転職先としても人気の高い外資系エンジニア。給与が高そう、ノルマが高そうなどのイメージが想起されますが、その実態はどうなのでしょうか。
今回は日系企業から大手外資系IT企業に転職し、自身のブログにてエンジニアとして収入アップを目指す方法などを発信中の陽翔(ようしょう)さんに、外資系エンジニアのリアルな本音を伺いました。
陽翔氏プロフィール
大学中退後、未経験からエンジニアになり、現在は年収1000万円以上を稼ぐ外資系エンジニア。自身のブログ「陽翔キャリア」やTwitterにて、大学中退から人生逆転する方法、未経験からエンジニアになる方法、エンジニアとして収入を増やす方法などを発信。エンジニア志望者や現役エンジニアのキャリア相談にも無償で応じている。
アルバイトから、年収1000万円超えの外資系エンジニアへ
陽翔さんのエンジニアとしてのキャリアはどのようにスタートしたのですか?
20歳で大学を中退し、あるコンピューター部品の小売店にアルバイトのエンジニアとして拾ってもらったことが始まりです。一応理系の大学出身ですが、プログラミングの経験などはなく、ITスキルはいっさいありませんでした。
大学中退者の就職は厳しく、アルバイト以外の選択肢がなかったのが現実です。当時の年収は170万円ほど。昼食抜きだったり、携帯代や電気代を滞納して止められてしまうこともしばしばあり、まさにどん底の生活でした。
さすがにその生活を続けるのは厳しかったので、23歳でより単価の高い派遣社員の道を選び、5年間で複数の派遣先を経験しました。エンジニアという仕事柄、プロジェクト経験を積むことでどんどんスキルが磨かれていくため、当時は正社員という働き方に対するこだわりはあまりなかったですね。
その後、正社員として就職されたとのことですが、きっかけは?
20代半ばで実力も付いてきたとき、もっと大きなプロジェクトを動かしたい、より上流工程に携わりたいと思うようになったんです。
大学時代の知人や同世代のエンジニアたちの活躍ぶりを聞くにつけ、焦りを感じることもありました。そこで、初めてしっかりと就職活動というものを経験し、ある金融系ITベンチャー企業に正社員として就職しました。
正社員として就職されて、思い描いていた仕事はできましたか?
はい。8年間でプロジェクトリーダーやプロジェクトマネジャーの経験もできましたし、金融業界の知識や技術的なスキルも身につけることができました。振り返ってみると、その会社に入社したことが、キャリアの転機になりました。
理由は2つあって、1つは得意なJavaを活かしながら金融業界の専門性を身につけることができたから。もう1つは、新しいことにチャレンジしたことでさらなるスキルアップができたからです。
なるほど。このベンチャー企業を退職後、別の金融系IT企業に転職したのち、現在勤務している大手の外資系ITベンダーに転職されたそうですね。
そうですね。人材会社経由で39歳のときに今の外資系企業に転職しました。入社を決めた理由は、純粋に待遇面に魅力を感じたのと、大きなプロジェクトに携われると思ったからです。
成果に応じた評価とフラットな人間関係が魅力
現在の会社には、ジョブ型雇用で採用されたのでしょうか。
私の場合はプロジェクトマネジャーというポジションありきの採用だったので、ジョブ型ですね。ただ、当社の場合は全員がジョブ型というわけではなく、オープンポジションで入社している社員もいます。
外資系企業に入社して、ギャップを感じたことはありましたか?
はい、まず入社初日から驚いたのが、部署や職種の垣根を超えて一人ひとりが自分の意見をはっきり伝える風土です。しかもその伝え方にいやらしさがない。そうした面でコミュニケーションスキルの高さを感じましたし、自分の考えをしっかりと発信することがカルチャーとして根付いているように思いました。
外資系企業に転職して良かったことはありますか?
収入がアップしたことですね。成果に対して適正な評価が行われるので、やればやるだけ報酬に反映される。年功序列や終身雇用という概念がないため、在籍している社員の能力やパフォーマンスは一様に高いと感じますね。
年齢や在籍年数による上下関係もないので、年下の上司や年上の部下もたくさんいますし、フラットな人間関係が築ける点も特徴かと思います。
日系企業から外資系企業に転職した知人からは、入社初日に上司へのメールに「●●様」と書いたらびっくりされたという話を聞いたことがあります(笑)
まさにそうですね(笑)当社でも、年齢やポジションに関係なく互いのことは「●●さん」と呼びますし、役職名を付けて呼称するなどということもないですね。
なるほど。細かな人間関係などではなく、共通の目的や目標に向けて成果を求める傾向が強いということなのでしょうか。普段のコミュニケーションもどちらかというとドライな感じですか?
当社はそこまでドライだと思いませんが、他の外資系企業でエンジニアを務める知人たちからは、わりとドライであるという話を聞きますね。上司からの飲みの誘いや、付き合いのゴルフなどはほぼないようです。
成果に紐付く生産性という部分については、外資系企業ならではの特徴はありますか。
生産性の高さは常に求められていますし、評価の軸としてかなり重視されていますね。基本的にプロジェクトベースで仕事を行いますので、求める成果と生産性が釣り合わないと評価されれば途中でプロジェクトを外されることもあります。プロジェクトを外された結果、アベイラブル(待機期間)が長く続くと、稼働率が低いとみなされ、評価の低下や希望の仕事をもらえないということにもつながりかねません。
外資系ならではの厳しさと言えそうですね。
そうですね。給与に見合ったパフォーマンスを出そうという意識があるかどうか、この点は特に重視されていると感じます。
外資系企業に向いているエンジニアとは?
パフォーマンスに対するシビアな評価というお話もありましたが、そのほかに外資系エンジニアならではの難しさを感じる部分はありますか?
外国籍メンバーとコミュニケーションを取ることや、英語に対する苦手意識がある方はなかなかなじみにくいかもしれませんね。日本法人の規模が小さい外資系企業ですと、上司が外国籍の方というケースもありますので、ビジネスレベルの英語は必要不可欠だという話を聞きます。当社でも日常会話は日本語ですが、仕事をするうえで英語も飛び交いますし、英語のメールを受発信する機会もあります。
外資系企業を目指すエンジニアが、あらかじめ準備しておくとよい事柄はありますか?
まずは最低限の英語力。そして、自分の強みを明確にすることかと思います。私自身、日系企業から外資系企業に転職して特に驚いたのが、自己紹介する際に「私は●●(領域)のプロです」と明言する人が多かったことです。実務を通して、“ここだけは負けない”という強みを身につけておくことが大事だと思いますね。
陽翔さんが考える、外資系企業に向いているエンジニアとはどのような人材でしょうか。
自分のキャリアを自分で考えたい、切り拓きたい人には向いていると思います。特に外資系企業は人材の流動が激しいため、会社が具体的なキャリアを用意してくれなかったり、ロールモデルが存在しなかったりすることも多々あります。「こういうキャリアを作りたいから、この会社に入る」という明確な意思を持てる方には適性が高いと感じますね。
会社ありきではなく、人生の目的ありきで考えることが大切なんですね。陽翔さんご自身は今後どのようなキャリアを考えているのですか。
これまでの社会人生活で、やりたいことややるべきことは概ね実現できたように感じますので、今後は少しずつ本業の仕事量を減らしていきたいと考えています。
もちろん大好きなエンジニアリング業務は継続して行っていくものの、副業や趣味、家族との時間などを通じてもっと自分の可能性を広げていきたい。そうした人生設計を現実にするためのステップとしても、私にとって外資系エンジニアという選択は正しかったと感じますね。
<取材後記>
さまざまな働き方に触れてきたご自身の経験から、将来に悩むエンジニア(エンジニア志望者)の選択肢を広げる活動を行っていきたいと話す陽翔さん。その過程には多くの努力や苦悩がありながらも、自身が目指す未来の実現に向けて、着実にかつ戦略的にキャリアを積み重ねていらっしゃる姿勢が印象的でした。
外資系エンジニアが働く環境や価値観に少しでも共感したエンジニアのみなさんは、ぜひキャリアの選択肢に加えていただくことをおすすめします!
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