのサービスですので、アクティブユーザー率はかなり重視していましたし、その数字が上がるような機能をどんどん入れていったという感じです。
それは先ほどおっしゃっていた新規登録者が目立つようにする設計などですか?
そうですね。CtoCのマッチングでは、新規の方でもすぐに上位にいきやすい工夫や、コアなユーザーが新規の方に使い方を教えることで循環を良くする工夫が重要だと考えていました。バーチャルランチクラブは、システム側からのリコメンド要素もありつつも、ユーザー個々人が話したいと思う人に対して好きなだけランチ申請できる点を重視した設計にしたため、高いアクティブ率の維持に成功したのではないかと思います。
バーチャルランチクラブはこれまでのベストプラクティスの結晶
サービス開発に要した時間はどのくらいなんですか?
実はバーチャルランチクラブの開発前に、別のサービスをリリースする予定で動いていたんです。ですがコロナの影響などであまりうまくいかなかった部分があり、急遽バーチャルランチクラブを立ち上げることになりました。別サービスの開発からなんと1週間でピボットしたんです(笑)
1週間で!すごいスピード感ですね。
そうですね。ただ先ほどお話したとおり、私自身過去にマッチングサービスを開発してきた経験があったので、エンジニアリングの部分ではそこまで大変ではありませんでした。バーチャルランチクラブに、これまでの自分自身のベストプラクティスをすべて注ぎ込んだ感じですね。
システムの設計自体はスムーズに進んだということなんですね。では開発にあたって、特に力を入れたポイントはどのようなことですか?
これまでの経験上、マッチングサービスのユーザー数を増やすためには、初期段階でどれくらいバズらせることができるかがポイントだと考えていました。そのため、リリース前に事前登録サービスを実施し、登録してもらったユーザーには会員番号を発行してSNSでシェアしてもらうように働きかけました。この事前登録だけで500名程度の方に利用してもらえたのが大きかったと思います。
やはりマーケティングの軸としてSNSを重視していましたし、サービスコンセプトやユーザーニーズの検証もできたので良かったですね。
ユーザーのニーズといえば、最近ではユーザーの声を吸いあげる座談会なども定期的に開催されているんですよね。
そうですね。コロナ禍ではオンラインが主体でしたが、最近ではユーザーのみなさんがリアルでミートアップできるイベントも積極的に実施しています。やはりコミュニティを活性化するためにユーザー同士の交流は重要ですし、サービスを盛り上げていただくための起点にもなっているかと思います。
エンジニアの視点だけにとどまらない生き方が、キャリアを切り拓く
山本さんのお話を伺っていると、いわゆるエンジニアリングの部分だけでなく、ビジネス的な感性や鋭い視点を強く持っていらっしゃるように感じます。
私自身文系の出身で新卒時はマスコミ系の仕事に就きたかったのですが、就職氷河期だったこともあり、システムエンジニアとしてのキャリアからスタートしました。
特に今の時代のエンジニアに必要なのはエンジニアリングのみにとどまらない複合的なスキルだと考えています。具体的には、企画やデザイン、マーケティングなどの要素ですね。
そもそも私がこのようなビジネスマッチングサービスをずっと続けているのも、高校時代からイベントを企画したり、人が集まり互いにつながる場所をつくったりすることが好きだったからなんです。ですから、なにか課題解決をしたいという思いよりも、好きだから、みんなが喜んでくれるからという思いが原動力となって、今のビジネスにつながっています。
ご自身がワクワクすることをビジネスにできるのは素敵ですね。では山本さんが描く今後のビジョンを教えていただけますか。
バーチャルランチクラブに関しては、今秋にiOSアプリをリリースする予定です。月額プランの利用者、また良い利用体験をしてもらえるユーザーの方を増やすことを引き続き目指しています。
あとは今、バーチャルランチクラブとは別に、超高速ノーコードモバイルアプリ作成サービス『AppVanilla』というプロダクトの開発に携わっているんです。「簡単で安く効率的なモバイルアプリ開発」というテーマのもと、プログラミングの知識がない人でもすぐに、気軽にアプリが作成できるサービスです。
実際にこのアプリを活用してビジネスマッチングサービスをつくりたいという声もたくさんいただいています。今後はバーチャルランチクラブのようなマッチングサービスを誰でもつくれる、そんな世界観を目指したいですね。
それは面白いですね!
『AppVanilla』を使って、バーチャルランチクラブを超えるようなビジネスマッチング、カジュアルマッチングのサービスが出てきたら、それはそれで全然構わなくて。みなさんがそういうアイデアをガンガン作っていただける場にしたいですね。
山本さんの過去のご経験、バーチャルランチクラブ、そして新たに取り組まれているサービスすべてにつながりというか、一貫性を感じますね。
そうかもしれないですね。そういうサービスをつくる人を増やしたいという想いもあって、今『build weekend』というコミュニティを立ち上げているんです。
私自身もそうだったのですが、自分が何かつくりたい!というモードになったときに、なかなか周りのエンジニアたちと波長が合わなかったりして。このコミュニティは、月に一回渋谷のイベントスペースを無料開放して、サービス開発者同士で集まり、それぞれフィードバックをしあいながら各自でサービス開発を進めていくコミュニティです。
まずはゼロイチでサービスを一つつくってみて、リリースして検証するという経験はまったく無駄にならないですし、そこから別のキャリアパスが生まれる可能性も大いにあります。人生が変わるきっかけになる、そんな体験につながる場所や出会いをいろいろな方に提供していきたいですね。
<取材後記> 続々と新たな企画を考案し、実現してしまう山本さん。語り口、表現力、思考スピードの速さなど、とてもクレバーで多才な方という印象を受けますが、根底にあるのは“人と人とがつながり、なにか面白いことや新しいことが生まれる場をつくりたい”というシンプルな思いであることがわかりました。
何より仕事を楽しむこと、否、ご自身が楽しいと感じることを実現するための手段として仕事をされている様子が魅力的でした。今後のキャリアの可能性を模索しているエンジニアの方々には、ぜひ一度山本さんが開発したサービスに触れてみていただくことをおすすめします!
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