目指すのはホームセキュリティの民主化。東大発家電ベンチャーがつくる新しいセキュリティインフラとは。
ホームセキュリティと聞くとどんな企業やサービスが思い浮かびますか?
多くの方の頭には、セコムやALSOKといったサービスが浮かんだのではないでしょうか。
そのような大手がいるなか、ホームセキュリティデバイスを安価に利用できるサービスleafee(リーフィー)を提供するのが、東大発の家電ベンチャーのStrobo。
ホームセキュリティ領域の現在の課題は? leafeeはどのようにして差別化しているのか? この時代にあえて家電ベンチャー?
Strobo代表の業天(ぎょうてん)さんにお話を聞きました。
セキュリティ格差を解消する格安ホームセキュリティ「leafee」
leafeeがどのようなサービスなのか、まず教えていただけますでしょうか?
leafeeは、これまで高額だったホームセキュリティを、格安で誰でも利用できるようにしたサービスです。
leafeeの提供する窓やドアの開閉センサーや人感センサー、音量ブザーを家の中に設置することで、常に戸締まりを確認でき、異常を検知した際には大音量でブザーがなり、スマホに通知が届くという形で防犯ができます。
ホームセキュリティというと、セコムやALSOKなどのサービスもありますよね? 違いって何なんでしょうか?
従来型のホームセキュリティは「警備員が中心」のサービスです。 それに対して、leafeeは「スマホとセンサーが中心」のサービスなんです。
従来型のホームセキュリティの課題
従来型のホームセキュリティは、異常を検知すると警備員が25分以内に駆けつけます。 何かがあると警備員が駆けつけてくれる、という安心感が顧客体験の中心なんです。
たしかに警備員のイメージがかなり強いですよね。
ただ、従来型のホームセキュリティは導入プロセスが大変で、価格が高いんです。 まず、導入時には自宅を訪問しての見積もりと工事が必要です。
サービスの価値である警備拠点や警備員の維持コストが価格に転嫁されるため、初期費用に30万円程度、さらに月額でも5千円以上の費用がかかります。 最低利用年数も数年間設定されています。
このような理由から、お金持ちの世帯でないと利用しづらい面があり、学生や社会人の一人暮らし、若い夫婦、賃貸や中古の物件にお住まいの方などは手を出しづらいものでした。 必要な人が利用できていないセキュリティ格差があるので、まずはこの導入ハードルを下げていきたいんです。
これらの課題とのleafeeの向き合い方
leafeeはこの課題に対してどのように向き合っているんでしょうか?
leafeeのサービスは、センサーによる窓の開閉や人の移動の検知と、異常を検知した際のブザーでの警報、スマートフォンでの戸締まりの管理です。 警備員が駆けつけるサービスはオプションの形で提供しています。
警備員のサービスが絶対についてくるわけではないんですね。
そうすることで、基本プランの価格を大きく下げています。 月額980円から利用できるので、これまで利用できなかった方々も利用できるようになりました。
leafeeは導入プロセスも簡単にしています。 申し込みはオンラインで完結し、最短で翌日に届きます。 工事不要で自分で設置と取り外しができ、契約期間の縛りや違約金もないため、お試し利用や短期間の利用も可能です。
かなり格安かつ利用しやすくなっている…!
このような価格・導入プロセスにすることで、従来型のホームセキュリティで起きていたセキュリティ格差を解消しているんです。
ソフトウェアとインターネットを中心にした家電ベンチャーへ
開発面でのleafeeのこだわりも教えていただけますか?
leafeeはハードウェアではなくソフトウェア・インターネットが主体のサービスなんですよ。
え?leafeeはセンサーなどのハードが中心じゃないんですか?
センサーやハブなどのハードがないと実現できないサービスなんですが、センサーによる監視や検知、ブザーの発音、通信と、ハードのしている仕事は実は少ないんです。
スマートロックのように、物理的な動きをするものは、センサーに加えてギアやモーターなども必要となりハードのコストも上がります。 leafeeでは、極力動くパーツは減らしてハード側の論点を少なくする方針をとっています。
ハードの仕事を減らすというのは目からウロコでした…!
それによってハードのコストと開発コストも下がり、安価に利用者に届けられます。 さらに、ソフトウェアやサービスといったハードに比べるとアップデートのしやすいものの改善がマターになり、利用者へ提供する価値を高めることに邁進できます。 こう考えると、ホームセキュリティーの領域は、ソフトウェアで十分に勝負できる領域なんです。
僕たちはハードを提供するのは前提で、ソフトウェア、インターネットの力で生活のリアルな空間をもっと便利にしたいんです。 まずはこの防犯というテーマで、ハードウェア×ソフトウェア・インターネットで価値を提供していきます。
ハードのリーンな開発の鍵はフルスタックエンジニア
leafeeは現在はフルタイムは3名という少数精鋭でやっているんですよね?
3名全員がハードもソフトも見ているエンジニアで、その中で、BizDev寄り、ハード寄り、ソフト寄りで分担しています。 ハードが絡む領域でのリーンな開発においては、幅広い領域をカバーできるフルスタックエンジニアが重要なんです。
というのも、例えばleafeeに何か問題が起こった際に、原因がセンサーや電子回路など純粋なハード側にあるのか、ハードを動かす組み込みソフトウェアといったハードのソフトにあるのか、あるいはアプリやサーバーようなソフト側にあるのかという課題の仮説出しや原因の特定、改善方針の検討って、全体が理解できる人でないとかなり時間がかかってしまうんです。
何か起きた際にすぐに判断できるという意味で、ハードとソフトの両方を分かっておくことは、デザイナーがコードを書ける、マーケターがSQLを書けるという話に近いと思いますね。
また、ハードウェアの開発はもちろん自社でやっていますし、量産のための製造においてOEMはせず、工場を始めサプライチェーンは全て管理していますし、最終の組み立ては自社でやっています。 カスタマーサポートも開発者と同じオフィスにおり、常に課題を共有しています。
OEMだとばかり思っていました…! まさか自社でやっている部分まであるとは…。
スピード感を持った改善のためには、コントローラブルな部分を増やしておくことが重要なんです。 「スケールしないことをやる」を地でいってますね。
今後のエンジニア採用においても、ハードもソフトも両方できることが条件になるんでしょうか?
それは既存のメンバーがカバーできる部分なので、必須の条件ではありません。 そのためにも、ハードの細かい実装を意識せずにソフトの開発や機能追加ができる技術選定や実装を行ってきたので、今後はそれぞれの領域で強いエンジニアの方と一緒に働きたいと思っています。
ただやっぱり、家電・ハードウェアを通して実現できる体験や課題解決に対して、楽しみを感じられる人の方が向いていると思いますね。 絶賛採用中なので、気になっていただけた方はこちらをご覧ください。
技術だけでは使われない。ガジェット好きの趣味で終わらないための体験設計。
どれだけ技術がすごくても、一般の方にとっても使いやすいものでなければ結局普及はしません。 leafeeもガジェット好きの趣味で終わらないよう、利用者の体験をとにかく磨き込んでいます。
一番の接点であるスマホアプリのUI/UX
従来型のホームセキュリティは警備員がいざというときに駆けつけてくれることが安心の理由です。 では、leafeeはどのようにして利用者に安心してもらうのか。 このときに重要になるのが、利用者との一番の接点となるスマートフォンのアプリでの体験です。
デザインや体験設計が、「スマホだけでどれだけ安心してもらえるか」に直結します。 スマホアプリはハードよりもアップデートがしやすいからこそ、特に磨き込んでいる領域です。
センサーの状態を確認できる機能で外出時のチェックや外出中の確認をできるようにしたり、利用者のシーンに合わせて、外出時の警戒モードと在宅時・就寝時の警戒モードなどを切り替えられるようにし、警報や通知のルールを切り替えられる機能も実装しています。
オンボーディングの鍵は箱と説明書
意外かもしれませんが、ハードウェアが入っている箱やその中の説明書も重要です。 利用者が最初に商品に触れるこのタイミングに、オンボーディングの成功が懸かっているんです。
最初に分かりづらいと感じたものには、それ以降も安心感を感じづらいですし、継続的に利用してもらえません。 セットアップまでの距離を最短にして、つまずかないよう、分かりやすく、直感的に理解できるものにしています。
箱は、開いた瞬間に必要な情報が全て目に入るようにして、どういう順番で進めればいいか迷わないことを意識してデザインしています。
説明書についても、利用者に合わせて分かりやすい内容・書き方を意識しています。 セットアップに迷わないことを目標に何度も改変を重ねており、実際に無料期間後のleafeeの利用継続率は向上するなど効果が出ています。
leafeeのデザイナーの価値の出しどころは、ハードやソフトのデザインや体験の設計だけじゃないんですね。
そうですね。 ホームセキュリティという生活の安全を扱う領域だからこそ、利用者の安心感や信頼感が重要ですし、あらゆる接点で細部まで体験を磨き込んでいきます。
目指すのは「暮らしのリスク検知・解決プラットフォーム」
leafeeはこの先、どのように進化していきたいのでしょうか?
現在は人感センサーと戸締り・開閉センサーによる防犯だけですが、センサーの種類を増やすことで、検知できるリスクを増やしていきたいですね。 侵入や盗難はもちろん、火災や地震、ガス漏れや水漏れ、突然の病気や怪我など、検知すべきリスクは多くあります。
防犯だけでなく、防災などあらゆるリスクへの対応を目指しているんですね。
検知できるリスクを増やすと同時に、leafeeを暮らしの中で検知・発生したリスクを解決できるプラットフォームにしていきたいと考えています。
プラットフォーム?
leafeeは、暮らしの中の多くのリスクを一番早く・正確に発見し、警察・消防・救急など解決できる適切な機関に連携できるようにしたいんです。 現状、インシデントが起きた際に解決する機関とつながる方法は、人による通報しかないんですが、発見・通報・情報共有の自動化を実現し、課題解決力を高めていきたいですね。
リスクの検知だけではなく、解決する機関との連携まで構想しているから、プラットフォームなんですね。
警備員の駆けつけや保険での損害回復など民間企業との連携から始め、中長期的には公的な機関との連携を進めていきたいと考えています。
現在は、既存のハードウェアとソフトウェアやサービスの掛け合わせで解ける課題や提供したい体験がたくさんあるのに手が回っていない状況です。 これからの新しいセキュリティインフラ、防犯に関する新しい当たり前を一緒につくるエンジニアの方と出会いたいですし、興味を持っていただけた方はぜひご連絡ください!
ホームセキュリティという生活の安心に密接に関わる領域でのサービス、非常に興味深いですね。
Strobo社では、バックエンド、スマートフォンアプリ、ハードウェアのエンジニアを絶賛募集中とのこと。 採用についてはこちらのページにまとまっているので、興味がある方はぜひご覧ください。
業天さん、ありがとうございました!
ライター
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